薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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突然の訪問者に、取材をされる蒼星石。

しかし、取材だけに留まりませんでした…。


第39話 蒼星石が取材されました

あれから幾日、白玉楼の庭で手入れをする2人の姿があった。

 

「妖夢、これでいいかな? 見てくれるかい?」

 

「あっ、今行くから待ってて」

 

敷地内の広大な庭の手入れを蒼星石が手伝っているのだ。

 

「うわっ…」

 

その仕上がり具合に、妖夢は思わず驚きの声を上げる。

 

「何か問題でも?」

 

「も、問題だなんてとんでもない! 文句の付けようが無いわ」

 

「そう、それは良かった」

 

妖夢に褒められ、安堵の表情を見せる蒼星石。

 

「貴女が来てから、屋敷の管理が楽になったわ、申し訳無い位に」

 

「いいんだよ、僕に出来る事はこれ位なんだからさ」

 

「貴女の庭師としての実力は凄いわ、私が楽し過ぎて鈍っちゃうかも?」

 

「そんな事無いよ、でも妖夢は凄いよね、今までこんなに広い庭を1人で管理してたんだから」

 

「それが、私の仕事だからね」

 

「尊敬するよ」

 

「尊敬だなんて…」

 

「恥ずかしがらないでよ」

 

「蒼星石ったら…」

 

「「ははははは…」」

 

蒼星石と妖夢は、楽しげに雑談をしていた。

 

すると、屋敷から妖夢を呼ぶ声が聞こえた。

 

「妖夢ぅ、そろそろお菓子の用意してくれない?」

 

「あっ、はい! 只今!」

 

幽々子に呼ばれ、妖夢は直ぐに動いた。

 

「ごめんなさい、私行ってくるから」

 

「良いよ、ここはやっておくから、幽々子さんの相手をしてきてあげて」

 

「うん、お願いね!」

 

蒼星石にその場を任せ、妖夢は屋敷へと入って行った。

 

「さて…、もう少し剪定をしようかな…」

 

そう呟きながら、鋏を手に取った時であった。

 

「すみませーん!」

 

敷地の入口の方から、誰かの声が聞こえた。

 

「あれっ? こんな所にお客さんが…? 僕が来てからは初めてだなぁ」

 

「幽々子さんか妖夢さんは居ますかー!?」

 

「はーい、ちょっと待ってて!」

 

その声に急かされるように、蒼星石が向かった。

 

「…お待たせしました、どちら様でしょうか?」

 

「……えっ!?」

 

蒼星石が対応したのだが、その人物は目を大きく見開き、蒼星石を見下ろしていた。

 

「あの…、貴女は誰でしょうか?」

 

「あっ…、僕は蒼星石と言います」

 

「蒼星石さんですか…」

 

「はい、つい最近から此処で住まわせて貰ってます」

 

「(また、変わった格好をしてるわね、この人間…?)」

 

蒼星石は、そんな様子を察知してか、更に続けた。

 

「それから、僕は人間でも妖怪でもありません、人形です」

 

「えっ…、人形ですって!?」

 

人形という単語に、その人物は更に驚きを見せた。

 

「はい、ローゼンメイデンの第4ドール、蒼星石です。 宜しくお願いします!」

 

相手の様子を特に気にする事無く、蒼星石はお辞儀をした。

 

「人形が、動いて喋る……これは、ネタの予感!」

 

「えっ…、ネタ?」

 

その人物から発せられた言葉に、蒼星石は首を傾げる。

 

「…おっと、申し遅れました。 私、清く正しい射命丸文と申します。 文々。新聞の発行と記者をしております」

 

「射命丸さんですか…、新聞記者なんですか?」

 

「はい、ちなみに種族は鴉天狗です」

 

「鴉天狗!? 射命丸さんは天狗なんですか?」

 

「天狗をご存知でしたか?」

 

「はい、『幻想郷縁起』を読んで一応は…」

 

「おおっ、それなら話が早い!」

 

すると、文は持っていたノートを広げ、ペンを取った。

 

「ならば、是非とも貴女を取材させて下さい!」

 

「えっ? 今からですか!?」

 

「そうです! 新しいネタをいち早く仕入れるのが私の仕事ですから、ご協力お願いします!」

 

「あの……その……、どうしよ…」

 

文の勢いに、蒼星石は完全に飲まれていた。

 

「蒼星石、誰か来たの?」

 

すると、屋敷から妖夢が出て来た。

 

「あっ、妖夢。 丁度良かった」

 

「こんにちは妖夢さん、お邪魔してます」

 

「文さんでしたか、こんにちは」

 

文が元気良く挨拶をすると、妖夢も挨拶を返した。

 

「今から、こちらの蒼星石さんの取材をさせて貰おうと思っていたんですが、よろしいですか?」

 

「蒼星石にですか?」

 

「ねぇ、ちょっと妖夢……」

 

蒼星石は、文に聞こえないように妖夢に尋ねた。

 

「このまま、取材を受けてもいいのかな?」

 

「うーん…、別に良いかな? 困る事は無いでしょうし…」

 

「何だかこの人……じゃなくて、この鴉天狗はやたらとテンションが高くて、僕じゃついていけないかもしれないよ…」

 

「大丈夫よきっと…、彼女はそういう妖怪なんだから…」

 

「本当に大丈夫なの…?」

 

妖夢と蒼星石が議論をしていると、文が割り込んできた。

 

「あのー、もう良いですか? そろそろ取材させて下さい」

 

「は、はいっ! じゃあ蒼星石、宜しくね!」

 

「ええ〜!?」

 

「それじゃ、こっちに座ってお話しましょう!」

 

「ち、ちょっと!? 待ってよぉぉぉ!?」

 

文に手を掴まれ、まるで強制連行されて行くように、蒼星石は連れて行かれた。

 

「蒼星石…、ごめん…」

 

その後ろ姿を見て、妖夢は手を合わせて詫びた。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

それから一時程、蒼星石は自分の事を話していた。

自分自身は勿論、ローゼンメイデンの姉妹の事、アリスゲームに関する事、自分が知っている限りの事を文に話し聞かせていた。

 

文も、その話のを熱心に聞いており、時に質問をして、同時にペンを走らせていた。

 

 

「…僕が話せるのは、大体これ位です。 こんな話で良かったのかな?」

 

「いえいえ、とっても興味深い内容で、つい夢中になってしまいましたよ!」

 

「あんまり面白い話では無いと思うけど…」

 

「そんな事ありません! 私は興味ありますよ、他の姉妹の事も」

 

「そうですよね、私も他の姉妹達に会ってみたいです」

 

蒼星石、文、妖夢の3人は長椅子に腰掛けて、そんな会話をしていた。

 

「僕も、久しぶりに会いたいです、特に翠星石には……でも、それは…」

 

「アリスゲームの合図でもある……ですね?」

 

「はい、それが僕達ローゼンメイデンの宿命ですから」

 

「だから、私は複雑なんです。 姉妹との再開がアリスゲームに繋がってしまいますから…」

 

妖夢は俯きながら言った。

 

「まあ…、翠星石や雛苺は、いきなり仕掛けて来る事は無いとは思いますが、他の姉妹は間違い無く仕掛けて来ると思う…」

 

「…そうなると、私がこの事を記事にして他の姉妹達が仮にも見ていたら、攻めて来る可能性も?」

 

「十分に有り得ます」

 

「そうですか…、それじゃあ記事にするのは拙いですかね?」

 

とりあえず、文は恐る恐る聞いた。

 

「いえ、構いません。それが射命丸さんの仕事だからね。 それに、他の姉妹が目覚めていれば、いずれは分かってしまう事だから、遅いか早いかの違いだけだよ」

 

「それじゃ、遠慮無く記事にさせて貰います!」

 

「即答ですか!?」

 

文の変貌ぶりに、蒼星石の表情が引きつっていた。

 

「文さんったら……あっ、そういえば、文さんは今日は何の御用で来たんですか?」

 

妖夢の質問に、文は思い出した様に表情が変わった。

 

「そうでした、蒼星石さんの取材をしてたら本来の目的をすっかり忘れてました」

 

「良いんですか、それで…」

 

妖夢が呆れた顔を文を見つめていた。

 

「…それで、射命丸さんの本来の目的っていうのは?」

 

「ええっとですね、実を言うと…」

 

文が本題に入ろうとした時であった。

 

「みんな、何か楽しそうにお話してるけど、私も混ぜてくれない?」

 

屋敷から、幽々子が出て来た。

 

「これはこれは幽々子さん!ご無沙汰しております」

 

「あら、文じゃないの、またパパラッチしに来たの?」

 

「そうじゃありません! 今は、こちらの蒼星石さんに取材をさせて貰ってました。 おかげで、今度の新聞のネタには困らなくなりました」

 

「そう、それは良かったわね」

 

「でも…、今日はそれで来た訳ではありません」

 

そこまで言うと、文の表情が一変した。

 

「私は、今日は新聞記者では無く射命丸文として貴女に文句を言いに来たんです。 ……いいえ、ちゃんと言わせて貰うわ」

 

険しい表情、そして口調まで変わった。

 

「貴女は、先日唐揚げを食べたわね?」

 

「ええ、鳥の唐揚げを鱈腹食べたわ、とっても美味しかったわ」

 

「チッ…」

 

満面の笑みで答える幽々子、対する文は、怒りを込めた舌打ちをした。

 

「それは、私に対する当て付けなの?」

 

「当て付けだなんて、事実を言ったまでよ」

 

「私が鴉天狗だというのは貴女も知ってるわね? 元は烏だったのよ? 鳥だったのよ?」

 

「…だから?」

 

「鶏肉を食べる等野蛮なのよ! 断固抗議するわよ!!」

 

怒り出す文に、幽々子は困惑してしまう。

 

「別にいいじゃない…、貴女に迷惑はかけて無いわよ」

 

「少しは遠慮して言ってくれれば穏便に済ませたのに…、今の貴女の態度、腸煮えくり返るわ!」

 

「困ったわねぇ、そんな事言われても…」

 

怒り浸透の文だが、幽々子の方はどこ吹く風とばかりに涼しい表情で扇子を触っていた。

 

「とにかく、断固抗議します! さもなければ…」

 

『バチンッ!』

 

開いていた扇子を突然閉め、その音が辺りに響く。

 

「…どうするっていうの?」

 

そして、幽々子の目つきが鋭くなった。

 

「あの…、幽々子様、お願いですから落ち着いて下さい…」

 

「射命丸さんも落ち着いて…、もうこれ位にしよ?」

 

いよいよ、その殺伐とした空気に耐えれなくなり、妖夢と蒼星石が二人を宥めに入った。

 

「蒼星石さん止めないで!この亡霊は私達と同じ種族を平然と食べてるのよ? 放っとけないわ!」

 

「幽々子さんは、そんなつもりで食べてはいないと思うよ! 美味しければ何でも良いんだよ」

 

「貴女まで、この亡霊の味方をするのですか? 貴女は敵です!」

 

「そんな、無茶苦茶だよ!」

 

頭に血が登った状態の文、もう手の付けようが無い。

 

「…止めなさい」

 

すると、幽々子が小競り合いにストップを掛けた。

 

「そんなに気に入らないのなら、弾幕ごっこで勝負しましょう」

 

「ゆ、幽々子様!?」

 

「弾幕ごっこ…?」

 

幽々子の唐突な提案に、妖夢と蒼星石は驚く。

 

「そんな…、大人気無いですよ幽々子様…」

 

「良いでしょう、西行寺幽々子! 私は貴女にスペルカードルールによる決闘を申し込みます!」

 

「ちょっと文さん!?煽らないで下さい!」

 

「良いわ、受けてあげる。 フフフフ…」

 

「幽々子様!?」

 

「嗚呼、なんて事だ…」

 

説得は失敗しましたとさ(汗

 

幽々子は不敵に笑いながら浮かび上がり、全身から青白い光を放ち出した。

 

「来たわね…、貴女が相手なら私も手加減は出来ないわ、本気で行くわよ!」

 

文も、飛び上がり身構えた。

 

「よ、妖夢…、どうしよう…」

 

「どうしようって…、こうなってしまったら、私でも手出し出来ないわよ…」

 

「そんなぁ…」

 

対峙する二人を、妖夢と蒼星石はただ見つめるしか出来なかった。

 

「一応確認しておくけど、制限時間は10分で良いわね?それで、スペルカードは何枚使うの?」

 

「私も時間を掛けるつもりは無いわ、3枚で十分です!」

 

「そう…、じゃあ細かい事は省いて、貴女が勝ったら私が土下座してあげるわ」

 

「幽々子様!何もそこまで…」

 

 

「妖夢、黙ってなさい」

 

 

「うっ…!」

 

「(な、何て威圧感だ…)」

 

その威圧感に、二人はたじろぐばかりであった。

 

「代わりに、私が勝ったら…」

 

「…どうするって言うの?」

 

「今日取材した事は記事にさせないわ、したら……殺しに行くから」

 

「くっ…!」

 

幽々子から発せられる威圧的な殺気に、流石の文も一瞬怯む。

 

「良いでしょう…、その条件、飲んであげるわ」

 

「決まりね…」

 

幽々子は扇子を文に向け構える。

文も、それを見て葉団扇を構えた。

 

「…蒼星石」

 

「は、はい!何ですか?」

 

「よく見てなさい、これが幻想郷での闘いよ」

 

「……っ!」

 

幽々子は、それだけを蒼星石に告げた。

 

そうして、幻想郷でも最高クラスの実力者達の闘いが、これから幕を開ける!

 




次回は、幽々子VS文の一騎打ち勝負です。

大体の筋書きは思い付いてますが、文章にするときっとグダグダになりそうな悪寒です…。
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