薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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今回も残酷描写とは無縁です・・・。


第10話 妖夢の日常

あれから、人里に出向いた妖夢は、いつものように夕食の買い出しをこなしていた。

 

「はい、唐揚げ用の鶏肉だよ。 多いから結構重いよ」

 

「大丈夫です、ありがとうございます」

 

精肉屋の店主から肉の入った袋を渡され、手提げ鞄にしまう。

その他にも材料を複数買っており、鞄の中はいっぱいであった。

 

「大体、材料はこんなものかな・・・・・そうだ、少なくなってた調味料もあったんだ、ついでに買ってこうよう」

 

まだ妖夢の買い物が続く・・・。

それから半時程で、目的の買い出しを終わらせていた。

 

「買い忘れた物は無いかな・・・大丈夫ね、よし!」

 

買い物リストのチェックを済ませ帰路に着こうとすると、

 

「お姉ちゃん、こんにちは!」

 

「こんにちは!」

 

妖夢に元気よく挨拶をしてくる複数の子供達、それは寺子屋からの帰りの子供達であった。

 

「あっ、みんなこんにちは」

 

妖夢も笑顔で挨拶を返した。

 

「おっ、妖夢か。 今日も買い物か?」

 

「あっ、慧音さん・・・」

 

後ろから話しかけてきたのは、寺子屋の教師をする上白沢慧音。里の守護者の半獣である。

 

「確か、昨日も買い物に来ていなかったか?」

 

「は、はい、実は・・・・」

 

「…まあ、こんな所で立ち話も何だ、寺子屋に来ないか?」

 

「…良いんですか?・・・それじゃ、少しだけ・・・」

 

慧音の後を追い、妖夢は寺子屋へと向かった。

 

 

―――――――――――――――――――

 

寺子屋で妖夢はこれまでの経緯を話してた。

その話を慧音は、お茶を啜りながら静かに聞いていた。

 

「・・・・成る程な、主の我が儘で不要な買い出しとは、お前も苦労しているな・・・」

 

「本当に困ってしまいますよ・・・・、でも幽々子様の従者として無理難題でもやりこなすのが私の勤めだと思っていますので・・・」

 

毎日苦労していても、幽々子の為に尽くそうとする妖夢に、慧音は強い信念を感じた。

 

「そうか・・・、お前らしい答えだな。 そんな主でも心から尊敬しているんだな・・・」

 

「はい、私は幽々子様に命を預けていますから・・・」

 

そう言った妖夢は、穏やかな表情でお茶を啜った。

 

「だが、かと言って余り溜めすぎると体に良くないぞ?」

 

「それは、そうなのですが・・・」

 

「何なら、愚痴位は聞いてやるぞ?」

 

「えっ!? そんな、悪いですよ・・・」

 

妖夢は俯いてしまうが、慧音は妖夢の肩を叩いて言った。

 

「構わないさ、私にはこれ位しか出来ないからな」

 

「慧音さん・・・、ありがとうございます!」

 

慧音の言葉に妖夢は満面の笑顔で答えた。

 

「・・・・あっ、もうこんな時間だ。 そろそお暇しますね」

 

「そうか、もうそんな時間か・・・、表まで送ろう」

 

そう言って2人は立ち上がり寺子屋の外へ出た。

 

「今日は、ありがとうございました」

 

「私は少し話し相手になっただけだ、大した事はしてないぞ?」

 

「いえ、それでも多少はスッキリしましたから」

 

「そうか・・・、また何時でも来いよ」

 

「はいっ! では、失礼します」

 

妖夢がそう言って歩き出そうとした時だった。

 

「あやや!? 妖夢さんじゃないですか!?」

 

凄い強風と共に一名の鴉天狗が現れた。

 

「うわっ!? ・・・文さん?」

 

「はい! 毎度お馴染み、清く正しい射命丸です!」

 

「・・・・何しに来たんだ、天狗」

 

何時ものように元気な挨拶をした文だが、慧音は細目で睨んでいた。

 

「け、慧音さん・・・・何でそんな怖い顔をしてるんですか・・・?」

 

慧音の顔色を伺いながら文は尋ねた。

 

「また、どこかで盗撮でもしてたのではないかと思うと、誰だって警戒するだろ」

 

「そ、それは余りにも酷いってもんですよ・・・」

 

「過去に、そういう実績があるだけに仕方ないですね・・・」

 

慧音の言いように、ムッとした表情の文、それは仕方ない事だと納得して横で聞いている妖夢。

そして、慧音は思い出した様に文を問いただす。

 

「そう言えば…、この前の運動会、お前も来ていたよな?」

 

「うっ・・・、何故それを・・・」

 

慧音の言葉に文の顔色が変わった。

 

「私が知らないとでも思っていたのか? お前、その時子供を拐かそうとしなかったか?」

 

「拐かす? とんでもありません! 何故私がそんな事を・・・」

 

「では、何故あの時あの子を裏手に連れて行った?」

 

「あ、あれは、取材ですよ。あの子のちゃんとした感想を・・・・」

 

そこまで言いかけた瞬間、慧音は文の胸ぐらを掴み睨み付けた。

 

「・・・そんな必要があったのか?」

 

「ほ、本当です! 決してやましい事は無かったです!」

 

「・・・信用出来んな、お前はあの子に何を聞いたんだ?」

 

「それはですね、あの子の個人的な話や先生の恥ずかしい話とか・・・」

 

「(あっ、やっちゃった・・・)」

 

文の言葉に妖夢は溜め息を付く。

 

「ふーん・・・、運動会とは全く無縁な取材なんだな!」

 

「あっ、それはですね・・・」

 

「天誅ぅぅぅ!!!」

 

本音を漏らしてしまった文に、慧音は本気の頭突きを食らわせた。

 

「うぎゃぁぁぁ!?」

 

いきなりの頭突きに防ぎきれず、文は激痛でのたうち回っていた。

 

「あの子から話は聞いているんだぞ、幸いあの子は出来た子だから何事も無かったが、その話を聞いた時私は・・・!」

 

何とか怒りを抑えながら話してはいたが、その殺気は隠しきれるものではなく、文はのたうち回りながら完全に慌てふためいていた。

 

「・・・本当に、悪気は無かったんです。だから、どうかお許しを・・・」

 

「・・・全く、仕方ない・・・、だがなブン屋、もしそんな事を記事にしてみろ、今度の満月の夜にお前を殺しに行くからな・・・」

 

慧音は仁王立ちして、うずくまる文を睨み付けた。

その姿は満月の夜でもないのに頭に角が生えているようにも見え、文と妖夢はその姿に恐怖を感じた。

 

「は、はいっ! 決してそのような事は記事にはしません! 運動会の事だけを真面目に書きます!」

 

文は、必死に頭を下げた。

 

「(慧音さんは、怒らせないようにしようっと・・・)」

 

妖夢は平静を保っていたが、内心はかなりビビっていた。

 

「まあまあ慧音さん、そこら辺で抑えて・・・」

 

そこで、ようやく妖夢が慧音を宥めに入った。

 

「…しょうがない、妖夢に免じて今日はこれ位にしておいてやる」

 

ようやく慧音は怒りの矛を収めた。

 

「ふう、助かった・・・、妖夢さん、ありがとうございます!」

 

文は妖夢に礼を言う。

 

「い、いえ、私は何も・・・」

 

妖夢がそこまで言い掛けると、文は妖夢の荷物に目が止まった。

 

「ところで妖夢さん、その重そうな荷物は何ですか?」

 

「・・・ああ、これはですね、幽々子様が唐揚げが食べたいと強請られたので、その材料です」

 

「へぇ・・・、ではその材料とは・・・・」

 

「はい、鶏肉で・・・・・あっ・・・!」

 

そこまで言い掛けて、妖夢は気が付いた。

文の表情が曇っている事に。

 

「と、とり・・・肉・・・・?」

 

「(し、しまったぁぁ!)」

 

「(嗚呼、やってしまったな、妖夢・・・)」

 

妖夢は頭を抱え、慧音は腕を組んだまま溜め息をついた。

 

「・・・わ、私の前でそれを言いますか?」

 

「い、いや、これはですね・・・・幽々子様が食べたいとリクエストがあったからで、決して私の意志では・・・」

 

しかし、妖夢の説明に文は涙目で食ってかかった。

 

「貴女の意志なんてどうでもいいんです! よくもそんな野蛮な物を食べたいなんて言えましたね!? 幽々子さんは一体どういう神経をしてるんですか!?」

 

「そ、それは私に言われても・・・」

 

「大食い過ぎて、ついに味覚が狂ったんじゃないですか? そんなものを口にするなんて品格を疑います! お下品な・・・」

 

文がそこまで言った瞬間であった。

 

『カチッ』

 

妖夢の表情が変わり、荷物を置き白楼剣に手を掛けていた。

 

「・・・文さん、それ以上幽々子様の事を悪く言うなら、容赦しませんよ・・・」

 

その表情には、怒りが滲み出ていた。

 

「うっ・・・・」

 

流石の文も一瞬怯んだが、そこで止めようとはしなかった。

 

「・・・とにかく、こんな事は納得出来ません! 今度冥界に行って直接幽々子さんに抗議します!」

 

そう言って、文は猛スピードで飛んで行ってしまった。

その様子を2人は唖然として見ていた。

 

「・・・流石に、鶏肉はまずかったと思うぞ・・・」

 

バツが悪そうに慧音が呟いた。

 

「そ、そうですね・・・配慮が足りませんでした。・・・でも、幽々子様の事を悪く言われたのは聞き捨てならなくて・・・」

 

複雑な表情をする表情に慧音は肩を叩いて言った。

 

「そこは気にする事は無いと思うぞ、いくら頭に来ていたとはいえ、あの言い方は酷かったからな」

 

「そう言って貰えると助かります・・・」

 

妖夢の返事に慧音は笑みを浮かべた。

 

「あの鴉天狗にも困ったものだ・・・・って、それより、まだ帰らなくて大丈夫か?」

 

慧音が尋ねると妖夢の表情が青ざめる。

 

「・・・あっ、そうだった! では失礼します!」

 

慌てて飛び立って行った妖夢を眺める慧音。

しかし、ふと寺子屋の玄関に目をやると楼観剣が置きっぱなしになっているのに気付いた。

 

「お、おい妖夢! 楼観剣を忘れているぞ? 大事なものじゃないのかー!?」

 

慧音は楼観剣を片手に、急いで妖夢の後を追いかけて行った。

 

 

――――――――――――――――――

 

「妖夢、今日の唐揚げは、とっても美味しかったわ♪」

 

そう言って、大量の唐揚げを平らげた幽々子は満面の笑みを浮かべた。

 

「ふぅ・・・、それは良かったです・・・」

 

それを見た妖夢は、安堵の表情を浮かべた。

 

 

――あれから、忘れた楼観剣を慧音から渡された序でに少しだけ説教を受け、慌てて白玉楼に帰って他の幽霊達と直ぐに夕食の支度をして、時間ギリギリで間に合わせたのであった。

 

「あらっ、どうしたの? 顔色が悪いわよ?」

 

「そ、そんな事はありません! 少し疲れただけです・・・」

 

「そう? なら良いけど・・・・、ねぇ、妖夢」

 

「は、はい、何でしょう?」

 

「今日は、ありがとね♪」

 

「・・・っ! はい!」

 

そんな幽々子の笑顔を見ていると、1日の疲れが癒される思いがして、妖夢もいつの間にか笑顔になっていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

夕食後、片付けを終えた妖夢は自室に向かっていた。

 

「やっと終わった・・・、今日は疲れた・・・」

 

流石の妖夢も疲れを隠せなかった。

 

「一休みしたら、お風呂に入ろうっと・・・」

 

そうして自室に入ったが、真っ暗で足元が見えず、灯りを付けようとして手探りをしていた。

 

「ええっと、灯りは・・・・うわっ!?」

 

何かに蹴躓いて転んでしまう。

 

「いたたた・・・・、何が置いてあるの?」

 

暗がりの中を再び立ち上がり、部屋の明かりを点けた。

 

「何も置いた記憶は無いんだけど・・・・えっ?」

 

明るくなった部屋の中で妖夢が見たのは、一つの立派な鞄であった。

 

「・・・何これ? 私、こんなの知らないわよ・・・?」

 

妖夢は、楼観剣と白楼剣を置いて鞄の前に座った。

 

「もしかして、また幽々子様が・・・?」

 

妖夢は真っ先に幽々子を疑う。

 

「・・・でも、昼間の様子だと、本当に違うのかな・・・?」

 

昼間のやり取りを思い出しながら悩む妖夢。

 

「一体何が入ってるのかな? 何だか怖いんだけど・・・」

 

半霊なのに幽霊や怖いものが苦手な妖夢は、少し体が震えていた。

 

「・・・でも、開けて見ないと分からないよね?」

 

そう呟いて、恐る恐る鞄に手を掛けた。

 

「ゆっ、ゆっくりと・・・・」

 

『ギギギ・・・』っという音と共に静かに鞄を蓋を開けていくと、

 

「こ・・・、これは・・・・!」

 

中身を見た妖夢は、驚きを隠せなかった。

 

鞄の中には、一体の人形が眠るように横たわっていたのであった・・・・。

 




鈍亀展開は仕様です^^;

でも、これが後々繋がって行きます・・・多分( ̄∀ ̄)
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