TS転生美少女が男友達ムーブして幼馴染の情緒を破壊する話 作:寿司鮓
スズメ百まで踊り忘れずというかなんというか言うらしいが。
死んでも転生して前世の記憶を引き継いでしまったのならば、身体の内側に秘められた精神はそこまで変わる事はないのだと思う。
というのも、俺は『久遠歩夢』という美少女に転生したというのにも関わらずいまだに男の感覚が抜けていないのだ。
いわゆる性自認と肉体の性が一致していないという奴である。
ただこれに関しては前世の記憶に引っ張られているというだけであり、そしてそれは常に肉体と綱引きを行っていた。
その綱引きはだんだんと肉体の方が有利になっている感覚があり、だからこそ俺はいずれ完全な女の子になるのだろうという確信があった。
「俺」から「私」に、きっといずれなるのだろうと思っていた。
まあ、とはいえそういう難しい話は置いておくとして。
まだまだ小学生で遊び盛り、転生者だとしても――いや、だからこそ俺はその短い子供時代を精一杯楽しもうと思っていた。
髪をバッサリ切って動きやすいようにした。
全力でこの時を楽しむために。
「ふーっ」
夏。
熱いが、それでも俺を家に引きこもらせられるほどの灼熱ではない。
短パンにTシャツというスタイルで家を出て、サッカーボール片手に公園で遊び相手を探す。
よくよく考えると友達と遊ぶなら先に連絡をしておいた方が良かったのではと毎回思うのだが、しかし朝になると遊びたいという気持ちが強くなるから忘れてしまう。
とにかく俺はそうやって家を出て、公園に向かい、友達を探す。
そしてその遊び相手は、いつもそこで俺の事を待っていた。
「おーい、歩夢ーっ」
そこにいたのは俺と同じくらいの身長の男の子。
名前を、角田惇太。
俺は彼の事を親しみを込めて「ジュンタ」と呼んでいた。
「ジュンター、ごめん待たせたーっ」
「大遅刻だぞ歩夢、凄い待った!」
「うっわ、汗びしょびしょじゃん。汗っかきだなー」
「るっせーな、どうせこの後動いたらびしょびしょになるんだから同じだろ!」
「そりゃそうだな」
という訳で、会話もそこそこにまずはウォーミングアップと言わんばかりにジュンタ目掛けてサッカーボールを蹴った。
勿論シュートではなくパスだ。
緩やかに、まっすぐジュンタの方に転がっていったボール。
それを足で受け止めたジュンタはにやりと笑う。
「んじゃ、今日はボールぜってー取らせないからな!」
「おう、今日もばっしばし取ってやんよ!!」
ドリブルし始めるジュンタのボールを狙う。
こうやって遊び始めて、もう何日も経っている。
俺とジュンタは別の学校に通っているので、だからお互いがお互いの事を良く知っていない。
それで良いと思っている。
ただ楽しく遊べれば、それで良い。
俺とジュンタはサッカーボールで遊ぶ仲。
それで十分だった。
「ていうかドリブル上手くなったじゃん!」
「はは、今日こそは絶対に取られないからなっ」
「なんのっ、隙あり!」
と、俺は隙を見てボールを奪おうとするが、ジュンタの想定外の動きにつまずいた。
そしてそのまま、ジュンタを巻き込んで倒れ込んでしまう。
鈍い衝撃。
が、来ると思った。
しかしジュンタが下に倒れていたので俺はそれがクッションになってそこまで痛い思いはしなくて済むのだった。
ふにょん。
と、同時に。
そして、なんか胸を揉まれた。
不可抗力なんだろうけど、おい待てや。
「いってー」
「だ、大丈夫か!?」
「な、なんとかな……そっちも大丈夫だったか?」
「俺の方は大丈夫だけど」
特に相手は気にしていないらしい。
こちらとしては最近胸が……なので、そういう意味では少し複雑な気持ちになった。
……そうやって遊び、疲れ、そして座り込む。
持ってきたスポーツドリンクを浴びるように飲み、「はーっ」と思い切り息を吐く。
我ながら凄く子供っぽい事をやってるなと思った。
「ん……」
と、そこでジュンタがムズムズし始めた。
なんだ……?
「トイレ行ってくるわ」
「あー、おう。分かったー」
「立ちションクロスするかー?」
「しねーよっ」
〇
『高校一緒じゃん』
………………
…………
……
小学生の時の友達からメールを貰って、そしてどこの高校に行くのかとちょっとした世間話のつもりで尋ねてみたら、なんと同じ学校なのだそうだ。
俺の友達、久遠歩夢。
小学生の時の輝かしい思い出と共に会った、あの眩しい笑顔が印象的な俺の親友であり幼馴染。
あいつは小学校が別だったし、それから中学に上がってからは全然音沙汰なかったから今、何をしているのかまるで分からなかった。
でも基本的に友達っていうのはそういうものだと半ば諦めていた。
……また、あいつと会えるなんて。
そして、俺達は入学式の日に約束をして、朝早くに学校に待ち合わせして顔を合わせる事にした。
あいつはどんな風に成長したのだろう。
あいつはやんちゃで元気な奴だったから、ますます悪ガキになったのだろうか?
はたまた、流石にもう落ち着いているのだろうか?
分からない、けど楽しみなのは変わりない。
「あ、ジュンター」
と、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
俺は頬のにやけを抑えられず、そのままの表情で振り返り。
「ジュンタ、久しぶりだねっ」
なんかすっごい美少女が悪戯っぽい笑顔を浮かべてこちらを見てきたので、流石に顎が外れるかと思った。
「は?」
「じゃっじゃじゃーん、制服ー。どう、似合うじゃろー?」
くるん、とその場で回転。
スカートが持ち上がり、真っ白な太ももが覗く。
「ふふ、ジュンター。改めて、久しぶりだっ」
にや、と『彼女』は笑う。
「『俺』に会いたかったかーっ?」