薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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新たなる展開が始まります!


第17話 紅魔館

ある日の昼下がり、紅魔館のメイド長十六夜咲夜はいつもの様に、台所で夕食に向け支度をしていた。

 

「夕食の支度は大体こんなもので良いかしらね?」

 

周囲を見回し、何か抜けていないかを確認する。

 

「一応は大丈夫そうね、後の準備は任せるわね、私は館内を見回って来るから」

 

「はい、分かりました」

 

調理担当のメイド妖精に一旦その場を任せ、咲夜は館内の見回りに出た。

 

時を止めて移動して、能力を解除して気になる箇所のチェック、そしてまた時を止めて移動、それがメイド長である咲夜の日課であった。

 

「…館内の掃除は大丈夫そうね、まだ時間はあるし外に行こうかしら」

 

そして、正面玄関から外に出ると、庭の花々が目に入った。

 

「綺麗ね…、流石は美鈴が手塩にかけてるだけはあるわね」

 

咲夜は、しばしその花々に見とれていた。

 

「春真っ盛りね…」

 

そんな事を思っていると、向こうから声がした。

 

「あっ、丁度良かった。 咲夜さーん!」

 

「美鈴? どうしたの?」

 

紅魔館の門番、紅 美鈴が咲夜の方へ駆け寄って来た。

 

「咲夜さん、手紙が来てましたよ。 どうやらお嬢様宛てみたいなのですが」

 

「お嬢様宛て?」

 

美鈴が見せた封筒には、確かに『レミリア・スカーレット様』とだけ書かれていた。

 

「送り主は書かれていないわね、これは誰が届けてきたの?」

 

「えっ…、それは…その……」

 

明らかに美鈴の目が泳いでいた。

 

「まさか…、『居眠りしていたから気付かなかった』っとか言うんじゃ無いでしょうねえ…?」

 

咲夜の目つきが鋭くなる。

 

「い、いやっ…、ちゃんと見張りはしてましたよ!?」

 

「だったら、誰が持ってきたのか分かるでしょ?」

 

「そ、それがですね…、その……」

 

「やっぱり、そうなのか…」

 

咲夜は、徐に懐からナイフを手に取った。

 

「何回目? これを言わせるのは?」

 

「ご、ご勘弁を……って、ひぇっ!?」

 

次の瞬間には、美鈴の足下には数本のナイフが刺さっていた。

 

「ちゃんと見張りはしてなきゃダメでしょ? こんな事があるんだから」

 

口では笑いながら言っていたが、目は全く笑っていなかった。

 

「す、すみません! どうかこれ以上は…」

 

「分かったなら、さっさと戻る!」

 

「はい!直ぐに戻ります!」

 

美鈴が慌てて門へ戻ろうとするが、思だしたように直ぐに咲夜が呼び止める。

 

「あっ、待って美鈴、さっきの手紙は私が預かっておくわ。 お嬢様が起きたら渡しておくから」

 

「はい、分かりました。それじゃ、お願いしますね」

 

そう言って、美鈴は咲夜にその封筒を渡した。

 

「それから、美鈴」

 

「は、はい…」

 

「夕食、無いかもしれないわよ?」

 

「えぇぇ!? そんなぁ!」

 

「お嬢様次第ね、機嫌が良ければ良いけど、悪ければ可能性大ね」

 

「咲夜さん、それだけは何とか…」

 

「一応、悪いようには言わないけど、期待はしないでちょうだい」

 

「うぅぅ……」

 

美鈴は、うなだれながら門へと戻って行った。

 

「さて、私も戻ろうとかしらね」

 

美鈴が門へ戻ったのを確認した咲夜は、館へと入って行った。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

陽がすっかり落ちた頃、紅魔館の主、レミリア・スカーレットが目を覚ます。

 

「う〜ん、今日も良く寝たわ…」

 

背伸びをしながら起き上がると 、側の小テーブルに置いてある呼鈴を鳴らした。

 

「おはようございます、お嬢様」

 

すると、突如そこに咲夜が現れる。

 

「おはよう咲夜、紅茶を入れてちょうだい」

 

「畏まりました」

 

そう言って、既に準備しておいたティーセットを丸テーブルの上に置き、ティーカップに紅茶を注いだ。

 

「紅茶が入りましたよ、お嬢様」

 

「そこに置いておいてちょうだい」

 

目覚めて間もないせいか、レミリアはまだぼうっとした表情であった。

 

「お食事はどうなされます?」

 

咲夜がレミリアに尋ねる。

 

「…此処で食べようかしら?」

 

目を擦りながらレミリアが答える。

 

「よろしいですか? ちなみに今食堂にはパチュリー様がお越しになってますが?」

 

「パチェが? 珍しいわね、時間が重なるなんて…。それじゃ、私も食堂に行くわ」

 

「畏まりました、では私は先に失礼します」

 

「ええ、先に行っててちょうだい」

 

咲夜はレミリアの返答を聞くと、扉の方を向き部屋を出ようとするが、思だしたかの様に、再びレミリアに向き直す。

 

「あっ! そうでした、お嬢様」

 

「…何?」

 

「今日の昼間に、お嬢様宛てのお手紙が届いてましたわ」

 

そう言って、咲夜は懐から例の封筒を取り出しレミリアに渡す。

 

「…私宛て?」

 

レミリアはその封筒を見るが、自分の名前以外は何も書かれていない。

 

「中身は見たの?」

 

「いいえ、お嬢様宛ての手紙を覗くような失礼な事は致しませんわ」

 

「フフッ、咲夜らしいわね…。 じゃぁ、誰が届けて来たの?」

 

「それが…、分かりません……」

 

咲夜が答え辛そうに言った。

 

「……美鈴ね?」

 

「はい…、大体お察しの通りです」

 

美鈴が居眠りをしていて気付かなかった事をレミリアは見抜いていた。

 

「全く…。咲夜、今日の美鈴の夕食は半分以下で良いわ」

 

「畏まりました、では失礼します」

(美鈴、ご愁傷様……)

 

咲夜は、心の中で手を合わせ部屋を出た。

残されたレミリアは、ベッドを出て椅子に腰掛け、紅茶飲み始めた。

 

「私宛ての手紙なんて珍しいわね。幻想郷に来てからは初めてじゃないかしらねえ?」

 

そう言って、封筒を眺めていた。

 

「一体何が書いてあるのだろうねぇ…?」

 

レミリアはティーカップを置いて、封筒を手に取り中身を取り出す。

少し笑顔の彼女だったが、手紙の内容は予想を反する事が書いてあった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

レミリア・スカーレット様へ

 

この度はおめでとうございます!

あなたは、392045001人の中から厳選な抽選で選ばれた幸運な『幼女』です!

 

これは、あなたの運命的な出会いになる事は間違いありません!

 

あなたに、幸運の人形をプレゼントします!

もちろん、お金は 一切掛かりません!!

 

あなたにお届けする人形は、薔薇乙女(ローゼンメイデン)第1人形「水銀燈」です。

 

下記の項目をチェックしましたら、返信用封筒に入れて机の引き出しに入れて置いて下さい。

人口精霊メイメイが、異次元よりあなたの手紙を回収しに伺います!!

 

 

まきますか  まきませんか

 

 

――――――――――――――――

 

 

「…何これ……?」

 

全く以て予想に反する手紙の内容、レミリアの額にうっすらと青筋が浮かんでいた。

 

「ふざけやがって…、私に対する挑戦か?」

 

わなわなと肩を震わせて、怒りが湧き上がるレミリア。

 

「幸運の人形に、異次元から回収しに来るだ!? しかも、私を幼女呼ばわりするとは…。こんなダイレクトメールを堂々と寄越すなんて良い度胸だな…」

 

レミリアの瞳が、怒りによって更に紅く染まる。

しかし、何とか冷静さを保ちながら、どうするか思考していた。

 

「どうしようかねぇ…、こんな舐めた手紙を送り付けた主には痛い目に遭って貰わなきゃねぇ。 それに、ローゼンメイデンってのも気になるし…」

 

自分を落ち着かせるように、一気に紅茶を飲み干し、レミリアは立ち上がった。

 

「そうね、遊んでやろうかしらねぇ…」

 

そう言って、机に置いてあった筆を手に取った。

 

「まきますっと…」

 

そう呟きながら、『まきます』に○を囲うレミリア。

 

「机の引き出しだったわね。取りに来れるものなら来るが良い! たっぷり可愛がってあげるわ…」

 

レミリアは黒い笑みを浮かべ、部屋を出た。

 

――――――――――――――――

 

食堂に入ったレミリアはパチュリーの正面の席に座った。

 

「あらレミィ、来たのね」

 

チラッとレミリアの方へ視線を送りながらパチュリーが話し掛けた。

 

「貴女こそ、食堂まで来るなんて珍しいじゃない?」

 

「別に食べなくても問題無いけど、今日は気が向いたのよ」

 

「そう……」

 

そんな他愛も無い会話をしながら、二人は食堂をしていた。

 

そして、レミリアは考えていた事をパチュリーに聞いた。

 

「ねぇ、パチェ」

 

「…何よ? レミィ」

 

「貴女、ローゼンメイデンって聞いた事がある?」

 

「…ローゼンメイデン? さぁ、知らないわ。 それがどうしたの?」

 

「今日、私宛てに手紙が来たんだけど、それにローゼンメイデンって文字が書かれていたのよ」

 

「…それで?」

 

「手紙の内容からすると、人形らしいわ」

 

「人形? 人形の事なら私よりもアリスに聞いた方が良いんじゃないの?」

 

「そうも思ったんだけど、一々聞きに行くのも面倒でしょ?」

 

「そうね、だからと言って此処には滅多に来ないでしょうし…」

 

「だから、貴女にお願いするのよ」

 

「…そのローゼンメイデンって人形の事を調べて欲しいと?」

 

「話が早くて助かるわ、きっと大図書館の何処かにローゼンメイデンに関する本があると思うのよ」

 

「ピンポイントで探すって結構大変なのよ…。 分かったわ、食事が済んだら戻って探してみるわ」

 

「お願いね、パチェ♪」

 

若干嫌そうな感じのパチュリーに、レミリアは笑みを浮かべて言った。

 

――――――――――――――――

 

「咲夜、もう済んだから後は頼んだわよ」

 

「はい、お嬢様」

 

食事を済ませて食堂を出たレミリアは、再び自室へと戻ろうとしていた。

 

「(もう一度、あの手紙を見ようか…)」

 

そう思いながら、自室の前来たレミリアはドアを開く。

 

「さて、あの手紙はっと……うわぁ!?」

 

『ドテッ!』

 

レミリアは、何かに躓いて転んでしまう。

 

「もう、痛いわ……。 誰よ!? こんな所に物を置いたのは!」

 

一人で怒っていたが、当然誰も居らず返事も無い。

 

「…な、何これ? 鞄…?」

 

視線の先には、見覚えの無い鞄が置かれていた。

レミリアは、その鞄の前に座り凝視する。

 

「薔薇の紋様…、少なくても私の所有物ではなさそうね」

 

レミリアは鞄を持ち立ち上がると、近くの丸テーブルの上に置いた。

 

「開けて見ましょうか…」

 

そう呟くと、鞄のロックに手を掛け、ゆっくりと鞄を開けた。

その中にあったものは、

 

「……っ!? 人形…?」

 

鞄の中には、まるで眠っているかのように横たわっている、一体の人形があった。

 

「ボディの作り、衣装も拘って作ってるわね。 これは凄いわね…」

 

その人形の服装は、アシンメトリーのオーバースカートの付いた編み上げなドレスで色は、白と黒で構成されており、薄紫色の薔薇の飾りが付いた黒のロングブーツ、髪は長い銀髪で背中には黒い翼のようなものが生えていた。

 

レミリアは、その人形を抱き上げ細部まで隈無く見回していた。

 

「以外と大きいわね、本当に生きているようだわ」

 

その完成度の高さに、驚きを隠せない。

 

「逆十字か…。フッ、良い趣味してるわねぇ」

 

逆十字の柄を目にしたレミリアは、何故か不敵に笑っていた。

だが、彼女はその人形を見て、他にも感じた事があった。

 

「この人形からは、何か凄まじい運命を感じるわ…」

 

レミリアの運命を操る程度の能力が、この人形を通じて何かを訴えて来ている様に感じた。

 

「私も何かしらに巻き込まれるって運命まで感じる、何だか面倒そうねぇ…」

 

思わず苦笑いしてしまう。

 

人形を見ながら、ふと鞄に視線を落とすと、隅にゼンマイがある事に気が付く。

 

「この人形は動くみたいね、相当本格的ね」

 

一旦、人形を鞄に置くと、レミリアは何かを思い出した。

 

「これほど本格的な人形…、まさか、これがローゼンメイデン!?」

 

彼女は急いで封筒を閉まった引き出しを開けた。

 

「封筒が…、無い…!?」

 

閉まった筈の封筒が無いことに、レミリアは驚愕した。

 

「そんな…、侵入者なんて有り得ない筈なのに…」

 

愕然とする彼女だったが冷静さは失ってはいない。

 

「これは、究明する必要がありそうね…」

 

そう呟いて、レミリアは呼鈴を鳴らすのであった。

 




これが、紅魔館全体を巻き込んでの大騒動になるとは、まだ誰も知る由は無かった・・・。


続く・・・。
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