無個性でヒーロー!? できらぁ!   作:にょわ

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おかしい……まだ1回戦が終わらない……予定では1,2話でちゃちゃっと終わらせて準決、決勝の方に時間使うはずだったのに……遅遅として進まず申し訳ございません、、、、。
でもちゃんと毎週投稿できてるのは!!褒めて欲しい!!!!です!!!いいよ私!プルトラってるよ!!!


友情!努力!勝利!

「あの大量の水、どうしてあそこでプールになったかわかるか?」

「あーーーー、そのぉ……」

「念のため待機してたセメントス先生が大急ぎでスタジアムの出入り口をすべて塞いでくださったからだ。じゃあそれが必要だった理由は?」

「えっとぉ……水が外に逃げちゃうから?」

「どうして逃げたらマズいのかと聞いてるんだ。控室や救護班がスタジアム出入り口のすぐそばにあるのは知ってるよな? 知らないとは言わせないぞ」

「「はい……」」

「そこに毒性を含んだ大量の水が流れ込んだらどうする。ここが避難所だったら数百人の規模で人が死んでたかもしれない」

「おっしゃるとおりです……」

「ついカッとなって……」

「感情に流されるなって昼前にいったばっかだよな? したいか? 除籍」

「「(ブンブンブンブン)」」

「はぁ…………とにかく、常に最悪を想定して動け。観客席には一般人がいることを忘れるな。勝負に熱中するのはいいがそれ(周りが見えてませんでした)は他人を傷つけていい理由にはならない……いいな?」

「「……はい」」

 

 

□■□■□■□

 

「こ、怖かった……」

「イレセンの説教って、的確に自分でも心のどこかで失敗したって思ってるところをついてくるからガチでクるんだよね……苦しい……」

 

 すべての言葉がグサグサッとクリーンヒットするのだ。ほんっと人を良く見てるよあの先生は……。

 しかもただ正論でぶん殴ってくる嫌な奴とは違い、その言葉にまっとうに育って欲しいという真摯な愛とここで注意すれば治る筈という確かな信頼をひしひしと感じるのだ。だから尚更申し訳なさで苦しくなる。んぎぎぎぎ……私のバカ……。

 

 しおしおと肩を萎びらせながら三奈と二人で歩き、やっとこさクラスのみんなのところへ到着した。

 

「あっ架沙音、おかえり」

「説教どうだった……って聞くまでもねぇか」

「おんなじ顔しててウケる」

 

 デクに温かく迎え入れられ、電気に呆れられ、耳郎ちゃんに笑われた。

 

「「ただいまぁぁぁ」」

「うわっ!ちょちょ、二人は重いって……」

 

 三奈ちゃんと二人で響香ちゃんに枝垂れかかり、そのまま席に座る。

 いやぁ……なんかどっと疲れた。

 

「ほら、丁度始まるよ、常闇くんと八百万さんの試合」

「わ、マジか。間に合うと思わなかった」

 

 結構説教長引いたし。

 

「そこはホラ、誰かさんのおかげでステージの準備に手間取ったからな」

「「あ、アハハ~……」」

 

 瀬呂くんから二人して顔を逸らす。

 だ、だれだろう、タスカッタナ~~~。

 

「ってか切島がいないのは次試合だからわかるけど、かっちゃんと轟は?」

「轟は『悪ぃな、試合前は集中したいんだ』って、爆豪は『だぁれがライバルとなかよしこよしすんだボケぇ! 全員爆殺すんぞ!』だとよ」

「ぷっ、あはははは! 瀬呂くん真似ウマすぎ!!」

「顔まで……ひぃ、死ぬ……」

 

 突然の激ウマものまねに腹筋を殺された。かっちゃんの爆発釣り目まで再現するんだもん、テープで目ぇ引っ張って。

 

「ひぃ、ふぅ……よし、やっと収まってきた……そうそう響香ちゃん」

「ん?」

「めーーっちゃ惜しかったね! 試合! あともうちょっとであのにっくき電気をけちょんけちょんにできたのに!」

「にっくきて」

 

 電気のつっこみは一旦置いておいて、響香ちゃんの方をみると、なにやらバツが悪そうだ。

 え、褒めたつもりだったのに、やばいなんか言葉選びミスったかな。

 

「ごめんね、折角夜通し付き合ってくれたのに」

「夜通し!?」

「んーん、あれは私からしたいって言ったことだし、それにこういっちゃ悪いけどこんな短期間でモノにできると思ってなかったもん! ちょーすごいよ!」

「私からシたい!? ぷぎょわ」

 

 横からいちいちろくでもない過反応するちっこいブドウの口に"スッポン☆キャノン"を無言で撃ちこんで黙らせる。

 

「んー! んーー!!」

 

 よし、ばっちり吸い付いてる。

 

「ま、結局はアタシの油断が原因だよ。最後の詰めを見誤った」

「いやあれはもう悔しいけど電気が一枚上手だっただけだよ……悔しいけど……!!」

「お前は耳郎のなんなの??」

 

 いくら身体機能が向上してるとはいえ体格で劣る響香ちゃんはどっかで個性(イヤホンジャック)による攻撃をしなくちゃいけなかっただろうし、かといって時間切れまで耐えるなんてダサい戦法あの時の2人がとるワケないし……うん、むしろこの相性不利でよく頑張ったって! やっぱり!

 

「ていうか電気強すぎ、あそこまでできるなんて思わなかったしびびった。やるじゃん」

「ふふん、だろ? なんせ師匠が優秀だったからな」

「え、なにそれだれだれ? うちの先生に電気系の個性の人はいないし、ヒーロー科のセンパイかな、それとも個人的な付き合いのあるプロヒーロー?」

 

 えっ誰だろう。戦闘訓練の時には電気ぶっ放してうぇいするしかできなかった電気がここまで多彩なことできるようにするなんてめっちゃ優秀な人だろうし、個性の解釈も上手い……是非意見交換させてもらいたい……!

 

「え、お前マジでいってんの?」

「うぇ、マジ……ってなにが?」

「ばっ……はぁ、お前だよ!」

 

 ちょっと照れくさそうにそういう電気に目が点になる、

 

「わ、わたし? いやまぁたしかに教科書読めとか思考のきっかけくらいは考えたけど、それだけじゃない? それも私が教えたってより一緒に考えたって感じだし」

「だーかーらー! それが助かったって言ってんの! それに無個性なのにこんな頑張ってるやつがずっと前走ってて、気張らねぇわけねぇじゃん! ……あークソ、なんでオレが恥ずかしい思いしてんだ」

「ふぇ、そ、そう、かな……」

 

 こんな、こんな身勝手な理由(見返したい)で好き勝手してるだけの私を、そんな風に?

 

「わかる! 未来ちゃんと一緒にする個性談義、めっちゃ楽しいんだよね!」

「すっごいキラキラした目で"あれもできる"、"これもできる"って宝物見つけた子供みたいに言ってくるから、こっちも期待に応えてあげたくて頑張っちゃうんだよね」

「アタシ、未来がいなかったら絶対こんな体育祭楽しめなかったと思う」

「小さい頃から一度も逃げず努力し続け けて来た架沙音は、僕の憧れなんだ」

「透ちゃん、響香ちゃん、三奈にデクまで……ちょ、ちょっといったんストップ!!」

 

 まって、やばい、なんでかわかんないけどめっちゃ恥ずい!

 みんなに新しい個性の扱い方を伝えたのはただ研究成果と思いついた考察を吐き出してるだけだし、特訓してるのも折角ならもっと強くなったみんなと競い合いたいからっていう自分の為の理由で、別にみんなのためになんて綺麗な想いでやったわけじゃないのに……!

 なんだろうこの、ありもしない功績で褒められてるときのようないたたまれなさ! あとシンプルに褒められ慣れてないから照れる! 無理!!

 

「うあう……わかったからぁ……」

 

 思わず顔を手で覆ってそっぽを向いてしまう。うわぁ、手が触れてる顔がはっきりわかるくらい熱い……。

 だ、だって仕方ないぢゃん! ずっと傍に居たのは性格終わり(いじめっ子)コミュ力終わり(クソナード)だったし、大人たちはよく褒めてくれたけどいつもそこには哀れみと同情が乗ってたんだもん! こんなキラキラした感情向けられたことないもん!!

 

「「「か、かわいい……!」」」

 

 ちょ、やめて、女子~ず今だけはやめて……そんな愛らしいものを見る様な目で見ないで……。

 

「「「未来」ちゃん!!」」

「わーー! わーー!! 抱き着くなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 私の悲鳴が、天高く響き渡った。

 ちなみに眼下では、常闇くんとヤオモモちゃんが『あの、始めていいかなぁ』みたいな顔で気まずそうにしていたとか、いなかったとか……。

 

 

 

 

 

「んんんーん、んーん。んーんんーん」

「何言ってっかわかんねえけど最悪なこと言ってんのだけはわかるわ。でも多分同意しちまうんだろうな」

 

□■□■□■□

 

 あれから暫く記憶が無い。気付いた時には明ちゃんの胸でよしよしされていて、常闇くんたちの試合は終わっていた。

 

「あれ、なんで明ちゃんがここに?」

「未来さんを探して歩いていたらここに連れ込まれました」

「「連れ込みました」」

 

 ふんす、と胸を張る頭と体のピンク同盟。

 まぁ明ちゃんちょー笑顔だし、楽しそうならいっか。

 え、なに? 未来さんの珍しいとこ見れて楽しい?

 むきゃーーーーー!!

 

「あ、そんなことより! あの飯田くんを完全に弄んだんだってね! 聞いたよ~~すごいじゃん!」

「えぇ、その際はありがとうございました。飯田さん」

「まったく、次からはきちんと事前に相談してくれたまえ。そうしたら喜んで協力するというのに」

 

 え~ほんとかなぁ? このカタブツメガネがぁ?

 あ。いや、そういえば戦闘訓練の時めっちゃノリノリで”オレはぁ……悪いぞぉ……!”みたいなことやってたじゃん。飯田'sブレインは与えられた役割を全力でこなす!

 

「お、始まんぜ次の試合」

 

『さぁ続いてはこのカード! 一回戦第七試合! B組のトリックスター、クラスの想いを背負って……物間寧人ォォォォォ!対するはA組のメイン盾! 熱い漢切島鋭児郎イィィィ!!』

 

 プレセンの出囃子に合わせ、二人がステージに上がる。

 高笑いしながら相手を見下す物間くんに静かに歩みを進め、拳をガツンとぶつける切島君、わぁ対照的。

 

「聞いたよ切島くん! キミ、"かたくなる"が得意なんだってねぇ! 大層な個性じゃないか! 次は"いとをはく"でも見せてくれるのかなぁ??」

 

『早速物間の口撃が炸裂ぅぅ! あれがヒーロー志望ってマジぃ? 爆豪とは別ベクトルで口やべぇな!』

 

「わりぃけど、それ《皮肉》は意味ないぜ。なんせ俺の個性にゃ刃物(ナイフ)は効かねぇからな!」

 

『鮮やかな反撃ぃ! PONPON!! アチぃライムだぜ切島ぁ!』

 

「ぐぅ……」

 

『これには物間もぐぅの音が出たぁぁぁ!』

 

 ……なんだあれ。戦いはもう始まってるってやつなの???

 

「男の子ってホントバカね」

「ほんとね」

 

 三奈ちゃんとうんうん頷き合っていると、早速試合が始まったみたいだ。

 

「行くぜ!」

 

『切島! まっすぐ突っ込むぅ!』

『あいつの個性はシンプルだからな。こういうシンプルな作戦が最も力を発揮する。合理的だ』

『合理的ヨイショォ!』

 

 もうあの二人"合理的"って言葉で遊んでない?

 

 まぁそれは兎も角、実際アレ(全速前進)はいい作戦だ。

 切島の強みは何といってもそのタフネスとフィジカルだから、日和った遠距離攻撃を無視してガッツリ距離を詰め、ひたすら張り付くのが一番強い。

 

「はっはー! あんよが上手だねぇ!」

 

『物間は腕から鱗を飛ばして迎撃するが……』

 

「効かねぇ!」

 

『圧倒的無傷! カッチカチやでぇ!』

 

 なぜに関西弁。

 

「それなら……そら!」

 

 お、鱗を射出するんじゃなく一旦手に持った。

 腕に鱗も消えてるし。これたぶん私にも使った……。

 

『なんとぉ! 物間が投げた鱗の一片が突如巨大化ぁ! 螺旋手裏剣くらいあるぜ!』

『そんな昔の漫画で例えても伝わらないだろ』

 

 やっぱり! 投擲からの巨大化!

 ていくか個性で生み出したものは切り替えた後も残るんだ!

 じゃあ"創造"で適当なものを生み出してからポルターガイストなりサイズなりすれば……いやアレ(創造)は原子構造まで認識する必要あるし、ヤオモモ以外に使いこなすのは不可能か。

 

「っらぁ!」

 

『切島! 自分の2倍はある鱗を殴り飛ばす! が!』

 

「足元の悪いなかお越しくださいってね!」

「うおっ! ぬかるむ!?」

 

『既に個性を切り替えている物間寧人! 上に意識を向けさせてから地面を軟化させるぅ!』

 

「ミッドナイト先生! これってこのまま沈んで柔らかくしたステージの下の地面に触れたらどうなるんですか?」

「勿論、場外よ」

 

「だってさ切島くぅん! ウルトラできるかなぁ!?」

「ははっ! いいねぇ燃えてきたァ!」

「んなっ! なんだよそれぇ!」

「新技だよ! とっておきのな!」

 

『なんだぁ!? 切島、ぬかるむ大地をモノともせず疾走!! どういうカラクリだぁ!?』

『よく見ると足からブレードみたいなのを生やしてるな。それをかんじきにして設置面積増やしてるのか』

 

 切島くんはいつの間にか靴を脱いでおり、露出した脚は個性でカチカチに硬化している、だけじゃない。

 相澤先生の言う通り、ただ硬化するのではなく、硬化の際に伸びる棘の形を制御して、広く薄い刃を生やしている。

 あ、あれは……! ほわんほわんほわん(回想)。

 

『切島くんって個性使うとき、皮膚が鉱物みたいに固く変質していく感じ?』

『おー、大体そんな感じだな』

『じゃあさ、その硬質化……っていうより結晶化か、する時の形状って変えられないのかな』

『形状?』

『そ! 硬化するとちょっといつもよりトゲトゲするじゃん、それを意図的に起こしてみて、掌から棘を伸ばすイメージで』

『なるほど……こんな感じか?』

『やっぱり! ある程度自由に変えられるじゃん! ちなみに刃物みたいにすることは?』

『刃物ってーとB組の刃鋭みたいな感じか……うおっ、さっきよりスムーズに生えたな』

『ふむふむ……どうやら"鋭利な""切るもの"が一番得意みたいだね、むしろ"硬化"の方が副産物なんじゃない?』

『あーでもなぁ……オレはこの個性を守るために使いてぇんだよ。ほら、刀を持った手じゃ大切な人を抱きしめられないって言うじゃん?』

『ふっふっふ、頭が固い、その個性の様にカチカチだよ切島くん』

『やかましいわ』

『大切なのは"何ができるか"じゃなくて"どう使うか"だよ? 例えばその刃をスパイクやかんじきみたいにして使えば……』

 

「どんな場所にも駆け付けられる!!」

「うっ! くぅ……」

 

『柔化を突破した切島、一息で距離を詰め、物間の顔面に拳を叩き込むゥゥゥ! いいの入ったぜオイ!!』

 

 切島くん、覚えててくれたんだ……! 判断も速いしすっかり使いこなしてるね!

 

「くっ、ますは誉めてあげようじゃないか……よくうちの骨抜の個性を破って見せたね……」

「ハッ! ありがたく受け取っとくぜ!」

「しかぁし! 彼の個性は我がB組の中でも最強!!」

「あ……? ってじゃあダメじゃねぇか!」

 

 普通そこは最弱っていう場面でしょーが。

 まぁ物間くんが大切な仲間(B組)の個性を悪く言うなんて考えらんないけど。

 

「話は最後まで聞きなよ単細胞! B組の個性は……全員サイキョーなのさ!!!!」

「なんだそのバカ理論!」

 

 顔面をしたたかに殴られ、流れる鼻血をぐいっと拭った物間くんの目に光るのは……強烈な闘志。

 

「あはっ!」

 

 思わず笑みが溢れる。

 いいねいいじゃん物間くん! 君の今考えてること、ハッキリわかるよ!!

 

 状況は依然有利、足場を崩すことによる撃退は望めなくなったけど、まだ見せてない遠距離攻撃のコンボで問題なく圧殺できる……だけどそれじゃつまらない(・・・・・・・・・・・・)! そうでしょ!

 

「お前、アチィとこあんじゃん!」

「お生憎と、そっちのお転婆に触発されてね!」

 

『物間、全身を鉄で固め、まっすぐ距離を詰める! そして距離が0になり……』

 

「「っらぁ!」」

 

『殴り合うゥゥゥ!! 男と男の意地のぶつかり合いだァァァァ!!!』

 

「鉄哲の個性、"鉄"は体を鋼鉄に変えて硬度を増し!」

 

『切島の拳を額で受け止め……無傷ゥゥ!』

 

「小大の個性、"サイズ"は触れたもののサイズを自由に変える!」

「ぬおっ!」

 

『今度は姿勢を低くした物間が足元の小石に触れ、巨大化ァ! 踏んでいた切島の体勢が崩れる!』

 

「これってさぁ」

「うん……会場の人達に、B組全員の個性をプレゼンするつもりだろうね」

 

 三奈と頷き合い、嘆息する。

 個性を次々に切り替え、名前と個性を切り替える度にわざわざ宣言しながら戦っている物間くんを見ればその意図は明らかだろう。

 激しい殴り合いを演じながらのプレゼントは器用というか、余裕というか……ん? 殴り合いながらのプレゼン? なんか聞き覚えが……。

 

「あーーー!」

「うわびっくりした、どうしたの未来」

 

 あ、ごめん三奈急におっきな声だして。

 

「いやこれ、やってることは噂に聞く明ちゃんと飯田くんの試合と一緒だよね」

「あ~~~、言われてみれば確かに」

「でもアレはめちゃくちゃ通販番組みたいだったけど、こっちは負けた友の想いを背負って! みたいなアツい感じだよね! 何が違うんだろう……」

「ぐぬぬぬぬ……たしかにスポンサーの印象がいいのはこちらですね……やるじゃないですか、モノマネの人」

 

 わ、珍しい明ちゃんのぐぬぬ顔だ。レアなの見れてラッキー。

 

「栁の……泡瀬の……」

 

 種を明かしてしまえば緊張感も少し薄れた観客席で二人の戦い兼プレゼンはきっちり全員分の個性を紹介し終えるまで続いた。

 

□■□■□■□

 

「拳藤の個性は、手のサイズを大きくして大質量を叩き込む!」

 

 ……いや、物間くんすごいな。

 丁度これでB組全員の個性を一回ずつ使い終えたんだけど、使い道も方向性もジャンルもバラバラの個性を一度も被らせることなく戦術に組み込んでわざとらしくも見えないように使い切るって……いや、物間くんホントに凄いな!

 勿論私もたくさん手札から有利なものを選択して押し付けるっていう戦法を取る以上似たようなことはしてるけど、どっちかというと私は最適解を選んで少ない手札で勝利を目指すタイプだ。

 20枚も手札があって、それを全て使い切って勝利するのとそのなかから最も有効な1枚の手札を選んで勝利するのじゃ方向性こそ真逆だがどちらも高難易度なんてもんじゃない。あ、今のプチ自慢ね。

 でも私でも全部使いきった上で勝つのは、できるか……いや、できるけどね! 当然、天才美少女架沙音ちゃんにかかればヨユーだけどね!?

 

「未来ちゃんってときどき一人百面相してるよね」

「わかる、どんなこと考えてるんだろうな~って眺めてると可愛いんだよね」

「ごめん透ちゃん、響香ちゃん、恥ずかしいから一旦見なかったことにして」

「「無理♡」」

「そんなぁ」

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 全員分の紹介が終わったということは、この勝負も間も無く決着となるだろう。

 両手を巨大化しその質量で場外へと押し出そうとする物間くんに切島くんはスパイクを地面に突き立て抗ってはいるが、じりじりと舞台端に押し込まれて行っている。

 勿論切島くんがこのまんま終わるタマではないというのはわかってる。きっとどこかで力を振り絞(プルトラ)って形勢逆転を目指すだろう。

 しかし、その程度物間くんも絶対にわかっている。

 

「そしてぇ!」

「うおっ!?」

 

『巨大な掌が突如消失! 支えが無くなりつんのめる切島に、物間が迫るゥゥゥ!』

 

「この僕の個性"コピー"は触れた相手の個性を5分間コピーでき……」

 

 パキ、パキ、と何か……いや、非常に聞きなれた(・・・・・)音が響く。

 

『切島、転倒は耐える! しかし体勢は依然崩れている! そして走る物間の体、どんどん変わってんぞォォォ!!』

 

「切島鋭児郎の個性"硬化"は、体を硬質化することで攻撃力と防御力を何倍にも……引き上げる!!!」

「がはっ!」

 

 硬質化した物間くんの拳が切島くんの顎に命中し、体が大きく吹き飛ぶ。

 地面に墜ちたその体が位置するのは、ステージの外で……一瞬の静寂の後、会場を割れんばかりの歓声が包み込んだ。

 

『決まったァァァァァ!!! 相手の個性を用いてのアッパーカット! 物間寧人、B組全員の力を出し切り、二回戦進出ゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

 

 プレセンの勝利宣言が響いても、まだ歓声は鳴り止まない。 まぁそりゃそうか、ちょっとドラマチックが過ぎたもん。

 最初は遠距離からの妨害、からの敗北した仲間の力を使っての肉弾戦、最後は自身と対戦相手の力で決着なんて、そりゃ熱くもなるだろう。

 特に決まり手が対戦相手(切島くん)の力ってのがいい。リスペクト感じちゃう。

 いやぁ上手くやったなぁ物間くん、対戦前は煽り合いで評価が地の底だったのに、一気に取り返した。これはオファーいっぱい来るだろうなぁ。

 

「いやぁ負けた、完敗だわ! やるなお前!」

「ふん、よく言うよ。途中から気付いて協力してたくせに」

 

 物間くんが倒れる切島くんに駆け寄り、手を掴んで起こす。

 2人の顔はどこか憑き物が取れたように晴れやかで、心なしかバックに夕日と河川敷が見える気がしないでもない。

 

「ま、ダチのために! っつうアチぃ気持ち伝わってきたからな! ノッてやらなきゃ男が廃るってもんよ! あ、でも勘違いすんなよ! 最後負けたのは手加減もなんもないガチだし、アレ(個性プレゼン)が無くたって負けてたと思うわ!」

「まったく……敵わないね。それに……アツくなってみるっていうのも、案外悪くない」

「にししっ! だろ!」

 

 ま、眩しい……!

 ニヒルな笑みを浮かべる物間君に、白い歯を見せてルフィみたいに笑う切島くん。

 あーーいけません! いけませんよお客様!! ほら見てよ横のミッナイ先生(青春スキー)を……。

 

「はっ、はっ……あっくぅぅぅ……」

 

 過呼吸気味に苦しんでるよ、光が強すぎて。

 

 うわ、待って、ヤバイ。物間くんと戦いたいな~~~~~~~~~。

 しかし彼の次の相手はかっちゃん……いやかっちゃんとも戦いたいんだよな~~~~~~~~~。

 うぐぐぐぐぐ、いったい私はどっちを応援すればいいんだ……。

 

 勿論私は、幼馴染としてかっちゃんの強さを誰よりも……訂正、デクの次にわかっているつもりだ。正直アイツが同じ学生に負けるところなんて想像つかない。

 でも、それでももしやって思わせてくれるくらいのものが、今の物間くんにはあったのだ。

 

「ふふ、ふふふふふ……」

 

 あ~まって、ヤバイ、にやける。

 

「うお、架沙音が悪の科学者みてぇな顔で笑ってる」

「なんかエロいnぷぎゃお」

 

 うるさいアホ男子2人。あと響香ちゃん害獣(エロ猿)駆除ありがとう。

 

「なんか未来って、だいぶバトルジャンキーだよね」

「うぇ、そんなんじゃないよ三奈~~」

「え~ほんと~?」

 

 違うもん、ホントだもん。

 

「未来さんが好きなのは戦いじゃなくて皆さんの可能性を見ることですもんね」

「そう! さすが明ちゃんわかってるぅ!」

 

 私が好きなのは戦いそのものでは無く、そこから見えるみんなの成長、輝きなのですよ。

 悲しいけど、作成したアイテムっていうのは持っている機能以上のことは出来ない。ただの人間に過ぎない私では、生身で岩を割る……くらいはギリ出来るかもしれないけど天候を変えるなんてのは間違いなく不可能だ。

 でも、みんなが持つ個性は違う。

 解釈や心の持ち方、成長次第でどれだけでも無限に更に向こうへ(プルスウルトラ)行くことができる。

 

 ……勿論、これっぽっちも羨ましくないって言ったら嘘になる。

 

 けど……だからこそ、私独りじゃ届かない"未来”を、見せてくれるみんなが好きなのだ。

 みんなと一緒に積み重ね、届かぬ月に手を伸ばすのが好きなのだ。

 

 だって……。

 

「みんなが私にできない成長をしてくれれば、それを基に……いや、その成長した個性因子そのものを材料にもっと超強い(ドッ可愛い)アイテムを生み出せるから……ふふ、楽しみだなぁ」

「「「うわぁ……」」」

 

 なんて、いい話風に纏めたが、結局根っこはそこなのだ。

 みんなの成長を踏み台にもっと”私が”高みへ行きたい、それだけの汚いエゴでしかないんだ。

 

「だから……」

 

 少し前に控室へ向かっていったお茶子ちゃんの浮かべていた、決意を秘めた表情を思い返す。

 

「ふふ、楽しみにしてるよ、かっちゃん、お茶子ちゃん」

「二人とも逃げてぇ! 超逃げてぇ!」

「悪い博士に実験体にされちゃうよぉ!」

「あはは!」

 

 微笑みを携え、眼下の舞台を見下ろす。

 丁度そこに、先程まで戦っていた2人と入れ違いにお目当ての人物達がやってきた。

 

 長かった一回戦も、間もなく終わる。

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