薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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無縁塚の探索へと向かう金糸雀と上海。

そこでの、見つけたものと、出会い人物とは…。


第37話 お宝探し中の出会い

家を出て数十分、2体の人形は無縁塚へと到着した。

 

「ねぇ、あれが無縁塚なの…?」

 

金糸雀が尋ねると、上海人形は頷いていた。

 

そして、地上へと降りると、彼女は辺りを見回した。

 

「此処が…、無縁塚かしら…」

 

思っていた場所とは違い、すさんだ空気に言葉が出ない。

 

墓地と言っても、墓標らしきものは無く、両手で持てる程度の大きさの石が転がっているだけであった。

 

「さすが墓地ってだけあって、寂しい所かしら…」

 

金糸雀は、辺りを見ながら何とも言えない気持ちになった。

 

「…でも、折角来たんだから、手ぶらで帰るのは癪だわ。 じゃぁ、早速散策開始かしら! ピチカートもやるかしら!」

 

無理矢理やる気を出し、人工精霊に指令を出し、散策を始める金糸雀。

 

「上海、護衛お願いかしら」

 

「ハァーイ!」

 

そうして、金糸雀の『お宝探し』が始まった。

 

 

それから、半時程…。

 

 

「うーん…、集まった物は……」

 

適当に拾って来たものを確認し始める。

 

「えーっと…、これは『ウォークマン』って書いてあるかしら…。 使い方も分からないし、全く動かないし、これはダメかしら」

 

それを廃棄して、次の物を手に取る。

 

「何々、ドリー○キャ○ト? 湯○専務を男にして下さい……意味が分からないかしら…」

 

廃棄確定

 

「次は…、ドラ○もんのPHS……携帯電話って何かしら…? 此処では使えない…」

 

廃棄確定…

 

「これは…、棟方志功作の版画…、要らない」

 

廃棄確定……

 

「おおこれは…、綺麗な絵画かしら…、作者は……ヨハネス・フェルメール…、題材は、『キリストと悔恨の女』……これは贋作かしら!」

 

金糸雀の目は、騙されない。

 

「これはっと…、ガレのテーブルスタンド……って、何でこんな高価な物があるかしら!? 頂きかしら!」

 

抜け目ない。

 

「これは、藁人形……って、何で呪い人形が落ちてるかしら!? 罰当たりかしら!」

 

廃棄確定。

 

「何々…、稲○淳二の恐○の現場…、見なく無い…」

 

廃棄。

 

「凄い、これは日本刀かしら? 一国兼光…? 持って帰ろうかしら…」

 

人形が持っていても、役に立たない…。

 

 

「うーん、色々あるけど、使えるものが少ないかしら…」

 

すると、ピチカートが何かがあると言わんばかりに、ある場所を飛び回っていた。

 

「ピチカート…? そこに何かあるかしら?」

 

金糸雀は、そこを掘り起こしてみると、とあるぬいぐるみを見つけた。

 

「このぬいぐるみは…、犬…?」

 

ふと、まだ付いていたラベルに目が行く。

 

「くんくん探偵…、名探偵犬くんくん…」

 

それを見た瞬間、金糸雀の目の色が変わる。

 

「か…、可愛いかしらぁぁぁ!!」

 

思わず、そのぬいぐるみを力一杯抱き締める金糸雀。

 

「………っ」

 

その様子を、微妙な表情で見つめる上海人形。

 

実に、シュールである…。

 

 

「これは絶対にお持ち帰りかしら!」

 

戦利品を鞄へと仕舞い出した。

 

すると、上海人形が何かに気付いた。

 

「カナリア…、アレ…、アレ…」

 

「どうしたの、上海?」

 

上海が指差す方向を注視する金糸雀。

 

「あれ…、あんな所に人間が…?」

 

視線の先には、赤髪でトンボのツインテール、着物のような服装をした女性が、木にもたれかかり居眠りをしていた。

 

「あの子、何してるかしら…?」

 

「イクノ…?」

 

「だって、気になるかしら。 静かに近付いてみるかしら」

 

「ヤメヨウヨ…」

 

渋る上海の声は、金糸雀には届いていなかった。

 

「そうっと…」

 

ゆっくりと、彼女に近付く金糸雀達。

 

その人物はまだ居眠りをしており、気付いている様子は無いように見えた。

 

「こんな所で寝てても大丈夫かしら…?」

 

金糸雀が、若干近寄って彼女を観察する。

 

「うわぁ…、大きな鎌を持ってるかしら…」

 

居眠りしているその人物の、肩に担いでいる大きな鎌に釘付けになった。

 

「まるで、昔本で見た死神みたいな格好をしてるかしら…」

 

「…そうさ、あたいは死神だよ」

 

「ひぇぇぇぇ!?」

 

「ァァァァァ!?」

 

起きていないと思っていた人物が、突然目を開け喋り掛けて来たので、2体の人形は驚き倒れてしまった。

金糸雀が倒れた拍子に上海が犠牲になり、下敷きにされている状態である。

 

「あ…あぁぁ……」

 

「何だい? そんなに驚く事無いじゃないか? 大袈裟だなぁ…」

 

軽く笑いながら、彼女は立ち上がった。

 

「あぁぁぁ! カナは何も悪い事はしてないかしらぁ!」

 

金糸雀は、涙目で必死に訴えていた。

 

「えぇっ!? ……ハハハハッ! 違う違う! あたいは、そんな事はしないよ!」

 

「…えっ!?」

 

その言葉に、金糸雀はキョトンとしてしまう。

 

「死神って言っても、私は死者の魂を彼岸へ運ぶ、しがない三途の川の船頭さ」

 

「船頭…?」

 

「お前さんが言いたいのは、寿命になったら迎えに来る方のヤツだろ? それはちゃんとした、迎えに行き魂を刈り取る係がいるんだよ」

 

「へぇ…、それは…知らなかったかしら…」

 

「まぁ、知ってるヤツの方が少ないだろうけどね」

 

すると、彼女は金糸雀の方へと近付いて来た。

 

「お前さん、見掛けない顔だな。 何者だい?」

 

「あ…あの…、私は金糸雀って言うかしら。 ローゼンメイデンの第2ドールかしら…」

 

「ローゼンメイデン…?」

 

「カナは、人形かしら」

 

「人形だって? そうは見えないけどねぇ…」

 

2人が会話をしていると、

 

「カナリア…、オモイ…」

 

「あっ、ゴメン…」

 

下敷きになってる上海が苦しがっていたので、慌てて退いた。

 

「ハハハ…、同じ人形だけあって名コンビだね!」

 

「そ、そんな…」

 

彼女のからかう様な突っ込みに金糸雀は戸惑ってしまった。

 

「冗談さ、ちなみにその人形は七色の人形遣いの所のだろ?」

 

「知ってるかしら?」

 

「ああ、何度か会った事はあるよ……」

 

そこで、彼女は金糸雀を見て何かを感じた。

 

「……なるほど、お前が人形だって事は間違い無さそうだね」

 

「えっ!? どういう事かしら?」

 

「お前さんからは…、寿命を感じられないんだ」

 

「寿命? そんなのも分かるかしら!?」

 

「そりゃ、私は死神だからね。 それ位は分かるよ」

 

「そう…かしら…」

 

金糸雀は驚きながらも、その事に関心していた。

 

「あの…それで…、貴女は?」

 

「おっと、まだ名乗ってなかったね。 あたいは小野塚小町ってんだ。よろしくな!」

 

「よ、よろしくかしら…」

 

「丁度、話し相手が欲しかったんだ、付き合ってくれないかい?」

 

「別に…、良いかしら…」

(さっきまで寝てたのに…)

 

そんな疑問を感じながらも、金糸雀は小町の話し相手になった。

 

 

約一時程。

 

 

小町の話の内容は、彼岸の事や仕事の事。

また、幻想郷や冥界など、小町が携わっている所での出来事であった。

 

金糸雀は、その話を興味津々で聞いていた。

 

そして、また金糸雀も自分の事を小町に話した。

ローゼンメイデンの事。

そして、アリスゲームの事も。

 

小町も、その話を静かに聞いていた。

 

 

「…なるほど、アリスゲームねぇ…。 お前さん達ローゼンメイデンってのは、見掛けに寄らず物騒な事をするんだね」

 

「物騒な事に、なるのかしら…?」

 

「そうさ、お前さん達ローゼンメイデンは、元はそのローゼンっていう人形師から作られたんだろ? それを、アリスとかいう本当になれるかどうかも分からない至高の少女を目指して戦うなんて…、はっきり言って正気の沙汰じゃない」

 

「………っ」

 

小町の言っている事が正論だと分かっていても、金糸雀は首を横に振った。

 

「それでも…、それがお父様の望まれる事、カナ達はそれを叶えたい、どういう結末になろうとも…」

 

「…………」

 

金糸雀の、それでも揺るがない信念に、小町は黙って聞いていた。

 

「…強いんだな、ローゼンメイデンってのは…、精神も力も。 そこらの妖怪では敵わないだろうね」

 

「そうかな…? まだ、他の妖怪とは戦った事が無いから、分からないかしら」

 

「勝てるさ!」

 

小町は、笑いながら金糸雀の肩を叩いた。

 

「…しかし、今回のアリスゲームの舞台が幻想郷とはね…、何故だか分かるのか?」

 

「それは…、カナにも分からないかしら…。 目覚めたら、既に幻想郷だった訳だし…」

 

「そうか…、誰かが裏で糸を引いているのかもしれないね、幻想郷でアリスゲームをするように」

 

「もし、そうだとするなら、該当するのは一人だけかしら」

 

「黒幕が、居るってのかい?」

 

「私達は、『ラプラスの魔』って呼んでいるかしら」

 

「ラプラスの魔…? まさか…!?」

 

金糸雀から告げられた名前に、小町の表情が少し変わった。

 

「なあ、そのラプラスの魔ってヤツは、外の世界で言うタキシードって服を着てて、シルクハットを被って、頭部はまるで兎みたいなヤツじゃないか?」

 

「えっ!? 何でそれを? 知ってるのかしら!?」

 

「いや、あたいは会った事は無いんだけど、仲間の死神に見たことがあるってヤツがいるんだ。 良く分からない物言いで悪戯好きと言うかなんというか…」

 

「うん…、間違い無いかしら」

 

「おまけに、いきなり空間に穴を開けて、そこら中の世界を行き来してるそうだ。 まるで八雲紫みたいなヤツだったてさ」

 

「八雲紫って…、この幻想郷を作ったって言われている、あの八雲紫?」

 

「そうだ、妖怪の賢者とも呼ばれているよ」

 

そこまで話すと、小町は何か考える様に空を見上げた。

まるで、何かを予感している様でもあった。

 

「こいつは、どうやら穏便には済みそうも無いな…」

 

「えっ? 何がかしら?」

 

「…いや、何でもない。こっちの話さ」

 

そこまで言うと、小町は立ち上がり、鎌を手に取った。

 

「さて…、休憩は終わりっと。 そろそろ戻ろうかね」

 

「えっ、戻るって…」

 

「三途の川、あたいの仕事場さ。あんまりサボ……休憩してると、ボスに小言を言われるからね」

 

「そう…、もうそんなに時間が経ったかしら…。でも、沢山お喋りが出来て楽しかったかしら!」

 

「ああ、あたいもだよ。 付き合ってくれてありがとな」

 

「うん!またね!」

 

小町は、三途の川の方向へと歩き出した。

 

「ねぇ、小町!」

 

金糸雀が、不意に後ろから声を掛けた。

 

「…何だい?」

 

「また、会えるかしら?」

 

「ああ…、あたいは良く此処や色んな所に出没するからね。縁があったら、また会おう」

 

小町は振り向かずに、手を振りながら去って行った。

 

「行っちゃった…、死神とお話するなんて、改めて幻想郷って凄い所かしら…」

 

脱力感を感じた金糸雀は、その場に座り込んだ。

 

「上海って、こういうのには慣れてるの?」

 

「シャンハーイ」

 

「平気なんだ…、流石はアリスの人形かしら…」

 

何事も無かった様に接する上海に、金糸雀は苦笑いをした。

 

「ふう…、しばらく話し込んだら、お腹減ったかしら」

 

そう言って、彼女は鞄を手に取った。

 

「…て事で、ランチタイムかしら!」

 

「エッ…?」

 

その場で弁当箱を開ける金糸雀に、上海は戸惑ってしまう。

 

「アリスお手製の卵のサンドイッチ、やっと食べれるかしら!」

 

「ネェ、カナリア、ココハヤメヨウヨ…」

 

「上海も食べる?」

 

「ソウジャナクテ、ココデタベルノハヤメヨ…」

 

「…食べたくないの?」

 

「チガ――ウ!!」

 

これが、後に一悶着起きる原因となる…。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

その頃、小町は中有の道を三途の川の方へと歩いていた。

 

 

「ローゼンメイデンにアリスゲームか…、何だか胸騒ぎしかしないね…」

 

 

「しかも、あの『ラプラスの魔』が一枚絡んでるとなれば、幻想郷中に影響を及ぼすのは必至かもしれない…」

 

 

「死人は出ないかもしれないけど、このまま黙っている訳にはいかないな」

 

 

「念の為、四季様に報告しておこうかね…」

 

 

そう呟きながら、彼女は三途の川の方向へと消えて行った。

 

 

「…まぁ、サボりの言い訳が出来たのは、大いに助かるね(笑」

 




複雑に絡み合う登場人物達。

次回も、金糸雀パートになります。

今回、上海が少し言葉を発してますが、良いですよね?
原作でも、少しは喋っていたし。

「バカジャネーノ」の印象が強すぎますがw
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