薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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ボクっ子登場です!

今回も残酷描写はありません。


第11話 蒼星石

「に、人形・・・・よね?」

 

鞄の中で横たわっている人形は、袖口の長い白いブラウスに蒼いケープとニッカーボッカー風な半ズボン、髪は赤みがかった焦げ茶色のボブショートカットに、シルクハットを被っていた。

 

「す、凄い・・・、良く出来てるなぁ・・・」

 

妖夢は、その人形を抱き上げて凝視した。

 

「服装といい身体の造りといい、とても完成度が高い。 アリスさんの人形より凄いかも・・・」

 

ふと、アリスの上海人形を思い出す妖夢。

 

「でも、これはアリスさんの作風では無いし・・・、こういうのって、アンティークドールって言ったっけ?」

 

見れば見るほど凝った作りに妖夢は感心していた。

 

「本当に生きているようね、怖い位だわ・・・」

 

そう呟きながら、再び人形を鞄へと戻した。

そして、ふと鞄の隅を見ると、一つのゼンマイがある事に気が付いた。

 

「ゼンマイって事は・・・、動くの!? ほ、本当に呪いの人形だったらどいしよう!?」

 

ゼンマイを見ただけなのに、妖夢は恐怖の念に駆られた。

 

「ゆ、幽々子様に、幽々子様に伝えなきゃ!」

 

妖夢は慌てて部屋を飛び出し、幽々子の部屋へと飛んでいった。

 

「幽々子様っ!」

 

「よ、妖夢!? ・・・って、うわぁっ!!」

 

(ドテンっ!)

 

いきなり妖夢が襖を開けた時、幽々子は寝間着に着替えようとして着物を脱ごうとしていた時であった。

突然の事に驚いた幽々子は、着物の裾を踏んでしまい、思いきり顔面から転んでしまった。

その際、かなりの鈍い音がした。

 

「・・・い、いったぁーい・・・・」

 

顔を抑え悶絶する幽々子。

 

「あ、あの・・・、幽々子様・・・?」

 

その様子を見た妖夢の顔は青ざめていた。

 

「・・・こ・・・・この・・・、バカ妖夢ぅぅぅ!!」

 

「みょ―――んっ!?」

 

痛みを堪えながらも怒り浸透の幽々子は、妖夢に扇子を投げつけた。

その扇子は妖夢の顔面に直撃したのであった。

 

そこから、幽々子の怒涛の説教が始まったのは言うまでもない。

 

 

―――――――――――――――――――

 

「・・・もう、部屋に入って来る時は静かに入って来なさい!」

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

幽々子の説教を、妖夢は正座して落ち込みながら聞いていた。

 

「・・・はぁ、もういいわ。 ところで一体どうしたの?」

 

「・・・そ、そうでした! 幽々子様に見て欲しいものがありまして、一緒に部屋に来て下さい!」

 

「えっ!? ちょっと、妖夢!?」

 

妖夢に手を引っ張られた幽々子は、妖夢の部屋へと向かった。

 

「幽々子様、これです!」

 

部屋に入り妖夢が指差した先には、鞄の中で横たわっている人形があった。

 

「これって・・・人形なの?」

 

人形とは思えない程のリアルさに、幽々子は鞄の前に座り、まじまじと凝視した。

 

「私も、今まで色々な人形を見てきたけど、これほど凝った作りの人形は初めて見たわ」

 

「私も最初は驚きました。それとこの人形、動くみたいなのです・・・」

 

幽々子の横に座り、妖夢が指差したところにはゼンマイがあった。

 

「・・・それで、これはいつからあったの?」

 

「さあ・・・、私が部屋に戻ったら、ここに置かれてました。 幽々子様は、ご存知じゃ無いので?」

 

「私は知らないわ。 でも、誰かが侵入した形跡は無かったし・・・」

 

「うーん・・・・」

 

どこから来たのか全く見当が付かず、2人は首を傾げた。

幽々子も、その人形を抱き上げて隈無く見回していると、昼間の出来事を思い出した。

 

「・・・もしかして、昼間の手紙に関係あるんじゃないかしら?」

 

「昼間のって・・・、あのローゼンメイデンが何かと書かれた手紙ですか?」

 

妖夢は、ハッと手紙の事を思い出した。

 

「妖夢、その手紙は?」

 

「はい、あれは引き出しの中に・・・」

 

そう言って、妖夢は封筒を閉まった引き出しを開けた。

 

「・・・あれっ? 無い? 封筒が無い!? 確かにここに入れて置いたのに・・・」

 

それを見た幽々子は、怪訝な表情で見つめた。

 

「・・・本当に、そこに?」

 

「はい! 確かにここに入れました」

 

妖夢の返答は嘘をついているようには思えなかった。

 

「(まさか・・・、本当に回収されたの・・・?)」

 

考え込む幽々子を、妖夢は不安そうに見つめた。

 

「あ、あの・・・、幽々子様?」

 

「・・・はっ!? ご、ごめんなさい・・・」

 

妖夢の呼び掛けに、我に帰る幽々子。

 

「・・・考えていても仕方ないわ。妖夢、この人形の螺子を巻いちゃいましょう♪」

 

先程とは打って変わって笑顔で妖夢に言った。

 

「えっ!? 本当に巻くんですか?」

 

突然の変わりように驚きを隠せない妖夢。

 

「だって、昼間も言ったけど、こういうのはやってみなければ分からないじゃない?」

 

「それはそうですが・・・、もしも、呪いの類だったらどうするんですか?」

 

「その時は、霊夢にでもお願いして退治してもらうわよ。 もしくは紫に頼むか・・・」

 

「そ、そんなのでいいのでしょうか・・・」

 

幽々子の言葉に疑問を感じる妖夢。

 

「とにかく、巻いてみましょう。 それで全て分かるわ」

 

「・・・分かりました、幽々子様がそう仰るのなら・・・」

 

妖夢は渋々人形の螺子を巻く事を受諾して、幽々子から人形を受け取った。

 

「ええっと、螺子を巻く穴はっと・・・、これかな?」

 

人形の背中にあった穴にゼンマイを差し込む。

 

「さあ、どうなるのかしらねぇ? 何だかドキドキするわ♪」

 

不安げな妖夢とは裏腹に、幽々子はとても楽しそうであった。

 

カチ カチ カチ・・・・・

 

 

部屋中に螺子を巻く音が響く。

 

「・・・・これでよしっと」

 

螺子を巻き終えて、人形を凝視する2人。

すると、蒼い光と共に人形がピクピクと動き出した。

 

「・・・えっ!? えぇぇっ!?」

 

突然の事に妖夢は驚き、人形を放り投げてしまう。

その人形は、蒼い光を放ちながらゆっくりと立ち上がった。

 

「ち、ちょっと幽々子様! ここここれは・・・!?」

 

「お、落ち着きなさい妖夢! ま、まだ様子を・・・」

 

恐怖で幽々子にしがみつく妖夢、幽々子は一見冷静に見えたが、内心はかなり動揺していた。

 

「「(ま、まさか、本当に呪いの・・・)」」

 

2人が、そう思っていた時であった。

 

人形の目が開いた。

 

その目は、右目がエメラルド色で左目がルビー色のオッドアイであった。

そして、その人形は2人に話し掛けてきた。

 

「・・・僕の螺子を巻いたのは・・・」

 

「えっ!?人形が喋った!?」

 

妖夢は更に驚き、幽々子は目を大きく見開いていた。

 

「・・・螺子を巻いたのは、どっちなの?」

 

「えっ、えっと・・・・」

 

突然の事に言葉を詰まらせる妖夢。

 

「・・・ほらっ、妖夢!」

 

見かねた幽々子が妖夢の背中を軽く叩いた。

 

「あ、あの・・・その・・・・、あ、あなたの螺子を巻いたのは・・・、私です!」

 

意を決した妖夢が人形に言った。

 

「貴女が僕の螺子を巻いてくれたんだね」

 

そう言って人形は微笑んでいた。

 

「・・・ところで、貴女は?」

 

幽々子が人形に尋ねた。

 

「僕は蒼星石と言います。ローゼンメイデンの第4ドールです」

 

蒼星石と名乗った人形は、2人に自己紹介をした。

 

「ローゼンメイデン・・・、やっぱり、あの手紙に書いてあった事は本当だったんだ・・・」

 

妖夢は小さく呟いた。

 

「あの・・・、お二人は?」

 

 

「・・・あっ、そうだった、私は魂魄妖夢、主人である西行寺幽々子様の剣術指南役兼白玉楼の庭師です」

 

「貴女も庭師なんですか?」

 

蒼星石は、少し驚いたように妖夢に聞いた。

 

「はい、この白玉楼の庭は私が手入れをしているんですよ」

 

「そうなんだ・・・、実は僕も表向きは庭師なんです」

 

「あなたも? これって偶然なんでしょうか・・・?」

 

「いえ、これは僕が来るべき所に来たという事になるんだと思う」

 

「そ、そうですか・・・」

 

蒼星石の力強い返答に妖夢は少し俯いた。

 

「・・・それから、貴女は?」

 

蒼星石が幽々子の方を向いて聞いた。

 

「私は西行寺幽々子、この白玉楼の管理者よ」

 

幽々子は笑みを浮かべて答える。

 

「貴女が、ここの御主人なんですね、よろしくお願いします」

 

蒼星石は丁寧にお辞儀をした。

 

「そんなに改まらなくていいわ、こうやって此処に来たのも何かの導きでしょうから、よろしくね、蒼星石♪」

 

「はい、こちらこそ!」

 

再びお辞儀をする蒼星石。

幽々子は、蒼星石を気に入った様子であった。

 

「ところで貴女・・・、私達を見て、何か気が付いた事は無い?」

 

「えっ? それって一体・・・」

 

幽々子の質問の真意が分からず、蒼星石は首を傾げる。

 

「私達はね・・・、人間じゃないのよ?」

 

「えっ!? だって目の前で普通に・・・」

 

幽々子に人間で無いことを告げられた蒼星石は、戸惑いを隠せない。

 

「本当よ、それが証拠に・・・」

 

そう言って、幽々子は自分の周りに浮遊している幽霊のを指差した。

 

「それじゃ、本当に・・・」

 

蒼星石の顔色が変わる。

 

「・・・ちなみに、私も普通の人間じゃ無いんですよ、半人半霊です」

 

そう言って、妖夢は自分の半霊を前に出して見せた。

 

「そ、そんな・・・、お二人共人間じゃない? それじゃ、一体此処は何処なの?」

 

不安に駆られた蒼星石が尋ねると、幽々子が答えた。

 

「ここはね・・・、冥界なの」

 

「め、冥界!?」

 

蒼星石は思わず声を上げてしまう。

 

「フフフ・・・、大丈夫よ、冥界と言ってもそんなに怖い所じゃないわよ」

 

幽々子は笑いながら言った。

妖夢もそれに続いて口を開いた。

 

「ここは、幻想郷に近い場所ですからね」

 

「・・・幻想郷?」

 

「ああ、先ずはそこから説明しましょう。

幻想郷というのは、結界で隔離された土地の事で、外の世界で失われ『幻想になった』ものが集まる場所なんです。外の世界で忘れられ幻想になった生き物が集まり、またそのような道具が流れ込む場所であるんです」

 

妖夢の説明に蒼星石の困惑は更に深まる。

 

「それって・・・、一体どういう・・・」

 

「幻想郷は、人間だけで無く、妖怪や妖精、魔法使いも暮らす場所なんです。 私達のような幽霊や亡霊、神様に死神も居ますよ」

 

「え・・・・、これって本当に現実の世界なの・・・?」

 

動揺を隠せない蒼星石に幽々子が続けた。

 

「信じられないでしょうけど、本当の事よ。 妖怪達によって築き上げられた幻想郷は、現実に存在するわ」

 

「・・・ぼ、僕は、何てところに来てしまったんだ・・・」

 

幽々子から告げられた信じられないような言葉に、蒼星石は膝から崩れ落ちた。

 

「そんなに気に病む事は無いわよ」

 

「・・・でも、ここは僕が今まで見てきた世界とは、明らかに違う場所だから・・・」

 

「大丈夫よ♪ 冥界も幻想郷も貴女が思う程怖いところじゃないわ」

 

「(い、いや、幽々子様。幻想郷は意外に怖い所ですよ・・・)」

 

そんな事をサラッと言った幽々子に対して、妖夢は心の中で突っ込んだ。

 

「それに・・・、貴女、本当は強いんでしょ?」

 

「・・・・えっ!?」

 

「何となく分かるわ、貴女はこれまで幾多の困難や修羅場をくぐり抜けて来たのね。 貴女は一体どんな宿命を背負わされたというの?」

 

先程までの飄々とした雰囲気とは一転して、扇子で顔を隠してはいるが目つきは鋭いものになっていた。

 

「・・・ぼ・・・、僕は・・・・」

 

言葉に詰まる蒼星石に、妖夢が静かに問うた。

 

「・・・蒼星石、あなたは何故此処に来たのですか? ちゃんとした理由があるのよね?」

 

「・・・・・っ」

 

妖夢の問いかけに、蒼星石は一瞬躊躇ったが、直ぐに決心しかたのように立ち上がり、2人に向き直った。

 

「僕が、此処に来た理由・・・・それは・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

「アリスゲームをする為だ」

 

 

「ア、アリス・・・ゲーム・・・?」

 

蒼星石が言ったアリスゲームの意味を、そして、この人形が背負った宿命を、この時の2人はまだ知る由も無かった・・・。

 




ギャグとシリアスのバランスが難しいです・・・。
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