薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
週1で更新出来ればと思っています。
続きです。
「どうなさいましたか? お嬢様」
突如として咲夜が現れた。
「咲夜、パチェを呼んできて」
「パチュリー様を此処へですか?」
「そうよ、早くしてちょうだい」
「…畏まりました」
レミリアに、そう言われた咲夜は再びその場から姿を消した。
「この人形が、この紅魔館や幻想郷にどう作用するのかしらね…」
彼女は1人何かを考えていた。
それから少しして、咲夜がパチュリーを連れて部屋まで戻ってきた。
「お嬢様、パチュリー様をお連れしました」
「入ってちょうだい」
その返事を聞くと、2人はレミリアの部屋へと入った。
「どうしたのレミィ? いきなり呼び出して…」
怪訝そうに見つめるパチュリー。
「パチェ、こっちに来てこれを見てみなさい」
レミリアが鞄の方に手招きをする。
「何があるの? ……っ!?」
「咲夜も、こっちに来なさい」
「は、はい」
レミリアの言われるままに、咲夜も鞄の側へと近づいた。
「…こ、これは…!?」
「レミィ、これはどうしたのよ?」
その人形を見た2人は、驚きと共にレミリアに尋ねた。
「私は何もしてないわ、さっき部屋に戻ったら既にあったのよ」
「では、何者かが侵入したのですか?」
慌てた様子で咲夜が周囲を見渡したが、レミリアは首を横に振る。
「それは無いわね、仮にも誰かが侵入したら気付くでしょ? 魔理沙の時だってすぐ分かるでしょうし、美鈴だって騒ぐわよ」
「では、これは…」
どこから来たのかも分からない事に咲夜は困惑していた。
「それにしても、変わった服を着てわね、この人形」
「いわゆる、ゴスロリって服かしらねぇ…」
「上部だけ見れば、メイド服にめ見えるけど…」
「それは見間違いよ」
2人はそんな会話をしていたが、パチュリーが何かに気付いたようにレミリアに聞いた。
「レミィ、これってもしかして…」
「…そう、貴女の考えてる通りのものよ此は。 恐らく、この人形がローゼンメイデン…」
「「ローゼンメイデン…」」
レミリアの言葉に、2人はその人形を凝視していた。
「パチェ、さっき言った事だけど、本は見つかった?」
「咲夜が呼びに来る直前に見つけたから内容は確認してないわ、これがその本よ」
パチュリーが、一冊の本を見せた。
「やっぱりあったのね…」
そう呟きながら、レミリアとパチュリーはその本を見始め、咲夜は後ろからその様子を見ていた。
「これ…、何て書いてあるんだ?」
レミリアには全く読めない文字であったが、パチュリーはその文字を読み始めた。
「『これから書くことは、人形師ローゼンに伝え聞いたもので、真偽は確かでない事を予め断っておく』 …恐らく、これは外の世界の本で、ドイツ語ってやつね」
「パチェ、読めるの?」
「…多少は読めるわ」
「そうか…、あの八雲紫が境界を操ってるから私達は言葉が通じてるのよね、外の世界だったら、全く通じないのよね」
「…そうなるわね」
そうして、パチュリーはその本を読み、レミリアは横でずっと聞いていた。
「契約…、指輪…、アリスゲーム、ナトゥガイスト…委ねる事を試みよ……、所々は読めるけど、全部は読めないわね…」
「でも、これでは良く意味が分からないわねぇ…」
「それから、ローゼンメイデンは一体では無いみたいよ」
「こんなのが、まだ他にもいるの!?訳が分からないわね…」
本を見ながら、2人は首を傾げた。
「咲夜、貴女は分かる?」
「いえ、私はドイツ語など…」
「そうよねぇ…(棒)」
分かり切っていた返事に、レミリアも素っ気なく返した。
「仕方ないわねぇ、こんな時は…」
「どうするの?レミィ」
「この人形の螺子を巻いてみましょう!」
「「ええ〜!?」」
突然の提案に驚く2人。
「お嬢様、宜しいのですか? そのような得体の知れない人形の螺子を巻くなど…」
「そうよレミィ、仮にも何かあったら一大事よ?」
「大丈夫よ♪ 只の人形に何が出来ると言うの? 2人とも少しビビり過ぎじゃないの? 何か問題があれば壊してしまえばいい」
「お嬢様、そういう問題では…」
咲夜の声に全く耳を貸さず、レミリアは人形を抱き上げると、ゼンマイを人形の背中にある螺子穴へと差し込んだ。
「…本当にやるの?」
「やるに決まってるでしょ? やってみなければ分からないって言うじゃない」
「(本当に大丈夫でしょうか…)」
不安そうなパチュリーと咲夜であったが、レミリアは一向に気にする事無く螺子を巻き始めた。
カチ カチ カチ カチ………
螺子を巻く音だけが、部屋に響く。
「…これでいいわ、さあ早く動いてみなさい…」
「「……………」」
螺子を巻き終わり、3人は人形の様子を固唾をのんで見守った。
すると、突然紫色の光を帯びながら人形が動き出した。
「えっ…、嘘!? 本当に……うわぁっ!?」
レミリアは思わず、人形を放り投げるが、人形は落下する事無く浮き上がって行く。
「えっ、えぇぇぇ!?」
「やっぱり…、だから言ったでしょレミィ!」
「何よ? 全部私に押し付ける訳!?」
「当たり前でしょ! あれを巻いたのは貴女なのよ!?」
「あんたが本を読めないのが悪いのよ!」
「何で私のせいにされるのよ!? 螺子を巻いたのは貴女なんだから責任は貴女にあって当然でしょ!」
「人形の螺子を巻いた位で何が悪い!?」
「あれを見ても、まだそんな事が言える訳なの!?」
「う〜、うるさーい!」
「お2人共、お願いですから落ち着いて下さい!」
しょうもない痴話喧嘩をする二人を、咲夜が宥めた。
すると、浮き上がっていた人形の顔が上がり目が開いた。
その瞳は、まるで燃えるような赤色であった。
「全く…、螺子を巻くのが遅いわぁ。起こすならもっと早く起こしなさぁい?」
「しゃ、喋った…!?」
「お嬢様!」
「レミィ…!」
驚きと同時に思わず身構える3人。
「フフッ、久しぶりに起きたわぁ、ざっと683280時間49分振りかしらねぇ…」
「貴女…、何者なの?」
レミリアが、警戒しながら人形に聞いた。
「なぁに? そんなに身構えちゃって、詰まんない感じぃ…。
しょうがないから教えてあげる、私は水銀燈、薔薇乙女(ローゼンメイデン)の第1ドールよ」
水銀燈と名乗る人形は、浮き上がった状態で3人を見下ろすような形で言った。
「ローゼンメイデン…、やっぱり本当だったのね、あの手紙は…」
レミリアが思い出しながら呟く。
「ところで、私の螺子を巻いたのは誰?」
「貴女の螺子を巻いたのは……、私よ」
水銀燈の問いに、レミリアが直ぐに答えた。
「へぇ、貴女がねぇ…。 見た感じ、人間には見えないけど…」
「お察しの通りよ。 私は人間じゃない、吸血鬼よ」
「吸血鬼ですって…? 貴女達こそ何者なのよ?」
レミリアの言葉に水銀燈は怪訝な表情で聞いた。
「私は、レミリア・スカーレット。 この紅魔館の主よ」
「ふぅん、レミリアって言うのね。それで此処は紅魔館って言うのね。 それで、そっちの貴女は?」
「私は、パチュリー・ノーレッジ。 私も人間では無いわ、魔法使いよ」
「魔法使いですって? フフフ…、本の読み過ぎておかしくなったんじゃないのぉ?」
水銀燈は、パチュリーを馬鹿にする様に言い放った。
「本当の事よ、本の読み過ぎなのは間違ってはいないけど…」
「変な女ねぇ…、そういう事にしておいてあげるわ。 それで、そこのメイド姿の貴女は?」
「私は十六夜咲夜よ、この紅魔館のメイド長であり、レミリアお嬢様の従者よ」
咲夜は丁寧に自己紹介をしたが、その間も鋭い目つきで水銀燈を見つめていた。
「ふぅん…、貴女は人間なのね。 吸血鬼に仕える人間なんて、全く堕ちたものねぇ、人間って…」
咲夜を見下すかの様に水銀燈は言った。
そして、レミリアが再び水銀燈に尋ねる。
「私達の紹介は終わったわ。 貴女が此処に来た理由はちゃんとあるんでしょ? この紅魔館、幻想郷に来た理由が…」
「幻想郷? 何それ?」
「それは後で説明してあげるわ。 こっちの質問が先よ」
「面倒くさいわねぇ…、どうしても説明しなきゃダメ?」
「当然でしょ、早く話しなさい」
レミリアは水銀燈を睨んだ。
「仕方ないわねぇ…、特別に教えてあげるわ。 私が此処に来たのは、アリスゲームを制する為よ」
「…アリスゲームですって?」
「レミィ、さっきの本にも…」
「……っ!そう言えば…」
水銀燈のアリスゲームという言葉に2人は再び本の内容を思い出していた。
「…話は終わったかしら? その為には手段は選ばないわ。 私はね、他の姉妹達の様に選ばれるのを待つなんてしないわ。 私が選び、私が決める」
「…それは一体どういう事なの?」
「貴女にその気が無くても契約して貰うわ」
「契約…?」
「早い話が、貴女はねぇ……私の糧になるのよ」
「…糧、だと……?」
その言葉にレミリアの表情が一層険しくなる。
「言っておくけど、私は姉妹の中でも特別に凄いのよ。 契約しようとしまいと、周辺にいる者の力を奪う事が出来てね、誰も私からは逃げられない」
「何ですって…!?」
パチュリーもまた、水銀燈を睨む。
「そして、契約を結んだら、それこそ根こそぎ力を貰えるというものよ。 貴女からはとても大きい力を感じるわ。 吸血鬼というのも強ち間違ってはいないようねぇ…」
「…それで、どうなるのよ?」
「決まってるでしょ? 例え吸血鬼でも大量の力を奪えば逝っちゃうかもねぇ…、でも私には関係無いわぁ」
「貴女…、お嬢様を甘く見過ぎじゃない?」
平然と言い放つ水銀燈に、咲夜が返す。
「それは、どういう事かしら?」
「お嬢様が、貴女如きと契約するとでも思っているのか?」
「言った筈よ、私が選び私が決めると。 貴女達の意思なんて聞いてないわ」
次第に、その場の空気が殺伐としたものに変わっていく。
「どちらにせよ、私は周辺にいる者から力を奪えるのよ、すなわち貴女達からねぇ…。 私に勝とうなんて考えない事ね」
「さっきから聞いていれば、戯れ言を…」
猫なで声で馬鹿にするように話す水銀燈に、そう言い放ったのはレミリアであった。
「このレミリア・スカーレットがお前の様な人形風情と契約するだと? 寝言は寝て言え!」
「…断るっていうの?」
「言うまでもない」
「そう…、別に貴女じゃなくても良いのよ。 そこのお二人さん、貴女達はどう?」
そう言って、水銀燈はパチュリーと咲夜の方を向いた。
「レミィと同じよ、貴女と契約する理由は無いし貴女に与える力は無いわ」
「私もよ、どうしても欲しいのなら、私を倒してからにしてみなさい!」
咲夜はそう言うと、懐からナイフを取り出した。
「ああそう…、あくまでも拒否するのね、貴女達って本当におばかさんねぇ…」
水銀燈は口では笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
「後悔しても知らないわよぉ?」
「後悔するのは、お前だ」
そう言うと、レミリアは水銀燈に弾幕を放った。
しかし、その弾幕は水銀燈の翼の防御により無効化された。
「面白い事出来るのね貴女。 でもねぇ、攻撃ってのは…、こうするのよ!」
その瞬間、水銀燈の翼から羽が射出され、レミリアの顔を掠める。
その羽は鋭利な刃物のような切れ味でレミリアの頬を切り、傷口から血が流れ出した。
「……っ!?」
「お嬢様!」
「レミィ!」
咲夜とパチュリーは驚きレミリアの側に駆け寄る。
「あーら、綺麗な顔に傷が付いちゃったわぁ、無様ねぇ、アッハハハ…!」
「貴様……!」
高笑いするのは水銀燈に、歯噛みし怒りを露わにするレミリア。
「やりましょ、レミィ」
「お嬢様、あの人形を葬りましょう」
「ええ、それしか無いわね」
3人は戦闘モードへと移行する。
「そう…、それは私に対する宣戦布告と見なして良いのね? 上等よ、お望み通りにジャンクにしてあげるわ!」
いよいよ、水銀燈対紅魔館組による戦争が始まる!
続く…。