TS転生美少女が男友達ムーブして幼馴染の情緒を破壊する話 作:寿司鮓
入学式というと青春の始まりというかもっとこうキラキラとするものをイメージしがちな気がするが、とはいえ何度経験しても体育館に集められ真面目な空気の中じっと身動きとらずに席に座っているというのは非常に退屈だった。
それを表に出さず真面目な表情を浮かべ続けるというのも才能の一つだと思う。
そして幸い私にはその才能があったので、はたから見て私が欠伸を噛みしめたくて仕方がないと内心思っているとは誰も想像できないだろう。
背筋をぴんと伸ばし前を見つめる。
ああ早くこの退屈な時間が早く終わってくれないかなと思いながら、耐え忍ぶ。
そうしてあまりにも苦痛な時間を一時間耐え、ようやく解放される。
さりげなく体を動かしてストレッチをしつつ教室に戻った私達は、とはいえそこから自由時間になる訳ではなくてホームルームが始まるのだった。
担当教師からの説明とか、諸々。
とはいえ担当教師の先生は、生徒がこの時間を退屈に思っている事は流石に熟知しているらしく、先に「とりあえず重要な事だけ喋って、今日は解散な」とだけ言って説明をさっさとして、そして本当にそこでホームルームを終了させたのだった。
そこからは本当に自由時間。
教室の生徒の内、何人かは既に下校をしていたし何人かは友達を作るために近くの人へと話しかけている。
そして私はというと、何人かの女子に捕まっていた。
「久遠さん、どこら辺住みなの?」
「あっ、意外と同じ方向なんだ」
「へーっ。結構オタクな感じ?」
「全然見えない、どちらかと言うと図書委員さんって感じの真面目系な」
「運動も得意なんだ、文武両道だ」
「せっかくだしここでグループ作っちゃう?」
で、あれよあれよという間に気づいたらチャットアプリでグループに入る事になっていた。
なんていうか、女子も三人集まれば姦しいとはまさにこの事だなと内心思う。
で、そこからこのメンバーで帰りにどこか寄って駄弁ろうみたいな話になりそうだったのだが、とはいえ今日の私はジュンタと一緒に帰るつもりだったので、先んじて断っておく事にする。
「ごめん、今日は幼馴染と帰るつもりなんだ」
私の言葉にみんな顔を見合わせ、それから「あー」と納得顔をする。
もしかしてなんか変な方向に勘繰られたのだろうかと嫌な予感がしたが、しかし「親しい仲にも礼儀ありだもんねっ」とフォローしてくれたのでほっと胸を撫で下ろす。
「そうそう。ていうか実は久しぶりにこの学校で再会した幼馴染なんだ。だからちょっと近況とかを報告し合いたいというか」
「そういう事なら、早く行った方が良いんじゃない? 待たせちゃうと悪いし」
「うん、ありがと。それじゃあ、今日はここらへんで」
私がその場から立ち去ると背後からみんなが「ばいばーい」と声を掛けてくれる。
良い人達だ、大切にしないと。
そして教室の外で待たせてしまっていたジュンタのところに走っていき、「ごめん、待たせた」と謝った。
「じゃ、帰ろっか」
「うん……あれ、一緒に帰れるのか?」
「いやいや、一応朝の時に約束したじゃん」
「別に俺に遠慮しなくても、女友達と一緒にお茶とかしなくて良いのか」
一丁前に配慮してきやがる。
「なーに? 私と一緒に帰るのが嫌だってのかー?」
「べ、別に嫌とは言ってないだろ」
「ならジュンタもそんな風に遠慮しないの。もうあの子達に今日は帰るって断ってきたんだから、今から戻ったらむしろ『何してんの?』って怒られちゃうよ」
「そ、そっか」
とりあえず強引に納得させられたので良かったという事にする。
全く、昔のこいつだったら友達と一緒に帰れるのならばもっと素直に喜びそうなのに、無駄に大人になりやがって。
友達相手に遠慮なんてしなくて良いのに。
「それにしても、ジュンタさー」
「なんだ?」
ふと、気になっていた事を尋ねてみる事にする。
「今って身長何センチくらいなの?」
「ん? んー、多分170センチくらいじゃないか?」
「結構でかいね、ちょっと見上げないといけないから首が痛い」
「それに関しては歩夢が小さいんじゃないか?」
「おう誰がチビだこら」
「蹴るな蹴るな」
「えいえい」
「殴るな殴るな」
「ちっ。ちょっと身長が高いからって調子に乗りやがってよー」
「理不尽過ぎる……」
呆れたようにこちらを見てくる。
仕方がないだろ、転生者として既に前世の男だった頃の感覚はないに等しいけど、とはいえなんとなく視点が低いような感覚は未だにずっとあるのだ。
転生してから今までずっと誰かを見上げてきたような気がするのだが、いまだに慣れない。
「まあでも、男女の身長差なんてこんなものなのかな」
「一応参考として聞いておくけど、歩夢は大体何センチくらいなんだ?」
「155センチ」
「え、あ。割と理想的じゃないか? ネットで見たけど」
「ネットで見たけど?」
「い、いや。何でもない」
「?」
「い、いや。話を戻すけど155センチって女子的に考えても割と平均的な身長なんじゃないか? だったら別に悩まなくても」
「……いや、ごめん。ちょっとサバ読んだ」
「え」
「多分150センチくらい、だと、思う。そこを下回るとは思いたく、ない」
「お、おお」
「一応毎日牛乳は飲んでいるんだけどねー」
「身長伸ばすために牛乳は迷信じゃないのか?」
「さあね? でもそれのお陰で体の方は健康体だと思うよ?」
ほら、と私は腕を広げて彼に体を見せつける。
すると何やら彼はすっと視線を外した。
「なぜそっぽを向く」
「……いやまあ、健康体だなって」
「?」
いやまあ、そうなんですけど。
はて?