薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
注意!
今回の話には多数の残酷、残虐描写が含まれます。
その事をご了解した上で、閲覧して下さい。
「…うぅぅ……くぅぁぁぁ……はあっ!?」
ベッドで眠りに就いていたレミリアが目を覚ます
全身に汗をびっしりと掻いていた
「な、何なの……この何とも言えない、嫌な予感…?」
不穏な予感に、レミリアの表情は険しい
「胸がざわつく…、一体どうなっている………ぐわぁぁ!?」
突如、指輪から激痛が走り、手を抱えて悶絶する
「す、水銀燈…? 貴女、何を…、アリスゲームが…?」
彼女はそう思ったが、何かが違うと感じた
「……いえ、違う…何が、起こっているの…!?」
何かとてつもない予感を感じたレミリアの表情が強張る
「この感覚……まさか、フラン!?」
指輪から流れてくる感覚の中に、フランドールの感覚を感じ、レミリアは焦りを感じた
「いけない! このままじゃ、フランが……殺される!」
ベッドから飛び起きると、すぐさま部屋を飛び出した
―――――――――――――――――
「さぁて、どうやって始末しようかしらねぇ…」
フランと対峙する水銀燈からは、殺気のオーラが漂っていた
「そ、そんな簡単に殺せるの? 私は吸血鬼よ! お前に殺せるの?」
「…だから、何?」
「なっ…?」
「私が殺すと言ったら殺すわよ。 それとも、私にお前が殺せないとでも思っていた訳?」
「……っ!?」
その時の水銀燈は、紛れもなく本気であった
「無駄話は終わりよ、覚悟は出来てるかしら?」
「私を…、甘く見ないでよね!」
先に動いたのはフランであった
「私は、お前なんかに殺されない! 死ぬのはお前だぁ!」
「フッ…」
水銀燈目掛け打ち込んで来るフラン、だが水銀燈は涼しい顔でかわす
口元だけは、笑っていた
「フフフ…、ならばラストチャンスをあげるわ、貴女の全力を見せてみなさい」
「えっ…!?」
「それで、私を殺せれば貴女の勝ちだけど、逆に私が全部かわせたら貴女は死ぬ事になるわ…」
「其処まで言い切るなら…、本気で覚悟しなさいよぉ!」
水銀燈の挑発に乗せられる形で、フランがスペルを宣言する
「QED『495年の波紋』!」
その瞬間から、水銀燈目掛け右から左から弾幕の嵐が襲い掛かる
「これが私の本気よ、避けれるもんなら避けてみなさいよ!!」
「そう…、それが貴女の最高なのね」
そこからの水銀燈の動きは、恐ろしくずば抜けていた
高速で飛んでくる弾幕を見事に回避する
僅かな隙間を縫うように避け、被弾しそうでしない、神が掛かったかの様な動き
「なっ…、何でそれだけの弾幕を回避出来るのよ!? 魔理沙だって何発か食らったのに…!」
「私はこういう体だから、小回りには自信があるのよ? こういった細かい回避は得意分野だったりするの」
フランの嵐の様なスペルをかわしながら、水銀燈は語り掛ける
「そんな…、あんた……おかしいわよ!?」
「本当におかしいのはどっちかしらねぇ…」
そして、徐々に弾幕が消えていく
「あらぁ、終わっちゃった?」
「い、いや…そんな……そんなの……何かの間違いだ!………違う、これは悪夢だよ!」
「そうね、これは確かに悪夢かもしれないわね、貴女にとっては…」
「う、うわぁぁぁ…!」
フランの表情が青ざめていく
「しっかし、貴女の余りの限界の低さには、心底幻滅しちゃったわぁ…」
ついに水銀燈が動く
「フランドール・スカーレット…」
黒い翼が大きく変異する
「忘れて無いわよねぇ? 貴女の弾幕を全てかわしたら、貴女は死ぬ事になるって…」
「……っ!!」
「現実に、私は貴女のとっておきのスペルカードを反撃無しで避け切ったわ」
そして、身構える
「次は私の番よ」
「ひぃぃぃ!?」
「お前の、その華奢な身体で何処まで頑張れるか、見せて貰うわよ…」
ダーツと化した羽が、フラン目掛けて発射される
「うわがぁぁ…!」
防御しようとするが、圧倒的な枚数の羽の攻撃に被弾し、身体を引き裂かれていく
「どうしたの? 早からボロボロじゃない? 反撃出来る余地も無い?」
「くぅぅぅ…!」
反撃しようにも出来ない
何故なら
(もう、身体が言う事聞かない…、どうしちゃったの、私の身体…?)
水銀燈に力を奪われながら闘っていたフランは、自身が考えていた以上に体力を消耗していた
(反撃…出来ないよ…)
反撃はおろか、自身を守る事すら、ままならない状況にあった
「フランドール」
「えっ…!?」
「何処を見てるのよぉぉ!!」
次の瞬間、フランの目の前には水銀燈の変異した巨大な翼が襲い掛かって来ていた
「ぐわぁぁぁぁ!!」
まるで、殴りつけられる様に吹き飛ばされる
「がはぁぁ!!」
壁に叩き付けられ、壁面が破壊される
「まだよ、まだ終わってないわよ…」
だが…
「此からが、お前の悪夢の時間…」
それで終わらない
「左からよ!」
「なっ…、ぎゃはぁぁぁ!」
水銀燈の変異した左の翼が、殴りつける様にフランに炸裂し、また壁に叩き付けられる
「次は右!」
間髪入れず、右の翼が炸裂
「がぁはぁぁぁぁ!!」
壁に叩き付けられた所を再び、一撃が炸裂する
「また左よ!」
「ぐぁぁぁぁぁっ!!」
水銀燈の連打がフランを襲う
「ほぅら、また右よ!」
「ぎぇぁぁぁぁっ!!」
翼で殴りつけられては壁に叩き付けられる
その猛攻が、何度も、何度も繰り返される
無慈悲を通り越し、残虐を極める
打ち付けられる度に、壁にクレーターが出来始め、壁から鮮血が伝い流れる
「まだ、頑張れるかしら?」
またも、ダーツと化した羽がフランをメッタ刺しにしていく
既に血塗れのフランの身体から、更に血が噴き出す
「う゛わぁぁぁぁぁ!!?」
フランの絶叫が部屋の中を支配する
其処に、水銀燈が追い打ちを掛ける
「次で…」
フラン目掛け飛び掛かり
「かはぁぁっ!?」
彼女の顎を掴み上げ
「駄目押しよぉ!!」
水銀燈が、そのままフランを押し付けながら地面目掛け急降下する
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
『ズドーン!』
フランごと、地面へと叩き付け、その衝撃で周りの物が吹き飛ぶ
水銀燈による、一方的な攻撃
その光景は、もはや攻撃というより拷問に近いものであった
「…少しやりすぎたかしらね? 大丈夫よね、何てたって吸血鬼なんですから…」
少し間合いを取り、フランの様子を伺う水銀燈
「うぐ…あがぁぁ……」
そのフランは、まだ闘う気があるのか、必死で起きあがろうとするが
「うっ……ぶぉぁぁぁっ!?」
またも、激しく吐血する
その全身は、血で赤く染まる
顔も、腕も、足も、髪の毛までも血塗れになり、白い服も真っ赤になっていた
「もう流石に無理でしょ? 降参しなさいな?」
その様子を見た水銀燈は、冷たい笑みを浮かべながらフランに話し掛ける
「ゲホッ…ゲホッ……! はぁ…はぁ…はぁ…!」
血を含んだ咳をしながら苦痛の表情を見せるが、尚も彼女は水銀燈を睨む
「それだけのダメージを受けたら、普通の人間なら生きてはいないわよ? 流石は吸血鬼だって褒めてあげたい所だけど…」
すると、水銀燈は右手を出し
「いい加減、もう良いわよね?」
黒い羽が集まり出し、光り出したと思うと、それは剣へと変化した
「あっ……あぁぁぁ!?」
それを見たフランが戦慄する
「さぁて、仕上げはどうしようかしらねぇ…、ウッフフフフ……」
水銀燈の笑顔は、明らかに常軌を逸していた
「う……ぅぅぁぁ……」
「何? そんな無様な格好になっても、まだ何かしようとするの?」
「うおわぁぁぁぁぁぁ!!!」
上半身を起こしたフランが、力一杯叫ぶ
「……っ!?」
その異様な姿に、水銀燈が一瞬怯む
そして、フランが右手を出し
「きゅっとして……」
「(あれは…、不味い!)」
フランがやろうとしている事を瞬時に察知した水銀燈が、一気に詰め寄る
「ドカ――……」
「させないわ」
大きく変異した翼をフラン目掛け打ち込む
「きゃぁ!?」
その一撃に仰け反る
水銀燈は、その隙を見逃さない
「悪い事をする手は、使わせないわ!」
一気に攻め込み
「はぁっ!」
スパーンッ!
「う゛わぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
剣を振るい、フランの右腕を切り落としたのだ
その時点で、勝負は着いていた筈であった
「う、腕が……腕がぁぁぁぁ…!!」
「フッフフフフ…、どう? 腕を切り落とされた気分は? 痛かった?」
「うぁぁ……くぅぁぁぁ…」
「大袈裟ねぇ、吸血鬼ってのは、身体の一部分が残っていれば、再生は可能なんでしょ? 羨ましい能力だこと…」
泣きじゃくるフランの元へ、話ながら近付いて来る水銀燈
まだ、終わってはいなかった
「貴女のやろうとしてる事位は分かるわよ、自分で制御が出来ないその力も、また貴女の能力…」
「う…うゎぁぁぁ……」
「序でに、これは…」
彼女は剣を振り上げ
「オマケよ!」
フラン目掛け振り下ろす
「ぎぇゃぁぁぁぁぁ!!!」
フランの片方の翼を、切り落としてしまった
「アッハハハハハ! これで貴女はもう何にも出来ないガラクタも同然!」
「うぇぇ…痛い……いたぁい…!」
「そのうち再生してくるんだから、我慢なさい」
そして、ゆっくりとフランの前へと近付く水銀燈
「貴女に殺された者達の痛みは、こんなものでは無かった筈よ…」
「うぉぁぁ…」
「貴女に聞くわ」
「ぁぁぁ…」
「貴女は、今まで何人の人間と妖怪を殺して来たの?」
「うっ…!」
恐怖に怯えるフランは、何も答える事が出来ない
「貴女が殺したヤツらの痛み、苦しみを、少しでも考えた事がある?」
「う…ぅぇぇ…」
「彼等が、殺される間際に何を考えていたのか、僅かでも思った事があるのかしら?」
「きっと、想像を超える恐怖と痛みだったでしょうね…」
「貴女は、一度でも彼等の命乞いを聞いてあげた事はあるの?」
「あぁ…ゃぁぁぁぁ…」
「一体、どれだけの者達が泣き叫び、激痛を感じながらその時を迎えたのか、想像に堅くは無いわ……さぞ、無念だったでしょうね。 こんな餓鬼吸血鬼の餌食になって」
「……っ!!」
「…その様子だと、貴女は彼等の悲痛な叫びになど耳を貸そうとはせずに殺した、貴女が他人の痛みを感じようとせず、自己中心的だったから」
彼女は、ゆっくりと歩み寄る
「何故殺したの? 気が触れてるだけじゃないわよね?」
「あ…ひぁぅぃぃ…」
「妖怪は人間を食らって生きているとは聞いたけど、貴女の行為はそれとは逸脱しているわよね?」
「い、いやぁぁ…」
「さあ、答えなさいよ……」
「あぁぅぁぁ…」
「答えろぉぉぉ!!!」
「ひゃぁぁ!?」
水銀燈の絶叫に近い一喝に、フランはまともに動かない体で後退りをした
「そう…、答えられないのね…」
その言葉からは、諦めの雰囲気さえ感じられた
「そうよねぇ、答えられる訳無いわよね、だって貴女……」
「ジャンクですもの!」
口元だけ笑みを浮かべるが、決して彼女は笑っていない
氷の様に冷たい視線を、フランに対して刺すように向けていた
「さぁ、次はお前の番よ…」
その瞬間から、水銀燈から凄まじい殺気が溢れ出る
「い、いや…いやぁ!」
「お前の手によって死んでいった者達の痛み、苦しみ、悲しみ、絶望、恐怖、怒り…」
「あっ…ぁぁぁ…!」
「その者達に代わり、私がお前の身体に刻み込んでやるわ…!」
「や、止めてぇ! 殺さないで! 死にたくないよー!!」
重傷を負ったフランが取った行動は、皮肉にも命乞いであった
彼女の中に、今まで感じた事が無い程の恐怖が支配していた
これで、終わりでは無い…!
続きます。