薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
ほのぼの、コメディ、シリアスで構成されてます。
残酷描写は無しっす。
「…これが、貴女達の家なの?」
「はい、此処が私達が住んでいる木です」
サニー達に案内されて来たのは、神社の裏にあるミズナラの巨木の前であった。
「随分と立派な木に住んでいるのね」
「住み心地は抜群ですよ」
「入り口は上の方ですが、真紅さんは飛べるんですよね?」
「ええ、問題ないわ」
4人は飛び上がり、枝の影にある扉から中へと入った。
「へぇ…、思った以上に広いわね…」
外観以上に広く整った内部に、真紅は感慨深く呟いた。
「紅茶は、今用意しますので、そこに座って待ってて下さい」
「分かったわ、お願いね」
スターに言われ、真紅は椅子に座った。
「丁度いいサイズね、私と貴女達は体格が似てるから便利ね」
「そうですね」
紅茶を入れるスターを除く3人は、テーブルを囲み雑談をしていた。
「真紅さん、紅茶ですよ」
「ありがとう」
紅茶を入れたスターが混ざり、4人での会話が始まった。
「ところで、貴女達はどういう関係なの?」
「関係……ですか?」
「姉妹では無いんでしょ?」
「はい、姉妹ではありませんが、私達ずっと昔から一緒にいるんですよ」
「たまには喧嘩する事もありますが、仲は良いですよ」
「こうして、お互いに助け合って、毎日過ごしてるんです」
「でも、このメンバーの司令塔は私ですよ!」
「サニーが色々と面白いアイデアで遊びを考えるんです」
「まぁ、大体後で痛い思いをするんだけどね…」
楽しげに話すサニーとスター、笑顔ながら溜め息混じりに呟くルナ。
「そう、毎日充実しているのね」
「はい、やっぱり楽しまなきゃ損ですよ!」
「真紅さんも、何かしら趣味はありますよね?」
「そうね…、毎日の主な過ごし方は読書だけど」
「読書も良いけど、外で飛び回って悪戯した方が、もっと面白いですよ!」
「紅魔館に忍び込んだ時のドキドキ感は、スリル満点だったわね」
「あれは、後でエラい目にあったわよ…」
「他にも、氷の妖精に喧嘩を売って戦争したり…」
「妖精大戦争なんて言われて、幻想郷中の語り草になってますよ!」
「結局、負けちゃったけどね…」
「ルナが押し切れなかったら、負けたのよ!」
「何よ!サニーだって意気揚々で切り込んで、呆気なく負けたじゃ無いの!」
「最後はもう一息だったんだけどねえ」
3人の会話を真紅は静かに紅茶を飲みながら聞いていた。
「ふふふ…、本当に仲が良いのね貴女達は、羨ましいわ…」
微笑んではいたが、その表情は何処か哀しげにも見えた。
「…真紅さん?」
「私達ローゼンメイデンは、アリスになる為にお互いのローザミスティカを奪い合わなければならないの、姉妹でもありライバルでもあるの」
「あっ……」
「時には話位する事はあるけど、それだって稀な事なのよ。 アリスゲームは最後の一人になるまで続くもの、そこに馴れ合いや兄弟愛なんてものは無い…」
「………っ」
「だからね、貴女達がとても羨ましく感じるのよ。 何の悩みも無く、毎日が楽しく過ごせる事が…。 そんな何の変哲も無い毎日が、私達ローゼンメイデンにはとても尊いものなのよ」
「「「………っ」」」
真紅の言葉に、3人は何も言えなかった。
同じ姉妹なのに、アリスゲームで争わなければならないという過酷な運命、妖精には想像が出来ない程のものであった。
「…そんなに悲しい顔しないでちょうだい、貴女達はそんな事は気にする必要は無いわ。 私といる間は笑顔でいて欲しいのだわ」
神妙な面持ちの3人に、真紅は笑顔で話し掛けた。
「ごめんなさい…、真紅さんの今の話を聞いてたら、私達って何て無力なんだろうって…」
「同じ姉妹で争うなんて、私達では考えられません…」
「何だか自分達の起こす騒動が、バカらしく感じます…」
「そんな事は無いわ、妖精は妖精らしくすれば良いのよ」
「…真紅さんは、それでもやっぱり…」
「ええ…、私は私のやり方でアリスゲームを制するわ」
「真紅さん…」
サニーの問いに真紅ははっきりと答えた。
「そのために、霊夢と契約したんですから…、あの子から供給される力は想像以上だったわ。 今ならアリスゲームを制する自信がある」
「……っ!」
「だから…、貴女達といる間は楽しく過ごしたいのだわ。 貴女達に悲しい顔は似合わないですもの」
「「「………っ」」」
少しの間、部屋の中に静寂が広がった。
「さあ、笑ってちょうだい…」
真紅が、微笑みながら3人に促した。
「は…はい、そうですよね!」
「私も、真紅さんとは仲良くお話がしたいです!」
「いつでも遊びに来て下さいね!」
「サニー、ルナ、スター、ありがとう…」
「真紅さん、私達とお友達になりましょうよ!」
「そうですよ、私達と色々遊び回りしましょう!」
「そうね…、貴女達といると楽しそうね…」
そう言って真紅は紅茶を飲むと、一呼吸置いて続けた。
「でも、貴女達は友達というより従者の方がいいわね」
「えっ!? 従者ですか?」
「そんなに驚かなくてもいいわ。 私には霊夢という下僕がいるんですから」
「というと?」
「私に紅茶を入れたり、まだ知らない場所を案内したりといった感じかしらね…。 幻想郷に来てまだ間もないのだから、案内役が必要なのよ」
「は、はい!私達で良ければ何処でも案内しますよ!」
「場所にもよるけどね…」
「遊びに来てくれれば、何時でも紅茶を出せますよ!」
「ふふふ…、気に入ったわ貴女達。 いつまで幻想郷に居れるかは分からないけど、その間はよしなにお願いね」
「「「はーい!」」」
「そうだ、今お菓子も持ってきますが、紅茶のお代わりは如何ですか?」
「お願いするわ」
「今度は、私が入れるわ」
「じゃ、ルナお願いね、私はお菓子を用意するから」
ルナとスターが台所へと向かった。
「ところでサニー、今度は何処に案内してくれるのかしら?」
「そうですね、それじゃ……」
そうして、妖精三匹と人形一体との楽しくティータイムは、夕暮れまで続いた。
―――――――――――――――――――
あれからしばらく、外は日が暮れ始めていた。
真紅は、懐から懐中時計を出し、時間を確認した。
「あら、もうこんな時間なのね。 そろそろお暇するわ」
「もう、帰っちゃうんですか?」
「ええ、でないと霊夢にお小言を言われるのだわ」
「何となく、想像つきます…」
「時間が経つのが早すぎるわ…」
「大丈夫よスター、また来るわ」
「それじゃ、神社まで送りますよ!」
「あらっ、別にそこまでして貰わなくても良いわよ?」
「大丈夫です、全然近いですから!」
「そう…、それじゃ貴女達の好きにしてちょうだい」
「ルナとスターはどうする?」
「わ、私も行くわ!」
「私も!」
「それじゃ真紅さん、行きましょう!」
「本当に仲がいいわね、ふふふ…」
そんな仲睦まじい3人の様子を見て、真紅は穏やかに笑った。
4人は神社裏から母屋まで、話ながら歩いていた。
縁側へ行くと、早速霊夢が現れた。
「やっと帰って来た…、あんた何処に行ってたのよ!?」
「あらっ、心配してくれてたの?」
「そうじゃ無いわよ!あれから、 掃除を済ませてちゃんと紅茶を用意しておいたのよ?」
「そう…、貴女の事だから、てっきりそんな事忘れて昼寝でもしてるかと思ったのだけど」
「あんたね…、自分で言っておいて、それは無いでしょうが!」
「貴女って、案外真面目じゃない、口ではああ言ってても、やることはやってるのね。 少しは見直したわ」
「ななな何言ってるのよ!? 当たり前でしょ!」
真紅に突かれ、慌て出す霊夢。
「ああ、霊夢さんが慌ててる…」
「霊夢さんって、直ぐに顔に出るわね」
「霊夢さん、素直じゃないですよ?」
「う、うるさいわね! ていうか、何であんた達が此処にいるのよ!?」
「この子達は、私と一緒にいたのよ」
「…あんたと?」
「ええ、この子達の家で紅茶を頂いたわ」
「沢山お話もしたんですよ!」
「とっても楽しかったです!」
「あんた達…、何も無かったの?」
「えっ? 何がですか?」
「いえね、説教を受けたりとか、小言を言われたりとか…」
「いえ、紅茶の入れ方は色々指導を受けましたが、それ以外は楽しく雑談してましたよ」
「そ、そうなの…(何、この依怙贔屓されてる感じは…)」
「この子達、紅茶の入れ方は上手いわよ。 私が少し手解きをしただけで、美味しい紅茶が入れられる様になったのだから。 貴女よりレディとしての素質があるわ」
「悪かったわね! 私は紅茶なんて性に合わないのよ! 緑茶が一番口に合うのよ!」
「貴女のそういう所って、本当に年寄り臭いわね…」
「な、何ですってぇぇ!?」
真紅のダメ出しに、霊夢の額には青筋が浮かんでいた。
「まあまあ霊夢さん、落ち着いて…」
「うるさーい! あんた達はさっさと帰れー!」
「「「うわぁぁぁぁい!」」」
霊夢の怒声に、3人は一目散に逃げ出した。
しかし、何故か楽しそうであった。
「止めなさい霊夢、大人気ない…」
「コイツはコイツで…」
「…でも、貴女も紅茶を用意して待っててくれたなんて、悪い事をしたわね…」
「…えっ!?」
「ありがとう、霊夢…。 明日は貴女の紅茶を飲ませて貰うわ」
「あ…あぁ……、うん……」
真紅から告げられた思いがけないお礼に、霊夢は戸惑ってしまった。
「それにしても、あの妖精達、良い子達じゃない?」
「そう? 神社の手伝いをさせても、どこか抜けてるし、全然捗らないのよ?」
「…確かに、妖精らしく何処か間が抜けてる所もあるけど、根は真面目で素直な子達よ」
「でも、妖精なんてボウフラみたいに沸いて出て来るし、ピチュったって直ぐ生き返るし…」
「そういう言い方は止めなさい」
「……っ!?」
真紅が僅かに語気を荒げた事に、霊夢は驚いた。
「例え妖精であっても生きているのよ? 命ある存在に変わりは無いわ」
「で、でも妖精は…」
「貴女は妖怪退治を生業にしているから、命の尊さ軽視しているのかもしれないけど、私はそういうのが許せないの…!」
「………っ」
霊夢はそれ以上反論が出来なかった。
それは、アリスゲームでローザミスティカの奪い合いをしているからこそ、その尊さを良く理解しているし、またその言葉には重みも感じられた。
「妖精も妖怪も命あるものに変わりは無い、矢鱈無闇に脅かすものじゃないわ。 勿論、例外もあるでしょうけど…」
「…その言い草だと、何か心当たりがあるの?」
真紅の最後の一言に霊夢は直ぐに感づいた。
「ええ、今日森を歩いていたら、妖怪が襲って来ようとしたから…」
「…それで、どうしたの?」
「身に降る火の粉は振り払ったわ」
「そう…、ちなみにソイツはどんな妖怪だったの?」
「闇を操る妖怪だったわ、確か名前は……ルーミアだったかしら?」
「ああ、アイツね…(ルーミア、運が悪かったわね)」
それを聞いた霊夢は、心の中で合掌した。
「知ってるの?」
「まあね、私も以前退治したことがあるからね」
「そう…、懲りてないって訳なのね」
「妖怪なんて、みんなそんなものよ」
「そうなのね…。それより、霊夢」
「何よ?」
「夕食は出来てるの?」
「もう出来てるのわよ、後は皿に盛るだけよ」
「そう…、それじゃ食べましょう。 貴女の作る料理は美味しいわよ」
「はいはい、準備するから上がりなさい」
「質素な献立なのが、たまに傷だけど…」
「あんたって…、一言余計なのよ…」
そうして、二人は家の中へと入って行った。
夜の森の中
「あの人形!絶対に仕返ししてやるのだー!!」
ボロボロのルーミアの叫びが木霊いていた。
しかし、彼女はまだ知らない。
その人形が、霊夢との弾幕ごっこに勝つ程の強者である事を。
彼女では、敵う筈が無いのだ…。
ルーミアの出番は、まだある……はず(ぉ
今後の予定は、1ドールに固定せず、ある程度話を進めたら次のドールに話を回すという進め方にします。
薔薇乙女達はネタが豊富なので、3ターン位は楽に話がありますw
3ターン目か、その後のターンで姉妹達の再開へと進みます。
あくまでも予定なんで、フラグはへし折るものです( ̄∀ ̄)