薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
スローペースですみません。
残酷描写はありませんが、シリアス展開です。
とある、良く晴れた日の事。
「今、この不安定な状況で、皆さんは安心していますか? 異変などで安定した生活を乱されるのは誰だって気分は良くありませんよね? そんな時は、この守矢神社にお任せ下さい!」
人里の広場にて、里の人間達に演説という名の宣伝をする早苗。
「守矢神社」と書かれた台に乗り、大声で演説をしていた。
そんな話を、里の人間達もまた、熱心に聞いていた。
「どんな困難な事も、解決してみせます! 是非とも守矢神社をご支援お願いします!」
「なぁ、巫女さんよぉ?」
「はい、何でしょうか?」
熱弁を振るう早苗に、里人が質問をする。
「あんたは熱心に活動してるけど、そこの嬢ちゃんはそれで良いのかい?」
「へっ!?」
その指摘に足元を見ると、台に寄りかかって居眠りをする雛苺であった。
「ちょっと!? 雛苺! 何寝てるのよ! 起きなさい!」
「うにゅ……眠たいよ…」
「ダメよ! 今いいとこなんだから、貴女もしっかり宣伝しなさい!」
「だってぇ…、早苗のお話は難しいの、全然分かんないの…」
「こら雛苺! それはちゃんと説明したでしょ!? もう忘れたの?」
「ヒナ、お昼寝してた方がいいの〜…」
『ハハハハハ……』
「雛苺! 寝るな!起きなさい!!」
顔を真っ赤にして怒る早苗だが、民衆の笑い声にかき消されており、雛苺にはイマイチ届いていない。
―少し時間を遡り、魔法の森の洋館にて―
「金糸雀、そろそろ行くわよ」
「えっと、寅丸って人に渡す宝塔は……うん、大丈夫! 何時でもOKかしら!」
アリスと金糸雀が、外出の支度を済ませ、家を出る所であった。
「里までは飛んで行くけど、その手前で降りるから、後に着いて来てね」
「分かったかしら、ピチカート、行くよ!」
人形劇に必要な道具が入ったトランクを持ち、飛び上がるアリスの後ろを、鞄を担ぎ日傘を射した金糸雀が追い、人口精霊ピチカートが周りを飛び回っていた。
「幻想郷に来てしばらく、ようやく人里に行く事が出来るかしらぁ!」
「人里と言っても、貴女の期待するような物は無いかもしれないわよ?」
「それは、行ってみれば分かるかしら!」
「まぁ、好きにすれば良いけど…」
「それに、アリスの人形劇も生で見れるから楽しみかしら!」
「そう…、何だか地味にプレッシャー掛けられるわね…」
後ろではしゃいでいる金糸雀を余所に、アリスは微妙な表情をしていた。
―再び人里―
「うん…? 早苗か」
早苗の演説を、少し離れた場所から眺める者がいた。
「守矢の勧誘も、随分と熱心なもんだねぇ…」
そう呟くのは藤原妹紅。
しばらくその様子を見ていたが、直ぐに飽きてしまう。
「結局、言うことは何時もと同じか…、さっさと行こ……」
その場を立ち去ろうとした時であった。
「―――そこでです!」
「………っ?」
その大声に、思わず振り向いてしまう。
その時、早苗は左手を突き出し力説している時であった。
「あっ……あれは…!?」
妹紅の視線は、早苗の指に填められた指輪に釘付けになった。
それは、離れた場所からでも、はっきりと見えるものであった。
「契約の指輪…!? 何でアイツが……?」
自分が填めている指輪と同じものでは無いかと戸惑う。
「それじゃ、もしかして…」
それを確かめずにはいられず、彼女は人集りへと近付く。
「あれが本物なら、早苗は………………っ!?」
人集りの僅かな間から、妹紅は確認した。
「あれは…、やっぱりそうか…!」
その時、妹紅の疑念が確信へと変わった。
その視線の先には、台に寄りかかっているローゼンメイデンのドールの姿があったからだ。
「あの人形は確か…、翠星石の話が正しければ、第6ドールの雛苺ってヤツか? 服装からしてアイツが言っていたそのまんまだから、間違いは無いとは思うが…。 まさか、早苗と契約していたとはな……」
はっきりと確認した妹紅は、直ぐに人集りを離れ、里の外の方へと歩き出した。
「いよいよ、本格的な闘い(アリスゲーム)の時が近付いて来てるみたいだな…」
神妙な面持ちで1人呟く。
「今日はアイツを連れて来なくて正解だったかもしれない、居たら居たで厄介な事になってただろうし…」
「あ、あの…妹紅さん!」
「うんっ?」
考えながら歩いていると、不意に声を掛けられる。
振り向くと、具合の悪そうな子供を抱えている母親が立っていた。
「うちの子が、急な高熱を出してしまいまして、永遠亭に案内して欲しいんです!」
「何だって!?」
その様子を見た妹紅が慌てて子供に駆け寄る。
「……これはマズいな…、分かった、案内するから着いて来てくれ!」
「分かりました!」
「こんな時、鈴仙がいれば良いんだが…、今日は見掛けて無いんだよな…」
急を要する事態に、妹紅と母親は竹林の方へと向かって行った。
その様子を早苗は、演説しながら遠目で見ていた。
「妹紅さん……? どうしたのかしら……私を見て顔色が変わった…?」
早苗は、妹紅の僅かな異変に気が付いてはいたが、
宣伝の途中につき声を掛ける事は無かった。
―その頃、博麗神社―
「私、人里へ買い物に行ってくるわよ」
「人里?」
本を読んでいる真紅に、霊夢が出掛ける支度をしながら声を掛ける。
「そう、買い物に行くだけだから、あんたは此処に居なさい」
そう言って、靴を履き外に出た時であった。
「ちょっと待ちなさい、私も行くわ」
「はぁ!? 行く!?」
「そうよ、せっかくの機会ですもの、行ってみたいのだわ」
本を置いた真紅が霊夢の方へと寄ってきた。
「わざわざ着いて来なくなって良いわよ! 面倒臭いだけだから!」
「私は此処に来てから神社の境内か周辺しか散策してないのよ、そろそろ人里にも行ってみたいと思っていた所なの」
「別に今日じゃなくたって良いでしょ!?」
「貴女は今から行くのだから、ついでなのだわ。 本当に効率の悪い下僕ね」
「くぅぅ……くっそ―、言わなきゃ良かった…」
「他にも行きたい所は山ほどあるのだから、さっさと人里の攻略をしておきたいの、つべこべ言わずに案内しなさい」
「命令すんな! 私はガイドじゃないっつーの!」
「下僕が主の案内をするのは至極当然の事でしょ? 早く行きましょう」
「あっ! コラァ! 私を差し置いて勝手に行くなぁ!!」
喚く霊夢を気にせず、先に飛び上がる真紅。
その後を、霊夢が真っ赤になりながら追いかけた。
「ああもう! アイツの所為で私の生活リズムは滅茶苦茶よ!」
―再び、人里にて―
「ふぅ…、今日の宣伝も無事に終了っと…」
当日の宣伝が終わり、集まっていた人達も帰って行き、周りの片付けを始める早苗。
「早苗! お疲れさんなの!」
「貴女は何もしてないでしょ! 全くもう……」
何事も無かったかのように笑顔を振り撒く雛苺、早苗は片付けをしながら呆れていた。
「それより、もう帰るの?」
「ええ、帰って神社の仕事もあるからね」
「まだお仕事あるの? 早苗は大変なのー、働き過ぎなのー…」
「そうかもしれないわね……でも、神社の為だし、神奈子様や諏訪子様の期待にも応えなきゃ!」
「ふーん…」
若干疲れた表情をしていたが、まだやる気に満ちている顔を見せた。
そんな時、
「あらっ、早苗じゃないの」
「へっ?」
片付けの最中に横から声を掛けられる。
「あっ、アリスさんでしたか、こんにちは!」
「ええ、こんにちは、お久しぶりね」
「はい! アリスさんの方は今から人形劇なんですか?」
「そうよ、今着いたばかりだから、これから準備よ」
「そうですか…、お疲れ様です!」
「ふふっ、ありがとう。 それより……」
「えっ…?」
「うにゅ?」
アリスの視線が雛苺へと注がれた。
「この子は貴女の?」
「あっ…はい、そうなんです! 雛苺って言います」
「へぇぇ、雛苺って言うのね…」
「はい! 雛苺、こちらは人形遣いのアリスさんよ」
「えっ!? この人もアリスって言うの?」
「ええ、アリス・マーガトロイドさんって言って、人形遣いでもあり、魔法使いでもあるのよ」
「魔法使い? 凄いの〜!」
「ほらっ、驚いてばかりいないで、ちゃんと挨拶しなさい」
早苗の呼び掛けに、雛苺が早苗の前へと出る。
「は――い! 初めましてなの! ヒナは雛苺っていうのー! ローゼン……」
「ローゼンメイデンの第6ドールね?」
「えっ…?」
「アリスさんは、この子の事をご存知だったんですか?」
アリスの返事に、早苗と雛苺は驚きを隠せない。
「私は人形遣いよ? その人形の事は以前から噂だけは聞いていたからね、その人形は私が目指す人形の理想形なのよ」
「は、はぁ……」
「ねえ、早苗……」
「何でしょうか?」
「一応聞くけど、貴女はその人形のマスターって事で良いのよね?」
「そ、そうですが…、それが何か?」
「そう…、そうなんだ…………フッフフフ…アッハハハハハ…!!」
それを聞いたアリスが、何かに取り憑かれたかのように不敵に笑い出す。
それを見た早苗が、怪訝な表情で聞いた。
「アリス…さん…? 一体どうなさったんですか…?」
「残念だけど………貴女とは、敵対する事になりそうね…」
「て、敵対って…………っ!?」
その瞬間、アリスから殺気じみたオーラが覆う。
「えぇ……早苗ぇぇ……」
その一変した雰囲気に、雛苺が怯え出し、早苗の脚にしがみつく。
「アリスさん……一体何を……」
早苗もその雰囲気に後退りしそうになるが、必死で踏ん張る。
彼女の口は笑っている
だが、目つきは何時ものアリスとは別人のように恐ろしく、鋭かった。
「…もう分かるでしょ?」
「だから、何がですか!?」
「あらっ…、以外と鈍いのね……常識を捨てると危機感も薄れちゃうのかしら?」
「意味が分かりません! 一体何の話ですか!?」
「はぁ…、貴女って思っていた以上に馬鹿な女ね……これでどう?」
アリスが、左手をすうっと早苗の方へと差し出す。
「………それはっ!!?」
「契約の…指輪…!」
それを見た2人は驚愕した。
「やっと分かって貰えたかしら?」
「ま、まさか……アリスさんも……」
「ええ、そのまさかよ。 私もローゼンメイデンと契約したのよ、第2ドール金糸雀とね」
「か、金糸雀!?」
その名前を聞いた瞬間、雛苺は更に怯える。
「雛苺? 一体どうしたの?」
「金糸雀…、普段は面白い子だけど、闘いになったら……怖い……」
「……っ!」
「雛苺だったわね…?」
「ひぃっ!?」
「そんな腰砕けでアリスゲームを勝ち抜けようと本気で思ってるの?」
「そ、その……」
「甘すぎはしないんじゃなくて? その認識はさ…!」
「きゃぁっ!」
鋭い目つきで睨み付けるアリス、雛苺は直視出来ずに早苗の陰に隠れてしまう。
「アリスさん! 止めて下さい!」
「早苗、貴女はその程度の覚悟で彼女と契約したの?」
「えっ…?」
「そんな事じゃ、彼女はあっという間に只の人形になっちゃうわよ? さっさと契約解除した方が良いんじゃない?」
「な、何…!?」
「言っておくけど、アリスゲームは本気の闘いなのよ、弾幕ごっこみたいな馴れ合いなんて一切無いの…」
「そ、それは……」
「負けたら後は無いのよ、彼女達には」
「そんな事…分かってる……」
「あんた本当に分かってるのか!!? 甘く見てるんじゃないぞ!!!!」
「………っ!!」
アリスの凄みのある一喝に、早苗は何も言葉が出ない。
「…金糸雀はね、その闘いに勝つ為に、今は努力してる最中なの」
「………っ」
「彼女は本気なのよ…」
「…………っ」
「そんなあの子に私が出来る事は、全力でサポートをしてあげる事だけなの。 出来る限り力を供給し、彼女を阻害するヤツらを排除する。 誰が相手であろうと、どんな手段を使ってでも…」
「ア、アリスさん……」
「貴女のように生温い考えだけでは、その子は不幸になるだけよ? やるだけ無駄よ」
「無駄…ですって…!」
淡々と続けるアリス
対して、早苗から徐々に怒気が溢れ出す。
「その子に聞いたんでしょ? アリスゲームの本質を。 いざという時の覚悟が出来ていなければ、貴女はマスターの資格は無いわ」
「………けないで……」
「……えっ?」
「ふざけるなぁぁ!!」
淡々話し続けるアリスに、ついに早苗が噴火した。
「確かに、アリスゲームの事は聞いたわ、闘いに負けた者は動かない只の人形になる事も、それも宿命なのだと………けど、この子達と平和に過ごす事が悪い事なの!?」
「………っ」
「この子は、今を精一杯生きてるのよ! 後悔したくないから…、私は雛苺の為に……楽しい思い出を作ってあげたい…、アリスゲームっていう殺伐としたものだけが、この子達の定めなんて悲しすぎる! 今を大切に生きる事も大事な事なのよ!!」
「……それで?」
「それなのに、雛苺にそうしてあげるのがいけない事なの? いざという時の覚悟が無ければマスターの資格は無いって言うの? 勝手な事言わないでよ!!!」
早苗はありったけの力を込めて叫んだ。
「本当に甘いわね、貴女…」
「私には私のやり方があるんです! 一緒にしないで下さい!」
「そう………まぁ、そんな事だろうとは思ってはいたけど……」
アリスの殺気が徐々に高まってくる。
それこそ、周りの人間達が気付く位に。
「結局、貴女達も金糸雀の障害にしかならないのね…、それなら、私の答は一つ……」
「………っ」
「さ、早苗……」
「邪魔立てする者は、叩き潰す…!」
いつしか彼女は魔導書を手に持ち、複数の人形が辺りに漂っていた。
「良いわ…、貴女のその言葉をそのまま返してあげるわ」
早苗もまた、懐から大幣を取り出す。
「私も雛苺と契約した以上、この子を護る義務があるわ、貴女がそれを踏みにじろうとするなら容赦はしない、ねじ伏せてやる!」
「へぇ……面白いじゃないの………やってみる?」
2人の間に、一触即発の空気が流れる。
普通の人間なら、近付く事も出来ない位の、目に見えない力が辺りを覆っていた。
「…………っ」
「…………っ」
「さ、早苗…」
その雰囲気に圧倒され、雛苺は何時しか早苗から離れていた。
そんな硬直状態が1、2分程続く。
しかし……
「………止めましょう」
「止める…? どうしてよ! 自分で其処まで言っておいて、今更怖じ気付いたの!?」
「貴女バカね……、周りを見なさいよ」
「えっ……!?」
アリスに言われ、我に返った早苗が当辺りを見回す。
そこには、2人を注視する人達が集まっていた。
アリスは、その状況にいち早く気付いていたのだ。
「今此処で私達が闘ったら、間違い無く騒動になるわよ?」
「あっ……」
「そんな事になったら、最悪、私も貴女も人里には出入り出来なくなるわ、それは困るでしょ?」
「うっ………は、はい……確かに……」
「分かってくれたなら良いわ」
アリスは魔導書を下ろし、人形達の姿も無くなっていた。
それを見た早苗も、大幣を下ろした。
「それに、よく考えたら……今、金糸雀は此処に居ないのよね」
「居ない? どういう事ですか?」
「森で拾った落とし物を届けに、命蓮寺に行ってるのよ。 あの子ったら、お人好しだから…フフフフフフ……」
「「………っ」」
アリスから殺気は無くなったが、早苗と雛苺はまだ警戒を解かないでいた。
「ほらっ、もう何もしないんだから、帰るなら帰りなさい」
「……雛苺、帰りましょう」
「は、はいなの!」
早苗は即座に立ち去ろうとするが、再びアリスが声を掛ける。
「最後に一つだけ…」
「……何ですか?」
「この先、間違い無く貴女とは一戦交える事になりそうねぇ」
「………っ」
アリスは、また不敵に笑いながら言う。
早苗は、何も返そうとはしない。
「それから、雛苺」
「な、何なの…?」
「この事は、金糸雀に伝えておくわ。 もしかしたら守矢神社にお邪魔しに行くかもしれないから、ちゃんと歓迎してあげてね。 尤も、私も一緒だろうけど」
「ひぃ…」
「勿論、その逆も良いわ。 早苗なら私の居所を知ってるから、先手を打って急襲してくれたっていい。 その時は、全力でもてなしてあげる……」
「ヒ、ヒナは……」
「ダメよ雛苺! そんな挑発に乗っちゃ!」
「ヒナは闘うの!」
「雛苺!?」
「金糸雀と闘うのは怖いし、出来れば闘いたくないの………でも、ヒナもローゼンメイデンなの! いざとなったら全力で闘うわ!」
「………っ」
「アリス! 金糸雀に伝えるの! ヒナは何処にも逃げたりはしないの、何時でも迎え撃つの! だってこれは……アリスゲームなんだから!!」
雛苺は怯えながらも、力一杯にアリスに言った。
「そう………良く分かったわ、金糸雀には確かに伝えておくから、安心なさい」
その返事を聞いた雛苺は、早苗の方を向く。
「行こう、早苗」
「え、えぇ……」
雛苺が里の外へと歩き出し、早苗はアリスの方を気にしながら後を追って行った。
アリスは、2人の姿が見えなくなるまで、その方向を見つめていた。
何時しか、集まっていた人達も散り散りになり、普段通りの様子に戻っていた。
「ふぅ…、少し脅かし過ぎたかしらね?」
アリスが静かに呟く。
「でも、これも金糸雀の為、アリスゲームの為なのよ……
あの子が本気で闘っているのに、マスター同士が馴れ合ってるなんて、あってはいけない」
アリスは天を仰ぐ、
とても悲しそうな顔で…
「ゴメンね早苗、貴女に恨みは無いけど、これもまた仕方の無い事だったの……あの子の為に、私は鬼にならなきゃならない……」
その声は、決して誰にも聞こえていない。
アリス自身にしか聞こえていない。
「……さあ、こんな事してる場合じゃないわね、早いとこ人形劇の準備をしなくちゃ…」
そう呟きながら、彼女は人形劇の段取りに入った。
その時には、いつものアリスに戻っていた。
「それにしても、あの雛苺って人形…、弱そうに見えて以外に芯の強い子ね……悪くないわ……」
「早苗…」
「何、雛苺?」
「ごめんなさいなの…、勝手にあんな事言って」
「私は別に良いんだけど…、本当にそれで良かったの?」
「本当は……とっても怖いの……」
「ひ、ヒナ……」
「で…でも、ヒナは闘うの! それが、ローゼンメイデンの宿命(アリスゲーム)だから!」
「………っ」
「それに…、ヒナには早苗がいるから……」
「えっ……?」
「早苗が居れば、ヒナ怖く無いもん! 早苗と一緒なら勝てるような気がするの! そうよね、早苗?」
「………っ!」
雛苺の言葉に、早苗の目頭が熱くなる。
「そうよ………その通りよ!」
思わず、雛苺を抱き締める。
「うわっ! 早苗!?」
「貴女には私が着いてるわ! 誰にも傷付けさせはしないわ!」
「あっ…」
「私は貴女と契約している、だからこそ、そうなった以上は、私は貴女を護るわ!」
「早苗……!」
「だから、安心してね……」
「早苗……早苗ぇぇぇ! 大好きなのー!!」
雛苺も歓喜し、早苗にしがみついた。
「ふふふ……さあ、帰りましょう」
「はいなの!」
2人は、里を出た所で飛び上がり、妖怪の山へと向かって行った。
「(アリスさん…、貴女がそういうやり方で抗うと言うのなら……、私は私のやり方でこの定めに抗うわ!!)」
早苗は、心の中でそう固く誓った。
――――――――――――――――――
一方、その頃。
「えっと……本当にこの方向で良かったのかしら…?」
金糸雀は、落とし物を届けに命蓮寺に向かっている最中であった。
何人かの里の人達に道を訪ねながら歩き、言われた方向へと歩みを進めていた。
「一応、人里の外からしばらく歩いた所って言ってたけど、それらしい建物が見えないかしら…」
彼女は、人里から出て直ぐの所を歩いていた。
本当に、この道で合っているのかと、不安が募る。
「あの人間達が嘘を言っているなんて思えないし…、信用してもう少し行ってみるかしら!」
正直な金糸雀は、不安を振り払うように歩き続けた。
歩くこと約5分。
「…ピチカート? どうしたの?」
先に飛んで回っていた人口精霊から、報告を受ける。
「………えっ、本当? この先にあったの?」
それは、命蓮寺を見つけたというピチカートからの知らせであった。
「やったかしら! やっぱりあの人達を信用して良かったかしらぁ!」
1人歓喜するが、ピチカートからは冷ややかな反応が。
「………えっ? 空を飛んで行けば良かったんじゃないかって? ダメダメ、里の周辺では出来るだけ歩くようにって、アリスからの言い付けかしら!」
『――――――』
「………えっ? 里からそれなりに離れたから大丈夫? そうだったかな?」
ふと、後ろを振り返ってみる。
「うわっ…、何時の間にかこんなにも歩いてきたのかしら…」
その事に全く気付かずにいた事に、気恥ずかしさを覚える金糸雀。
「でも…、此処まで来たんだから、命蓮寺までも歩いて行くかしら!」
もはや、無意味な意地であった。
「ふぅぅぅ…、やっと到着したかしら…」
それからしばらく、ひたすら歩き続けた金糸雀は、やっとの事で命蓮寺の門の前までやって来た。
「ちょっと……疲れちゃった……かしら……」
息を切らしている金糸雀に、ピチカートの反応はまたも冷ややか。
「……うるさいかしら! 好きで歩いて来たんだから、後悔なんてしてないわ!」
そうは言うものの、やはり疲労の色は隠せない。
「…疲れてないと言えば、嘘になるけど…(汗」
飛び回るピチカートを、金糸雀はムッとする。
「……何かムカつくかしら…!」
人口精霊とのやり取りが続いていたが、しばらくしてようやく動き出す。
「…とにかく、早くこれを渡して、アリスの所に戻るかしら」
宝塔の入った鞄を大事そうに抱え、彼女は門に向かって歩き出した。
此処で予想外の出会いが待っている事を、金糸雀はまだ知らない…。
その、待ち受けているものとは……。
続く。
というワケで、如何だったでしょうか?
作中のアリスについてですが…、
普段は物静かな彼女も、実は好戦的。
金糸雀は、普段はお気楽でちょっとお間抜けだけど、アリスゲームではかなり好戦的です。
そんな2人がシンクロした時…
もう分かりますよね?
難しくなり過ぎないように書いてるつもりですが、相変わらずの駄文なんで、意味が伝わっていないかも…( ̄ω ̄;)
次回も、お楽しみに!