薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
多少の残酷描写もあります。
「アリスゲームというのは、私達ローゼンメイデンがお互いのローザミスティカを奪い合うゲームの事ですぅ。
これに勝った者はアリスに一方近づく事が出来るですが、、負けた者は…」
「…負けた者は?」
「…負けた者は、只の人形になって動くことも話す事も出来なるなり、『迷子の魂』となって無意識の海に漂うとされているですぅ…」
「それじゃ…、お前が私の所に来たのも…」
「そう、アリスゲームの為ですぅ。 でも、翠星石は…」
そこまで離すと、翠星石は俯き拳を握りしめた。
「出来ればアリスゲームはしなくないですぅ、同じ姉妹同士で争うなんて翠星石はしたくない!」
「だが、避けては通れない・・・そうなんだな?」
「そうです、これはお父さまが私達ローゼンメイデンに与えられたら宿命、アリスになるための…」
アリスになるためのアリスゲーム、だが翠星石の話をイマイチ理解出来ていない妹紅。
「なぁ、そう言えばローザミスティカっていうのは何なんだ? そもそもアリスって言うのは何なんだ?」
妹紅の問いに翠星石は静かに答えた。
「ローザミスティカっていうのは、私達ローゼンメイデンの原動力、命の源ですぅ。
そして、アリスとはお父さまの中だけに生きる夢の少女。 どんな花より気高くてどんな宝石よりも無垢で一点の穢れも無い。
世界中のどんな少女でも敵わない程の至高の美しさを持った少女。
そのアリスを追い求め形にしようとしたのが、私達薔薇乙女(ローゼンメイデン)の人形達なのですぅ…」
翠星石の話に妹紅の表情は曇った。
「それ…、余りにもとんでもない話に聞こえるな・・・・そこまで聞く限りでは、それは達成出来なかったと見たが?」
「そうです…、何体作っても私達は誰もアリスに届かなかったですぅ…。でも、アリスゲームに勝って全てのローザミスティカを集めれば、アリスになる事が出来る…、それがお父さまの…」
「…ローゼンメイデンって何体居るんだ?」
「翠星石を含めて七体ですぅ」
「…何だよそれ・・・」
「・・・えっ?」
妹紅の雰囲気が変わった事に翠星石は少し驚いた。
「お前の父親は、お前達にそんな事をさせる為に幻想郷に送り込んで来たと言うのか? アリスとかいう、それこそ幻想みたいなのを追求して、誰も届かなかったからアリスゲームをさせて、勝てばアリスになれる? そんな保証も無いのに、ふざけた事言ってんじゃねえよ!」
「に、人間・・・!」
「私は、お前と会って間もないから全ての事は分からない。 でも、自分が作った人形達にそんな事をさせるなんて、お前らの事何だと思ってるんだよ…、悲し過ぎるだろ…」
妹紅の表情は、とても悲痛なものであった。
「人間…、翠星石は喧嘩や争いは嫌いです、アリスゲームも出来れば避けたいですぅ。 でも、お父さまが望まれる以上、それは避けられない道なんです…」
翠星石は目を閉じ、俯きながら語った。
「・・・・・っ」
それに妹紅は何も言う事が出来なかった。
すると、翠星石は顔を上げ逆に聞いてきた。
「…さあ、翠星石の話は終わりですぅ、今度はお前の話をしやがれですぅ」
「…えっ!? 私の?」
「そうですぅ、これから翠星石のマスターになるヤツの事はちゃんと知っておかんとダメですからね!」
「…マスター?」
「それは後で説明してやるから、先ずはこの幻想郷って場所の事を教えやがれですぅ!」
「ああ、そこからか…。 幻想郷ってのは日本の山奥にあると言われる土地で、今は結界で隔離されているんだ。 ここは外の世界で忘れ去られた生き物やモノが流れ着く場所なんだ。 私もかつてはそうやって辿り着いたんだよ」
「忘れ去られたモノって言うのは、具体的にはどういうものですか?」
「そうだな…、一番多いのが妖怪。妖怪と言っても色々いて、本能で動く下級妖怪、吸血鬼、鬼、天狗、妖獣、覚、河童等と居てな、他にも妖精や魔法使いに幽霊と亡霊、仙人や死神や神様なんかもいて、幻想郷には多種多様なヤツが混雑してるんだ」
「…えっ!? 妖怪?妖精?幽霊? そんなバカな・・・信じられねぇですぅ!」
妹紅の話を聞いて、翠星石は驚きながら否定していた。
「最初は眉唾ものと思うかも知れないが、幻想郷中歩き回ってみな、それが良く分かると思うよ」
「なんか…、とんでもねえ所に送り込まれた気がしてきたですぅ…」
妹紅の話に翠星石は完全に引いてしまっていた。
「ローゼンメイデンっていう存在も、一種の妖怪にも思えるのだが…」
「翠星石は妖怪じゃないですぅ! お父さまに作られた誇り高きローゼンメイデンですぅ! 勘違いするなですぅ!」
「意外とそのお父さまが、妖怪なのかもな…」
捲くし立てる翠星石に、妹紅はボソッと呟いた。
「それで、人間。 お前はさっき不老不死とか言っていたですが、どういう事ですか?」
「そ、それは・・・」
翠星石の問いに、妹紅は何故か応えずらそうにしていた。
「私がこうなったのは、とある薬を飲んだせいなんだ」
「薬?」
「…なぁ、この話は止めて他の話題にしないか?」
何故か妹紅は話を反らそうとした。
「何故ですか? 翠星石の事はちゃんと教えてやったのに、お前は何も話さないなんて不公平ですぅ!」
「…話したく無いんだ!」
「・・・・っ!」
妹紅は思わず怒鳴ってしまい、翠星石は怯んでしまう。
「…悪い、つい怒鳴っちまった…」
「に、人間・・・」
翠星石は一瞬考え、直ぐに妹紅に切り出した。
「お前は、一体何を隠そうとしてるですか? それ程までに後ろめたい事があるのですか?」
「・・・・・・」
「何故黙ってるですか? 黙ってたって何も分からないですよ?」
「・・・・・っ」
翠星石の問い掛けに、妹紅は何も発さず黙り込んでいた。
何も話さない妹紅に翠星石の怒気が高まってくる。
「何とか言いやがれですぅ! この白髪ババア!!」
「・・・・・っ」
それでも、妹紅は黙ったままだった。
「このぉ・・・っ! もう我慢ならんです! …出て来るです、スィドリーム!」
痺れを切らせた翠星石は、強硬手段に打って出た。
「な…、何だ!?」
「お前が何も話さないなら、お前の夢の中で見させて貰うですぅ!」
「な、何をするんだ!?」
「夢の扉を開くです!」
翠星石がそう言うと、彼女の人口精霊『スィドリーム』が、妹紅の頭上で緑色に瞬き出した。
「な・・・、何だ・・・・急に・・・気が・・・・遠・・のく・・・」
その光を見た妹紅を意識を手放した。
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「・・・っ!? こ、ここは・・・?」
「…やっと目が覚めたですか? 手の掛かる野郎ですぅ」
妹紅は翠星石の如雨露から水を掛けられて無理矢理起こされた。
「何て薄暗くてジメジメした場所ですか…、翠星石まで鬱になってくるですぅ」
そこは、薄暗い森の奥底のような所であった。
「…ていうか、お前が連れて来たんだろ!?」
「この世界はお前の夢、お前の心を映し出した世界なのです…」
「これが、私の夢…。 嘘だろ・・・?」
翠星石の言葉に、妹紅は驚愕しながらも信じられない様子であった。
「ええっと、あれは・・・」
翠星石は何かを探しているようであった。
「…あっ、あったですぅ」
「何がだよ?」
「お前の、『樹』ですよ・・・・って、デカっ!?」
「へっ!?」
翠星石が驚愕している方を妹紅も見ると、そこには天まで聳える『樹』があった。
「あれが…、私の樹?」
「そう、あの樹はお前自身なのですよ」
翠星石は、そこまで言うとその樹の側まで行き再び語り出した。
「誰でも夢の何処かで『樹』を持っていて育てているのです。
夢の主が樹となって枝葉を伸ばして、その過程で心が創られてゆくのです」
「この樹が、私だと言うのか…」
そう言って、妹紅はその『樹』を見上げた。
「今まで、世界樹以外でこんなに大きい『樹』を見たのは初めてですぅ。 不老不死っていうのは本当だったんですね…、でも…」
「・・・でも?」
「こんなに大きいのに、幹が細いです。 釣り合いが取れてなくて、折れないのが不思議な位ですぅ」
「…そうなのか?」
これだけ大きいのに幹は細い、その意味を妹紅はまだ理解出来ていなかった。
すると、後ろから何か声が聞こえた。
「何だ・・・?」
「さあ、始まったですね。 お前の口から語られなかった事、見させて貰うですぅ」
「えっ!?」
妹紅が振り返ると、そこには大きな屋敷と多くの人々が映し出されていた。
あたかも、3D映画のようにリアルなものであった。
それは、何処かの貴族の住居らしく、とても豪華な造りで多くの人々が行き交っていた。
「ふーん…、相当昔って感じですねー、お前はこんな立派な所に住んでたですか?」
「昔はな・・・」
「お前の家族は、相当身分が高かったらしいですね、羨ましいですぅ、こういう所で翠星石も目覚めたかったですぅ!」
かつての妹紅は、天皇直系の家系であり、何不自由なく暮らしていた。
1人騒いでいる翠星石の横では、冴えない表情の妹紅がいた。
すると、その中に見覚えのある人物が出てきた。
「・・・あれは!」
「んっ? あれはお前ですね、髪も黒くて若々しいですぅ。
今より女らしくて可愛いじゃないですか!」
翠星石ははしゃいでいるが、妹紅の表情は変わらず冴えないものであった。
そして、突然画像が変わり、先程とは違う何処かの屋敷での広い部屋内の画像。
そこには、一人の男性と一人の女性の姿が映されていた。
「・・・っ! 父上!?」
「えっ? あれが人間のお父様ですか? なかなかの良い男じゃないですか、それから相手の女も美人ですねぇ…」
翠星石がそう呟いている間にも事が進んでいた。
その男は、その女に何かを話し掛けており、文を渡そうとしていた。
「この様子は…、求婚ですか!? コイツの母親も居るのに何を考えてやがるですか!」
一人憤る翠星石。
すると、その女はその男に対して何かを要求してきた。
それは、蓬莱の玉の枝が欲しいというとんでもない難題であった。
「うわぁ…、何かとんでもねえ難題をふっかけて来たですねぇ、あの女。 ていうか、蓬莱の玉の枝って何ですか?」
翠星石は妹紅を見て尋ねたが、妹紅は何も答えなかった。
「父上…、止めて下さい…!」
それだけ言った妹紅は、歯痒さに拳を握りしめた。
その男は、その女の願いを叶える為に怪我を負ってまで必死でそれを探したが、結局見つかる事は無かった。
そして、そうしている内にその女は他の男を求婚相手に選んだ、他にも求婚相手が居たのだ。
しかも、それは自分が一番の目当ての物を手に入れられそうなその男を最初から選ぶつもりで、他の者は眼中に無くただ弄ばれただけであった。
最初から無理難題と分かっていた周りの者達は、弄ばれるだけ弄ばれ、ボロ布のように捨てられた男を見て大いに笑った。
「これは酷いですぅ…、この女、なかなかの強か者ですね…、とんでもねえ悪女ですぅ!」
「・・・・っ」
流石の翠星石も、これには眉を顰めてしまう。
妹紅は黙ってそれを見ていた。
そして、再び画面が変わり、屋敷内の部屋に妹紅の父親らしき男が一人いた。
「あっ…、父上…」
男は短刀を手にしていた。
『これだけ大恥を掻かされ、これ以上の屈辱を抱えて生きてはいけない…』
「ま、まさか…」
これから起こる事態を予測した翠星石の顔が青ざめる。
『こんな愚かな父を…、許してくれ…』
それだけを言い残し自分の首に刃物を押し付けた。
「父上――――!!!!」
妹紅の叫びだけが、虚しく木霊した。
男の首から大量の血が吹き出し部屋を赤く染める。
そして、力無く倒れ込み果てた。
「そ、そんな…、何も自刃しなくたって…」
翠星石は衝撃の余り、へたり込んでしまった。
「ち、父上…、アイツのせいで…、 く、くそぉぉぉぉ!!!!」
妹紅は空に向かって絶叫し、大粒の涙を流していた。
しかし、悲劇はこれで終わりでは無かった。
続く・・・・。