『葛城一佐、エヴァンゲリオンパイロット3名は至急、指令室まで来るように』
唐突な呼び出し。
俺はアスカの保護者枠で勝手についていく。
「次の第9使徒だが浸食型の恐れがある」
いつもの席で手を顔の前に組んでいるシンジ君パパが語りだす。
あれから親子は少しずつ距離を詰めている。
シンジ君が嬉しそうに報告してきたので追加で写真も撮った。
「浸食?……お待ちください!碇指令は次の使徒の情報を持っているのでしょうか!?」
当然のところにミサトさんは食いつく。
あるとないとじゃ作戦の立て方が変わる。
「……予言書があり解読が進んでいる。だが過信はできない」
対する返事は『予言より現場の判断を信じてるYO』だ。
「お言葉ですが……情報が皆無の状況から組み立てるより、たとえ間違っていたとしても作戦パターンを考えられたほうがありがたいのですが……」
「まぁまぁ落ち着いて。これから指令が情報をくれますから……」
ちょっとだけ出しゃばる。
シンジ君パパはこれから変わろうとしてるところだから見守ってあげて。
「ああ。しかもシナリオ通りなら現在輸送中のエヴァンゲリオン3号機に寄生している」
「……っ!零号機改は修復中で2号機も3号機を迎えるために凍結中ですよ!?」
『そこまで分かってるなら精度結構高いからもっと早く情報よこせ』とミサトさんは言いたげだ。
「大丈夫ですよ。僕が…初号機だけで倒せばいいんでしょ?」
最近褒められてるのでシンジ君強気。ユーアーナンバーワン!状態。
「ああ、そうだ。だが一つだけ問題がある。3号機が起動しない限り使徒だと確定させることはできない」
急にエヴァを殴ったら問題だ。目標は確実に使徒である必要がある。
「なっ!?…じゃ、じゃあ誰かが乗ってるエヴァを攻撃しなきゃいけないってこと!?」
「そうだ」
「簡単な問題じゃない。零号機の修復を待ってからそっちの二人で使徒を倒す」
アスカが声を上げた。
「で、あたしが3号機に乗る。浸食ってことは精神汚染じゃないの?この中で一番精神が安定してるのはパパがいるあたしでしょ?」
「ぼ、僕にも……と、父さんがいるよ……」
「そんなオドオドで何言ってんのよ」
「私も乗れる」
レイちゃんが小さく手を挙げて答える。
「ユーロネルフに働きかけて2号機の凍結を解除。初号機と叩く。悪くない作戦だと思うわ」
「むしろ3号機を凍結保存するのはいかがでしょうか?」
アスカトラウマシーンを避けるには別に戦う必要はないと思う。
「それはダメ!」
意外なところから反対の声が上がった。
「凍結なんかしてリスクを先延ばししてどうするの?途中で目覚めて他の使徒と同時攻撃されるかもしれないのに」
アスカの合理性と勘の良さには驚かされる。
「そうか。シンジ……選んでいいぞ」
グラサンを光らせてシンジ君パパは言う。
覚悟を決めた男の顔だ。
「な……そ、そんなの選べるわけないよっ!酷いよ父さんっ!」
「シンジ君……一応今のシンジ君パパなりの心遣いだと思うよ…」
「はっ…!」
「そ、ごめん…酷いなんて言って……。でも、どっちを犠牲にしていいか選ばせるなんて残酷だよ……」
「…すまなかった」
偉い!シンジ君パパがシンジ君にちゃんとごめんね出来てる!
アディショナルか補完計画中でしか謝れなかった男が!
「ちょっと!犠牲って何よ。このアスカ様とそこの病弱零号機パイロットどっちが生き残りそうかって話でしょ?それともバカシンジは最初から助けるつもりはありませんってワケ?」
「そんなことないよ!……絶対助けるから」
「じゃ決まりね」
決まりそうなんだが?ミサトさん他になんか作戦とかは……。
「これだけタフになったアスカなら大丈夫そうね」
しみじみじゃないんだが?
「他に…何か……作戦とかはないんですか?」
俺は全員の顔を一巡して見る。
「パパ?」
マズった。粘る俺を見つめたアスカの眼には確かな陰りがあった。
「……パパ心配性でごめんな?アスカなら絶対に大丈夫だよな!」
「うん!」
俺の仕事は彼女を信じることだ。
「どうするつもりだ碇」
「……」
「約束の時が迫っている。零号機は間に合わんぞ?」
「問題ない」
「予算も素材も時間も足りない……まさかっ」
「ああ。戦自に働いてもらう」
「カラクリ義手でもないよりはマシというわけか」