無個性でヒーロー!? できらぁ! 作:にょわ
あと1話だけだし……USJ終わるまではなんとしても毎日投稿を……!
うわ!! なんだここUSJみてぇ!」
バスが目的地に到着し、降りた先にあったのは水場やビル群、火災現場など様々なシチュエーションの用意された総合演習場。
「ようこそ、
「USJだった!?」
なんてっこった雄英学園! 著作権は怖くないのか!?
ていうかそっちは西の士傑の領分でしょ! ちょっと遠いとはいえこっちならTD……いや、流石にそっちは許されなかったのかな。
うん、流石に雄英もそこまで恐れ知らずではないでしょう、うん……でもヒーローって恐れ知らずだからなぁ……不安だ……。
私達を出迎えてくれたのは、その強力な個性でもって、災害救助をメインに目覚ましい活躍をしているスペースヒーロー13号! わ、後でサイン貰えないかな。後ついでに個性因子のサンプルも……。
彼女の個性は《ブラックホール》。そう、ブラックホールなのだ。
勿論本当にブラックホールなんて出しちゃったらそのサイズや出力に関係なく地球が無くなるし、疑似的なものだとは思うけど、それにしたってとんでもない個性だ。
なんせブラックホールに飲み込まれたものはその無限の圧力により押しつぶされ、事実上”消滅”するのだ。これを量産できるだけで世界のゴミ問題は解決待ったなし。ってこの活用法はちょっと夢が無さすぎるかな?
「君たちは確かに強力な力を、個性を持っています。それを思うがままに振るえば、ある程度望みを叶えられてしまう」
ここに若干一名それに当てはまらない人畜無害な女子高生がいるんだけど……というセリフは流石にグッと飲み込んだ。
……おいなんだかっちゃんその『お前マジ今だけは黙っとけよ』みたいな目は。
「超人社会は一見すると平和に見えますが、その実態は非常に脆い。簡単に人を殺せる個性が辺りを見渡せばそこら中にあって、それら全てが個人のモラルに委ねられている。人は状況が変われば、魔が差せば、簡単に罪を犯してしまうのにです」
ま、別にこれは個性だけに限った話じゃない。
いくら1000年に1人の天才である架沙音ちゃんとはいえ若干15歳の女の子にも
……おいなんだかっちゃんその『絶対今カスみたいなこと考えてんだろ殺すぞ』みたいな目は。
「ですので! 今日はその力を人命の為にどう活用するかを学んでもらいます! 覚えて貰うことは一つだけ。君たちの力は他者を傷つける為でなく、助ける為にあるのだと……そう心得て帰ってくださいね」
「「「はい!」」」
13号先生の結びの言葉に、私たち生徒が元気に返事を返す。
う~ん青春! こうして私達はちょっとずつ大人になっていくんだねぇ。
「そんじゃあまずは……、……?」
相澤先生が頭をぽりぽりと搔きながら授業を始めようとしたが、何かに気付いたのかバッと視線をどこかへ飛ばす。
そして、次の瞬間。
「全員一塊になって動くな!! 13号、生徒を守れ!」
普段の”必要最低限!”みたいな声とは打って変わり、明らかに焦りを含んだ声を張り上げた。
生徒たちも遅れて相澤先生の視線を辿り、そこに何がいるのかを見やる。
視線の先には何やら黒い靄のようなものが広がっており、その中から顔に手を付けた男が……っ!?
「相澤先生! アイツです!」
周りの生徒たちは、まだ事態を飲み込めていない。
ただ私は偶然にも既にその見かけていたこともあり、即座に動くことができた。
『ねぇみてみて、校門のとこ』
『どうかしました?』
『なんか顔に腕付けた変な人が……ってあれ?』
『? 誰もいませんが……見間違いじゃないですか?』
あのとき、マスコミに紛れてた男……! やっぱり見間違いじゃなかった!
「あぁ? んだこれ」
即座に冷凍光線銃を2丁抜き放ち、バッテリーいっぱい1秒間照射する。
自慢のベイビーちゃんは見事に役目を果たし、手だらけの男の首から下を氷で拘束した。
「ちっ……まだ名乗ってもねぇだろうがよ……テンプレってもんをしらねぇのか今のガキは」
「なっ!?」
断言する。男はみじろぎひとつしていないし、なにか炎や電気といったエネルギーを放出したりもしていない。
にもかかわらず、男のほぼ全身を覆っていた氷が瞬きする間も無く消え去った。
なんの個性!? 全然わかんない!
……でも、数舜は稼げた!
「13号避難開始! 学校に連絡試せ! センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ!」
「了解」
「ッス!」
相澤先生がすぐに指示を飛ばし、まだ状況を飲み込めていないなりに、みんなも指示に従う。
「あぁクソ、めんどくせぇ、オールマイトもいねぇしよ……」
カリカリ、カリカリ。
苛立ちを隠さず、頭を掻く手男。
その背後では、先程の黒い靄が広がりそこからぞくぞくと仲間と思しきヴィランが湧き出ていた。
「無理っす! 繋がんねぇ!」
「無線もききませんわ!」
明らかに準備が良すぎる……! 間違いなくこれは、周到に計画された奇襲!
……ちゃんと今が危機であると認識できてるのは半分くらいか。残りは「これも入学式すっとばしたみたいな突発訓練?」とあくまで授業の一環であると楽観視している。
いや無理も無さすぎるって! 入学して一週間も経ってないし! 相澤先生ならギリやりかねないし!!
私もお昼にあの手男をみかけてなかったら絶対そっち側だったと思う。
「ちっ、とにかく避難だ!」
そんな浮ついた様子を見て、相澤先生が激を飛ばす。
「先生は!? 1人で戦うんですか!?」
ゴーグルを着け、首元に捕縛武器を巻きながら推定50人以上のヴィランの元へ相澤先生が突っ込んでいく。
離れていく先生の背中にデクが声をかけるが、1秒も惜しいのかその返答は背中越しだ。
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
か、かっこいぃぃぃぃ!!
その言葉に違わず、階段を飛び降りた相澤先生は大勢のヴィランへと真っ直ぐに向かっていき、次々にヴィランを沈黙させていく。
「すごい……!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」
よかった……これならなんとかなりそう……。
……その時の私達を、誰が責められようか。
目に見えた危機、しかしそれも半信半疑。
さらにそこで相澤先生が八面六臂の大活躍をしたことで、私達は安心
「バカ! 早く避難を!」
先生が慌てたように再度声を荒げるが、もう遅い。
「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして」
私たちの前を、後ろを、取り囲むように黒い靄が広がり、その中心に浮かぶ紫の瞳の辺りから声が響く。
オールマイトを殺すぅ? そんなの無理無理無茶無謀……とは言い切れないよねぇ。
本校舎から離れるこのタイミング、外への連絡手段の遮断、そしてUSJという密閉空間。なんせここまで周到に準備を整えての襲撃だ。何らかの策があると思ったほうがいい。
でも……ほわんほわんほわん(回想)。
『HAHAHA! このまえ雨の日に道で小石に躓いてしまってね、その拍子にちょっと拳を振ってしまって、そしたらその風圧で雨雲が無くなったんだよ! HAHAHAいやぁ危ない危ない! 人が居なくてよかった!』
ほんとに殺せるのぉ? あのとんでも超人を? 首から下が全部なくなっても「HAHAHA!」って笑いながら平然としてそうだけど……いや流石にない……か?
「その前に俺たちにやられる事は考えてなかったか!?」
はっ!? 脳のリソースを無駄遣いしてるうちに状況が!
勇猛果敢に顔(?)の浮かぶ黒い靄の中心へかっちゃんと霧島が殴りかかるが……あのバカ、明らかなワープ個性持ちに正面から物理攻撃仕掛けたって……!
「ふぅ、危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵」
ん? 今避けて……。
「散らして、嬲り、殺す」
「しまっ」
くそっ! ちょっとしたノイズのせいで余計な事考えた!
気が付けば足元は黒い霧の中。一瞬視界が暗転し、気が付くと……。
「あぁ!? んだここ!」
「うおっ! びびった!」
やっぱりワープさせられた!
すぐに周囲を見回し、状況を確認する。
一緒に飛ばされたのはかっちゃんと切島の2人。周りには下卑た笑みを浮かべるヴィランが多数。ここはビルのオフィス……? てことは入口にあったマップからすると、倒壊ゾーンか……。
ワープの直前、足元を霧が覆っていたのは私含めて14人、四角メガネ委員長はエンジンで霧を散らしてた……なら!
「かっちゃん!!」
「あぁ!? んだ架沙音!」
「頼んだ!」
返事も待たず、窓に駆け寄る。
「いかせねぇよガキ!」
周囲のヴィランが進路を拒むが……。
「ちっ、貸しイチだかんな!」
激しい爆発に吹き飛ばされ、塞がれた進路が再び開く。
あはは! さっすがかっちゃん!
「今度パフェ奢ったげる!」
「いらんわボケぇ! 甘すぎるわ!」
すかさず窓をけ破り、外に出る。
うわ思ったより高いな! でも好都合!
「お、おいお前ら! どういうことだよ!」
窓の向こうから聞こえる切島くんの声をバックに、グライダーをガッチャコンして持ち手を掴む。
「ごめん! 広場の皆手伝ってくるから! そこ任せた!」
「なるほど! 任された!」
判断速!?
「男らしいじゃん切島! かっちゃんのことも任せたよ~~~~」
振り返らず、背中越しに返事をする。
遠くからうっすらと「誰に何言ってんだボケェ!」と聞こえてくる気がするが、きっと気のせいだろう。
よっしこんなもんか! この高さなら普通に着地でき……よし完璧!
とりあえず飛び出したけど方角がわかんないな……それなら!
周囲にヴィランがいないのを確認し、毎度おなじみホップジャンプに履き替える。
「そ~~~~れっ!」
一瞬でさっきまでいたビルも跳び越し、天高く舞い上がる。
えっと広場は……あっちか! うわ相澤先生ガチ大暴れじゃん。つっよ。
っといけない。『鉄板』カプセル2つと『
何かに当たらないと光線は凍り付かないため、足元に出した鉄板1枚を起点にして……広場まで光線を振りぬく!
よっし超ロング滑り台完成!
え、もう一枚の鉄板(ちょっと長細め)をどうするかって? そりゃあもちろん……。
「ひゃっほーう!」
スノボにして滑り降りるに決まってんじゃん!
滑り降りている最中、黒い霧の中に浮かぶ紫色の光と目が合う。流石に近くが終点の巨大滑り台ができたら気付くよね。
でも、こっちに目を向けてる暇あるのかな!?
「13号せんせーーー!!」
「えぇ、わかってますとも!」
13号先生のスーツの指の部分がぱかっと開き、辺りを漂う霧がどんどんそこに吸い込まれていく。
やっぱり! 気体の霧は比重が軽いから吸い込まれやすい!
瞬きの間に霧はどんどん密度を減らし……私が地上に着く頃には人一人分の体積のみになっていた。
「しまっ」
「あはは! よ〜いしょっ!」
地面へ到達する直前にくるっとバク宙し、その際にボードにしていた鉄板を蹴り込む。
身体を構成する霧がすべてワープ対象なら、物理攻撃は効かない筈だ。だって殴るべき実体がないんだから。
「でもあんた! かっちゃんと切島の攻撃、躱したよねぇ!」
「ごはぁ!」
勢いの乗った鉄板はヴィランの着ている服のようなものの位置に突き刺さり、轟音と共にやつを吹き飛ばした。
「ふふん、ニュートンの法則あたっく!」
「す、すげぇ……賢いのにバカそう……」
「なにおう!」
いったな瀬呂くん! ってそんなじゃれてる場合じゃない!
いいんちょ……ってもう走り出してる!?
通信が効かない今いいんちょが走るのが最速の連絡手段っていう答えはみんなも持ってたんだ。
さっすがみんなかしこい、私ほどじゃないけど。
「いかせません……!」
「そっちこそやらせんばい!」
広場に残ったお茶子ちゃん、障子くん、お茶子ちゃん、瀬呂くん、砂糖くん、13号先生で飯田君の道を開く。
よしこっちは大丈夫そう……相澤先生は……、……!
丁度そのとき、一瞬のスキを突かれた相澤先生に手男が飛びついた。
でも手男は無手だし、ただ掴んでるだけで拳を振るったりも……。
「生徒の前だからってカッコつけんなよ、せんせ」
なんだ? 手男が掴んだ相澤先生の肘が、崩れて……そうか! 触った場所を”崩す”個性か! だから氷もノーモーションで壊せた!
相澤先生は即座に”抹消”を発動させ崩壊の浸食を止めた後手男を打ち払ったが、まずいあれはちょっと触れたらゲームオーバーすぎる……!
何とか意識を分散させないと……!
「相澤先生! いいんちょが脱出した! 後は時間稼ぎでいい!」
「は? ガキ逃がしたの? 何やってんだよ黒霧くそつかえねぇゴミが……」
「馬鹿こっちに来るな!」
大丈夫、たぶんあの手男は接触を契機に発動する個性。なら10mくらい距離をとっておけば、充分見てから回避できる。
「あぁクソ、じゃあもうゲームオーバーじゃねえかつまんねぇなぁ……イレイザーヘッドは無駄に強いし、ガキには脱出されてるし、なんもできてねえじゃんヌルゲーって聞いてたのにとんだクソゲーじゃねえかクソクソクソ」
ブツブツと、顔を掻きながら苛立たしげに呟く手男。
しかし突然、顔を掻く手が止まる。
「ま、いっか……どうせクエスト失敗なら……」
”せめて、少しでも大きな傷を”
手の隙間から、ニヤァと不気味に歪む瞳と目が合った。
ぶわっと全身の肌が粟立ち、冷汗が噴き出す。
「脳無」
ずっと手男の傍に控え、動きの無かった脳が剝き出しの半裸男。
そいつが一歩、前に踏み出した。
あいつ、雰囲気がやけに不気味……。
「やれ」
瞬間、オールマイト程の巨体が、一瞬で搔き消えた。
「っ!?」
なっどこに……目の前!? いつの間に!
「架沙音っ!」
既に振りかぶった腕が見えている。
次の瞬間には、貯めた力が解放される。
速っ防……いや無理回……。
”死”。
……。
…………。
………………いや!
「……なっ……めんなぁ!」
振るわれる腕にこちらの腕を添え、力の流れの向きを変える……!
「っはぁ!」
振るわれた即死級の運動エネルギーを一厘も殺さずに叩きつける。
文字通り命を懸けた背負い投げは脳無と呼ばれたヴィランを地面に深々と突き刺し、立ち上る土煙が視界の一切を奪った。
「はぁ……はぁ……」
危ない……なんだ今のスピードとパワー……マジのガチで死ぬかと思った……!!!!
なんとかなったけど……やばい冷や汗止まんない……とりあえず相澤先生に無事を報告して……って土煙でなんもみえな……。
……しかし、命の危機をギリギリで凌いだという安心と油断が、私の思考を一瞬止める。
その一瞬が、命取りだった。
「はぁ、きっつ……、……っ!? まず」
自分が今どこに立っているかを遅れて理解し、『風(大)』のカプセルを地面に叩きつける。
閉じ込めていた突風が吹き荒び視界を遮る土煙を散らすと……。
「おせぇよ」
目の前に迫っていた手男の喜色に歪む瞳と、目が合った。
彼の五指が……私の顔に、触れた。