薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
それて…、遂に50話に到達しました!
御覧頂きありがとうございますm(_ _)m
「言い残す事があれば、聞いてあげるわよ」
「お、お願い…止めて……」
「命乞いねぇ……どう? 立場が逆転した今の気持ちは? 死んで行った者達の気持ちが少しは分かったんじゃない?」
口元だけ笑う水銀燈、だが彼女の手に持たれた剣先は、フランにずっと向けられていた。
「ご…ごめんなさい……ごめんなさい……ひっく…お願いだから……許して…!」
「今まで、お前に殺された者達の中にだって、そうして命乞いした奴が居た筈よ? 1人でも聞いてあげた事はあるの?」
「そ、それは…」
「無いというのならば…、私も聞く耳は持たないわ…」
「あ…あぁぁぁ……!」
「さぁ、どうやって切り裂いてあげましょうか…」
剣先をフランの顎に乗せ、無理やり自分の方へ顔を上げる。
「助けて! もう誰も苛めたり壊したりしないからぁ! 絶対、絶対にしないから…!」
「そんな言葉を信用出来るんだったら、お前は永きに渡って幽閉されたりしないわよね?」
「うっ……」
「レミリアが、そうしたのには訳があるのよ。最も、それを正当化するつもりは無いけど」
「………っ!」
そして、水銀燈の眼光が鋭くなる。
「フランドール、今から私がお前の手によって殺された者達の所へ送ってやるから、ちゃんと手を付いて詫びて来なさいよ」
「嫌だ……嫌だぁぁぁ!」
水銀燈から放たれる殺気に完全に怖じ気付き、フランドールは泣きじゃくりながら必死で後退りする。
「あらっ、何処に行こうというのかしら? 逃げられはしないわよ…」
「うわ……来るな、来るなぁぁぁぁ!」
大きなダメージを受けた身体で、必死に後退りする。
しかし、それをゆっくりとした歩調で追う水銀燈。
「フッフッフッフッ……さぁ、最後なんだら、好きなだけ泣いて喚きなさい、無様にねぇ…!」
「あぁぁぁ……嫌だよぉぉぉ…!」
もうフランには反抗する意志は無く、もはや只の少女と化して恐怖に打ちひしがれていた。
「……っ! あぁぁぁ!?」
必死で後退りしていたが、遂に部屋の壁に到達してしまった。
「ウッフフフフ…、其処が貴女のデッドラインね」
「うぁぁぁぁ…!」
「お終いよ」
フランの目の前に立った水銀燈は、ゆっくりと剣を振り上げる。
「……死になさい」
「嫌ぁ! 助けてぇぇぇ!!」
助けを懇願するフラン目掛け、剣が振り下ろされた
その時であった。
「待てぇぇぇ!!」
「………っ!?」
突然、部屋中に怒声が響く。
声の主は、レミリアであった。
レミリアの姿を確認した水銀燈は、瞬間的に手を止めた。
剣先は、フランの頭上数センチの所で止められていた。
「水銀燈! 貴様一体何をしているんだぁ!!」
「何って…、身に降る火の粉を振り払っただけよ?」
「何だと!?」
「貴女が、ちゃんと面倒見ないから、この馬鹿な妹は余計に壊れちゃったんじゃないの?」
「どういう事だ、それは!?」
「貴女、この子が多くの人妖を殺したのは、情緒不安定だからだけなの? ただそれだけで、495年もこの子の自由を奪っていたって言うの?」
「そ、それは…」
「本当に反吐が出る位勝手な理由ね…、お前は何様なのよ?」
「くっ…!」
水銀燈から問われた事に、レミリアは全く反論出来ないでいた。
「この子の人生はお前の物じゃないのよ、例え過去にどの様な事があったとしても、この子を束縛する権利は無い、それは実の姉であっても」
「私は…、フランがまた無闇に壊したりしない為に、そうしたのよ……そして…それが原因でフランが狙われたり、迫害されるのが怖かった……だから…だから…」
「…それが、身勝手だと言うのよ」
「お前に何が分かる!!?」
「ええ、全く分からないわね」
レミリアは語気を荒げて叫ぶ。
だが、水銀燈の表情は変わらない。
「フランは私の大切な妹なのよ! この世でたった1人の血の繋がった家族よ、その家族を守ろうとする事の何が悪い!?」
「例え、それが本音だったとしても、フランドールは籠の中の鳥じゃないのよ」
「……っ!?」
「お前は、それを口実にこの子から自由を奪った。 それが、この子にどれだけの心身的負担を掛けたか分かっているの? 自由を奪われるっていうのは、ただジャンクになるより辛いのよ!」
「………っ!」
「こうして、今この子が比較的自由に動けるのは、紅霧異変で殴り込みをして来た博麗の巫女と魔法使いが、フランドールを見つけたからでしょ? それが無かったら、今でもこの子はお前達によって幽閉されていたかもしれない」
何も応えられないレミリアに、水銀燈は更に続ける。
「お前は、この子の為だなんて言ってたけど、この子に聞いたの? 本当にこれで良かったのか? この子をちゃんと守れたのか? それで、一度でも感謝された訳?」
「…私は……」
レミリアの声は掠れ、目に涙を溜めていた。
「お前がやった事は、単にフランドールの破壊行為を閉じこめただけで、その根本は何一つ解決出来ていないじゃない。 ただ、臭いものには蓋をしただけ……全く無意味だったのよぉ!!」
「……っ!」
「それで実の姉を語るなんて、笑わせるんじゃないわよ!」
「う…うぅぅぅぅ……」
剣先をレミリアに向け、語気を荒げる水銀燈。
彼女は震え、声を押し殺して泣いた。
「……この子を今の様な境遇にしたのは、貴女にも責任があるのよ…」
語気を荒げた水銀燈であったが、再び静かに語り出す。
「貴女によってフランドールの人生は狂わされたも同然…」
「貴女が、ちゃんとこの子と真摯に向き合っていれば…こんな事には、なっていなかったかもしれないのよ…」
「貴女は姉としての義務を果たさなかった、その所為でフランドールは495年もの月日を棒に振ったのよ?」
「こんな不幸な事ってある?」
「そんなの、私達ローゼンメイデンでも出来ないわ…」
「ご……ごめん……ごめんなさい…」
レミリアは口を開く。
「フラン…、私は……姉として、何もらしい事はして来なかった……貴女の為と思って閉じ込めた事が、貴女を苦しめてた事に…、貴女の事を本気で考えもせずにこんな……ごめんなさい…」
「今更言った所で、過ぎた月日は戻って来ないわよ」
「うぅぅ……フラン…」
ただ涙を流すレミリア、水銀燈の表情は冷めていた。
「妹もジャンクだけど、今目の前にいる姉も、想像以上にジャンクね、壊れた心は感染するものなのかしら?」
「……もう止めて!」
「……っ?」
横から叫んだのは、血塗れのフランであった。
「それ以上、お姉様を悪く言わないで! お姉様だって……お姉様だって、私の為に色々やってくれたんだからぁぁ!」
「フ、フラン…」
「………っ」
「例え495年の月日を棒に振ったとしても、私はお姉様を恨んだりはしない! 周りからは酷い姉だと見られたって、お姉様は……私のお姉様なんだからぁぁ!!」
「……っ!」
フランは、まともに動かない身体で力一杯叫んだ。
その姿に、水銀燈も一瞬怯んだ。
だが、直ぐに冷静さを取り戻す。
「そう…、貴女が其処まで言うのなら、私はもう口出ししないわ。 バカバカしくて興が冷めちゃったわぁ…」
そう言って、持っていた剣が黒い羽へと変化し、ヒラヒラと散っていった。
そして、フランの方へと近付いて行く。
「な、何をするの…?」
「ジッとしていなさい」
水銀燈は、座っているフランの頭に掌を当てる。
「水銀燈…、貴女何を…!?」
「レミリア、少し力を使うわよ」
「えっ、力って……うわぁっ!?」
指輪から伝わる痛みに、レミリアは顔を歪める。
そして、水銀燈とフランの周りを紫色の光が包む。
それは、時間にして数十秒の事であった。
眩しく照らされていた光は、時間と共にゆっくりと消えていった。
「もう、これで大丈夫よフランドール。 貴女は元通りになったわ」
「へっ? 元通りって……あれ…、あれっ!?」
フランは自分の身体を見て驚いた。
服は血塗れのままだったが、身体の傷は消え、切り落とされた筈の腕と翼は、何時の間にか再生していたのだ。
「怪我が、治ってる…? 貴女、何をしたの?」
「フッフフフ…、貴女に説明したって分からないでしょ? 簡単に言えば、レミリアの力を利用した私の能力よ」
「お姉様の力を使った…?」
「私は貴女と違って、壊すだけじゃ無いの、再生させる能力だってあるんだから、貴女が私に勝てない理由のひとつでもあるわねぇ」
「す、凄い…」
クスクス笑いながら平然と言う水銀燈、フランはただ驚愕していた。
「ふぅ、もう疲れたわ…、怪我は治してあげたんだから、部屋の片付け位は自分でしなさいな」
「う、うん…」
戸惑っているフランを気にする事無く、そう告げると、出口へと向かう。
途中、膝を付いて座り込むレミリアの横に立ち、一瞥しながら言った。
「さぁ、レミリア。 姉としての責務を果たしなさい…」
「す、水銀燈…」
「あの子を吸血鬼として、ちゃんと正しい道に導けるのは、家族であり、姉である貴女だけなのよ」
「……っ!」
水銀燈のその言葉に、レミリアは大きく目を見開いた。
「今度また、同じ様な思いをフランドールがしたら…、契約中であっても貴女を殺すわよ…!」
それだけを言い残し、水銀燈を部屋を出て行った。
それを見送った彼女は、少しの間呆然としていたが、直ぐに我に帰りフランの元へと駆け寄った。
「フラン! 大丈夫なの?」
「う、うん……私は、大丈夫よ…」
改めてフランが無事な事を確認したレミリアは、緊張の糸が切れる。
「ぐすっ……フラン…、ごめんね……ひっく…私の所為で痛い思いをさせちゃって……助けてあげられなくて…」
「お姉様…そんな事無い!…ひっく…ひっく……お姉様は、私を助けようとしてくれたじゃない…!」
「どうして…、貴女は私の事を庇ってくれるの? 私は、今まで貴女に対して酷い仕打ちをしたのよ?」
「でもそれは…ぐす……私を守る為だったんでしょ?」
「フラン……」
「私に仕返しをしようとするヤツらから、お姉様は守ってくれたんだよね?」
「だ、だけど……私は……ひっく…水銀燈の言う通り…」
「止めて! 確かにあの月日は長かったけど……だけど…、お姉様は私の事を助けようとしてくれた! だから……お姉様の事を恨むなんて出来ないよ!」
「フラン…、どうして…どうして……貴女はそんなに……私に優しいの…?」
「だって……私の…、お姉様だからぁぁぁぁ!!」
「フラン…! ごめんなさい! 私を許してよ! フラ――ン!!」
「お姉様ぁぁぁぁ!!」
レミリアとフランは、お互いに強く抱きしめ合い、溜まっていた感情が爆発したかの様に哭した。
いつまでも、いつまでも…
「……っ」
廊下の端で、その様子を見ていた彼女は、静かにその場を離れた。
紅魔館の時計台の天辺に立った彼女は、そこから見える景色を眺めながら1人呟いた。
「我ながら、柄でも無い事をやっちゃったわねぇ…」
彼女は自虐的に笑っていた。
「あんな状況の2人を見てたら、ムカついちゃってねぇ…、つい口出しをしちゃったわぁ」
呟く彼女の周りを、人工精霊が飛び回っていた。
「……大丈夫よメイメイ、これはアリスゲームじゃないんだから…、あの姉妹の確執に私がメスを入れただけの事、深い意味なんてある訳が無いわ…」
水銀燈の表情が、少しだけ険しくなる。
だが、その表情は何処か憂いも感じさせた。
「まぁ、何にしても……この幻想郷って本当に面白い所ね! こんなに毎日飽きさせない日々を過ごせる世界なんて、此処が初めてじゃないかしら?」
「……まあ精々今を楽しむと良いわ、小賢しい妹達よ…
…もう起きてるわよね? 貴女のローザミスティカは私が奪ってあげるわ、真紅!」
「ウッフフフ…、アーハッハッハッハッハッ…!!!」
水銀燈の高笑いが、周囲へと響いた
それは、何時までも、何処か悲しく…。
銀様編は一旦終了です。
今回も難産でしたが、如何だったでしょうか?
残酷描写が多かったですが、フラン相手じゃ仕方ないよね…。
どうも、自分は複雑に入り組んだ伏線を書くのは得意ではないです。
そういう手の込んだストーリーが書ける作者様が妬ましい…w
銀様がフランに剣を振り下ろすシーンは、皆様はどう見たでしょうか?
レミィが止めなかったら、フランを切り裂いていたでしょうか?
ローゼンメイデン アニメ版でも、同じようなシーンがありましたね?
あの時、もし真紅が無防備だったら水銀燈は本当に真紅を斬っていたのか?
自分なりに、そういう伏線を書いてみました。
相変わらずの亀更新ですが、まだまだ続きますよ!