俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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1-10 俺の戰い

緊急アラートが鳴る。

ああ。最強の拒絶型か。

 

俺の知ったことじゃないな。

 

 

俺はアスカのいる部屋の監視室に泊まり込んでいた。

栄養優先のレーションを水で流し込んで、シャワー室を借りて、寝袋で寝る。

生活に不自由はない。

一日中アスカが入った箱を見続けるだけの日々だ。

 

 

 

「キョウキチさん。……やっぱりずっといたんですね」

背中に声がかかる。

 

「ああ。シンジ君か。……倒したんだね。ありがとう」

戦闘配置が解除されたということは使徒の殲滅が完了したということだ。

 

「あ……その大丈夫ですか?帰ってないみたいだし……」

 

「俺は大丈夫さ。それより君のほうこそ怪我はないかい?」

ここでようやく彼に向かい合うことができた。

 

「僕も綾波も無事です。……でも、2号機が」

おお。ニアサーが起きてないと思ったが、二人とも無事か。めでたいな。

 

「……2号機?パイロットはどうしたんだい?」

たぶんマリ。おそらく。

 

「パイロットは不明だったんですけど、動いてて。通信も通じなくて。もしかしたら…って思って……」

しかしそれを知らないということは、彼女は上手く雲隠れしたようだ。

 

「アスカは出てきてないよ」

 

「そう……ですよね。すみません」

シンジ君は本当に空気を読むなぁ。

ぬか喜びも事実も人を傷つけることを知っている。

 

……。

彼に心配をかけてるようじゃダメだな。

アニメ版は大人の余裕のなさが彼を追い詰めたんだから。

 

「けど魂だけで動かしたかもしれないぞ?」

 

「あはは……アスカなら本当にやりそうですよ」

俺の冗談に少しほっとしたような顔で作り笑いを浮かべる。

 

「ああ。ありがとうな」

気を詰めても仕方ない。

信じろ。アスカを信じるんだ。

 

 

 

 

 

「キョウキチくん?少しいいかしら」

それから数日。

やっぱり俺はアスカの前から離れられずにいた。

 

「赤木博士!……何か分かったんですか!?」

 

「彼女の状態だけど……」

 

「はい」

心臓が早鳴る。

 

「前言った通り細胞組織の浸食跡は消えているわ」

 

「はい」

そう。そこまでは分かっている。

 

「精神汚染の可能性もまだ残っているから隔離処理は続けるのだけど……」

 

「けど?」

 

「この数日で分かったことがあるの」

 

「何でしょうか?」

正常であってくれ。

精神は起こしてみないとわからないけど、肉体は問題なしって。

 

「浸食ではなく進化。いえ共生と呼ぶべきかしらね。……肉体がヒトの枠組みから外れてきているわ」

 

「……。それは……どういう?」

背中に嫌な汗が伝う。

 

「疑似的な使徒化。左目に埋め込んだ封印柱によって浸食は抑えてるけど、体内に供給されるエネルギーまでは遮断しきれなかったの」

 

「つまり……?」

……本当は聞きたくない。

シンジ君の救出もシンジ君パパの勇気も俺の奔走も無駄だったってことになる。

そして何よりアスカが……。

 

「彼女は外部からのエネルギー補給を必要としない。棺の中は温度を下げてコールドスリープに近い状態にしてるけど、睡眠も本来不要なはずよ」

 

「食事と睡眠が不要……ってことですか?」

エヴァの、呪縛だ。

ちくしょう。……ちくしょう!

ニアサードは防げたんだぞ?どうしてアスカばっかり!?

 

「それと生殖も……ね。」

 

「へ?」

やばい。マジで一瞬口の閉じ方忘れた。

初耳だぞ?それ。

 

「今の彼女には必要ないのよ。……S2機関があるアスカは細胞が老化しないわ。つまり子孫を残す必要がないの」

 

「寿命が非常に長い植物でも子孫は残しませんか?」

ない知識を振り絞ってそれっぽい反論を試みる。

 

「そうね。でも既知の生物の常識は使徒に通用しないわ」

 

「そう…ですか」

あぁ……。

 

生物の三大欲求だぞ?

あの一瞬で、だぞ?

止めれなかった俺の判断ミスだ。

上手くいきすぎて調子に乗ってたのかもしれない。

今回もきっとうまくいくって……。

 

「また何かわかったら伝えるわ」

 

「ありがとうございます。……あの、もしコンタクトする実験があれば俺を使ってください」

一手でも一歩でも彼女に。

 

「……分かったわ」

 

「精神汚染を調べるには知っている人間に接触するのが手っ取り早いでしょう?」

 

防護服なしで会いに行くくらいなら余裕だろ。

シンエヴァで復活してるし。

 

もし食い殺されても……。

いやそれは逃げでしかないか。

自己満足で死ぬのは卑怯でしかないな。残されるアスカの事を考えてない。

 

 

 

さて……。

じゃあ、このままここにいるのは彼女のためか?

それとも自己満足か?

 

俺に出来ることはあるか?

この変化(原作崩壊)してしまった世界で俺に……。

 

ああ。変化したのは世界か。

ヒトじゃない。

 

ならば俺がやるのは……。

 

 

 

 

 

「で、結局奥さんのことどう思ってるんですか?」

 

「ユイにはっ!……置いていかないでほしかった。……ただ、それだけだった」

 

適当な口実でシンジ君パパと宅飲みに成功。店だとセキュリティがね。

てかこの人ストレス溜めすぎてアルコールにめっちゃ弱いな。

 

「でもゲンドウさんは再び会うための糸口みたいなのあるんでしょ?」

 

「……そうだ。人類の魂を単一にすることでユイと私は再び会える」

 

「目的がしっかりしてるから淀みないんですね。あ、だし巻き卵でも」

 

「そうだ」

むしゃり――。

そしてもう一つ。

 

「ふんふん。サルベージはうまくいかなかったから人類の形を変えることにしたと……」

 

「ああ」

 

「ゲンドウさんが会いに行くのは出来ないんですか?」

 

「どういう意味だ?」

 

「同じ方法で……ですよ」

第13号機とはなんかリンクしてたんだし。

この方法が考えつかないわけがない。

 

「ダイレクトエントリーか……。だがそれは……」

 

「怖いですか?」

もし理由があるならこれだ。

 

「……」

 

「大丈夫ですよ。すべて終わった後でなら奥さんも受け入れてくれますって」

①ユイさんに拒絶される恐怖

絶対奥さんから来てもらってばっかりだったから今までのシンジ君パパにその勇気はないだろう。

 

「すべて……」

 

「シンジ君を守るために奥さん初号機に入ったんでしょう?」

②まだやることがあるのでユイさんが拒否

このパターンもある。そりゃできないよ。

 

「襲来する使徒を殲滅した後か?だがそれは……」

 

「うーん。孫の成長を見届けた後とか?」

 

「孫……?」

 

「ええ。シンジ君モテますから。孫娘とか生まれたらきっと可愛いですよ」

 

「……」

遠い目をしている!

サングラスで分かりにくいけど。

 

「使徒を倒して後処理してるうちにすぐですよすぐ!」

 

「……そうか」

 

「そうですよ。孫の写真、奥さんに見せて自慢したくないですか?」

 

「……」

 

「奥さんがシンジ君を直接守り、ゲンドウさんがその手助けをする。……家族の力で救った世界の未来は明るいほうがいいでしょ?」

人類への貢献度が非常に高い一家だ。

シンエヴァも『父が場を整えて、息子が世界をループから解放した』ともいえるので途中のやらかしはチャラだろう。

 

「その未来は来ない。……知恵の実を食べた人類は使徒に滅ぼされる定めだ」

 

「殲滅したあとにまた来るってことですか?」

 

「ああ」

 

「科学は進歩する。人類は負けませんよ。それに……二人が一緒になって守ってくれるでしょう?」

コアに二人分の魂があればパイロットもいらないのでは?

でS2機関を取り込めばあとはどうとでもしてくれるでしょ。

 

「……ああ」

杯を傾けた後噛みしめるようにシンジ君パパは言った。

 

「……。よろしくお願いします」

彼の大人の顔に俺は真面目に頭を下げる。

 

覚悟には敬意を。

不愛想で勘違いされやすい彼には必要なものだと思う。

 

 

 

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