薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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色々激しくなってきた続きです。


第44話 荒れ狂う神様達

「♪♪♪」

 

妖怪の山の、とある湖で1人の少女らしき姿があった。

鼻歌混じりに、軽く踊っているようにも見える。

 

「今日は厄を引き取って貰ったし、身体が軽いわぁ!」

 

緑髪に赤のフリル付きのリボン、ゴスロリ風の服を着る彼女『鍵山雛』は上機嫌で軽やかに湖周辺をスキップしていると、物凄い音が聞こえた。

 

『ズドーン!』

 

「おっとと…、何!?何が起こったの?」

 

驚いた彼女は、周囲を見回す。

すると、森の向こうから土煙が上がっているのが見える。

 

「一体何があったのかしら? 行ってみましょう」

 

彼女は、その方向に向けて飛び上がった。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

「大丈夫なの! 死んだりはしないから、静葉も本気で遊ぼうなのー!」

 

「本気の遊びって何なのよ!? 意味が分からないわよ!」

 

「うー、何でも良いからやるよー!」

 

雛苺の号令と共に、三体の巨大ぬいぐるみは動き出した。

 

「あぁぁ…、ど、どうしよう…」

 

静葉は、自分の言った事を激しく後悔していた。

 

(余計な事を言わなきゃ、さっきの状態のままだったかもしれないのに…)

 

迫ってくる「それ」を見ながら、絶望感が支配していた。

 

「みんなー、弾幕撃つのー!」

 

ついに、巨大ぬいぐるみからの総攻撃が始まる。

 

 

ヒュュュ…、ドガーンッ!

 

ドーン! チュドーン!!

 

 

「うわぁぁ! シャレにならないわよぉぉぉぉ!?」

 

迫り来る弾幕の嵐を必死で回避する静葉。

 

激しい攻撃に、反撃する事すら出来ない。

 

「わぁぁぁい! 静葉ぁ、弾幕ごっこ面白いのー!」

 

「全然面白く無いわよ! 生きるか死ぬかの瀬戸際よぉぉ!」

 

「ねえねえ、この子達は本気出してないから、もっと攻めるのー!」

 

「ちょっと! 人の話を聞きなさーい!」

 

「みんなぁ! それそれー!」

 

次から次へと激しい弾幕が繰り出され、静葉はほぼ痛ぶられている状況に。

 

「こんなの弾幕ごっこじゃないわ! 只のワンサイドゲームよぉぉぉ!!」

 

静葉の悲鳴が、虚しく木霊していた。

 

 

 

 

「うわぁ…、凄いなあ……って、お姉ちゃん大丈夫かな?」

 

その様子を見ていた穣子が、唖然として眺めていた。

 

「どうだい? あれがローゼンメイデンの実力なんだよ」

 

「ローゼンメイデン? 何其れ?」

 

「おっと、まだあんたには説明してなかったね、後で説明してあげるよ」

 

笑顔で答える諏訪子であったが、行動はそれとは違った。

 

「とにかく、今は…」

 

「……へっ?」

 

「余所見すんなぁぁぁ!!」

 

隙ありと言わんばかりに、弾幕を撃ってきた。

 

「うぉっ!?」

 

穣子は、それをギリギリの所でかわす。

 

「やったなぁ! お返ししてやるぅ!」

 

穣子の反撃、スペルを宣言した。

 

「豊作『穀物神の約束』!」

 

まるでレーザーの様な弾幕が、諏訪子に向けられる。

 

「そうそう! 私もエンジンが掛かって来たよ!」

 

諏訪子は、小気味良い小回りを利かせながら回避を始める。

 

はっきり言って、諏訪子に分がある展開になりつつあった。

 

 

 

 

「避けてるだけじゃ、面白くないよー?」

 

「そんな事言ったって、どうしろって言うのよ!?」

 

雛苺から繰り出される弾幕を避けるだけで、一方的にやられる静葉。

始まってまだ時間は経っていないのに、既に服はボロけてきており、肩で息をしていた。

 

「仕方ないの…、見せて! 静葉の弾幕!」

 

「な、何!?」

 

雛苺がそう言うと、巨大ぬいぐるみからの攻撃が止んだ。

静葉の弾幕が見たいが故に、わざと攻撃を止めたのだ。

 

「はーやーくー! 反撃するのー!」

 

「く、屈辱だわ……!」

 

満面の笑みで誘う雛苺、静葉は額に青筋が浮かんでいる。

 

「そこまで言うなら、どうなっても知らないわよ!?」

 

「うん、大丈夫なの!」

 

「大丈夫ですって…?」

 

 

彼女の苛立ちが頂点に達した。

 

 

「いい加減に…」

 

 

スカートのポケットから、スペルカードを出した。

 

 

「しなさーい!!」

 

 

そして、高々と宣言をする。

 

 

「スペルカード! 葉符『狂いの落葉』!」

 

色鮮やかな弾幕が雛苺達目掛けて発射された。

 

「うわぁ…、綺麗なの……」

 

それに、雛苺は狼狽えるどころか、見取れていた。

 

「ちょっと、避けなくていいの…?」

 

静葉が指摘するも、ぬいぐるみ達も動かない。

 

 

ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ……

 

 

静葉から放たれた弾幕は、全てぬいぐるみ達によって受け止められた。

雛苺には、全く届きもせず巨大ぬいぐるみも無傷。

 

「あれ…、もう終わりなの?」

 

「そ、そんな…、そんなのありなの!?」

 

自身のスペルが全く効いておらず、愕然としてしまった。

 

 

 

 

「な、何なのあれ…」

 

爆音に導かれ、赤いゴスロリ姿の少女が飛んで来た。

 

「あの巨大なものって…、しかも何があったのよ!?」

 

彼女が目にしたのは、弾幕ごっこを繰り広げる4人に、辺りは禿げ山の如く抉られた地表が剥き出しになっている状態だった。

 

「こんなに強力な弾幕を繰り出すなんて…、何者なの?」

 

その光景を見ながら彼女は考えていると、視界に倒れている早苗が見えた。

 

「あれって…、早苗さん!?」

 

彼女は慌てて早苗の元へと寄って行った。

 

「早苗さん! どうしたの?」

 

「う…うぅぅ……、あっ…雛様……」

 

「これは、一体どういう事なの? 貴女は誰にやられたの?」

 

「私は…、諏訪子様と穣子様の巻き添えを食らって……この有り様です…」

 

「大丈夫なの? 立てる?」

 

「い、いえ…、今は雛苺に力を……持っていかれてるから…、身体に力が入らな………うがぁぁぁ!!」

 

「早苗さん大丈夫!? しっかりして!」

 

突然苦しみ出す早苗に、雛は焦ってしまう。

 

「熱い…、指輪が……雛苺………止めて…」

 

「雛苺? 誰なのそれは?」

 

「雛苺は…ローゼンメイデンで……私と契約………うぁぁぁぁ!!」

 

「早苗さん!? どどどどどうしよう……」

 

悶え苦しむ早苗を前に、雛は動揺してオドオドするばかりであった。

 

「雛様……」

 

「な、何…?」

 

「お願いです……、神奈子様を……呼んできて下さい……」

 

「か、神奈子さんを?」

 

「はい…、今…みんなを止められるのは……神奈子様しか……うがはぁぁぁ!?」

 

「早苗さん!? 無理よ! 今の貴女を放ってはおけないわ!」

 

「いいんです…私の事は……、お願いです雛様…、神奈子様を…神奈子様を…!!」

 

雛苺に大量の力を奪われており全身に力が入らず、供給される度に指輪から激痛が走る状況で、早苗は力を振り絞り、雛の腕を掴み必死で嘆願した。

 

「……分かったわ、直ぐに呼んで来るわ」

 

「ありがとう……ございます………がぁぁぁぁ!!」

 

「早苗さん!?」

 

「いいから…、早く……早く……!」

 

「早苗さん……、くっ…!」

 

雛は、後ろ髪を引かれる思いで飛び立った。

 

「良かった…、雛様……ありがとうございます……」

 

それを見届けると、意識が朦朧としてきた。

 

「雛苺…、お願い……私もう限界よ……これ以上はもう……」

 

しかし、早苗の声は雛苺には届いてはいなかった。

 

 

 

 

 

「もう! 静葉はつまらないよー!」

 

「そんな事言ったって…」

 

自分の弾幕が全く効いておらず、静葉は完全に絶望していた。

 

「もう〜仕方ないのー、みんなぁぁぁ! 総攻撃するのー!」

 

「……っ!!?」

 

総攻撃という言葉に、静葉はこの世の終わりかの如く、へたり込んでしまった。

 

「ヒナの弾幕、ちゃんと受け止めるのー!」

 

「…今度という今度は、詰んじゃったわね……」

 

迫り来る「それ」を目の前に、彼女の脳裏には走馬灯のように、過去の出来事が浮かんでいた。

 

「巫女の時だって、此処までじゃなかったのに……、あの人形の事をバカにしていた、さっきまでの自分を恨むわ…!」

 

どうしよもない絶望感に苛まれ、彼女は「それ」を見上げていた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「守矢神社…、早く…早く…!」

 

その頃、雛は全速力で飛んでいた。

早苗の危機的状況に、焦りが募る。

 

「もう少しなのに…、そのもう少しが遠い…!」

 

気だけが焦り、それ以上早く飛べない事に苛立ちが湧き上がる。

 

更に、その状況に追い討ちを掛けられる事になる。

 

「其処を飛んでいる者、待てぇぇ!」

 

「……っ!?」

 

雛が振り向くと、偶々其処を哨戒していた白狼天狗に見付かってしまったのだ。

 

「こんな時に限って、もう…!」

 

「…お前は厄神だな? こんな所で何をしている!?」

 

「何もしてないわ! 守矢神社へ向かっていたのよ!」

 

「どうして、そんなに慌てているのだ?」

 

「急用があるのよ! 神奈子さんに急用があって向かってるのよ! 早くしないと、早苗さんが危ないのよ、邪魔しないで!」

 

雛の必死の説明も、天狗の方は納得していなかった。

 

「どうも気になる…、何をそんなに焦っているのだ?」

 

「だから、早苗さんが……」

 

「黙れ! その様な嘘を私が見破れないとでも思っているのか!?」

 

「嘘じゃないわよ、本当よ!」

 

「もういい!いくら厄神とはいえ、我々天狗の領域に入れば只では済まない事位は、分かっているだろうな!?」

 

「天狗の領域なんて興味無いわよ、どうこうするつもりは無いし、此は偶々よ!」

 

「言い訳しかしないのか、見苦しいな」

 

その白狼天狗は、腰の太刀を抜き雛の方へと向けた。

 

「実力行使を持って、お前を排除する!」

 

「分からない天狗ねぇ! もしも早苗さんに万が一の事があったら、貴方は責任を取れるの!?」

 

融通の効かない天狗に対し、雛は焦りから激しい怒りを露わにした。

 

「どうしたんだ?」

 

すると、其処へ仲間の天狗数人がやって来た。

 

「(何で、こんな時に…!)」

 

「この厄神がどうも怪しい。 排除しないといけない」

 

「早く済まさないと、我々にも災いが降りかかるかもしれない、直ぐに片付けるぞ」

 

天狗達は一斉に、太刀を抜いた。

 

 

「はぁ……」

 

 

雛が溜め息をついた次の瞬間、

 

その場の空気が変わった。

 

 

「これだけお願いしても、聞く耳を持たないとは…、天狗とは本当にどうしよもない馬鹿共だな…」

 

 

口調が変わり、眼光鋭く、声は低く威圧的になる

 

 

「これで、早苗さんの身にもしもの事があったなら…」

 

 

「私は、お前達を許さない」

 

 

「お前等には、今すぐに厄災が降りかかる事になるだろう」

 

 

彼女の周りから、渦々しいオーラが揺らめき出す

 

 

「な、何だ!?」

 

「怯むな! 一気に攻めるぞ!」

 

雛を包囲していた天狗達が動き出す

 

 

「私が厄神だという事を、もう忘れたのか?」

 

 

「「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」」

 

 

彼女目掛け斬り掛かる天狗達

 

 

「愚かな天狗共は…」

 

 

天狗の斬り掛かったのは彼女では無く

 

 

「殺す…!」

 

 

仲間同士で、斬り合いをしていたのだ

 

「……っ!?」

 

「な、何だと!?」

 

「ぐわぁぁぁ!?」

 

「な、何故だ…?」

 

「確かに、あの厄神を…」

 

 

一体何が起きたのか、天狗達には理解出来なかった。

 

 

「言った筈だ、貴様達には厄災が降りかかると…、それがこの結果だ」

 

 

「そして…、貴様達は私の邪魔をした…」

 

 

 

「我が厄に苛まれ、藻掻き苦しみながら死ね!!」

 

 

 

その時、天狗達は悟った

 

殺されると

 

 

そして、雛はスペルを宣言する。

 

 

「災禍『呪いの雛人形』」

 

 

彼女から、大量の弾幕が撃ち出された

それは、確実に死を感じさせる程に

 

 

「「「「「うがぁぁぁぁぁ!!」」」」」

 

 

既に手負いだった天狗達は、全ての弾幕に被弾し、地上へと落下していった。

 

その断末魔の叫びは、やがて消え、何時もの様に静寂さが戻っていた。

 

 

「フンッ…」

 

 

彼女は、その様子を黙って見ていた。

その瞳は、恐ろしい程冷たかった。

 

「……はっ!? いけない、こんな事をしてる場合じゃ無かったわ! 早く神奈子さんの所に行かなくちゃ!」

 

其処で我に帰った彼女は、すぐさま守矢神社へと全力で飛んだ。

 




静葉様が感じた絶望感、分かるでしょうか?

そして、雛ちゃんがキレたら超恐いと思う。

キャラ崩壊してますね…。
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