薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
そして、思い付いた条件とは…。
「幽々子さん、お願いだよ。 せっかく射命丸さんが僕の為だけに時間を割いて取材してくれたんだから、その記事を書けないなんて酷いよ…」
蒼星石が、幽々子にそう嘆願した
「蒼星石、この記事を書かれたら、貴女の居場所がバレる事になるのよ? それこそ、アリスゲームを早める事に繋がるわよ?」
「…構わないよ、僕の本来の目的はアリスゲームなんだから」
幽々子の問い、蒼星石は力強く答えた
「それ以上に、射命丸さんがいたたまれなくて…」
「うぅぅ…、蒼星石さん! 貴女は良い人です!」
「ええ〜!?」
そう言った文が、泣きながら蒼星石の手を掴んできた
「私は、これまで記事にしていいと、これほどまでに弁護してくれた方は今まで居ませんでした。だから…、嬉しいんです、蒼星石さんの優しさが! うぇぇぇぇん!」
「し、射命丸さん…、何も泣かなくても…」
号泣する文に、蒼星石は完全に戸惑ってしまった
「文さんったら…、どうするんですか?幽々子様」
「そうねぇ…、私もああ言った以上は、タダで記事にさせるのは癪なのよねぇ…」
何かを考えている幽々子だが、口元は笑っていた
「(また、良からぬ事を考えてそうだなあ…)」
嫌な予感を感じた妖夢
その予感は的中する事になる
「…そうだ! 良いこと思いついたわ!」
「何をですか?」
「文、私との賭けに勝ったら、特別に蒼星石の事を記事にしても良いわよ?」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます!」
「喜ぶのは、まだ早いわよ?」
「…えっ!?」
「それで幽々子様、賭って言うのは何をするのですか?」
「それはね……」
幽々子は、何故か妖夢と蒼星石の方を向く
「蒼星石、妖夢、貴女達が勝負しなさい」
「「えぇぇぇぇぇぇ!!?」」
幽々子から告げられた言葉に、二人は驚きの声を上げた
「それでね、どっちが勝つか賭けない?」
「そういう賭けですか…」
「どっちかに賭けて、貴女が賭けた方が勝ったら、記事を書くことを許してあげるわ」
「そんな簡単な条件でいいんですか…?」
「簡単だからいいんじゃない」
「なるほど…」
「…それで、乗るの? 乗らないの?」
幽々子が文に問うた
「…分かりました、その賭けに応じましょう!」
「決まりね、賭けに負けたら、今度こそ問答無用で帰って貰うからね?」
「はい、それはもう…」
「…何か、僕達抜きで話が進んでるんだけど…」
「私達の意思は関係無いんですか、幽々子様…」
幽々子と文だけで話が進んでるいることに、蒼星石は溜め息をつき、妖夢はガックリと肩を落とした
――――――――――――――――――――
4人は再び外へと出た
今度は蒼星石と妖夢が対峙する形になっていた
「本当にやるの、妖夢?」
「だって…、幽々子様のご命令なのよ? 断れる訳無いじゃないのよ…」
「こういう闘いは、僕は気が乗らないよ…」
「私だって同じよ…」
二人は、溜め息を付きながら、重苦しい空気が立ち込めていた
「二人ともー、頑張りなさいよぉ!」
「蒼星石さーん! 私は貴女に賭けたんですよぉ! 絶対勝って下さいよー!」
「射命丸さん…、もう止めてよ…」
文に後押しされるが、蒼星石の方はテンションが下がりっぱなしであった
「私は、妖夢に賭けたわ。 貴女は私の従者なんだから、勝って当たり前よねぇ! しっかりしなさいよ!」
「幽々子様…、プレッシャーを掛けないで下さい!」
幽々子に圧力を掛けられるような応援を受けて、涙目の妖夢
「妖夢、負けたら1日6食よ?」
「ええ――!?」
「それって、遠回しに僕の仕事も増えるって事じゃ…」
「蒼星石さん! 私が記事が書けるかどうかは、貴女に掛かってるんです。マジで、マジでお願いしますよ!」
「もう、どうしよう…」
蒼星石も涙目になっていた
「仕方ないわね…。妖夢、蒼星石、長引かせる事はしなくて良いわよ?」
「それって、どういう事ですか?」
「こうしましょう。 制限時間は3分、妖夢の使うスペルカードは一枚。 その間に、蒼星石が妖夢を倒すかスペルカードブレイクしたら蒼星石の勝ち。 逆に、妖夢が一撃でも蒼星石に当てたら、妖夢の勝ちって事にしない?」
「確かに、それなら直ぐに勝負は着きそうですが…」
「それで良いかしら、文?」
「スペルカード1枚による真剣勝負ですね? 分かりました」
その条件を、文も飲み込んだ
「結局、僕達の意思は関係無いみたいだね…」
「何を言っても、無駄なのよ…」
「仕方ないな…、レンピカ」
すると、蒼星石の雰囲気が変わった
「射命丸さんの新聞が掛かっているんだ。 妖夢、僕は君を倒す…、覚悟は出来ているだろうな」
「……っ!?」
蒼星石は鋏を構え、妖夢の方へと向けた。
妖夢はその急変に驚くが、その趣旨を察知し、彼女もまた霊力を高める
「…いいだろう、お前がその気なら、私も容赦はしないぞ。 死ぬ気で来るがいい」
妖夢の声が威圧感ある低い声になり、口調も変わった。
その瞬間、二人の間の空気が変わり、それを見ていた文の額から汗が流れ出す
「何…、この威圧感は…?」
「文、良く目に焼き付けておきなさいよ…。蒼星石の、ローゼンメイデンの実力を…」
「……っ!」
幽々子の声が聞こえるも、文は二人から目が離せなかった。
「妖夢、来ないのか? ならば、僕から行くぞ」
「来い、お前に私の本気を見せてやろう…」
すると、妖夢は目を閉じ、集中力を高める
「あ、あの構えは…!」
過去に、相手になった事がある文には、妖夢が何をしようとしているかが分かった
「(蒼星石、ごめんなさい…。貴女を傷付ける結果になってしまうかもしれない…)」
「(妖夢…、君は…)」
この様な状況でも、お互いの思いは通じていた
「行くぞ! これを受けてみろ!」
鋏を構えた蒼星石が、叫びながら飛び出しす
「妄執剣……」
目を瞑りながら、スペルを口にする
「シャルフェ……」
妖夢目掛け、鋏で切りかかる蒼星石
そして、お互いの間合いへと入った時
「シェーレン!!」
蒼星石が鋏を十字に振る
「『修羅の血』!!」
スペルを宣言した妖夢の姿が視界から消えた
『ドォーン!』
突如、爆風の様な風が巻き起こり、埃が飛散した
「えっ…!?」
「………っ」
その様子を、固唾を飲んで見守る文と幽々子
『バギィーンッ!』
其処から、鈍い金属音が聞こえ
煙の中から、妖夢の白楼剣が飛んで来るのが見えた瞬間、地面へと突き刺さった
そして、視界が開くと
「妖夢……」
「……っ!!」
妖夢の首元に鋏の先端を突き付ける
「これが、その結果だ」
蒼星石の姿があった
「これ以上抵抗するなら…、僕はお前の首を切り落とす」
「くっ……!」
蒼星石の目は本気であった
「わ、私の……」
もはや、足掻く事も出来ない
「負けだ……」
出来る事は、負けを認める事だけだった
それは、一瞬の出来事
普通の人間の目では捉える事が出来ない程の高速移動
妖夢から放たれた残撃を、蒼星石は咄嗟に見切った
そして、その動きを止め、妖夢から白楼剣を薙払ったのだ
妖怪ですら、まず見切る事が出来ない攻撃の筈
だが、蒼星石はそれに見事なまでに対応したのだ
これが、ローゼンメイデンの真骨頂
悔しさの余り、妖夢は大粒の涙を流した
「そこまでよ、二人とも」
「「………っ!?」」
幽々子が、二人の間に割って入った
「ほんの僅かな時間だったけど、素晴らしい闘いだったわ」
そう言って、労う様に拍手をし出した
「蒼星石さん!妖夢さん!お疲れ様でした! 凄い闘いで興奮しまくりでした!!」
文もまた、拍手で二人を労った
「あっ…」
そこで、ハッとした蒼星石は妖夢に声を掛けた
「大丈夫だった妖夢? 怪我はしてない?」
鋏を降ろし、ゆっくりと妖夢の方へと近寄る
「…ええ、大丈夫よ。 怪我はしてないわ」
「良かった…」
蒼星石は安堵し、胸を撫で下ろした
「幽々子様…」
「どうしたの、妖夢?」
「申し訳ありません…、あっさり負けてしまいました…」
「気にしなくていいわ、貴女のあの技を見抜けるなんて人間でも妖怪でもほぼ不可能なんだから。 蒼星石は見抜いたとはいえ、あれがコンマ1秒違ってたら、結果は変わってたかもしれないわ」
「そうだよ、ほんの一瞬で勝負が決まったんだよ。 次に同じようにあれを突破する自信は無いよ」
「そ、蒼星石…」
「とにかく、良いものを見せて貰ったわ。 貴女が負けたから1日6食にすると言いたい所だけど、帳消しにしてあげるわ」
「ほ、本当ですか幽々子様!?」
それを聞いた妖夢は、表情が明るくなった
「良かった…、本当に良かったよ」
それを見ていた蒼星石も、自然と笑顔になっていた
「いやぁ、どうやら丸く収まったみたいですね! 良い写真も撮れましたし、これで私も気兼ねなく記事が書けます!」
満面の笑みで話し掛ける文
「それは良かったです。 僕も頑張った甲斐があったよ…」
少し疲れた様子を見せながら、蒼星石は笑っていた
「さて…、私はそろそろ失礼させて貰いますね」
「あらっ? もう帰るの?」
何処か名残惜しそうに幽々子が尋ねた
「はい、これだけの内容、記事にするには時間が掛かりますので、早めに撤退します!」
「射命丸さん、また遊びに来て下さいね」
「はい! 私もまだ蒼星石さんには聞きたい事があるので、是非とも伺わせて貰います!」
「(えっ…、あれだけ質問しておいて、まだ聞くことがあるの? この天狗は…)」
蒼星石は、心の中で呆れていた
「それでは、サラバーイ!」
別れを告げると、文の姿はあっという間に消えていた
「は、速……」
蒼星石は、それを唖然として眺めていた
「さて、私達も屋敷に入りましょ。 妖夢、お茶をお願いね」
「はい、畏まりました!」
幽々子は、妖夢の返事を聞くと、1人屋敷へと入って行った
それを確認した蒼星石は、妖夢に話し掛けた。
「ねぇ、妖夢」
「どうしたの? 蒼星石?」
「何か…、ごめんね…」
「えっ…!?」
「成り行きで闘ったとはいえ、君に痛い思いをさせてしまった」
「あっ……」
「君は、僕の大切なマスターだ。もうこんな事はしたくない…」
蒼星石は、とても悲しそうな表情をしていた
「…気にしないで」
妖夢は、彼女の顔を触りながら言った
「これ位、弾幕ごっこじゃ日常茶飯事よ、慣れてるわ」
「よ、妖夢…」
「寧ろ、私は貴女の事を甘く見ていたわ。 凄く強くてビックリしちゃったわ」
「そんな…、妖夢も凄かったよ。 あれだけ速い攻撃を受けたのは初めてだったんだ。アリスゲームでも、あんな速い攻撃を繰り出す姉妹は居ないよ」
「そ、そうなんだ…」
(もしかして、あれって奇跡だったとか…?)
「…妖夢?」
「…貴女に、お願いがあるの」
「お願いって…?」
「私の稽古に付き合って!」
「ええっ!? 僕が妖夢の剣術の相手をするの!?」
「お願い! 貴女が適役なのよ! 貴女の強さを是非私にも…」
「こ、困ったなぁ…」
手を合わせ嘆願する妖夢に、蒼星石は完全に困惑していた。
「妖ぉぉぉ夢ぅぅぅ!! お茶はまだなの!!?」
突然、屋敷から幽々子の怒声が響いた。
「あっ、しまった!? ごめんなさーい! 今すぐお持ちしまーす!!」
妖夢は、大慌てで屋敷へと消えて行った
それを見ていた蒼星石は、1人呟いた
「何か、色々大丈夫かなぁ…。 段々とアリスゲームとは違う方向に行ってる様な気がする…」
そう呟く彼女の周りを、レンピカが飛び回っていた
「フフフ…、今度の新聞の一面は『伝説の人形ローゼンメイデン、幻想郷に現る!』 これで決定ね! 記事の内容を考えるだけで興奮するわ!」
そう呟く鴉天狗は、最速で飛んでいた
何とか纏まりました。
次話からは、また他のドールの話になります。
しかし、戦闘の描写が難しい!
上手い描写が思い付かない…。
会話シーンも、もう少しキレのある展開にしたいです。