薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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今回からしばらく、残酷描写が多く含まれます。

だって、これは戦争なんだよ…


第19話 紅魔館戦争1

一触即発、水銀燈とレミリア、パチュリー、咲夜が対峙していた。

 

「一応言っておくけど、私はアリスゲームで、これまで何度となくローザミスティカの奪い合いを繰り返してきたわ。貴女達で言えば心臓みたいなものかしらねぇ。

最も未だ誰のローザミスティカも手にはしてないけど…。 それは、負けた者が動く事も話す事も出来なくなるが故に死に物狂いで闘ってるからよ、それは殺し合いも同然…。

そんな修羅場を幾度も経験してきた私に勝てるのかしら?」

 

水銀燈が、3人に話し掛ける。

 

「舐めるなよ人形、私達も日頃からスペルカードルールによる決闘を幾度も繰り返してきている。お前が考えている以上に私達は甘くは無いぞ」

 

レミリアは、そう返した。

 

「へぇ…、スペルカードルールって何だか知らないけど、随分な自信ねぇ…」

 

「それはやってみれば分かるわ、貴女こそ覚悟しなさい」

 

パチュリーは魔導書を開き、スタンバイ状態に入る。

 

「貴女がどれ程の修羅場を潜ってきたかは知らないけど、お嬢様の比では無いわ。 泣きを見るのはお前…」

 

そう言った咲夜は、数本のナイフを手にしていた。

 

「揃いも揃ってエラくやる気ねぇ、その度胸は褒めてあげるわ。 でも…、私もアリスゲームを制してお父さまに会わなければならないの。 こんな所で往生する訳にはいかない」

 

すると、水銀燈の背中の黒い翼が大きく変異しだす。

 

「力ずくでも言うことを聞かせてあげる。 そして、私がアリスに最も相応しいって事を見せてやるわ!」

 

「やってみろ、出来損ないのガラクタ人形が!」

 

先に仕掛けたのはレミリア、無数の弾幕を放ちながら水銀燈に迫る。

 

「ふぅん…、そうやってお前達のような馬鹿共は、平然と私を木偶呼ばわりする訳ね、そういうのって……」

 

レミリアの弾幕をかわしながら、水銀燈もまたレミリアに近づく。

そして、水銀燈が牙を剥く。

 

「虫酸が走るのよぉぉ!!!」

 

激情を露わにする。

 

そして、翼から無数の羽根がダーツのようにレミリアに射出される。

 

「くっ……!」

 

レミリアは、弾幕を放ちながらそれを避けるが、多数の羽が彼女を襲い身体を切り裂いていていく。

 

「ほら、ちゃんと避けないと傷だらけよぉ?」

 

水銀燈は縦横無尽に動き、レミリアを翻弄する。

その間にも水銀燈から放たれる無数の羽根がレミリアを切り裂いていた。

 

「チッ…!小賢しい動きをするヤツだ!」

 

レミリアも痛みに耐えながらも素早く動き、かわしながらも水銀燈目掛けて弾幕を放ち続ける。

しかし、水銀燈は全く怯むこと無く弾幕を避ける。

その避け方は、余裕すら感じられる。

 

「本当に弾幕ごっこは初めてなのか?あんな避け方なかなか出来るものじゃないわ…」

 

水銀燈の見事な動きにレミリアは驚きを見せる。

 

「さっきまでの勢いはどうしたのかしらぁ、吸血鬼?」

 

短時間ですっかり傷だらけになったレミリアを見下ろしながら、水銀燈は笑みを浮かべていた。

 

「人形風情が…、舐めるなぁ!!」

 

レミリアが叫ぶと、ショットを放ちながら水銀燈に掴み掛かろうとした。

 

「バカねぇ…、メイメイ」

 

すると水銀燈の後ろから紫色に光る人口精霊が眩しく瞬く。

 

「な……!?」

 

突然眩しく光るそれに、レミリアは一瞬怯んでしまう。

 

その隙に水銀燈はレミリアに潜り込むように迫り、掌を腹部に押し当てた。

 

「貴女のその弾幕とやらを、真似させて貰うわね」

 

次の瞬間、水銀燈の掌から光線のようなものが放たれレミリアを貫いた。

 

「がはぁぁっ!!」

 

その衝撃でレミリアは激しく血を吐く。

 

「お嬢様!」

「レミィ!」

 

2人の叫びは、レミリアの耳には届いていなかった。

 

「もう一発、あ・げ・る♪」

 

返り血を浴びた水銀燈が悪魔のような笑みを浮かべそう言うと、追い討ちを掛けるように背中の翼が大きく展開してレミリアを襲った。

 

「……っ!?」

 

朦朧とするレミリアはその翼に飲み込まれ、そのまま壁に叩きつけられた。

 

「ぐぁぁぁぁ!!!」

 

ドォォン! という衝撃音と共にレミリアの悲鳴が聞こえた。

そして、水銀燈の翼が退いた壁にはクレーターが出来ており、そこからレミリアは力無く床へと倒れ落ちた。

 

「レミィ!」

 

パチュリーが駆け寄ったが、血塗れのレミリアは全く反応しなかった。

 

「終わりぃ?フフフ…、大口叩いた割には大した事無かったわねぇ」

 

スゥっと、鞄の置いてある机の上に降りた水銀燈はそう言い放った。

 

「全く、服に汚い血が付いちゃったじゃない…。 大丈夫よ、まだ死んではない筈よ。 そんな程度で壊れちゃ、吸血鬼が聞いて呆れるわぁ」

 

「よくも、お嬢様を…!!」

 

クスクスと笑う水銀燈に対し、咲夜は怒りを露わにした。

 

「さぁて…、次にジャンクになりたいのはどっちかしらぁ?」

 

「…その減らず口を、二度と叩けないようにしてやるわ」

 

そう言って、咲夜が動き出す。

 

「今度は人間ね、吸血鬼の従者である貴女の実力はどんなものか、見せて貰いましょうか…」

 

水銀燈と咲夜が対峙した次の瞬間…。

 

そこに咲夜の姿は無く、無数のナイフが水銀燈目掛けて飛んできた。

 

「……っ!?」

 

とっさに、それを避けたが、数本のナイフが水銀燈の服を切り裂いた。

 

「……何をしたの?」

 

体制を立て直した水銀燈が、怪訝な表情で咲夜に訊く。

 

「これが私の能力、お前に見抜けるかしら?」

 

そして、すぐに咲夜の姿が消え再び無数のナイフが現れる。

 

「くっ…!」

 

水銀燈は、背中の翼で全身を覆いそれを防御した。

 

「(これって…、まさか…?)」

 

「まだ終わってないわよ!」

 

そして、次は弾幕が放たれる。

 

「面倒ね…、ここではちょっと狭いわ」

 

水銀燈は弾幕を避けながら、部屋のドアを突き破り、咲夜は直ぐに後を追った。

 

「逃げる気なの?」

 

「バカじゃない? 誰に向かって言ってるの?」

 

広い廊下に出た2人は再び対峙する。

 

「咲夜…、あの子の能力が何処まで通じるか…」

 

パチュリーは、後ろから2人の様子を伺っていた。

 

「(この人間の能力は…、さっきの状況から判断すると恐らく……)」

 

水銀燈が咲夜の能力を分析していると、咲夜が仕掛けてきた。

 

「何を考えているの? 油断しない事ね!」

 

咲夜は水銀燈目掛けて走り出し、スペルを宣言する。

 

「メイド秘技『殺人ドール』!」

 

すると、ナイフと弾幕が一斉に水銀燈目掛けて放たれる。

 

「来たわね…」

 

それを見た水銀燈は、すかさずナイフと弾幕を避け始める。

だが、ナイフか突然方向を転換をし、水銀燈に向かってきた。

 

「な、何ですって…!?」

 

「(予測通りね……)」

 

突然の変化に彼女は驚いてしまう。

それでも、ギリギリでかわしていた。

その動きを読んだ咲夜は再び時を止めて動く。

 

「小賢しい技ね、人間……って!?」

 

水銀燈の視線の先には、先ほどまでいた咲夜の姿が無かった。

 

「居ない? ………っ!」

 

気配を感じ、その方向を向くと咲夜がナイフを投げて襲ってきていた。

 

「どうしたの? 隙だらけよ!」

 

避けている隙を咲夜は見逃さず、水銀燈に蹴りを叩き込む。

 

「くっ…!」

 

水銀燈はそれを翼で防御するも、反動で飛ばされてしまう。

しかし、うまく体制を立て直し床に着々した。

 

「やったわね…」

 

咲夜を睨みつける水銀燈。

 

「人形、貴女こそもう終わりじゃないでしょうね?」

 

咲夜は腕組みをし、ナイフを持ちながら挑発するように言い放った。

 

「これなら大丈夫そうね……でも…」

 

その様子を見ていたパチュリーは、一瞬表情が緩んだが、まだ不穏な空気を感じていた。

 

その水銀燈は狼狽えるどころか、笑みすら浮かべていた。

 

「フフフ…、それ、まさか本気で言ってるの? 忘れたの?私は貴女から力を奪っ取ってるのよ、今この瞬間も…」

 

「なっ……!?」

 

ハッと思い出しように咲夜の表情が変わる。

確かに、あれだけダメージを与えた割には水銀燈は疲労している様子は無かった。

 

「それから…、今のでやっと貴女の能力が分かったわ、人間」

 

「…!?」

 

「そう、私の読みが正しければ……、メイメイ」

 

そこまで言うと、水銀燈は自身の人口精霊を呼び出した。

 

「……っ!? 拙いわ!咲夜……!」

 

しかし、パチュリーの声は咲夜には届いていなかった。

 

「分かったからどうするの? 分かった所でお前には何も出来ないわよ。直ぐ終わりにしてあげるわ!」

 

咲夜は能力を発動し時を止めた。

 

「さあ、もう逃げられないわよ…」

 

その白黒になった世界で、咲夜が水銀燈の周りにナイフを配置していく。

 

「次に時間が動き出した瞬間には、全てが…」

 

「…終わらないわよぉ?」

 

「な、何っ!?」

 

能力で時が止められている、しかし水銀燈は咲夜を見て喋ったのだ。

 

まるで悪魔のような笑みを浮かべながら…。

 

そして次の瞬間、水銀燈は一気に咲夜との間合いを詰めた。

 

「捕まえたぁ♪」

 

「ぐはぁぁ!?」

 

水銀燈は、咲夜の首を掴み締め上げた。

それはもう人形とは思えない程の凄まじい力であった。

それにより咲夜の能力は解除され、配置していたナイフは次々と落下していった。

 

「よく考えれば簡単な事だったのよねぇ、貴女の姿が突然消えて代わりに何処からともなくナイフが飛んでくるなんて、何かのマジックかと思ったけど、そういう事だったのねぇ」

 

「う……ぐ……ぐっ……」

 

咲夜の首を締め上げながら水銀燈は続けた。

 

「私は螺子を巻かれた瞬間から時の動きには敏感なのよ? 貴女が時を止めて動き回っていても、私の眼にはその軌跡がしっかり残っているわ。 でなければ、あんなの避けれる訳無いじゃなぁい?」

 

「そ…そんな……!?」

 

「それからねぇ…、この子が貴女の能力を無効にしてくれたのよ」

 

水銀燈の周辺には人口精霊のメイメイが飛び回っていた。

 

「な、何よ…それ……」

 

咲夜は、何か信じられないものを見るように、それを見ていた。

 

「この子は私の人口精霊、とっても優秀なねよぉ? 貴女の能力を無効化するなんて造作も無い事…」

 

「……っ!」

 

ただ光っているようにしか見えないそれが自分の能力を無効化する力がある事に咲夜は戦慄した。

 

「時を止めるなんて能力を使ったのを見たのは貴女が初めてよ、人間の分際にしては大した能力ねぇ、褒めてあげるわぁ。……なんだけど…」

 

急に水銀燈の雰囲気が変わりだしてきた。

 

「面倒な説明はこれで終わりよ…、ここからはスクラップの時間よ」

 

「な、何を……ぐぁぁぁ!!」

 

水銀燈は手を放し、代わりに大きく変異した翼に変えて咲夜を締め上げた。

 

「人間、お前の能力はもう発動出来ないわよ」

 

メイメイを使い、咲夜の能力を完全に封じている水銀燈。

 

「私に刃向かった事が、どれだけ恐ろしい結果を招いたか、その体に教えてあげるわ」

 

「咲夜! させない…」

 

パチュリーが弾幕を放とうとした瞬間

 

『シュッ!』という空気を切るような音と共に、水銀燈から射出された羽根がパチュリーの顔を掠めた。

 

「……っ!?」

 

『ぐりんっ』

水銀燈の顔がパチュリーの方を向いた。

 

「慌てないの、順番よぉ。 こっちが片付いたら後でたっぷり遊んであげるわ、魔法使い…」

 

水銀燈から送られた視線からは、明らかな殺意が感じられた。

 

「……っ!? 動けないっ!?」

 

それを見たパチュリーは、まるで金縛りにあったかのように動けなくなる。

 

「さて……それで、目の前の人間はどうしましょうか…」

 

「な…、何を……」

 

すると、水銀燈は咲夜の両手両足を自分の羽根で縛るように巻きつけそこから動けなくした。

 

「…うぐっ…!」

 

「まず…、ズタズタにしてあげる!」

 

身動きの取れない咲夜に目掛け、無数の羽根がダーツの様に放たれ出した。

 

「…ぐぁ……うがっ………がぁぁぁぁ……!!!」

 

服を切り裂かれ、身体も次々と裂かれていき全身血塗れになっていき、咲夜の悲鳴が木霊する。

 

「アッハハハ…、いい様ねぇ、お似合いよ! ……でも、遊びは終わりよ。 トドメを刺してあげるわ…」

 




果たして、この戦争の行く末は……?

続く…。
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