薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
「これが避けきれるかしら!?」
アリスの最強スペルとも言える弾幕が金糸雀目掛けて飛んでくる。
「くっ…!まだまだ!」
バイオリンを奏で何とか攻撃に転じようとするが、大量の弾幕によりアリスにまで届かない。
逆に大量の弾により攻撃が出来ずに逃げの一手に転じることとなる。
「こ、こんなの、無茶過ぎるわ!」
早い弾と散りばめた弾が混ざり普通なら被弾してもおかしくない状況にあった。
しかし、金糸雀は弾幕を掠めながらも確実に避けていた。
「これなら、何とか行けるかしら!」
「フフ…、良いわよ金糸雀!その調子よ、もっと逃げ惑いなさい!」
アリスが言うと、人形達からの弾幕が更に激しさを増す。
しかし、それでも僅かばかりの避けれる道はあった。
その僅かな間を金糸雀は見逃さなかった。
「…見えたっ! そこよ! ディスコード!」
バイオリンを奏で出すと、渦のような弾が発射された。
「…来たわね!」
アリスは余裕を持ってそれ避けたが、それで終わっては無かった。
「…えっ!? 爆発?」
その弾は、小規模ながら爆発を起こしたのだ。
「ふふ、さあ今度はアリスが逃げる番かしら!」
「・・・チッ!」
アリスは迫ってくる弾をギリギリでかわしながら攻撃を続けた。
「(なかなかやるわね…、しかも避けたところで爆発するとか、地味に体力を削られるわ・・・)」
アリスは感じていた、早く決めなければ自分がやられると・・・。
対する金糸雀はバイオリンを奏で次々と弾を放つ。
放たれ爆発する様は正に弾幕そのものであった。
しかし、その金糸雀も内心では、
「(早く、これを何とかしなきゃ…、カナもそろそろ拙いかしら…)」
自分の体力が限界に近付いてきていた事を察知していた。
それでも2人は攻撃の手を緩めない。
「はぁぁぁぁ!!」
「うぉぁぁぁ!!」
それはもう、テストとは名ばかりの真剣勝負であり、人形遣いと薔薇乙女のプライドのぶつかり合いであった。
だが、金糸雀は弾幕を避けながらの攻撃をしていた故、周囲にまで目が届いていなかった。
「…やるわね金糸雀、ぶっちゃけ私は貴女の事を甘く見てたわ、ここまでやられちゃ、そんな風には見れなくなったわ。…でも、何か忘れてない?」
「・・・・へっ!?」
アリスの言葉の真意に金糸雀は全く気付いていなかった。
「私への攻撃に集中し過ぎて、周囲への警戒を怠ったわね!」
「・・・はっ!?」
金糸雀が目の当たりにしたのは、アリスの人形達が自分の周囲、しかも近距離に展開していたものであった。
「こ、これは、拙いかしら!?」
金糸雀が怯みバイオリンを奏でる手を止めたその隙を見逃さなかったように、後方にいた人形が金糸雀に体当たりを仕掛けてくる。
「・・・うわっ!?」
その体当たりに金糸雀は仰け反る。
そして、人形達から一斉に弾幕が放たれた。
「ぎゃぁぁぁぁ! ・・・もうダメかしら…」
為す術無く弾幕に被弾した金糸雀は、地上へと落下していく。
しかし、アリスの『膝を着いたら負け』という言葉が脳裏を過ぎり、地面すれすれで体勢を立て直し、うまく着地した。
だが、金糸雀は立ってるだけで限界の状態で、その表情は苦悶に満ちていた。
それを見たアリスは、金糸雀に叫んだ。
「勝負あったわね金糸雀! これで、チェックメイトよ!!」
アリスと人形達が一気に金糸雀に迫る。
たが、限界の筈の金糸雀が不敵に笑い出す。
「フフフ…、それを待ってたわ、掛かったかしら!」
「…えっ!? あれだけ被弾したのに何故…?」
あれだけの弾幕に被弾しながら、何事も無かったかのように、ケロリした表情に戻った金糸雀にアリスは戦慄した。
「全て作戦通りかしら! ピチカート!」
その瞬間、金糸雀の陰から出てきたピチカートが、激しく光り輝いた。
「な、何!?」
その光に、アリス達は一瞬怯んだ。
「これで、一網打尽かしら〜!」
これが金糸雀の作戦であることをアリスが気付いた時にはもう遅かった。
「・・・っ!? しまっ・・・・」
「反撃のパルティータ!!!」
金糸雀がバイオリンの弦を指で弾いた瞬間、電撃のような衝撃波が走りアリス達は吹き飛ばされた。
「きゃぁぁぁ!?」
その衝撃でアリスは地面に倒れ込み、人形達も倒れ動かなくなった。
そして、辺りに漂っていた弾幕も消えていった。
「…見事に、詰んじゃった・・・」
倒れたアリスは、空を見ながらそう呟いた。
「…や、やったかしら!?」
それを見た金糸雀は、弱々しくガッツポーズを取った。
「フフフ…、やられたわ…、金糸雀」
アリスは起き上がると、金糸雀にそう告げた。
「・・・本当に…、カナは・・・・やったのか・・・・うぐっ…」
そこで金糸雀の言葉は途切れ倒れ込んでしまう。
「・・・っ!? 金糸雀!?」
アリスは慌てて駆け寄った。
倒れ込んだ金糸雀をアリスが抱きかかえる。
「…流石に契約してない状態で、力を使いすぎたかしら…、無理し過ぎちゃった…」
「本当に、無理し過ぎよ…、さっきのアレだって、平気な振りしといて実は限界だったんでしょ? 下手したらアリスゲーム本番前に貴女は自分のローザミスティカを失ってたのよ?」
「ごめんなさい…、でも途中から段々と負けたくないって気持ちが強くなっちゃったかしら…」
「私だって…、最初は軽くやるつもりだったのが、あそこまで熱くなっちゃったわ…、謝るのは私の方よ・・・」
2人は不意にお互いの姿を見る。
「随分ボロボロになったわね・・・」
「そう言うアリスも、結構ボロボロになってるかしら・・・」
そう言うと、2人は微笑み合った。
「とこでアリス、この勝負は引き分けかしら、それともカナの…」
そう言いかけた金糸雀にアリスは首を振って告げた。
「何を言ってるのよ、これはテストだって言ったでしょ? 勝敗は関係無いわ」
「…えっ!? それじゃ…」
「合格よ」
アリスのその言葉に金糸雀は驚きを隠せなかった。
「…じゃ、カナと…!?」
「ええ、約束だから契約してあげるわ」
「あ…、ありがとう・・・かしら・・・・」
アリスからの言葉に緊張の糸が切れたのか、金糸雀は涙を流した。
「さあ、涙を拭きなさい。綺麗な顔が台無しよ」
「本当にうれしかったからつい…」
金糸雀は涙を拭きながら照れ笑いをしていた。
「…それで、契約ってどうするの?」
アリスが聞くと、金糸雀はすっと立ち上がり告げる。
「それじゃ、カナの・・・この薔薇の指輪に誓うかしら」
「・・・誓う?」
「この指輪にその証を…、キスをするかしら」
金糸雀はそう言うと左手をアリス前に差し出した。
「…この指輪に、キスを…?」
「そうよ」
「・・・それじゃ・・・・」
意を決し、アリスはゆっくりと指輪にキスをした。
その瞬間、指輪から黄色い光が輝き出す。
「な、何!?」
突然の起こり出した事にアリスは驚く。
「フフフ…、アリスの力が…、カナの中に入って来るかしら!」
「…うっ! 熱い…!」
その熱さにアリスは顔を歪める。
たが、それは直ぐに収まった。
「…終わったの?」
アリスが尋ねると、先程までの苦痛の表情が全く無くなっていた金糸雀が答えた。
「ええ、これでカナとアリスは契約が結ばれたかしら、左手をご覧なさい」
「…これは!」
左手を見ると、金糸雀と同じ薔薇の指輪が填められていた。
「それが、契約の証かしら!」
それを確認したアリスは、そっと立ち上がった。
「…そう、それじゃ、これから私と貴女は運命を共にするのね」
「うん! これからよろしくかしら、アリス!」
「ええ、改めてよろしくね、金糸雀」
2人は握手をして笑い合った。
「実はね、アリスと会った瞬間から運命みたいのを感じたかしら!」
「…そうなの?」
「だって、私はアリスゲームを制してアリスを目指すのに、今回契約したのがアリスって名前だったんだから、これは絶対に運命だったんだわ♪」
「…そうなのかな?」
金糸雀のテンションの高さにアリスはやや困惑気味であった。
「あっ、それから…」
金糸雀は、既に起き上がり浮遊していた上海人形達に話し掛けた。
「みんなも、これからよろしくかしら!」
笑顔でそう言うと、人形達が金糸雀に近付いてきた。
「えっ、何? …って、うわっ!?」
『シャンハーイ!シャンハーイ!』
「ち、ちょっと、何なの!? ていうか、何で胴上げなのかしら!?」
金糸雀は人形達に何故か胴上げをされ始めたのだ。
「あら? 貴女はその子達に仲間と認められたらのよ。 良かったじゃない」
「そ、それは嬉しいけど・・・、これは、ちょっと・・・・」
「いいじゃない、微笑ましい光景よ。 もうしばらくそうされてなさい♪」
「そ、そんなぁ・・・、アリスぅぅぅ〜!」
涙目の金糸雀を全く気にする事無く、アリスは笑いながらその光景を見ていた。
「(でもローゼンメイデンには、他にも姉妹がいるのよね…、一体どんな子達なのかしらね?)」
まだ見ぬ薔薇乙女達に、アリスは思いを馳せていた。
「騒がしくなりそうね、まだ人形作りも残ってるし、頑張らなきゃね!」
そこへ、ようやく胴上げから解放された金糸雀がやってきた。
「…アリス」
「…どうしたの?」
「さっきの怪我、大丈夫かしら…?」
様子を伺うように尋ねた。
「平気よ、こんな怪我は明日には完治してるわ」
「…早すぎるんじゃないかしら・・・?」
「私を誰だと思ってるの? 一応『妖怪』なのよ?」
「あっ・・・・」
思い出したかの様に、金糸雀は固まってしまう。
「さあ、もういいから・・・、家に戻って紅茶でも飲みましょう」
「う、うん!」
再び笑顔に戻った金糸雀は、アリスと人形達と一緒に家に入って行った。
とりあえず、アリスと金糸雀は一旦終わりです。
薔薇乙女達が全員登場するまでは、こんな展開が続くと思います( ̄ω ̄;)