薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】   作:豊之丞

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『彼女』との出会いは、運命なのか、必然だったのか…。


第47話 その吸血鬼、悪魔の妹につき

真っ直ぐに伸びた長い廊下

人気も無く、偶にある蝋燭が照明代わりに廊下を照らすが、それでも薄暗く蝋燭がない場所では足元が見えない程である

 

「暗いわねぇ…、先が全く見えないじゃないのよ…」

 

水銀燈は1人、薄暗い廊下をゆっくりと飛んで進んでいた。

 

「でも、こうして蝋燭があるって事は、この向こうに何かがあるのね…」

 

静かに、息を殺す様に、先へ先へと進む

 

「…メイメイ、暗いから灯りの代わりになりなさい」

 

すると、彼女の人口精霊メイメイが、彼女の前に飛び出し光り出した

 

「ふう、少しは視界が開けたわね」

 

だが、その光は紫色で幾ら明るいとはいえ、薄暗かった紅い廊下が、余計に不気味な雰囲気を醸し出していた

 

「…文句を言わないの。 あなたはこういう時にこそ役に立たなきゃダメでしょう?」

 

不満有り気に飛び回るメイメイを諭し、水銀燈を更に先へと進んだ

 

 

どれ位進んだであろうか

 

「…あっ……!?」

 

もはや、蝋燭の灯りさえ届かない暗闇の廊下の先に、微かに光が見えた

 

「あれは、何かしら…」

 

それを見た水銀燈は、メイメイと共に導かれる様に其処へと向かった

 

そして、彼女が辿り着いたのは、とある部屋の扉の前であった

 

物音はしない、部屋から光が漏れているだけである

 

「静かだけど、確かに此処から気配はするわ…」

 

彼女は扉をノックしてみた

 

 

コンッ、コンッ…

 

 

しかし、部屋の中からの反応は無い

 

「おかしいわね…、確かに「いる」筈なんだけど…」

 

水銀燈は扉を見上げながら考えた

 

「…しょうがないわね、勝手に入らせて貰おうかしらね。ちゃんと返事をしなかったのが悪いんだから」

 

そう呟き、扉の取っ手に手を掛ける

 

 

ギギギギギ……

 

 

ゆっくりと扉が開かれ、部屋の中の様子が見えた

 

「えっ…!?」

 

彼女が目にした部屋の中の様子

 

異様に広い部屋の中は、暖炉の炎が照明代わりになっており、部屋中をオレンジ色に染めていた

 

また、豪華な装飾品が並べられ、可愛らしいぬいぐるみが沢山置かれ、玩具の様なものが散乱していたのだ

 

「エラく幼い趣味ねぇ、誰の部屋かしら?」

 

水銀燈が部屋へと、一歩踏み入れた瞬間であった

 

「………っ!?」

 

彼女は、その僅かな異変に気付いた

 

微かに匂う、「血の匂い」に

 

(何で…、こんな幼い部屋に似つかわしくないこの匂い…、どういう事なの…?)

 

「…メイメイ、離れちゃダメよ」

 

人口精霊に呼び掛け、水銀燈は部屋の中へと歩を進めた

 

あえて飛ばずに歩いて進む、僅かな気配を感じながら

 

 

パチ パチ パチ……

 

 

水銀燈の足音、そして暖炉の燃え盛る炎の音が部屋に響いている

 

部屋の中央付近には大きなベッドがあり、ぬいぐるみが置かれており、この部屋の住人の物だと分かる

 

「居ないわね…」

 

ベッドで誰かが寝ている様子は無い

 

「でも、そんな筈は無いわ。 確かに気配はするんですもの…」

 

住人の姿は見えないが、確かな気配を感じる水銀燈

更に、部屋の奥へと進んでみる

 

そして、入り口からベッドの死角になっている所で彼女は見た

 

「やっぱり…、居たじゃない…」

 

それは、間違い無く部屋の住人あった

 

「スゥ…スゥ…スゥ…」

 

『彼女』は、ベッドにもたれ掛かり、くまのぬいぐるみを抱えながら、寝息を立てていた

 

「誰なのかしら、初めて見る顔ね…」

 

水銀燈は、静かに『彼女』へと近付いた

 

『彼女』の姿、肩に掛かる程度の金髪をサイドテールにしナイトキャップを被っており、白い半袖と赤いスカート、赤いストラップシューズ、赤を基調とした服装だった

 

(何かしらこれ、作り物ではなさそうね…、翼?)

 

それ以上に水銀燈の目を奪ったのは、背中から伸びる特殊な翼

一対の枝の様な翼に七色の結晶がぶら下がっているように見える

 

「幼い容姿ねぇ…、まるでレミリアみたい」

 

ボソッと呟く彼女は、『彼女』を起こしてみる事にした

 

「もし…」

 

「………」

 

静かに喋り掛けるも、相手の反応は無い

 

「起きなさい、寝るならベッドの中で寝なさいな、風邪引くわよ?」

 

「…ううん……」

 

ようやく反応があったが、まだ目覚める様子は無い

 

「はぁ、面倒ねぇ…」

 

水銀燈は、彼女に少し近付き腕を組みながら声を上げた

 

「起きなさい! もうお日様は高いわよ? それとも何? 痛い思いをしなきゃ起きないの?」

 

「う…ううん……咲夜…?」

 

ようやく目を開けるも、寝ぼけているのか勘違いをしている

彼女の瞳の色は水銀燈と同じ、燃えるような真紅であった

 

「残念だけど、私は咲夜じゃないわ」

 

「えっ……、あっ…咲夜じゃない……それじゃ……」

 

目を見開き咲夜で無い事を確認すると、彼女は若干戸惑っている様子を見せる

 

「此処は貴女の部屋よねぇ? 無断で入って来ちゃってごめんなさいね。 ノックはしたんだけど、反応が無かったからついねぇ」

 

「そうなんだ…、貴女は誰…?」

 

「私は水銀燈、ローゼンメイデンの第1ドールよ」

 

「水銀…燈…、ローゼンメイデン…?」

 

彼女は、キョトンとした表情で水銀燈を見つめていた

 

「貴女は、お人形なの?」

 

「その通りよ、偉大なるお父様に造られた誇り高き薔薇乙女の第1人形」

 

「…人形には見えないよ……?」

 

「そう? でも、私は正真正銘の人形なのよ?」

 

そう言って、自分の腕の球体関節を見せた

人形だと言われても、そうは見えないとばかりに驚きの表情を見せるフラン

 

「この紅魔館に来たのはつい最近よ、色々揉めたけどねぇ…、フフフ…」

 

「へぇ、知らなかったわ…」

 

「貴女こそ、今まで屋敷内じゃ見掛けなかったけど、どうしてなの?」

 

「別に…深い訳は無いわ、部屋から出なかっただけ」

 

「そう、引きこもってた訳ね。 貴女って損な子ねぇ…」

 

「えっ、そうかな?」

 

「そうよ、世の中は広いのよ、自分の殻を割って外に出なきゃ楽しめるものも楽しめないわよぉ? 尤も、幻想郷はそんなに広くは無いだろうけどねぇ…」

 

『彼女』を見下ろしながら、笑いながら語る水銀燈を、『彼女』は座りながらジッと見つめていた

 

「…ところで、貴女も紅魔館の住人なんでしょ? 名前は何って言うの?」

 

「私は、フランドール……フランドール・スカーレット」

 

「フランドール・スカーレット…?貴女はレミリアとはどういう関係なの?」

 

「レミリア・スカーレットは、私のお姉様だよ」

 

「お姉……なるほどね、貴女達は姉妹だったのね、全然似てないから分からなかったわぁ」

 

「…そんなに似てない?」

 

「ええ、似てないわ、髪の毛の色も翼の形状も全くね………だけど少しだけ訂正するわ、良く見れば顔つきと瞳の色は姉と同じねぇ…、そこはやっぱり姉妹が故って所なのかしら? それに、その幼児体型も姉そっくり、アッハハハハ…!」

 

まるで、フランドールを馬鹿にしている様に、水銀燈は高笑いをした

 

「でも…、アイツは私のお姉様で間違い無いわ!」

 

少しムッとした表情で、フランは言い返した

 

「あらっ、怒った?」

 

「そうじゃないけど…、貴女こそアイツとはどういう関係なの?」

 

「そうねぇ…レミリアはね、私の下僕よ。 アリスゲームを制する為の大切な糧なの」

 

「アリスゲーム?……って、そんな、お姉様が?」

 

「そうよ、まあ、あの子を言う事聞かせる様にするまでには、随分と骨が折れたわねぇ…」

 

「あの、お姉様が…?」

 

自分の下僕にしたという水銀燈の言葉を、フランは俄かに信じられなかった

 

「レミリアだけじゃないわ、パチュリーや咲夜、美鈴に小悪魔と、他の紅魔館の住人も、最初はやたらと抵抗したけど、最後は私が有無言わさず蹴散らしてやったわ」

 

「それじゃ…、今 紅魔館は…」

 

「私の天下と言ったら大袈裟かもしれないけど、でも今じゃ誰も私には逆らわないわよ?」

 

「え……あぁぁ……」

 

紅魔館を乗っ取った様な発言に、フランは言葉が出なかった

だが、水銀燈はふと疑問を感じ、フランに訊ねた

 

「フランドール、貴女は何も聞いてなかったの? 私の事も?」

 

「ううん、何も…、誰も教えてくれなかったの…」

 

「えっ…? 誰も教えてくれないって…、屋敷内を歩けば異変に気付くでしょ?あの時、私は散々暴れまわったんですから」

 

「私ね…、あんまりお外には出して貰えないんだ」

 

「それはどうしてなの?」

 

「私はね、気が触れてるっていうか情緒不安定なの。それが原因で何人もの人間や妖怪を殺したのよ」

 

「…それで?」

 

「そんな原因で、人間や妖怪を傷付けたく無いし、殺したくも無いから、ある時から外に出るのは止めたの。そりゃ、時々は出ようともしたけど、アイツがそれを止めたのよ」

 

「アイツって、レミリアの事ね」

 

「そう、そうやって私はつい最近まで一回もお外には出ず、地下のこの部屋に休んでいたの。…495年の間ずっと……」

 

「よ…、495年ですって!?」

 

フランのその言葉に、流石の水銀燈も驚愕した

 

「でもね、それで誰も傷付けなくて済んだのよ。それに、今では敷地内なら自由に出歩ける様にもなったし、別にアイツの事を恨んでる訳じゃないわ」

 

(姉妹揃って、ジャンクなのね…)

 

「…いくら情緒不安定だからって、そんな長きに渡って閉じ込めておくなんて、どうかしてるわ、正気の沙汰じゃないわね」

 

「……えっ?」

 

「私もね、アリスゲームの性格上、妹憎しなんて事が多々あったけど、其処までは出来ないわ…。そんな権利は無いし、ましてや私達は姉妹同士での闘いだから、そんな必要は無い…、生きるか死ぬか……二つに一つよ」

 

「…水銀燈?」

 

「貴女は、それで良かったの?」

 

「分からない…」

 

「はっきりしなさい!!」

 

「……っ!?」

 

静かな口調だった水銀燈が突然声を荒げ、フランは驚いてしまう

 

「例え貴女の心がジャンクだったとしても、貴女を束縛する権利は誰にも無いのよ! レミリアにもよ!」

 

「あっ……」

 

「何故貴女は闘わないの? 何故何時までも閉じこもってるの? 貴女の人生なのよ、例え吸血鬼の長い一生だって一度きりの人生なのよ? もっと闘いなさい! 目の前の障害物は排除してでも前に進みなさい! 邪魔をする者が居るなら蹴散らしなさい! それが自分の姉であろうと!!」

 

「す、水銀燈…」

 

「貴女は、もっと自分と向き合わなきゃダメよ…、貴女の内に潜んでいる『狂気』に打ち勝てなきゃ、貴女の価値は無いわ」

 

「……っ!」

 

初対面の筈なのに、既に自分の事を見抜いているかの発言に、彼女は声が出なかった

 

「…貴女は、私の心配をしてくれてるの?」

 

「心配ですって? ……ハッ! 何を勘違いしてるの?」

 

「…えっ!?」

 

「貴女の、余りにも後ろ向きな境遇に胸糞が悪くなってねぇ…、思わず吐き出しちゃったわぁ」

 

「う、嘘……だって、さっきのは貴女の本音なんじゃ…」

 

「勘違いするなと言ったでしょ! どんな境遇で長い間閉じこもってようと私の知った事じゃない、それはお前自身が選んだ事なのよ! 何も出来なかったんじゃない、しなかっただけでしょ? お前は吸血鬼なのよ、その強大な力で何とでも出来た筈でしょ?甘ったれるんじゃないわよ!」

 

「そ、それは…」

 

「…そうよねぇ、自分でどうにか出来る位なら495年も閉じこもって無いわよね? それが出来なかったのは貴女がジャンクだからよ、そんな人生がお望みなら生きている価値なんて無いわ」

 

「ち…違う……違うもん……ぐすっ…私だって…楽しく遊びたいの……ぐすっ…ひっく……誰も居ないのは嫌……寂しいよぉ…」

 

先程とは掌を返したかの様な水銀燈の非情な言葉に、フランは泣きじゃくって否定する

 

「結局自分ではどうしよも出来無いって訳か、馬鹿な子ね…」

 

「みんな…、私に構ってくれない…側にも居てくれない…そして、誰も居なくなる…

 

みんな…、消えればいいんだぁぁぁぁ!!!!」

 

膨大な妖気と殺気を放ち、飛び上がったフランが絶叫する

 

それを見上げる水銀燈の瞳は、冷徹であった

 

「…良いわフランドール、貴女のその無意味な人生に、私が引導を渡してあげるわ!」

 




次話予告
フランドール対水銀燈の激しい死闘です。


銀様は、素直じゃないんです。
心根は、優しい感情があるから、フランを気遣うシーンもあったんですが、相手がそういう気を起こすと、掌を返して罵ってしまうんです。

何時もの事と本人は思っていても、フランは違った。

さっきまでの言葉は何だったのか?
信じかけていたものに、裏切られたかのような絶望感。
そして、激しい怒りへと変わる。
それが、彼女を狂気へと動かした。

心理描写とは、難しいものです。

文章だけ見てると、若干急展開に見えなくもない…。


こんな感じですが、次回も気合い入れて仕上げます。
多分、大半が戦闘描写になると思いますが。
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