薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
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続きです。
陽も落ちた紅魔館の門には、門を閉めようとする美鈴の姿があった。
「嗚呼、あれだけじゃ全然足りないわよ…」
昼間、また居眠りをしていたお仕置きとして、夕ご飯は半分以下にされていたのだ。
「無いよりマシなんて咲夜さんは言ってたけど、厳しいです…」
一人、ブツブツと愚痴を零していと、
『ドォーン!』という轟音が館の方から聞こえた。
「えっ? 何!?」
そして、再び『ドォーン!』という音がはっきり聞こえた。
「まさか…、お嬢様! 咲夜さん!」
美鈴は、慌てて館の方へと掛け出して行った。
――――――――――――――――
「さて人間、命乞いするぅ?」
「がぁ………ぁぁ……」
水銀燈に動きを封じられ、容赦ない攻撃に咲夜は全身血塗れになっていた。
「何とか言いなさいなぁ、ドドメを刺すとは言ったけど、それによってはお慈悲はあるわよぉ?」
それは、降参するように促しているようでもあった。
「ローゼンメイデンはね…、人間から力を貰ってアリスゲームの為に闘うのよ、貴女達人間を傷つけるのは本来の目的では無いんだけど…。
最もこれは小賢しいある妹が言ってた台詞なんだけどね…、私はそんな事に構う事はしないわよ」
「…だ、誰が人形……なんかに……降参……など………、殺しなさい……!」
咲夜は、苦悶の表情ながらも尚も抵抗をしようとしていた。
「そんなに強がらなくたって良いのよ? そんな状態じゃ貴女は何も出来やしない。貴女は私を相手によくやったわ、褒めて…」
「…黙れっ!慈悲なぞ要らない、さっさと殺りなさい! この木偶人形が!!」
残った力を振り絞り咲夜が叫んだ。
「…餓鬼がぁ……!!」
その一言に水銀燈が激昂する。
「仏心は必要無かったようね、望み通りにしてあげる……死になさい」
水銀燈の翼が大きく広がると、まるで体当たりするように咲夜を襲った。
「ぎゃぁぁぁ!?」
一切の抵抗も出来ず、咲夜はそれに飲み込まれ、
『ドォーーン!!』
という轟音と共に、壁に叩きつけられた。
「うがぁ…」
翼が退くと、そこから咲夜が力無く倒れ落ちた。
「さ、咲夜…、咲夜ぁぁ!!」
体の動かないパチュリーは、必死に咲夜な名を呼ぶ。
「う……ぐっ……、 がはぁ!!」
立ち上がる事が出来ず、咲夜はその場で夥しい量の血を吐く。
「あら…、あれだけのダメージを受けてまだ生きてるなんて、流石は吸血鬼の従者だけあってなかなかしぶといわねぇ、フフフ…」
クスクスと笑いながら、水銀燈が咲夜に近付いてきた。
「どうするの? そのままじゃ本当に死んじゃうわよ?」
立ち上がれない咲夜を見下ろしながら、水銀燈が尋ねた。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
咲夜は苦しげな息遣いで何も応えられないが、それでも水銀燈を睨んでいた。
「…何よ、その眼は……、禄に動けない状態でまだ抵抗しようなんて考えてるの?
死に損ないっていうのは、貴女の事を言うのねぇ…」
そう言うと、水銀燈は冷めた眼で咲夜を見つめていた。
「…待ちなさい人形!」
水銀燈の背後から、パチュリーが叫んだ。
「今度は私が相手よ! お前の好きにはさせない!」
「…良いわよ、だけど……先にこのムカつく人間を始末してからね…」
「……っ!!」
パチュリーは戦慄した、目の前にいる人形は本気で咲夜を殺しに掛かろうとしている事に。
「さて人間…、後が控えてるから本当に終わりにするわ。
何か遺言はあるかしらぁ?」
「お嬢様……パチュリー様……申し訳…ありません……」
血だらけの咲夜は、俯きながら謝罪の言葉を口にした。
レミリアを、紅魔館を護れなかった事。
そして、目の前の人形に殆ど抵抗出来なかった事に。
「それだけ? じゃ……終わりね…」
そう呟くと、再び背中の翼を大きく変異させ、咲夜へと向けた瞬間、
「う……うぁぁぁぁ!!」
「……っ!?」
パチュリーが絶叫した瞬間に、掛けられていた縛が解け、水銀燈目掛けて弾幕を放った。
「やっと解けたのね…、その程度の縛を解くのにどれだけ掛かってるのよ? つまらなぁい…」
水銀燈は冷めたような笑いを浮かべながらパチュリーの弾幕を避けた。
「許さないわ…、よくもレミィと咲夜を……この代償は、お前の死を以て償ってもらうわ」
パチュリーからはそれまでとは比べものにならない程の殺気が放たれていた。
「貴女…、なかなかやれそうねぇ…」
「パ、パチュリー様……」
咲夜は手を付き座り、朦朧としながらもその様子を見つめていた。
「動かないで咲夜、貴女の仇は私が取るわ」
「へぇ…、何だか分からないけど、さぞ私を楽しませてくれるんでしょうねぇ?」
水銀燈とパチュリーが対峙する。
「先制させてあげるから早く来なさい、魔法使い」
「…黙りなさい!」
パチュリーから凄まじい妖気が放たれ、スペルが宣言される。
「金符『メタルファティーグ』」
パチュリーから放たれた弾幕が水銀燈に目掛けて迫ってきた。
「またこんなのぉ? 面倒ねぇ…」
呆れたような顔をしながら弾幕の隙間を潜り抜けいく。
「同じ様な攻撃ばかりじゃ…」
しかし、水銀燈に迫ってきた弾幕が目の前で壊れるようにして分裂した。
「……っ!?」
予想外の展開に、避けに徹する。
「やるわね…」
「まだ終わってないわ…」
パチュリーは、既に次の一手に出ていた。
「火符『アグニシャイン』」
炎の渦巻きのような弾幕が、更に水銀燈を襲う。
「畳み掛けて来るわねぇ…、それじゃ私も期待に応えてあげなきゃねぇ!」
水銀燈は、迫ってくる弾幕を掠めるように回避する。
そして、徐々にパチュリーとの間合いを詰め始める。
「なかなか濃密な攻撃だけど…、見えるわ」
「まだよ…!」
パチュリーから放たれる弾幕は更に激しさを増す。
その激しい弾幕を水銀燈は巧みに回避、また自身の翼で幾つかの弾幕を弾いていた。
「アハハハ…、面白いわ! もっと激しく、私に迫って来なさい!」
水銀燈は、まるで狂ったかのように笑いながら尚も間合いを詰めてきた。
「く……、無駄よ。これだけの弾幕を近づきながら避けるなんて…」
「…そこね!」
水銀燈は、まるで待っていたかのように攻勢に出る。
「なっ……!?」
弾幕の僅かな隙間から、水銀燈の翼からの羽根が発射された。
「そんなの通用しないわ!」
パチュリーは咄嗟に防御結界を張り羽根のダーツを防ぐ。
「やるわねぇ貴女…」
「こんなもの、防ぐ位造作も無い事よ」
「フッ…、でも、その慢心が貴女の敗因の元…」
「な、何…」
『パチンッ!』
水銀燈が指を鳴らした瞬間、先程の防御結界によって落とされた無数の羽根が光弾に変わったのだ。
「な、何ですって!? ……うわぁっ!?」
その光弾の一つが、パチュリーの魔導書を弾き飛ばした。
「し、しまった!」
「フフフ…、してやったりね!」
完全に無防備になったパチュリーを水銀燈は見逃さなかった。
「それは全部私の弾幕…、食らいなさい!」
辺りに散らばっていたの光弾がパチュリー目掛けて一斉に放たれた。
「そ、そんな………ぎゃぁぁぁぁ!!」
防御する事も回避すら出来ず、パチュリーは全ての弾幕に被弾し吹き飛ばされた。
「パチュリー様ぁぁ!!」
「アッハハハ…! 貴女達の力は良いわねぇ! その御陰で貴女達の言う弾幕も簡単に応用出来るようになっちゃったわぁ」
咲夜の悲鳴と水銀燈の高笑いが館内に響いた。
「う……うるさいわ……黙りなさい……!」
吹き飛ばされたパチュリーは、ボロボロになりながらも何とか立ち上がった。
だが、押せば直ぐに倒れてしまいそうな程にフラフラになっていた。
「あら、まだ抵抗しようとなんて考えてるの? 往生際が悪いわよぉ?」
「私は……負けない………お前なんかに…」
苦悶に満ちた表情で、パチュリーは水銀燈を睨んだ。
「下らないわねぇ……ていうか、醜いわ…」
水銀燈の視線は冷徹なものであった。
そして、翼を大きく変異させ仕留めに掛かろうとした。
「……終わりね」
水銀燈がパチュリーに攻撃を仕掛けようとした
その時であった。
「待てぇぇ!!」
「えっ……!?」
水銀燈が、声のした方を向こうとした瞬間、
「ぐはぁぁぁ!?」
背中に飛び蹴りを食らい、吹っ飛ばされて床に叩きつけられた。
「…美鈴!?」
パチュリーが思わず叫んだ。
「パチュリー様、大丈夫ですか!?」
「え、ええ…、私は何とか…」
「大丈夫ではありませんよね…、ボロボロですよ…」
美鈴はパチュリーを見て申し訳無さそうに言った。
「大丈夫よ、こんな位で……ゲホッ、ゲホッ……」
「パチュリー様!?」
「心配しないで…、それよりも、咲夜が…」
「咲夜さんが…?」
美鈴がパチュリーの向いている方を見ると、そこには無残な姿で倒れている咲夜がいた。
「そ、そんな……咲夜さーん!」
美鈴は慌てて咲夜に駆け寄った。
「咲夜さん、どうしてこんな……」
美鈴は目に涙を浮かべて咲夜をゆっくりと壁にもたれかけた。
「うぅ……美鈴……ご免なさい……私……護れなかったわ…」
咲夜は、涙を流し美鈴に詫びた。
「何で謝るんですか?」
「だって……お嬢様が……」
「えっ…、お嬢様が…?」
顔が青ざめた美鈴に、後ろから再び魔導書を手に取ったパチュリーが話し掛けた。
「…大丈夫よ美鈴、レミィは死んではいないわ」
「では、お嬢様は無事なのですか!?」
「ええ…。ただ、かなり重傷を負ってるから早く手当てしないと…、咲夜もね」
「は、はいっ!」
そう言って、美鈴が立ち上がろうとした時。
「……っ!? パチュリー様危ない!!」
「えっ!?……うわぁっ!」
背後から殺気を感じた美鈴はパチュリーを抱えて回避した。
そこには無数の黒い羽根が落ちており、幾つかは壁に突き刺さっていた。
「背中から不意打ちなんて……良い度胸してるわね…」
それは、美鈴の飛び蹴りで吹っ飛ばされてた水銀燈のものであった。
水銀燈は、ゆっくりと起き上がると、飛び上がり美鈴達の方へと近付いて来た。
「貴女なの? 私に飛び蹴りなんて舐めた真似をしてくれたのは?」
表情こそ笑っているように見えたが、明らかに怒りに満ちていた。
「何者だ? 私の大切な主や仲間を傷つけてタダで済むと思っているのか!?」
美鈴も負けずに水銀燈を睨み付けた。
「その口振りだと、貴女もこの紅魔館の関係者みたいね」
「そうよ、私はこの紅魔館の門番をしている、紅美鈴よ!」
「紅美鈴ね…、貴女人間じゃないわね?」
「…何故それを!?」
水銀燈から告げられた一言に美鈴は驚く。
「分かるわよ、貴女からも力を吸い取ってるからねぇ…、貴女からは妖力を感じるわ」
「……っ!」
「気をつけて美鈴、アイツは近くに居る者から力を奪い取る事が出来るみたいよ」
「力を奪い取るって…、あれは何者なんですか?」
「ローゼンメイデンっていう人形よ、詳しい事は分からないけど…」
パチュリーが美鈴に耳打ちをしていると水銀燈が割って入ってきた。
「コソコソ話は止めてくれないかしら? イライラするのよねぇ、…紅美鈴」
「…何よ?」
「貴女は私を傷付けた、その代償は大きいわよ…」
「…だったらどうするって言うの?」
「…殺すわ……」
水銀燈から凄まじい殺気が放たれ、再び翼を大きく展開していた。
それを見た美鈴も身構え、いつでも打ち込める状態に入った。
「美鈴、気をつけて! あの人形は本当に強いわよ!」
それを聞いた美鈴は、パチュリー達の方を見て微笑して告げた。
「大丈夫です、強い相手程燃えますから!
それよりも、パチュリー様は咲夜さんをお願いします」
「…分かったわ」
美鈴は庇うように前に出て、パチュリーは咲夜に付き添った。
「今度は私が相手だ!紅美鈴、参る!」
美鈴が叫ぶと、水銀燈目掛けて走り出した。
美鈴と水銀燈がぶつかる。
戦争は、まだ続く・・・。
こんな文章力で、いいのだろうか・・・・。