薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

38 / 54
無縁塚で、何も考えずにお昼を取ろうとする金糸雀。
その無作法に、上海が噴火してしまいました。

そして、彼女達の前に、ある人物が現れる…。

残酷描写はありません。


第38話 紛失物探索依頼

無縁塚、お昼時も近づいていた時間

小町と沢山話をして、空腹感が出て来た金糸雀は、弁当箱を開けて、サンドイッチを凝視していた

 

ちなみに、無縁塚のど真ん中で、ピクニック感覚の昼食であった

 

「丁度お昼近いし、食べようかしら!上海もおいで!」

 

金糸雀は上海に手招きして誘っていたが、上海は困った表情で金糸雀に話し掛けた

 

「カナリア…、チガウトコロデタベヨウヨ…」

 

「何で?」

 

「ナンデッテ…」

 

何を考えているんだ、この人形は?的な表情の上海

 

「今が食べ時だって、カナの腹の虫がそう言ってるんだから、今食すかしら!」

 

上海の真意が分からない金糸雀は、そんな事を言っており、上海は段々と苛立ちが募り出す

 

「…アノサ、ココ…ムエンヅカダヨ…」

 

「…だから?」

 

「ダカラッテ…、ボチダッテ…」

 

「何をポチッたって?」

 

「チガ――ウ! ココボチ、ココボチ! タベルトコロジャナイ」

 

「うん、気分はボチボチかしら!」

 

「ズベッ!」

 

意味が通じていない金糸雀の答えに、上海はズッコケてしまった

 

「上海、何やってるの? 漫才やるなら、みんなでやる方が楽しいよ? 1人でやってもつまんないかしら」

 

「クゥゥゥゥゥゥ…」

 

「…どうしたのかしら? 上海?」

 

「ウガァァァァァァァ!!! バカジャネェーノォォォォ!!!!」

 

「ひぃぃっ!?」

 

我慢出来なくなった上海は、ついに叫び出した

 

「ココハムエンヅカ!ボチダァァ!シンダニンゲンガマイソウサレテルバショナンダヨ!ピクニックスルトコロジャナイ!シシャヲクヨウシトムライスルバショダナノニオマエハソンナバショデヘイゼントヒルゴハンヲダベヨウトシテイルムシンケイスギルフキンシンダトオモワナイノカ?シシャ二ワルイトオモワイノカ?ヨウカイダッテオソッテクルカモシレナイノニノンキニクッテルバアイカ!?チガウトコロデタベヨウッテサッキカラナンカイイワセルンダイミワカッテンノカフザケテルンジャネェヨ!バカジャネェーノ!!!!!!!」

 

ブチキレた上海は、遠慮ない罵倒雑言で捲くし立てた

 

「ね…ね…ねぇ上海…、落ち着くかしら…」

 

興奮する上海を、オドオドする金糸雀は何とか宥めようとしていた

 

「ハァ…、ハァ…、アリスガドレダケシンパイシテルカシッテルノ?」

 

「えっ…、アリスが…?」

 

「ムエンヅカニ、カナリアヲヒトリデイカセルノハシンパイダカラ、ゴエイシッカリオネガイネッテ、ワタシニナンドモナンドモオネガイシテタンダヨ…」

 

「アリスが…、そんなに…カナの事を…」

 

アリスがどれだけ心配していたのか、上海の言葉でようやく悟った金糸雀は、目頭が熱くなった。

 

「そうとも知らないで…、アリス……ごめんなさい…かしら…」

 

涙が溢れ出し俯いてしまった金糸雀に、落ち着きを取り戻した上海は静かに隣に寄り添った。

 

「ワカレバイイヨ…、ワタシモカナリアノコトガスキダカラ…」

 

「し、上海…」

 

「ダカラ、カナクテイイヨ、チガウバショデオヒルゴハンヲタベヨ」

 

上海の慰めに、金糸雀は涙を拭い笑顔が戻った

 

「う、うん…、そうね、もっと眺めの良い所で食べようかしら!」

 

「ウンウン!」

 

「上海、ごめんなさいかしら」

 

「モウイイヨ、オコッテナイカラ」

 

「それじゃ、その場所に案内してくれるかしら?」

 

「シャンハーイ!」

 

上海人形も笑みを浮かべて返事をした

 

「それじゃ、とりあえずお弁当は閉まってっと…」

 

一度広げた弁当箱を風呂敷に包み、再び鞄へと閉まった

 

「これでよしっと…、じゃあ移動しようかしら」

 

そう言って、金糸雀は立ち上がり日傘を手に取った時であった

 

 

「君達! 少し待ってくれないか?」

 

「えっ!?」

 

不意に後ろから声を掛けられ、金糸雀達はその方向を向いた

 

「こんな所で何をしている?」

 

「カ、カナ達はその……お宝を探しに…」

 

「何、お宝だと!? 誰の許可を得てそんな事をしているんだ!?」

 

「ひぇぇっ!? ご、ごめんなさいかしら!」

 

声の主に一喝され、金糸雀は思わず謝ってしまった

 

「…ハハハハ、冗談だよ冗談。 此処は無縁塚だ、誰かの私有地とかでは無いよ」

 

「な、何だ…、良かったかしら…」

 

その人物は笑いながら、金糸雀の元へと近付いてきた

 

「悪かったね、少しからかい過ぎたかな? 私はナズーリンって言うんだ、この無縁塚の近くに住んでいるんだよ」

 

「ナズーリン…かしら」

 

金糸雀は、ナズーリンの事を凝視していた

 

容姿は、グレーのセミロングの髪に目の色は紅、服装もダークグレーと黒っぽい暗い感じ、何故か先の方が切り抜かれた奇妙なセミロングスカート、頭には丸いネズミの耳に、腰からは長いネズミの尻尾、その尻尾にはバスケットを吊していた

 

「(まるで、ネズミみたいな格好してるかしら…)」

 

「見ての通り、私は妖怪ネズミさ!」

 

「やっぱり…」

 

予想通りの答えに、金糸雀は特に驚く事は無かった

 

「…ところで、君は何者なのだ? 見覚えが無いのだが…」

 

「あ…、カナは金糸雀って言うかしら、ローゼンメイデンの第2ドールかしら」

 

「ローゼンメイデン? 聞いた事が無いなあ」

 

「まあ…、幻想郷に来たのはここ最近だから、知ってる人は少ないかしら」

 

「ほほう、君は外来人なのか?」

 

「外来人…、カナは人間じゃないかしら、人形かしら」

 

「人形だって…?」

 

その一言に、ナズーリンは怪訝な表情に変わった

 

「まさか…、信じてないかしら?」

 

「当たり前だろ?目の前で普通に動いて、喋っているのに人形だと言われても」

 

「そう言われても…、本当の事かしら…」

 

「…からかっているのか?あんまり私を甘く見ない方がいいぞ…」

 

ナズーリンの妖力が高まり、スペルカードを取り出された

 

「そんなに言うなら……いいわ、喧嘩をするなら買ってやるかしら! ピチカート!」

 

金糸雀が叫ぶと、日傘がバイオリンへと変化する

 

「やるからには容赦しないかしら! 上海もいいかしら?」

 

「マカセロ!」

 

上海もランスを構え、戦闘モードへ移行する

その雰囲気が一転した事に、ナズーリンの表情が変わる

 

「(な、何だ…、この何とも言えない力は…、妖力……いや、魔力…?)」

 

金糸雀から発せられる、説明のしようが無い力に、ナズーリンは冷や汗が止まらなかった

 

「(か…、敵わない……)」

 

直感でそう察知したナズーリンは、スペルカードを閉まった

 

「…いや、済まない。つい喧嘩腰になってしまった…、無礼を許してほしい」

 

「なんだ…、びっくりしたかしら…」

 

そう言って、金糸雀と上海も直ぐに戦闘モードを解いた

 

「お詫びの印に、私の家に招待しよう。 直ぐそこだ」

 

「…上海、行ってみる?」

 

金糸雀が上海に聞いてみると、上海は少し考えてから首を縦に振った

 

「…分かったかしら、ついて行くかしら」

 

「良かった、こっちだ」

(こいつは敵に回さない方が良さそうだ…)

 

ナズーリンの後を追って、金糸雀達はその場を後にした

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「…なるほど、君達ローゼンメイデンはアリスゲームをする為に、この幻想郷で目覚めたという訳か」

 

「そうかしら」

 

ナズーリンの家(ぶっちゃけ、掘っ建て小屋と言った方がいい)に招待された金糸雀は、小町の時と同じ様にローゼンメイデンやアリスゲームについての事をナズーリンに話していた

 

「実に興味深い話ではあるが、何か漠然としないなぁ」

 

「…ていうと?」

 

「ローザミスティカを集めればアリスになれて、その『お父様』に会えると君は言ったが、アリスになれるという根拠はあるのかい? そもそも、君のお父様とは何者なのだ? 話を聞く限り普通の人間とは思えないが…」

 

ナズーリンは、思っている疑問を金糸雀にぶつけた

 

「根拠と言われても…、何もないかしら…。でも、お父様がそう言ったのだから間違いないかしら、カナはそれを信じるかしら」

 

困惑しながらも、金糸雀はハッキリと答えた

 

「お父様が何者かと言われると、困っちゃうけど……それでも、私達のお父様に変わりは無いわ!」

 

彼女は、確かに力強く答えたのだ

 

「そうか…、良い答えだ」

 

ナズーリンは静かに頷きながら呟いた

 

「早い話、君達の誰かがアリスゲームを制した時に、その全ての答えが分かるという訳か」

 

「そういう事に、なるかしら…(もぐもぐ…)」

 

「…せっかく良い話をしているのに、何故君は物を食べながら話す?」

 

「だって、今はお昼時だし、ここは安全に食べられる場所だったかしら。 ねぇ上海」

 

「シャンハーイ」

 

「はぁ…」

 

実は、金糸雀はサンドイッチ片手に今の話をしていた

上海人形は納得の表情だったが、ナズーリンはいささか呆れ顔であった

 

「人形の癖に、食い意地は張るのか…」

 

「そういう仕組みになってるかしら♪」

 

サンドイッチを食べながら、ご満喫の表情でそう答える

 

「ナズーリンもどう? アリスのサンドイッチは美味しいかしら! さぁ食べようよ」

 

「ええ〜!? 私は人肉の方が良いんだが……仕方ない…」

 

金糸雀からサンドイッチを手渡され、ナズーリンもそれを食した

 

「…とこでナズーリン、カナを此処へ呼んだのは、他にも理由があったからじゃあ無かったかしら?」

 

金糸雀の一言に、ナズーリンはハッとした

 

「そうだった…、実は君に頼みたい事があったのだ」

 

「…頼みたい事?」

 

「頼みと言うのは、私のご主人の宝塔を探して欲しいのだ」

 

「宝塔…?」

 

「今、宝塔の絵を描いてあげよう」

 

そう言って、ナズーリンは厚手の紙を棚から取り出し、宝塔の絵を書き出した

 

「大体こんなものか…、これが宝塔だよ」

 

「これが…?」

 

金糸雀は、その絵を凝視した

 

「私のご主人はよく物を無くす方でね、この様な大切な物まで無くしてしまうのだよ」

 

「そう…なんだ…、何処で落としたか大体の場所は分からないの?」

 

「先日、此処まで来た道中で落としたとは言っていたが、それ以上は分からない」

 

「それだけで、探せというのは厳しいかしら…」

 

金糸雀は、片手で頭を抱えながら呟いた

 

「…とにかく、もし見つけたら、命蓮寺にいる寅丸星という者に渡してほしい。 彼女が私のご主人なのだ」

 

「わ、分かったかしら……見つかったらだけど……」

 

最後の方だけ、そうボソッと呟いた金糸雀であった

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

その後も、ナズーリンと雑談して過ごした金糸雀達

日が暮れ始める時間帯に、彼女の家を出た

 

「今日は、お話出来て楽しかったかしら!」

 

「私もだよ、実に興味心をそそる話だった」

 

「また来てもいいかしら?」

 

「ああ、私が家に居る時であれば、相手になるよ」

 

「分かったかしら、それじゃ、失礼するかしら」

 

「ごきげんよう」

 

そうして、金糸雀と上海は帰路に着いた

 

「ローゼンメイデンか…、聖の耳にも入れておこうかね…」

 

そう呟いて、ナズーリンは家へと入っていった

 

 

 

 

魔法の森の方へと向かい飛んでいる金糸雀

その間、ナズーリンの絵をずっと見ていた

 

「宝塔か…、そんな簡単に見付かったら苦労しない…」

 

「カナリア…」

 

すると、上海が森の方を指差した。

 

「えっ? 何かあるの?」

 

彼女は、上海が指差した所へと下降して近付いてみた

 

「あれって…、まさか…!?」

 

そこにあったのは

 

「えっと…、間違い無い! これは宝塔かしらぁ!」

 

金糸雀は、落ちていた物と絵を見比べて、それが宝塔であると確信した

 

「でも…、何でこんな所に?」

 

そこは魔法の森の入り口付近、命蓮寺のある方向とは逆方向であった

 

「こんな所にあるんじゃ、見つかる訳ないかしら…」

 

「シャンハーイ…」

 

2体の人形は溜め息を付いた

 

「…とにかく、放っておく訳にはいかないし、拾っておくかしら」

 

金糸雀は、宝塔を拾い上げた

 

「今度人里に行った時に渡すかしら、命蓮寺の寅丸星だったかな?」

 

そう呟きながら、金糸雀は再びアリス邸へと飛んだ

 

 

それが、複雑な状況を招く事を彼女はまだ知らない…

 




金糸雀パート、一旦終了です。

一巡したら、続きを書きます。

最後の方を見れば分かりますが、命蓮寺勢力も関わって来ます。

どこまで関わるかは、分かりません。

次回は、誰の所を書こうか…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。