薔薇乙女幻想録 -Legend of the dolls-【休載中】 作:豊之丞
「こんなもので良いかな?」
そう言って庭の手入れをするのは、剣術指南役兼庭師の魂魄妖夢。
冥界にある白玉楼の庭の手入れをするのが彼女の日課である。
「もう少し手入れをしたら、お昼の支度をしようかな?」
妖夢は手を動かしながら呟いた。
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庭仕事も一段落して、昼食の支度に入る。
大抵は他の幽霊の仕事ではあるが、妖夢自らが支度する事もあった。
「とりあえず、こんなものかな? 後の準備は任せるわ」
残りの仕事を幽霊達に任せ、台所を出る。
「幽々子様を呼んで来なきゃ…」
そう呟きながら、妖夢は幽々子の部屋へと向かった。
「幽々子様、お昼の準備が出来ました!」
妖夢が呼び掛けると、直ぐに部屋の中から返事が返ってきた。
「お昼の時間ね、今行くわ」
返事を確認した妖夢は食事が用意されている部屋に戻った。
それから、いつものように和やかにお昼の時間が過ぎていた。
「・・・ねぇ、妖夢」
「はい、何でしょうか?」
箸を置いた幽々子が妖夢に切り出した。
「今夜、唐揚げが食べたいわ・・・」
「えっ!? もう夜ご飯の話ですか?」
「そうよ、こういうのは早めに言った方がいいじゃない?」
「そ、それはそうですが・・・、唐揚げですか・・・、確か鶏肉は無かったような・・・」
思い出すかのように考える妖夢だが、幽々子は素っ気なく言う。
「それじゃ、買い出しに行って頂戴」
「えっ? 昨日行ったばかりですよ?」
「無ければ買うしかないでしょ? お昼の片付けが終わったら人里まで行って来なさいな」
扇子で口を隠しながらにこやかに幽々子は言ったが、妖夢はやや不満げであった。
「・・・今日は剣術の修行がしたかったのに・・・・」
「剣術修行なんて何時でも出来るじゃない、お願いね妖夢♪」
「・・・前も、そんな事を言ったような・・・・」
その瞬間、『バチンっ!』と扇子を閉ざす音が響く。
「・・・・・・嫌なの?」
笑顔が消え、明らかに幽々子の目つきが鋭くなった。
「い、いえっ! 幽々子様の為なら喜んで行って参ります!・・・・はぁ・・・」
恐怖を感じた妖夢はやむなく人里に行くことになり、気付かれずに溜め息をついた。
―――――――――――――
「もう、幽々子様には困ったものだわ、今に始まった話しゃないけど・・・」
後片付けを終わらせ、ブツブツと愚痴をこぼしながら、出掛ける支度をするため自室へと向かっていた。
「ええっと、お財布っと・・・・」
自室入りに財布の入っている机の引き出しに手を入れる。
「さてと・・・・、あれ?」
ふと、隣に置いてある机に目をやると白い封筒があるのが分かった。
「・・・・何だろう?」
不思議に思った妖夢は、その封筒を手に取った。
封筒には『魂魄妖夢様』と達筆に書かれていたが、それ以外は何も書かれていなかった。
「私宛て・・・? 誰かからの手紙?」
疑問を感じる妖夢。
「永遠亭からの目の定期検診の知らせかな? もう大丈夫だと思うけどなぁ・・・でも、これは違うわね」
永遠亭からなら、こんな風に置いてある筈がない、自分に直接渡すだろうと思った妖夢はそれに否定的になった。
「とにかく中身を確認しよう・・・」
そう言って、妖夢は封筒を開け中身を確認した。
その中に書いてあったのは定期検診とは全くの無関係なものであった。
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魂魄妖夢様へ。
おめでとうございます!!
あなたは数回に及ぶ厳選された抽選から選ばれた幸運な『半分人間』です!!
あなたに幸運の人形をプレゼントします、もちろんお金は一切掛かりません!!
しかも、今回は特別サービスとしまして2体を手にするチャンスです!
そんなあなたにお届けするのは、薔薇乙女(ローゼンメイデン)第4人形「蒼星石」です。
下記の項目にチェックを付けたら、返信用封筒に入れて部屋の机の引き出しに入れて置いて下さい。
人口精霊レンピカがあなたの手紙を回収に参ります!
まきますか まきませんか
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「な、何よこれは!!?」
予想外の内容に思わず声を荒げる。
「しかも、もう一体って・・・」
封筒の中には、もう一枚紙が入っており書いてある内容はほぼ同じであった。
そちらは、薔薇乙女第3人形「翠星石」と書かれていた。
「少し違うとはいえ、何の勧誘よ!」
余りの酷い内容に妖夢は怒りで肩が震えていた。
「私の居ない間に、こんな悪戯が出来るのは幽々子様しか居ない!」
怒り心頭の妖夢は、手紙を持ち幽々子の元へと飛んでいった。
「幽々子様!!」
「ぶほぉっ!?」
いきなり襖を開けられ大声で怒鳴られてしまい、飲んでいたお茶を噴き出す幽々子。
「げほっ・・・・・・、一体どうしたの妖夢?」
「どうしたもこうしたもありません! これは一体何ですか!?」
妖夢は必死で怒りを抑えながら、幽々子に問題の手紙を見せた。
「何これ?・・・ええっと・・・・」
手紙をを手に取り内容を確認し始める。
「・・・これは、何ともお粗末な勧誘ね、フフフ・・・!」
思わず笑い転げそうになる幽々子。
「何故笑ってるんですか!? これは幽々子様の仕業なんですよね!?」
「ええっ!? わ、私!?」
「とぼけるおつもりですか?
私が居ない間にこんな事が出来るのは幽々子様以外にいる筈がありません!」
妖夢の剣幕に幽々子はたじたじになる。
「確かに、屋敷に自由に出入り出来るのは妖夢と私位だけど、それは本当に知らないわよ?」
「まだシラを切るつもりですか!? 嘘をつく幽々子様は嫌いです! 今夜の唐揚げは無しです!」
「そ、そんなぁ! ・・・私、嘘は言ってないわ・・・・ぐす・・・・何の証も無いのに・・・酷いわ、妖夢・・・・」
妖夢の仕打ちにショックを受け泣き出す幽々子。
「…あ、あの・・・、幽々子様?」
泣き出す幽々子を見て妖夢は焦り出す。
「うう・・・・・グスン・・・・」
「あ、あの・・・ごめんなさい・・・・、私も何の証も無く幽々子様を疑ってしまい・・・」
「・・・本当に、そう思ってる?」
「は、はい・・・・ご、ごめんなさい・・・・」
申し訳なさそうな妖夢を見て幽々子の表情が変わる。
「フフフ・・・、なんてね♪」
急に笑顔になった幽々子を見て妖夢は気付く。
「…えっ!? ・・・あ、ああぁぁぁ!」
まんまとしてやられたと気付いた妖夢は頭を抱え天を仰いだ。
「幽々子様も酷いです! 今のは演技だったのですか!?」
「結構本気だったわよ? あんな言いがかり付けられたら私、傷付いちゃうわ」
「また白々しい・・・・」
「・・・・何か言った?」
幽々子が妖夢を睨む。
「い、いえっ、何も・・・」
「よろしい、それで、これはどうするの?」
「ど、どうすると言われても・・・」
2人は、その勧誘じみた手紙を再び見返した。
「幽々子様で無ければ、一体誰がこんな手紙を・・・」
「冥界に侵入者が入ってくれば、貴女が気付くわよね? でも、これは誰にも気付かれずに妖夢の部屋にあった。 不思議よね・・・」
「これは私達を陥れて冥界侵略を考えてる輩の仕業でしょうか?」
「それは、流石に飛躍しすぎじゃない? こんな場所侵略して得があるとは思えないし・・・、第一、私がそんな事させとでも思ってる?」
「・・・・ですよねぇ・・・」
幽々子の威厳のある言葉に妖夢は肩を竦める。
「…ねぇ、いっそのことまきますにしてみない?」
「え、ええっ!?」
先程とは変わっていきなりの提案に妖夢は驚きを隠せない。
「また、何で?」
「だって、ここで悩んでても始まらないじゃない。 なら、まきますにしてどうなるかを見届ければいいでしょう? 問題があれば、貴女が斬り捨てれば良いだけの話だしね♪」
「またそんな・・・、そんなに簡単に話を進めていいんですか?」
「いいのいいの♪ さあ、○をしましょう!」
筆を手にした幽々子は妖夢に迫ってきた。
「ち、ちょっと幽々子様! これは・・・ダメですってば!」
手紙を持ち慌てて縁側へと逃げる妖夢。
「待ちなさいよ妖夢、こういうのはやってみなければ分からないでしょ?」
「そんな何も考え無しで進めるの賛同しかねますって・・・・・あっ!?」
突然強風が吹き妖夢が持っていた二枚の手紙のうちの一枚が吹き飛ばされてしまった。
「手紙が! 飛ばされたぁ!」
直ぐに取り戻そうと、屋敷から出たが、既にその手紙は何処にも見当たらなかった。
「あーあ、妖夢が渋るから拗ねて飛んでいったのよ、きっと」
「い、いや、それは関係無いですよ・・・」
しかし、自分の不始末で手紙を飛ばされたようなもので、妖夢は肩を落とした。
「・・・飛ばされたものは仕方ないわ、諦めなさいな」
「は、はい・・・・」
やむなく2人は屋敷へと入った。
「さあ、観念して○をしましょう♪」
部屋に戻った幽々子は、再び妖夢に促した。
「・・・分かりました、自分でやりますので筆を貸して下さい」
「ええ、どうぞ」
そう言って、幽々子は妖夢に筆を渡した。
「ええっと、『まきますか』に○っと・・・・」
そうして、妖夢はまきますかに○を囲った。
「さあ、これでどうなるかしらね? 楽しみだわ」
不安げな妖夢とは対照的に幽々子はとても楽しそうであった。
「これで何か変な請求がきたりしたら、私知りませんよ・・・!」
「それを何とかするのが貴女の役目でしょ?」
「ええ〜!?」
「当たり前でしょ? 貴女は私の従者なんですから」
「そ、それは無責任過ぎますよ〜!」
「大丈夫よ、貴女なら♪」
「何を根拠に大丈夫って言っているのですか!?」
「ほらほら、早くそれを片付けて買い出しに行って来なさい」
「話を反らさないで下さい!」
「・・・言っておくけど、夕食は時間厳守よ?」
幽々子は扇子を妖夢に向けて睨んだ。
「・・・はい、分かりました・・・」
幽々子の有無言わさない迫力に負け、その場を後にした。
自室に戻った妖夢は、その手紙を封筒に入れて机の引き出しに閉まった。
ちなみに、妖夢が持っていた手紙は『蒼星石』の方であった。
「もう・・・、出掛ける前からドッと疲れた・・・」
楼観剣と白楼剣を置き、腰を下ろした。
その表情は既に疲労で満ちていており、何度目かの溜め息をついた。
「本当に大丈夫かな・・・? 不安しか感じないんだけど・・・」
そう呟くと、妖夢は封筒を閉まった引き出しを眺めていた。
「何だか今日は厄日だなぁ・・・」
いつも休み無しでこき使われているが、今日は特に酷いと感じる妖夢。
それは全てあの手紙のせいだと思い、怒りが沸々と沸いてきた。
「この手紙の下手人を見つけたら、楼観剣で斬り捨ててやるわ・・・!」
1人愚痴を呟いた。
そして、気持ちを落ち着かせるかのように、しばらくの間瞑想した。
「・・・・愚痴っていても仕方ない、早く人里に行って買い物しましょう!」
気持ちを切り替えたように、何時もの明るい表情になった妖夢は、再び楼観剣と白楼剣を手に取り部屋を出た。
これが全ての始まりだとは、この時の妖夢は思いもしなかった・・・・・。
グダグダな展開は仕様って事で^^;