薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
紅魔館内の広い廊下
所々が破壊され、破片が散らばる。
また、至る所に血痕が生々しく残る。
小悪魔は、血溜まりに倒れたまま微動だにしない。
水銀燈にやられ、身動きが取れない咲夜。
パチュリーは意識はあったが、身体の自由が効かなくなっていた。
「レミィ…」
パチュリーの視線の先には、水銀燈と対峙するレミリアの姿があった。
「私を殺すとは随分大きく出たものね、吸血鬼。
さっきはあんなに簡単にやられちゃったのに」
猫なで声で馬鹿にするように水銀燈は言う。
「同じ手に何度も食うと思っているのか? 愚かなものだな…」
レミリアの魔力が高まる。
「これから貴様は後悔する事になる。 このレミリア・スカーレットを本気にさせた事をな…」
それは本気の抹殺宣言でもあった。
「そんなに大口叩いて、私の能力をもう忘れた訳じゃ無いでしょうねぇ? お前こそ後悔する事になるわよ…」
水銀燈の翼がゆっくりと大きく変異し始め、臨戦態勢に入る。
「お嬢様、その身体では…」
「レミィ、無茶はよして…」
二人はレミリアの身体を気遣っていたが、本人は全く気にする仕草は無かった。
「二人共、そこで大人しくしてなさい。 必ず勝つわ…」
「レミィ……ごめんなさい…」
「パチェ…」
レミリアはパチュリーに告げる
「咲夜をお願い…、少しでも回復させておいて」
「分かったわ…」
パチュリーは、血だらけの身体で何とか立ち上がり、足を引きずりながら咲夜の側へと寄った。
「本当にお前達は、どこまでもバカなのねぇ…。 傷の舐め合いなんてして」
「何だと……」
「甘いって言ってるのよ…」
お互いの殺気が一気に高まる。
「もう一回言ってみろぉぉぉ!!!」
「いい子ぶって、反吐が出るのよぉぉぉ!!!」
ほぼ同時に互いを目掛け駆け出した。
「ほら、行くわよぉ!」
レミリアに黒い羽根を無数に飛ばす。
「来たな……はぁっ!」
水銀燈の羽根を弾幕で相殺する。
弾幕と羽根のぶつかり合い、激しい攻防が展開される。
「フッ、やってくれるわね」
水銀燈の翼が展開されレミリアに迫る。
「それはもう通用しないぞ!」
レミリアは、それを払いのける
「チッ…!」
初めて、その攻撃を返され、一旦間合いを取る水銀燈
「…うざいわねぇ!」
再び、自身の羽根をダーツのにように飛ばす。
「その攻撃は既に見切っているぞ!」
レミリアもまた同じように、弾幕で相殺しながら、次々と回避した。
「そろそろ行くぞ、さっさと終わらせてやる」
「…能書きなんか要らないから、早く見せてみなさい」
「なら見せてやる、私の本気のスペルカード…」
レミリアから魔法陣が放たれる
「フィットフルナイトメア!!」
スペルが宣言されるやいなや、ナイフ形の弾幕が不規則的な方向に放たれる。
「また、これが来たわね…」
水銀燈は今まで通りに、弾幕を掠めながら避けに転じる。
「人形、今までの弾幕と同じと思うなよ…」
水銀燈が回避に転じるいると、レミリアから放出される弾の量が次第に多くなる。
「なかなか濃密ね、避け応えがあるわ」
見事な動きで回避する水銀燈、まだ余裕すら感じられる。
そして、次第に弾幕が少なくなっていく。
「あら、もう終わ……」
水銀燈がそう言い掛けた時
「さあ、人形…」
レミリアが不敵に笑う
「力一杯踊れっ!」
「……っ!?」
水銀燈は驚愕した。
その瞬間、それまでとは段違いの高密度、尚且つ高速の弾幕が全方位へ放たれたのだ。
「な、何ですって!?」
その凄まじい弾幕の嵐に水銀燈は一気に飲み込まれる。
「ぐぁっ…!」
小柄な体を生かし、小気味良く回避するが、それは今までに無い程の弾幕で、体ギリギリを掠めていく。
「どうだ? 悪夢を見ている様だろ?」
弾幕を放ちながら、レミリアが言う。
「この……あぁぁっ!」
水銀燈は必死の形相で避け続けた。
だが、数発の弾に水銀燈が捉えられ、激痛に顔を歪める。
「フフ、良い様になってきたな…
さぁ、そろそろくたばれ!」
ラストスパートの如く、水銀燈への攻撃が続いたが
「…メイメイ!」
咄嗟の判断で水銀燈が人口精霊をレミリアにけしかける
「な、何…!?」
突然の不意打ちに、攻撃から防御の姿勢に入る
「小賢しい真似を……」
弾幕が消えていき、視界が開けた時には水銀燈はすぐ目の前まで迫ってきていた
「よくもやったわね…」
凄まじい殺気を放つ水銀燈
「……っ!?」
「お返しよ、吸血鬼」
翼が大きく変異した瞬間
「ナハトシュトローム!」
至近距離から無数の羽根がレミリア目掛け射出された
「く、クソ……」
咄嗟に、凄まじいスピードで間合いを取るが、射出される羽根も恐ろしく早く、服と体を切り裂く。
「うゎぁぁっ!」
激痛に顔を歪めるレミリア
「駄目押しよ!」
水銀燈の黒い翼が巨大な双頭の竜のように変異する
「デートリッヒバイセン!」
その翼が一気にレミリアに襲い掛かる。
「…舐めるなぁ!」
レミリアも対抗し反撃に出る
「紅符『不夜城レッド』!」
スペルが宣言されると、赤色のオーラが十字架のようにレミリアから放出される
「な、何…」
水銀燈の翼の攻撃とレミリアの攻撃がぶつかる
「このスペルは、お前には破れないわよ!」
翼がそのオーラに触れた瞬間
「……っ!!?」
全くと言って良い程、水銀燈の攻撃が無効化され
「うがぁぁぁっ!?」
跳ね返されると同時に、水銀燈にダメージが与えられた。
「…はぁっ!」
地面に着々するが、思った以上のダメージを受けており、膝をついてしまった。
「このぉ……!!」
水銀燈は歯噛みしレミリアを睨み付けた。
その表情は、今までで初めて見る程に苦しそうであった。
「…やってくれるわね……人形……」
レミリアもまた、地面に降りてくる。
既に血で紅く染まっている服が、切り裂いた傷口から出る血でもう一つ紅く染まっていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
力を奪われながら闘い、更に全力での闘いにより、レミリアは予想以上に体力を消耗していた。
「パチュリー様、お嬢様が押されています…!」
パチュリーの回復魔法で、起き上がる事が出来るようになった咲夜が、その様子を見て冷や汗を流していた。
「そうね…、このままではレミィが先に倒れるわ…」
自身も少しだけ回復し、戦闘を繰り広げる二人を見て予測していた。
「何とかお嬢様を助けなければ…」
「でも、貴女…」
「まだ怪我が治ってないからと言って、じっとはしてられません!!」
「……っ!?」
咲夜の鬼気迫る表情に、パチュリーは驚く
「……っ!申し訳ありません…」
驚くパチュリーを見て我に返った咲夜は、直ぐに詫びた。
「いいのよ…、貴女の言う通りよ」
「パチュリー様…」
「レミィを、助けましょう…」
「はい! では…」
二人がレミリアに近付こうとした時だった
「手出しは無用だ!!」
レミリアの怒鳴り声が、二人の歩みを止めた。
「そ、そんな身体で無茶しては駄目よレミィ!」
「そうですお嬢様! これ以上はお嬢様の身が…」
「下がっていろぉ!!!」
「「……っ!」」
レミリアの身を案じる二人であったが、それでもレミリアは頑なにそれを遮った。
「この人形は、私の手で葬る!」
握り締められた拳からは、血が滴っていた。
「……分かったわ、レミィ…」
レミリアの強い信念を感じたパチュリーは一歩下がり咲夜に言った。
「咲夜、手出しせずに見守りましょう…」
「そんな、お嬢様が……」
「…今、私達が手を出せば彼女の尊厳を傷付ける事になるわ…」
「で、でも…」
「こんな事はしたくないけど……今は、レミィを信じて祈りましょう…」
「……っ」
静かに語り見守るパチュリー、咲夜は悔しさを滲ませながらも黙って見守っていた。
「(二人共……ごめんなさい…)」
大人しく引き下がった二人を横目で見て、レミリアは心の中で詫びた。
その様子を見ていた水銀燈は、不満げな表情をしていた。
「わざわざ仲間が助け舟を出したというのに、お前は何故拒否したのかしら?」
「言った筈だ、貴様は私の手で殺すと…」
「やせ我慢なんてしなくていいのよ? そんな状態で私に勝てる見込みは無いわよ、吸血鬼」
「黙れ! 貴様のローザミスティカの灯はもうすぐ消える事になる!」
「そう…、吸血鬼って本当にバカなのね…」
そう言うと、水銀燈は手を前に出す
「そこまで言うなら…」
数枚の羽根が集まりだし、そして光を出しながら変異し、剣へと変わった。
「本気で、ズタズタのジャンクにしてやるわ!」
「フンッ…、貴様がそう来るなら、私も見せてやろう」
レミリアの手から紅い槍が形作られる
「神槍『スピア・ザ・グングニル』」!」
「私が剣なら、お前は槍か……良く出来たものね…」
「本来は相手に投げつけるものなのだがな、これで貴様と肉弾勝負をしてやる」
お互いに構えに入る
「思い知らせてやるわ、そんな物で私には勝てない事を」
「やってみろ、そんな玩具のような剣、叩き折ってやる」
「行くわよぉ!!」
「行くぞぉ!!」
遂に、剣と槍のぶつかり合いが始まる。
「はぁぁっ!」
水銀燈が丸い円を描くようにして剣を振りかざす
「おぁぁぁ!」
『カーンッ! カーンッ!』
ぶつかり合う音が響き、その度に館全体が揺れるようであった
「うらぁぁっ」
レミリアの槍が水銀燈の胴を捉えように見えたが
「甘い!ほらぁぁぁ!」
『ガキーンッ!』
激しく剣を振るい、レミリアに一撃を払う
「せぃぁぁぁぁ!!」
一気に畳み掛ける水銀燈
「はぁぁぁぁっ!」
それに負けない気迫でレミリアは槍を突き出す
「そこっ、隙だらけよ!」
槍を潜るように避け、胸元目掛け剣を振る
「ぐぉぁっ…!」
間一髪で避けたように見えるも、そこから血が流れ出す
「クソォォォォ!!!」
レミリアが叫びながら、水銀燈へ迫る
「はぁぁぁぁ!」
目にも留まらぬ速さで槍を振り回す
『ガギーンッ!』
「うっ…!」
金属がぶつかり合いうような鈍い音がし水銀燈の表情が歪む。
「うぉああああ!!!」
それでも、レミリアの怒涛の攻撃は止まらない
「あああああっ!」
それを受け止め、レミリアに切り込もうとするが
『カーンッ!』
甲高い音と共に剣が止められる
「食らえぇぇ!」
横から振られた槍の一撃が水銀燈を捉えた。
「がぁぁっ!?」
衝撃で飛ばされる水銀燈、だが直後には体制を立て直す
「この…」
再びレミリア目掛け全力で飛び出す
「ガキィィィィ!!!!」
その闘いは誰も止められない
槍と剣ぶつかり合い度に
『カーンッ!』
「うおわぁぁっ!」
レミリアからは血飛沫が上がり
『ガギーンッ!』
「がはぁぁぁっ!」
水銀燈は黒い羽根が散った
そこには、弾幕ごっこの様な弾幕の美しさを競う様なものは一切無い。
あるのは、本気の殺し合いであった。
「「はぁ…はぁ… はぁ…!」」
お互いに肩で息をしており、限界は間近であった。
「もう…限界でしょ…吸血鬼」
「そういう貴様も同じだろう…」
「もう痛いのは嫌でしょ?次で殺してあげるわ!」
「それは私のセリフだ、今度こそ決着をつけてやる!」
お互いにこれが最後と感じた
そして、僅かな力を振り絞り飛び出す
「お前が」
「貴様が」
「「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
二人の限界を超えた一撃がぶつかり合う…
この戦争の結末は如何に……?
今回で終わらせるつもりが、携帯ではこれが限界だった…orz
誤字部分は、そのうち直します。