薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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いよいよ、人形登場編も大詰めです!

今回は「あの人形」なので、これまでとは展開が多少異なります。


第28話 地霊殿の異変

地底深くに存在する旧都。

 

地上のように朝日が出る訳では無いが、今日も朝から慌ただしい1日が始まっていた。

 

そんな旧都の中心部にあって一際大きな建造物がある。

 

『地霊殿』である。

 

今日も、主が目を覚ます。

 

「ううん……、朝か…」

 

そう呟き時計を見る。

ペット達が一緒に寝ていたであらうベッドから起き上がったのは、古明地さとり。 覚妖怪で地霊殿の主である。

 

「あっ…」

 

既にペット達の姿は無かったが、肌に纏わりつく不快な感触で目が覚めたと言っていい。

 

ペット達の、『おねしょ』である。

 

「毎朝、やる事が多いわね…」

 

そうぼやきながらも、嫌な顔一つせず、布団を畳んで洗い場へと持って行った。

 

布団を出し終えて、廊下を歩いていると、向こうから一人の少女がやってきた。

 

「あ、さとり様、おはようございます!」

 

「あらお燐、おはよう」

 

彼女の名前は火焔錨燐、火車の妖怪で通称お燐である。

 

「あの、朝ご飯前にすみませんが、さとり様にお聞きしたい事があるんですが…」

 

「どうしたのお燐? 構わないから言ってご覧なさい」

 

少し申し訳なさそうに尋ねるお燐に、さとりは笑顔で返した。

 

「さとり様は、何か物を買いましたか?」

 

「物? 私何か買ったかしら…?」

 

考えてみても全く身に覚えが無く、さとりは首を傾げた。

 

「何故そんな事を聞くの?」

 

「違うんですか? じゃあ、あれは何だろう…?」

 

「…あれ?」

 

その理由が分からず、さとりはお燐の心の中を見た。

 

「…お届けもの? 私に?」

 

「はい、そうなんです。さとり様、玄関にありますので付いて来て下さい」

 

そう言われ、さとりはお燐に着いて行った。

 

玄関に到着すると、何やら白い布を被せられた大きな物が置いてあった。

 

「…これが、そうなの?」

 

「はい、あたいがさっき外に出ようとした時にはありました」

 

「てことは、朝早くか夜中の段階で誰かが置いていったのね」

 

「分かりませんが、これが置いてありました」

 

お燐は懐から、白い封筒を出した。

 

それには、『古明地さとり様』だけ書かれており、差出人等は書かれていなかった。

 

「何が書いてあるのかしら…?」

 

さとりは、封筒の中から手紙を出し読み始めた。

 

その中には、こう書かれていた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

古明地さとり様

 

あなた様に新たな出会いをご提供する為に、これを贈ります。

 

これが、あなた様にもたらすものは、とてもかけがえの無いものと思い疑いません。

 

もちろん、後から費用を請求する事は一切ありません!

 

大事にご利用抱ければ、我々はこの上なく歓喜します。

 

どうか、この出会いがあなたにとって素晴らしいものになりますように…。

 

 

白崎より

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「新たな出会い……? 白崎って…?」

 

全く意図しない手紙の内容に、さとりは困惑していた。

 

「お燐、この布、取って貰える?」

 

「はい、分かりました」

 

さとりに言われるまま、お燐はそれに掛かっている布を取った。

 

「何これ…、鏡…?」

 

それは、化粧台のような机に鏡が付いたものであった。

しかも、その鏡は異様に大きく、明らかに不自然なものであった。

 

「新たな出会いって…、これが一体どうして出会いをもたらすと言うの?」

 

「あ、あの……、さとり様…?」

 

冷静な口調の中に怒気を感じたお燐は、少しおどおどしていた。

 

「誰かの悪戯なのかしらね…、悪趣味過ぎて笑えないわ」

 

「さ…、さとり様……?」

 

無表情で負のオーラを放つさとりに、お燐は顔色を伺うばかり。

 

「もちろん…、お燐じゃ無いわよね…?」

 

「ええ〜っ!?」

 

自分が疑われる事に驚き戸惑う。

だが、さとりはお燐の心を読み、これがお燐の仕業で無い事を確認した。

 

「ごめんなさい、疑っちゃって。 貴女では無いわね」

 

「は、はあ……」

 

疑いが晴れて、安堵するお燐。

 

「お燐、とりあえず、これを私の部屋に入れて置いて。 後の始末は私が考えるから」

 

「は…、はい……」

 

それだけ言い残し、さとりは館内へと消えていった。

 

「(こ…、怖かった……)」

 

何時もと違うさとりの雰囲気に、お燐は完全にビビっていた。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

朝食を済ませたさとりは、再び自室へと戻って来た。

 

「さて……これ、どうしようかしら…?」

 

部屋に置かれた鏡を見ながら、さとりは一人呟いた。

 

すると、ドアの方からカリカリと音がした。

 

「…来たのね」

 

さとりがドアを開けると、十数匹のペット達が部屋へと入ってきた。

さとりは心が読めるので、言葉が喋れないペット達からは好かれていた。

 

「はいはい、騒がないの」

 

そうペット達に言い、ドアを閉めた。

 

 

 

それからしばらく、さとりはペット達の世話をしていた。

 

すると、数匹のペットが鏡に向かって警戒しているような素振りを見せ始めた。

 

「…どうしたの?」

 

彼女の問い掛けにも、ペット達は視線を逸らさず、鏡を見ていた。

 

そして、数匹の犬が吠え始めた。

 

「えっ…、何を警戒してるの?」

 

さとりは、すかさずペット達の心を読む。

 

『何か来る…!』

 

『何かが来ます!』

 

頻りに、そう言っている感じであった。

 

「何かが来る…? 鏡から…?」

 

その意味が分からず、さとりはその鏡台を見るばかりであった。

 

すると、突然鏡が光り出した。

 

「な、何…!?」

 

するとペット達は一斉にに出口へと走って行く。

そして、いつの間にか開いていたドアから逃げて行った。

その様子は、何かに怯え恐怖しているようであった。

 

「みんな…?」

 

突然の事に、戸惑うさとり。

 

そして、その光っている鏡の中から、何者かの姿が出て来た。

 

「えっ……ええっ!?」

 

さとりは恐怖心からたじろいでいた。

 

そして、鏡から出た『それ』は、ゆっくりとさとりの前に降り立った。

 

さとりを見つめる『それ』は全くの無表情で、何を考えているかが掴めない。

 

 

「あ…、貴女……誰なの…?」

 

「あなたは……誰…?」

 

 

さとりがそう聞くと、『それ』も同じ様に返してきた。

 

「………!?」

 

それ以上に彼女は驚いた。

 

「(な、何で…? 心が……読めない…?)」

 

相手の心が全く読む事が出来ないのである。

第三の眼から全く相手の意識が伝わって来ない。

 

「(こんな事って…、こいし以外に心が読めない者がいるなんて…)」

 

 

「心…、読めましたか?」

 

「……っ!!」

 

「私の心を読もうとしても無駄です。 私は人形ですから…」

 

「に、人形…?」

 

「そう、私は人形…。 薔薇乙女(ローゼンメイデン)の第7ドール、薔薇水晶」

 

「ローゼン…メイデン…、薔薇水晶……」

 

薔薇水晶と名乗った人形。

その格好は、紫色のドレスにロングスカート、足先に薔薇の飾りが付いた同色のハイヒールのロングブーツ、髪型は紫のような色でロングのウェーブが少しかかった髪をツーサイドアップにして、紫水晶の髪飾りにをしている。

瞳は金色で、左目に薔薇模様の眼帯をしている。

 

「あなたは…」

 

人形は、続けて尋ねる。

 

「私は、古明地さとりです。覚の妖怪…」

 

「…心を読む程度の能力…ですね、地霊殿の主……」

 

「な…、何故それを……!?」

 

「全て見通しています…、だから私はここに送られて来たのです」

 

「送られたって…、どういう事ですか?」

 

「私が此処に来た理由…、それはアリスゲームを行う為です」

 

「アリス…ゲーム…?」

 

 

「アリスゲームとは、私達ローゼンメイデン達が闘い、お互いのローザミスティカを奪い合うゲームです。これに勝ちローザミスティカを奪った者はアリスに一歩近づき、奪われた者は敗者となって只の動かない人形になります」

 

そんな残酷な話を、薔薇水晶は淡々と、無表情で話した。

 

「アリスゲームを制する事が出来れば、私はお父様に会うことが出来るのです」

 

「…その、お父様に会う為に、そんな残酷な事をするのですか?」

 

「…これが、私達ローゼンメイデンに与えられた宿命…」

 

「………っ」

 

残酷な事を残酷に感じていないような口調の薔薇水晶に、さとりは言葉が出なかった。

 

「貴女の言うローザミスティカっていうのは、いわゆる…」

 

「そうです、私にとっては魂みたいな物です。これがあってローゼンメイデンは動く事も話す事も出来るのです」

 

「す、凄い…、貴女のような凄い人形が存在していたなんて…、造り主も相当な人間なんでしょうね…」

 

彼女の話以上に、さとりは薔薇水晶の事と造り主の事に驚きを隠せなかった。

 

「古明地さとり…」

 

「……!?」

 

「私はアリスゲームを制する為に、ここにやって来たのは先程も言いましたよね?」

 

「え、ええ…」

 

「その為には、貴女の力が必要なのです」

 

「私の力…?」

 

「そう、貴女は私の媒介になって貰います」

 

「な、何ですって…!?」

 

薔薇水晶のその言葉に、さとりは驚愕した。

 

「何も心配はいりません、貴女は私の側にいるだけでいい。 そうすれば、自然に貴女からの妖力を得る事が出来ます」

 

「な、何を言っているの? 貴女…」

 

この時、さとりは薔薇水晶に対して大きな恐怖心を感じていた。

心が読めなく、自分を媒介として利用しようとしている事の意図が掴めず、それが更に恐怖心を煽った。

 

「言っておきますが、貴女に拒否権はありません。 どうでも私の媒介になって貰います」

 

「…それでも、断ったらどうするっていうの?」

 

さとりは恐怖心を抑えながら、必死で薔薇水晶を睨んで言った。

 

「その時は、力ずくで…」

 

薔薇水晶は、ゆっくりとと右手をさとりの方へ向けた。

 

その瞬間、

 

 

ガンッ! ガンッ! ガンッ!ガンッ!

 

 

「……っ!?」

 

鈍い音と共に、地面から水晶の柱が出現し、さとりの周りをまるで檻のように囲った。

 

「な、何よこれ…?」

 

「もう、貴女は私から逃げる事は出来ません」

 

そう言いながら、薔薇水晶はさとりへと近づいた。

 

「さあ、私のマスターになって下さい、古明地さとり」

 

「…ふ……」

 

「さとり…?」

 

「ふざけないで!!」

 

初めてさとりが声を荒げた。

これには、薔薇水晶も一瞬怯んだ。

 

「いきなり私の前に現れて、アリスゲームとかいうものに私が必要だからって、それに私を巻き込むつもり?」

 

「………っ」

 

「力が欲しいからって私に拒否権は無いですって? 私を舐めないで欲しいわね!!」

 

「それは…、断るって意味…?」

 

「そうよ! 私は地霊殿の主古明地さとり、可愛いペット達の為にも、貴女の好きにはさせない!」

 

さとりは水晶の檻の中から力一杯叫んだ。

しかし、薔薇水晶の表情は変わらず無表情なものであった。

 

「…貴女は、今の自分の状況が分かっていてそれを言っているのですか?」

 

「もちろんよ! こんなもの…!」

 

さとりは、その水晶を掴み力を込める。

しかし、全く何も出来ない。

 

「な、何よこれ…、微動だにしない…」

 

「…無駄です。貴女如きの力でそれを破壊するなど不可能です」

 

「…こんな事をしたって、私の意志は変わらないわ!」

 

「そうですか…、ならば仕方ありません…」

 

薔薇水晶は、さとりの方へと手を翳した。

 

「なっ…!?」

 

すると、突然現れた無数の水晶の礫がさとり目掛けて飛ばされた。

 

「がぁ……ぐぁあああああっ!?」

 

その水晶の礫は全てさとりに直撃し、彼女は吹き飛ばされ反対側の水晶の檻に叩きつけられた。

 

「私の力を侮らないで下さい。 その気になれば貴女の命を奪う事など容易い事…」

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「これ以上、貴女を痛めつける事はしたくない、ですから…」

 

「…私のマスターになって下さい、さとり」

 

「…嫌よ! 絶対にお断りよ!」

 

薔薇水晶の問いに、さとりは断固と拒否した。

 

「そんな姿になってまで何故拒否するのですか? 今の貴女は馬鹿としか言いようがありません。ならば…」

 

 

本当の地獄は、ここからであった。

 




薔薇乙女第7人形…、本当の所は、旧アニメ版を見てる方なら分かりますよね?

彼女は、アレなんです…。
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