薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
しかし、そこで待ち受けていたのは…。
「お前、一応飛べたんだな」
「そりゃ、出来るですよ」
2人は、ある場所へ向かって飛んでいた
「しかしなあ、これで良かったのか?」
「仕方ねぇです、材料集めだけで時間は掛けられないわ…」
2人が向かっていたのは…、
紅魔館である
幻想郷に来て間もない翠星石に紅魔館は荷が重いと慧音が忠告したのだが、直ぐにでも材料が欲しい翠星石は、確実に材料が入手出来るという理由から紅魔館に行くことを渋々選択したのだ
最も、人里での材料調達に思いの外時間が掛かってしまい、尚且つお菓子作りもそれなりに時間が掛かるため、そうゆっくりもしていられなかったとう事もあるのだが
「本当に紅魔館で良いのか? アリスの所に行っても良いんだぞ?」
「良いわよ…、その人形遣いも気になるけど、早くクッキー作りがしたいです」
多少迷っている様子の翠星石だったが
「少し材料を分けて貰うだけです…、そうです、直ぐ終わるです…、何も問題無いです……」
決心を決めたかのように、ブツブツと1人で呟いていた
「大丈夫かな…? 私もついてるから問題無いとは思うが…」
妹紅も、溜め息をつきながら呟いた
しばらく飛んでいると、霧の湖の向こうから赤い建物が見えてきた
「翠星石、あれだ。 あれが紅魔館だ」
「うわぁ…、噂通りの真っ赤な建物ですねぇ…」
2人は会話をしながら紅魔館の門前へと降り立った
「さて…、一応門番に許可を取ってみるか…」
門の前まで近付いてみると、そこには相変わらず立ちながら居眠りをする美鈴の姿があった
「zzzz………」
「妹紅、あれって…」
「ああ、あれが門番の紅美鈴だ」
「よく居眠りしてるなんて本に書いてありましたが、これほど堂々と寝ているとは…」
その様子を2人は冷ややかに眺めていた。
「…だかな、気を付けろよ。 コイツはこう見えて抜け目無いからな」
「えっ、どういう事ですか?」
「まあ、見てな」
そう言うと、妹紅は手から火の玉を作り出し、美鈴目掛けて放った
「そらよぉ!」
「……っ! はぁぁっ!」
眠っていた筈の美鈴は突如目を覚まし、それを拳で撃ち落とした
「何者だ!?」
「…目は覚めたか?」
「えっ…、貴女は妹紅さん!?」
「久しぶりだな、美鈴」
予想外の来客に美鈴は驚きを隠せなかった
「これは珍しい方がお見えになりましたね…、それで、御用向きは?」
「ああ、ちょっとお菓子作りで必要なものがあってね、人里では入手出来なかったんだよ」
「は、はい…、それで?」
「それで、ここに来ればその材料が手に入るって聞いたから来てみたんだ。 分けては貰えないかな? もちろんタダでとは言わない」
「なるほど、お菓子作りに必要な材料ですか…、そういうのは咲夜さんに聞いてみないと分かりませんね…」
そう言うと、美鈴は若干怪訝な目つきで妹紅を見た
「まぁ…、作るのは私じゃないんだがな、コイツだ」
妹紅は目を逸らしながらそう言って、隣にいた翠星石を指差した
「えっ? この人ですか…?」
「あっ……あの……その……」
「…翠星石、しっかりしろよ」
妹紅は、狼狽える翠星石の肩を叩いた
「そんなに驚かないで下さい! 私は紅美鈴と申します。 宜しくお願いしますね!」
「はひっ…… は…、はい……ですぅ…(この女、デカいです…)」
覗き込むように元気良く挨拶をする美鈴、翠星石は元気の良さと美鈴の大きい体格に圧倒されていた
「ビビり過ぎだよ、翠星石…」
「だ、だって……」
「翠星石さんと言うのですか? 警戒しなくても大丈夫ですよ! 何もしませんから!」
しかし、美鈴の元気良さに翠星石は完全にビビってしまっていた
「あ…あの……、私は…翠星石って言うですぅ…。 ローゼンメイデンの第3ドールです…」
翠星石が小声で自己紹介をした時であった
「なっ…! ローゼン…メイデン……!!?」
それを聞いた瞬間、美鈴の表情が急変した
それは、明らかに尋常ではない驚き様であった
「あ…、あれ…?」
「い…、いや……そ、その……」
「どうしましたか? 翠星石が何か……」
「ちちちちょっと、待ってて下さ――いっ!!」
美鈴はかなり慌てた様子で、館の方へと消えていった
その様子を、2人は唖然として眺めていた
「一体、どうしたっていうですか?」
「私にも分からない…、ローゼンメイデンと聞いた瞬間に急変したよな…、まさか…!?」
「そんな、まさか…」
(翠星石以外の姉妹が此処に…?)
翠星石も動揺しだした、その瞬間であった
「………っ!?」
翠星石が何かを察知した
「妹紅! 危ないですぅ!!」
「えっ…、うおっ!?」
翠星石は妹紅を押し倒したのだ
2人がいた場所の壁には、複数の黒い羽が刺さっていた
「あーら、外しちゃったぁ。 しばらく眠っていたせいで腕が鈍っちゃったのかしらねぇ…。 大丈夫よ、次は外さないから」
「お…、お前は……!」
翠星石は声のした方向を睨み付けた
「お久しぶりねぇ、翠星石」
「す、水銀燈…!」
そこには、外壁の上に立ち、笑みを浮かべながら翠星石達を見下ろす水銀燈の姿があった
「貴女の方から出向いてくれるなんて、探す手間が省けたわぁ」
「べ、別にお前に会いに来た訳じゃねぇです!」
「あらぁ、貴女だって分かってるでしょ? 私達が目覚めたって事はそれは…、アリスゲームが始まる合図だって事位…」
「くっ…!」
翠星石は怯えながらも、水銀燈を睨んでいた
「お、おい…、あれは…」
まだ状況が把握出来ていない妹紅は、翠星石に聞いた
「あの子が…、水銀燈です…。ローゼンメイデンの第1ドールです…」
「あ、アイツが…!?」
その言葉に、妹紅は驚愕した
「まさか、こんな所で会うとはな…」
「しかも、よりによって、一番会いたくない子と再会してしまったですぅ…」
「…そんなに質が悪いのか?」
「悪いってもんじゃねぇです、最悪だわ!」
「マジかよ…」
すると、2人の会話に水銀燈が割って入ってきた
「ねぇ…、人間」
「……っ!?」
水銀燈が妹紅に話し掛けてきたのだ
「貴女が、翠星石のマスターなのかしら?」
「…そうだ、私は藤原妹紅だ」
「藤原妹紅……ああ、そう言えば『幻想郷縁起』に貴女の名前があったわ」
「あんたも見てたのか…」
「勿論よ、不老不死なんですってね? 翠星石には勿体ない位のマスターだわ、フフフフ…」
「な、何ですって!?」
その言葉に翠星石は怒りを露わにする
「なぁに? やるの?」
「うっ……」
「…そう言えば、貴女の可愛い双子の妹の姿が見えないけど、どうしたのかしら?」
「そ、蒼星石は…」
水銀燈の問いに、翠星石は言葉を詰まらせた
「ふぅん…、その様子だと今回は別々のマスターの所に行ったようねぇ…」
水銀燈が不敵に笑い出す。
「でも、どんなマスターの所に行こうと同じ事…、必ず見つけてあげるわ、そして…」
「………っ!」
「あの子のローザミスティカを奪ってあげるわ!」
「このぉ…!」
敵意を剥き出しにする翠星石を、水銀燈は嘲笑っている様であった
「さぁ、翠星石…、お話はこれ位にしましょうか…」
「……っ!?」
「私のテリトリーに乗り込んでおいて、タダで帰すとでも思ってたの? バカねぇ!」
「う…、うるせぇですぅ!」
「フフフ…、その気になった?」
すると、水銀燈は外壁から飛び上がり、翠星石達の前へと降りてきた
「今日はお互いに久しぶりの再会って事だから、挨拶って事にして、本来のアリスゲームはしないでおいてあげるわ、その代わり…」
「な…、何を…」
「この幻想郷の決闘ルールで遊びましょうよ、『弾幕ごっこ』っていうみたいよぉ?」
「弾幕…ごっこ……」
「最も…、私達の戦いはそんな程度じゃ済まないと思うけどねぇ…」
すると、水銀燈の黒い翼が変異し始めた
「ぐっ…!」
「さあ、翠星石…、逃がさないわよ…」
「く…、来るなら来やがれですぅ!」
翠星石は手を翳し、
「スィドリーム!」
如雨露を召喚した
「フフフ…、そう来なくっちゃねぇ♪」
「妹紅、下がってるです」
「翠星石、お前…」
「あの子は、さっきあんな事を言ってたけど…、これはそんな生易しい戦いでは無いわ…」
翠星石は妹紅の方を振り向かずに言った
「良く見てるです妹紅、これが私達ローゼンメイデンの……アリスゲーム!」
2体の人形が一気に戦闘モードへと移行する
「す、翠星石…」
後退し、その様子を傍観する妹紅は、無意識に拳を握り締めていた。
「翠星石…、私は…」
「手出ししちゃ、ダメよ?」
「……っ!?」
其処には、何時の間にか日傘をさしたメイドを引き連れた少女の姿があった。
「お久しぶりね、妹紅」
「お前、レミリア…!」
「貴女が、あの人形の媒介とはねぇ…」
「まさか………っ!?」
その時、妹紅は見た
レミリアの、左薬指に自分と同じ薔薇の指輪が填められている事に
「あんたが…、あの人形の……」
「そうよ、私が水銀燈のマスターよ」
そうして、レミリアは妹紅に指輪を見せ付けた
「何で…だよ……」
「どうしてって問われれば…、成り行きってヤツかしらねぇ?」
「成り行き?」
「あの人形は、いきなり私達の前に現れて、散々酷い目に遭わされたのよ」
「えっ…、あんたらが!?」
「ええ、癪だけど、私もパチェも咲夜も美鈴も小悪魔も…、見事にしてやられたわ」
「マジかよ…」
「まあ、最終的には私が勝ったんだけどさ」
レミリアは自虐的に笑っていた
「本当なのか…?」
「お嬢様の言った事は本当よ。実際私も、あの人形に殺されかけたわ」
余り表情は変わらないが、何処か悔しさを感じさせる様に咲夜は言った
「私も、こっぴどくやられちゃいました…」
その横に、何時の間にか居た美鈴も、そう呟いた
「そ、そうなのか……」
(この面子が殺されかけたなんて、あの水銀燈ってヤツの実力って、どんだけだよ…)
「まあ色々とあってね…、結局あの子と契約したのよ」
「…アイツが何をするかを承知でか?」
「勿論よ、だから…」
すると、レミリアは妹紅と対峙するような形になっていた
「これはアリスゲームであって、ローゼンメイデン達の戦いなのよ、邪魔はしちゃダメよ?」
「自分が契約した人形が目の前でやられちゃ、黙って見てられないが?」
「邪魔をするって言うなら…、私が相手になるわよ」
レミリアの目つきが鋭くなる
「ちょうど、太陽が雲に隠れてるし、今なら日傘無しで動けるわ」
「吸血鬼は昼間は弱いんだろ? 無理すんなって」
「咲夜、美鈴、下がってなさい…」
レミリアと妹紅は今度こそ対峙する形になった
「大丈夫か? 無理して1人で戦わなくたって良いんだよ?」
「調子に乗るなよ、殺すぞ…」
「やってみるかぁ?」
レミリアからは魔法陣が浮かび上がり、妹紅は掌から炎を上げていた
その様子を、水銀燈と翠星石は横目で見ていた
「フフフ…、レミリアったら、本当に血の気が多いわねぇ。 でも、それがあの子の面白い所なんだけどね」
「妹紅…、こんな時に何要らねえ争いをしてるですか!?」
「私達の戦いは、マスターからの力の供給次第で決まるようなものだから、どっちのマスターが先にくたばるかしらねぇ?」
「妹紅を舐めるなですぅ!!」
「私のマスターは吸血鬼なのよ? 力の差は歴然としてると思うけど?」
「そんなの…、やってみなきゃ分からないですぅ!」
「ふぅん…、まあいいわ」
すると、変異していた水銀燈の翼が、更に大きさを増した
「さあ始めましょう翠星石、『模擬』アリスゲームを…」
「来やがれです!いつもの私と思っていたら大間違いですぅ!」
「『模擬』とは言ったけど、勢いでローザミスティカを奪っちゃったらごめんなさいねぇ♪」
ついに水銀燈と翠星石との戦いが始まった
やっぱり、フラグをへし折ってしまった…。
銀様と翠ちゃん、レミィともこたんの四巴のバトルです。
しかし、本格的なアリスゲームはまだ先ですので、これは簡潔に終わらせる予定です。
余談ですが、今回のようなシリアスシーンの際には、BGMに旧アニメ版ローゼンメイデンのサントラに収録されている「アリスゲーム」を聞きながら見るのをお勧めします。
きっと、臨場感が増す筈です!