薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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第2章は、薔薇乙女達の日常を中心に描いていきます。

まだ見ぬ幻想郷を冒険して、色んな出会いと交流をしていくドール達。

和やかだったり、一悶着あったりと大変です^^;

そして、姉妹達の再会もあります。
それは、アリスゲームへの序章…。


第2章 薔薇乙女達の日常 そして、再会…
第31話 真紅を追跡する妖精達


「霊夢、紅茶はまだ?」

 

「うるさいわね! こっちはまだ掃除をしてるのよ!」

 

境内に霊夢の怒声が響いていた。

 

博麗神社に住むようになった真紅の今の日課は、幻想郷縁起を読む事。

初めての土地で過ごすには、これほど参考になる書物はない。

 

真紅は、貪るようにそれを読んでいた。

 

「なるほどね…、この幻想郷はあらゆる種族が共生しているのね。 妖怪は人間を食らって生きているか…、物騒な事だけど、考え方によっては弱肉強食ってヤツね」

 

一人納得するように呟く真紅。

 

「霊夢、掃除が遅いわよ? 何時まで掛かってるの?」

 

「あんたはそうやって一日中本を読んでるだけで気楽なもんでしょうけど、私は一人でやることやってるんだから忙しいのよ!」

 

「何を言ってるの、昨日は縁側でだらけてたじゃない」

 

「うっ…」

 

「しかも、だらしない格好で昼寝までしちゃって、巫女が聞いて呆れるわ」

 

「昼寝位したっていいじゃない! 何で一々文句言われなきゃいけないのよ!?」

 

「腹を出して昼寝するのは、レディのする事じゃないわ!」

 

「くぅぅ…!」

 

「貴女は博麗の巫女としては、凄い実力の持ち主かもしれないけど、一人の女性としては、まだまだ成ってないわ」

 

「言わせておけば…!」

 

「現に…、掃除をしてる割には全然片付いてないじゃない」

 

「そ、それは…」

 

それは、部屋の中は出した物が出しっ放しだったり、食べかすがそのまま放置だったりを指していた。

 

「参拝客なんて来ないんだから、部屋の掃除からしなさい」

 

「そんなの分からないでしょ!? 絶対なんて無いんだから!」

 

「実際、昨日だって誰一人来なかったじゃない、本当に侘しい神社ね…」

 

「あんたのせいよ!」

 

「何で私のせいにされるの? 意味が分からないわ」

 

「あんたが来てから、ロクな事無いわよ! 紅茶を入れろだ、部屋は清潔にしろだ、服はちゃんと整えろだとか、私は使いっぱしりじゃないのよ!」

 

「何を言ってるの? 貴女は私の下僕よ」

 

「ただの疫病神よ!」

 

「うるさい下僕ね、静かに読者も出来ないじゃない…」

 

「このぉぉぉ…!」

 

真紅が来てから、毎日の様にこんなやり取りが繰り返されていた。

 

「紅茶は後よ、そこ退きなさい!」

 

「何をするの?」

 

「あんたが掃除しろって言ったでしょ? 今からやるから邪魔しないで!」

 

そう言って半ば強引に部屋の掃除を始める霊夢。

 

「全く、使えない下僕ね…」

 

「あんたも少しは手伝いなさいよ!?」

 

「嫌よ、面倒臭い」

 

「こいつぅぅぅ…!」

 

青筋を浮かべる霊夢に、真紅は溜め息を付いた。

 

「仕方ないわね…、しばらくその辺りを散歩してくるから、それまでに終わらせておきなさい、それから紅茶の準備も忘れないこと」

 

「一々指図すんなぁ! もう帰って来なくたっていいわよ!」

 

「全く、今度の下僕は世話が焼けるわね…、上手く手懐ける方法は無いものかしら…」

 

いきり立つ霊夢を余所に、真紅はブツブツ呟きながら、神社の石段を降りていった。

 

その様子を、茂みから伺う者がいた。

 

「よし…、神社を出たわよ」

 

「本当に追うの、サニー?」

 

「大丈夫よ、私達の姿は見られては無いんだから。 スター、後はお願いよ」

 

「任せて、あの動きなら見失う事は無いわ」

 

「何となく嫌な予感がするわ…」

 

「ルナはビビり過ぎよ! それよりも、ルナも音を消してよ」

 

「…分かったわ」

 

「準備万端ね!それじゃあ、追跡開始!」

 

「「おー!」」

 

そうして、真紅の後を追い三匹の妖精が動き出した。

 

 

 

石段を降りた真紅は森の中の参道を歩いていた。

 

「長閑な場所ね、この辺りは」

 

虫と鳥の鳴き声が響く森の中を当てもなく歩く。

 

「でも、これじゃ参拝客が来ないのも納得ね。 こんなに鬱蒼としてちゃ、参道というより獣道ね…」

 

真紅から約100m離れてた所から3人の妖精が後を追っていた。

 

「何処に行くのかしら…?」

 

「あの感じだと、特に当てがある訳では無さそうだけど」

 

「ところでサニー、何処で仕掛けるの?」

 

「仕掛ける!?」

 

「そうよ、あの人形を打ち負かしてやるのよ、それにはタイミングが大事なんだから」

 

「そんな無茶な! 霊夢さんだって負けたのよ!?」

 

「そりゃ、正面からぶつかれば勝ち目は無いかもしれないけど、そこはこのサニー様の頭脳プレーを見せてあげる!」

 

「そんなの無理よ! 勝てっこないわよ!」

 

「ちょっと二人共、これ以上離れたら見失っちゃうわよ!」

 

「さあさあ、早く行くわよ」

 

「もうヤダ…」

 

嫌がる一名を無視して二人は追跡を続行した。

 

 

「……ホーリエ、はぐれちゃ駄目よ」

 

辺りを飛び回る人口精霊に、声を掛ける真紅。

 

しばらく歩いていると、

 

「……っ?」

 

目の前が闇に包まれ出した。

 

「何かしら? まだ日は高い筈なんだけど…」

 

「フフフ、見つけたのだー!」

 

「……っ!」

 

すると、闇は薄れ、その中から1人の少女が現れた。

 

「貴女…、誰?」

 

「私は、ルーミアなのだー」

 

「…ルーミア?」

 

「貴女は食べてもいい人類?」

 

「人類?」

 

ルーミアの言っている事がイマイチ分からない真紅であった。

 

「まさか…、貴女は私が人間だと思っているの?」

 

「違うのかー?」

 

「残念だけど、私は人間じゃないわ、人形よ」

 

「人形…?」

 

「そう、ローゼンメイデンの第5ドール、真紅」

 

「ローゼン…メイデン…?」

 

「ローゼンメイデンは人形よ、分かってくれたかしら?」

 

「そーなのかー」

 

「…思い出したわ、貴女は闇を操る妖怪ね、幻想郷縁起に貴女の事が書いてあったわ」

 

「そーなのだー、私は妖怪なのだー。 食べちゃうぞー!」

 

「貴女…、人の話は聞いてたの?」

 

「人形なんて言って実は人間だろー? 騙されないぞー!」

 

「貴女って、案外バカなのね。 これを見てもまだそんな事が言えるの?」

 

すると、真紅は自分の腕の球体関節を見せた。

 

「何それ?」

 

「球体関節よ、見たこと無いかしらね?」

 

「そんなの分かんない! もう食べちゃうぞー!」

 

ルーミアの周りが闇に包まれ出す。

 

「はぁ…、見た目相応におつむの弱い子ね…、仕方ない」

 

溜め息混じりに呟いたが、次の瞬間には目つきが鋭くなった。

 

「言って分からない子はお仕置きが必要ね、痛い思いをするのは覚悟しなさいよ?」

 

「さぁ、私から行くぞー!」

 

「…ホーリエ」

 

真紅の呼び掛けに、ホーリエは瞬きながら闇の中へと向かった。

 

「…えっ!?」

 

「あらっ、貴女の姿、良く見えるわよ」

 

闇の中、ホーリエの光に照らされたルーミアの姿がはっきりと見えた。

 

「ひ、ひぃぃ…!」

 

「さあルーミア、歯を食い縛りなさい…」

 

真紅は、不敵な笑みを浮かべながらルーミアの方へと進んだ。

 

 

そこから、少し離れた場所で3人はその様子を見ていた。

 

「あの人形、ルーミアと対峙してるわね」

 

「ルーミア、運が悪すぎるわ…」

 

「やっぱり、あの人形が勝つのかしら?」

 

「そりゃ、あの人形は強いからねえ。 私達の想像以上よ」

 

「…あれ?あの人形、暗闇の中に入って行ったわよ!?」

 

「あの中に入って行くなんて、ちゃんと見えてるのかしら?」

 

3人がそんな会話をしていると、

 

 

ドガッ! ゴガッ! バギッ!

 

 

と、その方向から鈍い音が聞こえた。

 

「えっ…、何が起きてるの…?」

 

 

「ここからじゃ、見えないわね…」

 

「もう少し近付いてみる?」

 

「ダメよ! 下手に近付くとバレちゃうわよ!」

 

 

3人がそう言ってる間に、その闇はゆっくりと晴れていった。

 

「ふう…、手応えの『て』も無かったわね」

 

「きゅぅぅぅぅ…」

 

そこには、痣だらけになり目を回して倒れているルーミアがいた。

対する真紅は、傷はおろか服の乱れすら無かった。

 

「妖怪って、人間より強いって本に書いてあったけど、この子は例外なのかしら?」

 

呆気なく勝負がついてしまい、少々残念そうな真紅であったが、

 

「…分かってるわホーリエ。 少し離れた所に3人居るわね…」

 

後ろから付いて来ていた3人の事に気付いていたのだ。

 

「脅かしてみましょうか。 ホーリエ、仕掛けてちょうだい」

 

真紅の指示にホーリエは3人の方へと飛んで行った。

 

そうとは知らない3人は、まだ議論を続けていた。

 

「ねえ、闇が消えたわよ」

 

「…終わったのかな?」

 

「ルーミアはどこ?」

 

「あそこにいる筈なんだけど…」

 

「…あれ? あの人形は?」

 

「そういえば……」

 

3人が動こうとした瞬間、突然現れた人口精霊が眩しく光り出した。

 

「えっ!? 何よこれ!?」

 

「うわっ、眩しい…!」

 

一瞬の出来事であったが、3人は完全に怯んでしまう。

 

「もう! 一体何だったの………っ!!?」

 

その瞬間、スターの表情が恐怖で凍り付いた。

 

「…どうしたの、スター?」

 

「…動くな」

 

「ひぃぃっ!?」

 

3人の目の前には、ステッキを向けた真紅が立っていたのだ。

 

「貴女達、神社から私をずっとつけてきたわね?」

 

「あわわわ…」

 

「私に何か用? 何が目的なの?」

 

「あ…、あの……その……」

 

「答えられないの? そんなにやましい事を考えていたのかしら?」

 

「いや……そ、それは……」

 

威圧感ある真紅の問いに、3人は恐怖でそれ以上言葉が出なかった。

 

「黙秘するなら、私にも考えがあるわ」

 

すると、真紅は手を出し、そこから無数の花弁を放出し、3人の周りに展開した。

 

「ななな何これ…?」

 

「この薔薇の花弁は、お前達に照準を合わせている」

 

「え、えぇぇぇ!?」

 

「私の指示一つで、お前達に襲い掛かるわ」

 

「あ…、あぁぁぁ…」

 

「それが意味するものは………死」

 

「「「ひぇぇぇぇぇぇ!!」」」

 

恐怖の余り、3人は悲鳴を上げ尻餅を付いた。

 

「ご、こめんなさい! 悪気は無かったんです!」

 

「ただ、貴女に興味があって追跡しただけなんです!」

 

「嘘じゃありません、本当なんです!だから、許して下さーい!」

 

3人は、真紅の前で土下座して謝った。

 

「はぁ……、それだけの理由なら、コソコソする必要は無かったんじゃないの?」

 

そう言うと、真紅は警戒を解き、展開していた花弁は消えていった。

 

「私に興味があるのなら、最初から話掛けて来れば良かったでしょ?」

 

「それは…、その……声を掛け辛くて…」

 

「話掛けて来た相手をいきなり攻撃するような野暮な事はしないわ」

 

「は、はぁぁ……」

 

「聞いてたかもしれないけど、私は真紅よ、薔薇乙女の第5ドール。貴女達は?」

 

「は、はい。 私はサニーミルクです」

 

「私は、ルナチャイルドです」

 

「私は、スターサファイアです」

 

「サニーにルナにスター…、貴女達は妖精なのね?」

 

「えっ? 私達を知ってるんですか?」

 

「ええ、霊夢から話は聞いてるわ。 神社の裏のミズナラの巨木に住んでる妖精がいるって。 貴女達の事だったのね」

 

「は、はい!そうなんです! そのために私達は霊夢さんと勝負したんですから!」

 

「結果は秒殺だったけどね…」

 

「おかげで、堂々と神社に住めようになったんです」

 

「そう…、あの霊夢に挑むなんて、貴女達なかなか度胸があるじゃない」

 

3人の会話を聞いて、真紅は無意識に笑みがこぼれた。

 

「対した事じゃないですよ…、でも、あの時は死ぬかと思いました…」

 

「でも、幻想郷縁起では貴女達妖精は自然が維持される限りは、死んでも蘇るって書いてあったわよ?」

 

「まぁ、間違いじゃないけど…」

 

「あらっ、ごめんなさい。 そんなつもりで言った訳じゃ無かったんだけど」

 

「「「あはははははは…」」」

 

サニー、ルナ、スターは引きつった笑みを浮かべていた。

 

「それじゃ、貴女達」

 

「はい、何ですか?」

 

「私の後をコソコソ付けてきたお詫びに、紅茶をご馳走なさい」

 

「紅茶ですか?」

 

「ええ、貴女達の家でね、いいかしら?」

 

「はい!じゃ付いて来て下さい」

 

そうして、サニー達は真紅を自分達の家へと案内した。

 




真紅に焼きを入れられたルーミアさん。

可哀想だけど、何故か残酷には感じない件w

続きます。
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