薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
家を出たアリス達は、家の前の開けた場所にまで来ていた。
「アリス、その手に持ってるのは何かしら?」
本の様なものを持っているアリスに金糸雀は質問をしてみた。
「ああ、これ?これは魔導書よ、魔法使いには欠かせないアイテムなのよ」
「へぇ、それが魔導書ってやつなのかしら…」
金糸雀は不思議そうにその魔導書を見ていた。
「…それでアリス、スペルカード勝負って言うのは…」
金糸雀がアリスの様子を伺いながら尋ねる。
「そうね、ちゃんと説明するわ。 スペルカードルールってのは、この幻想郷内での揉め事なんかが起きた時に解決する為の手段なの」
「へぇ…、幻想郷にはそんなルールがあるのかしら?」
「そうよ、さっきも言った通り幻想郷は妖怪が多く住んでるの。人間と妖怪とでは圧倒的な力の差があるから、それを解消する為のものでもあるの。
人間と妖怪が対等に戦う場合や、強い妖怪同士が戦う場合に、必要以上に力を出さないようにする為の決闘ルールなのよ」
「そ、そうなの…」
イマイチ話についていけない金糸雀だが、構わずアリスは続ける。
「それで細かい取り決めでは、決闘の美しさに意味を持たせる、意味の無い攻撃はしてはいけない、事前に使用回数を宣言する、体力に任せて攻撃を繰り返してはいけない。このルールで戦って、負けた場合は負けを認める。余力があってもスペルカードルール以外の方法で倒してはいけない。
…っと、色々細かな取り決めがあるのよ」
「な、なるほど…かしら…」
そう言ってるが、金糸雀はやはりまだ理解出来ていないようである。
「そんな難しく考える必要は無いわ、どちらかというと遊び感覚に近い決闘みたいな感じだから、例え相手との力の差があっても、このルールに乗っ取って勝負すれば勝つことも出来るのよ」
「…へぇ、細かい事は分からないけど、良く出来たルールなのかしら」
少しだけ理解出来た金糸雀は関心していた。
「だから、みんなは弾幕ごっこと言ってよく勝負してるわ、特に近くに住んでる泥棒魔法使いや湖の近くに住んでる氷の妖精辺りがね…」
そう言うと、アリスは何故か溜め息をついた。
「決闘とは言っても、アリスゲームみたいな殺伐したものじゃないのかしら〜」
金糸雀の顔に笑みが戻る。
「そうね…、でもスペルカードルールが制定される前の幻想郷は、アリスゲームのような殺し合いが毎日のようにあったわよ。 それこそ今の幻想郷からは想像がつかない位にね…」
「・・・・・・・・・」
アリスのその言葉に金糸雀は何も返せなかった。
「まあ、今はそんな事は無いから安心なさい。でも、ルールを守らない妖怪や本能だけで動く下級妖怪には通用しない事もあるから注意が必要ね」
「まあ…、大丈夫だと思うかしら…」
金糸雀の返事はイマイチ曖昧だった。
「それから、弾幕ごっこと言っても甘く見ちゃダメよ。その弾に被弾したらそれなりにダメージを食らうし怪我もするわ、当たり所が悪ければ死んじゃうかもね」
「えっ・・・・・」
そうサラッと言うアリスに、金糸雀の顔が引きつる。
「まあ、貴女なら大丈夫でしょ。何せ百戦錬磨のローゼンメイデンなんですから」
アリスはニヤリとしながら金糸雀を見て言う。
「そ、そうかしら! カナは強いかしら! 簡単には負けないかしら!」
見事にアリスの口車に乗ってしまった。
それを見て軽く笑いながらアリスは、金糸雀に告げる。
「さて、スペルカードルールの説明は終わり、大体分かってくれたかしら?」
「完璧じゃないけど大体は分かったかしら、でも弾幕はやったことは無いから出来るか分からないかしら・・・」
「まあアリスゲームじゃ弾幕は必要無いからね。大丈夫よ、これはテストだから気負う事無いわ」
「…テスト?」
「そう、貴女が私のマスターに相応しいのか、力を与えても問題ない存在なのか、試させて貰うわ」
「…わ、分かったかしら…」
どことなく緊張している金糸雀。
「最初は戸惑うかもしれないけど直ぐ慣れると思うわ、大丈夫よ貴女に合わせて勝負してあげる」
「ムッ…、その言い方何だかムカつくかしら…」
アリスの言いように、金糸雀は眉を顰めた。
「始める前に確認しておくわよ、今回は使用するスペルカードは三枚、制限時間は15分。それまでにスペルカードを全てブレイクするか、私を倒せたら貴女の勝ち。 逆に貴女が地面に膝を附くか戦闘不可能になったら私の勝ち、それで良い?」
「…分かったわ、それでいいかしら!」
金糸雀は決心したかのようにアリスに答えた。
「よろしい、それじゃ・・・始めましょうか…」
アリスの声色が変わり、一気に戦闘モードに移行する。
同時に辺りに人形を展開していく。
「(な、何!? さっきと全然雰囲気が…?)」
その威圧感に金糸雀は圧倒されていた。
「…そういえば、貴女は空を飛べるの?」
そう言って、アリスはふわりと浮き上がる。
「えっ!? 飛んだ?」
「空を飛ぶなんて、ここじゃ普通なのよ? 能力の無い人間は飛べないけど、弾幕張れるヤツは大抵飛べるわよ?」
「幻想郷って、恐ろしい所かしら…」
徒かも当たり前と言わんばかりのアリスに、金糸雀はただただ驚くだけであった。
「…って、大丈夫! カナも飛べるかしら!」
持っていた日傘を広げ、金糸雀も浮き上がった。
「フフフ…、それなら問題なさそうね」
それを確認したアリスは不敵に笑う。
「それじゃ・・・、行くわよ!!」
アリスは叫び手を翳す、同時に辺りに展開していた人形達が弾幕を打ちながら金糸雀に迫る。
「えっ!? 何!?」
いきなりの弾幕攻撃に慌てふためきながら、ギリギリでそれを避ける。
しかし、数体の人形から弾幕が放たれているから、それを避けるのは容易ではない。
しかも、始めて弾幕ごっこをする金糸雀にとって未体験ゾーンであり、避けるだけで手一杯で反撃が出来ない。
「いきなり過ぎて、これは厳しすぎるかしら〜!」
悲鳴を上げながら、金糸雀は必死で弾幕を避けていた。
「どうしたの? まだ始まったばかりよ!」
アリスは攻撃の手を緩めない。
人形達から放たれる容赦ない弾幕に、完全に翻弄されていた。
「ひぇ〜!? あ、当たっちゃうかしら〜!」
とは言いながらも、見事に弾をさけていた。
「流石はローゼンメイデンってところかしらね、身のこなしが軽いわ。・・・でも!」
ギリギリのところで避けてはいたが、僅かに隙が出来たのをアリス見逃さなかった。
「…そこよ!!」
「あっ、しまっ・・・うわぁ!?」
僅かな隙に人形達に弾幕を畳み掛けられ被弾してしまう。
「うう…、まともに当たっちゃったかしら…」
痛がる様子を見せながらも、まだまだ余裕が感じられる金糸雀にアリスが言った。
「流石ね、始めてであそこまで避けれたら大したものよ」
「…そ、そうかしら〜?」
「でも私、まだ能力の二割程度しか出してないわよ?」
「ええ〜!? あれで二割!?」
アリスの言葉に金糸雀は驚愕する。
「さて、そろそろ本格的にやらせて貰うわよ」
アリスは懐から、一枚のスペルカードを取り出した。
「スペルカード、 蒼符「博愛の仏蘭西人形」」
アリスがスペルを宣言すると、先程とは比べものにならない弾幕の嵐が金糸雀に襲い掛かった。
「ちょっと! 何これ!?」
余りの激しい攻撃に金糸雀はパニックに陥る。
「さっきのと、全然違うかしら〜!」
必死でかわす金糸雀、ギリギリで避けてはいるが、それに必死でなかなか反撃が出来ないでいた。
弾幕が少し落ち着いた所でアリスが言う。
「あら?反撃する余裕も無いかしら? 避けてるだけしゃ詰まらないわよ、貴女大した事無いわね…」
「…大した事無いですって?」
アリスの挑発じみた言葉に金糸雀はすぐに反応した。
「…いいわ、こうなれば私も本気の本気で行くかしら! …ピチカート!」
金糸雀に呼ばれたピチカートは日傘の辺りを飛び、そして光と同時に日傘はバイオリンへ変化した。
「…何よソレ?」
少し驚いたようにアリスが尋ねると金糸雀は胸を張って答えた。
「まだ貴女には紹介してなかったわね、これはカナの人口精霊のピチカートかしら! 日常の手伝いに服の補修、戦闘の補助もしてくれる最高の相棒かしら!」
「へぇ、そんな隠し玉を持ってたんだ…」
「隠し玉かどうかは分からないけど…、ここから反撃させて貰うかしら!」
「そうこなくっちゃね! 私のスペルはまだ続いてるわよ!」
アリスの弾幕が再び金糸雀を襲う。
「来るかしら!沈黙の鎮魂歌!」
金糸雀が叫ぶとバイオリンを奏でだす。
すると、衝撃波と同時に周りの弾幕を吹き飛ばす。
「弾が吹き飛ばされた…?」
「まだよ!クレッシェンド!」
金糸雀の強められたら攻撃が今度はアリスを襲う。
「ぐっ…!!」
何とか攻撃をかわすもその衝撃波に顔を歪める。
それと同時に周囲の弾幕が消えていく。
「…スペルカードブレイクね」
「ふぅ…、やっと一枚目かしら…」
一安心したのも束の間だった。
「ようやく温まってきたし、次行くわよ!」
アリスは、次のスペルを宣言する。
「魔繰「リターンイナニメトネス」!」
するとアリスは人形を金糸雀に向けて投げつけてきた。
「…何かしら? 」
「ほら! 避けないと危ないわよ!?」
「…へっ!?」
その人形が抱えていたのは爆弾だった。
「何それ・・・うわ!?」
『ドカ――ン!!』
「ぎゃぁぁぁ!?」
爆発直前で間一髪人形を避けたが、爆風で吹き飛ばされてしまう。
「何で人形が爆弾なんか…」
「まだあるわよ!気を抜かない事ね!」
そう言うと、アリスは金糸雀目掛けて次々と人形を投げつけた。
「ほら!ほら!!」
「ひぇぇぇ!! しゃ、シャレにならないかしらー!」
投げては爆発する、その繰り返しであったが金糸雀はギリギリながら避けていた。
「ていうか、人形を爆発さするなんて酷くないかしら!?」
「そんなことは無いわ、用済みになれば爆発させて命の無い状態へ還す、とってもエコロジーじゃない?」
「エコロジーとか、訳分からないかしら!」
既に、金糸雀の服はボロボロであった。
「さあ、これでラストよ!」
アリスは最後の人形を金糸雀に投げた。
しかし、金糸雀は既にそれを読んでいた。
「もう同じ手には食わないかしら! 第一楽章 攻撃のワルツ!」
金糸雀がバイオリンを奏でだすと、音の衝撃波により人形を跳ね返す。
そして、その人形はアリスに迫ってきた。
「・・・えっ!?」
思わぬ反撃にアリス一瞬固まってしまう。
「…はっ! やば・・・」
とっさに避けるも、すぐ近くで人形は爆発してまう。
『ドカ――ン!!』
爆音と同時に爆風がアリスを襲う。
「ぐわぁっ・・・!!」
その衝撃によって、アリスの腕から血が流れていた。
「…あっ、アリス!大丈夫かしら!?」
それを見た金糸雀が慌ててアリスに近づいてきた。
「…大丈夫よ、これ位まだ生温いわ。 心配してくれてありがとね」
アリスはそう言って笑顔を見せるが、やはりかなりダメージを受けたらしく苦悶の表情も伺わせた。
「でも貴女凄いわ、あれだけの攻撃だけで私にダメージを与えるなんて…、流石はアリスゲームで鍛えただけあるわね」
「そ、そうかしら? 何か照れるかしら♪」
金糸雀は顔を赤くして照れていた。
「でも…、まだ終わりじゃないわ」
そのアリスの言葉に金糸雀は、はっと我に返る。
そしてアリスは再び金糸雀と距離を取る。
「本当は使うつもりは無かったんだけどね…、気が変わったわ。 少し本気で行くわね」
「・・・っ!」
アリスは最後のスペルカードを出す。
「見せてあげるわ!私のラストスペル!」
「く、来るかしら!」
2人は身構え戦闘モードに入る。
「グランギニョル座の怪人!!」
「終わりのない追走曲(カノン)!!」
2人の攻撃が激しくぶつかり合う…。
勝負は、いよいよ最終局面へ…。