俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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2-4 AQUADIVER

「凄い!凄すぎる!」

 

「失われた海洋生物の永久保存と赤く染まった海をもとの姿に戻すというまさに神のごとき大事件計画を担う禁断の聖地!その表層の一部だけでも見学できるとは!まさに持つべきものは友達って感じぃ!」

ケンスケがカメラをもって跳ね回ってるけど……。撮影許可下りてんのか?

 

「ほんま感謝するでぇ」

 

「お礼なら加持さんに言いなさいよ」

 

「どうしてお前が返事するんや。ワイは誘ってくれたシンジに感謝しとるんや!」

 

「まぁまぁ……二人とも落ち着いてよ」

 

「もっともここからがちょいと面倒なんだけどな」

加持さんが2階の窓からアナウンスしてる。またアレか。

 

 

 

入場のための滅菌行程。

流れるように全裸で照射滅菌、下着交換。

流されるように水没させられたり、熱湯かけられたり、冷水かけられたり……。

 

 

チン――。

 

処理を終えて扉があいた先には大きな水槽とその中で泳ぐ魚たち。

うん、懐かしの研究施設。……二人で行った水族館まで追加で思い出すなぁ。

 

「ふぉーほほほっ…でかい水槽やなー!」

「すごいっ……これがセカンドインパクト前の生き物なんですか」

「凄い…凄すぎる…!」

 

「加ー持さんっ!一緒に回りましょ!」

処理後に合流した加持さん相手にアスカは猛アタック。

 

「アスカ、悪いが俺は仕事があるんだ。そこのボーイフレンドと回ったらどうだい?」

当然のように加持さんはかわす。そしてなすり付ける。

 

「ボーイフレンドォ!?そんなんじゃなくてた・だ・の!クラスメイトよ」

 

「そうかい?お似合いだと思うけどなぁ……。じゃ、あとは任せたよキョウキチ君」

 

「お任せください」

加持さんは俺の声にこたえて片手をあげて去っていく。

 

「もぅ!あぁ……加持さんが……」

わざとらしく大きくため息をついて肩を落とした。

 

「で!……はぁ」

そしてこちらを見てもう一度ため息。

 

「カッコよさが足りなくてごめんね?」

 

「ちっがーう!そもそもあんたが居たから加持さんが余計な気をまわしたんじゃないの!」

 

「ごめんよ。惣流と一緒に見たかったんだ。絶対に嫌なら一人で回るけど……」

前周もここがターニングポイントだったけど、嫌なら仕方ない。

 

あと先に嫌かどうか聞くことで『あたしは加持さんと見たかったのに!』は防がせてもらう。一度キレると矛を収めにくくなるからね。

 

「……絶対って程じゃないけど」

 

「じゃあ行こう!せっかくの加持さんのお招きなんだから楽しまないと」

 

「しょ……しょうがないわね」

 

 

 

「見てキョウキチ!赤いのがいるわよ!」

吹っ切れたのか、楽しもうとしているのか。

いつもよりテンション高め。可愛いね。

 

「あれは……鯛だね」

 

「タイ!……強そうないい名前ね。さすが赤いだけあるわ」

 

「魚の王様って呼ばれることもあって……。目出度いとかけて縁起がいいから、昔お祝いの席で食べられてたみたいだ」

 

「王様…!やっぱり赤は一番。日本人も少しはわかってるじゃない!」

 

「……っ!あっちにもっと赤いのがっ!」

 

「あれはキンメダイだね」

 

「あれもタイ!?……赤いのはみんなタイなの?」

 

「残念だけど……赤くない鯛もいるよ。あそこの黒い縞模様のやつとか……」

 

「ふーん?あ、でも似たような形ね」

 

「似てても別の種類だったりするんだ……あと、キンメダイは鯛じゃない」

 

「ややこしいわね~っ!もういいじゃないのよタイで!」

 

「惣流は惣流なのと一緒さ。ややこしいがこっちの都合でまとめたら可哀そうだろう?」

 

「む……。はぁ……キョウキチってば真面目過ぎー」

 

「惣流には真摯に向き合いたいからね。適当な相槌は打たないよ」

 

「嬉しいけどちょっとフクザツ……」

 

「……ほらオレンジの奴もいるよ」

岩の下を指さす。

 

「うん?……こないだ倒した使徒みたいで気持ちわる~い」

 

「カニだよカニ。カニカマはあれがモチーフなんだよ」

カニは出回らないがカニカマはスーパーに置いてある。

 

「えぇーっ!?あの手足の長い虫みたいのが?」

もちろん若い子は知らない。

 

「茹でると甲羅が真っ赤になるみたいだよ」

 

「やーだー!」

赤くて甲冑を着込んでるから好きかと思ったんだが……。

 

「じゃあ、次の水槽行くかい?」

 

「それがいいわ!カニがいないやつ」

 

 

 

「「「いただきまーす」」」

 

少し広めの場所でレジャーシートを広げて、シンジの弁当を頂くことになった。

メンバーは前周と変わらず、エヴァパイロット+トウジ+ケンスケ+加持さん+俺。

 

「ん?」

「「「んん!」」」

 

「シンジの癖にやるわね……!」

 

「ああ見事な焼き方と味付けだな」

 

「うん。おいしい」

 

「あの9割人造肉が調理次第でこうも変わるとはまさに驚愕だよ」

 

「シンジ、隠れた才能やな」

 

「ミサトさんいつもレトルトばかりだから…僕が作るしかないんだ」

 

シンジから受け取った味噌汁をありがたく頂く。美味い。

 

「シンジくん台所に立つ男はモテるぞぉ」

 

「だってさ」

ケンスケのキラーパス。

 

「いや!ワシは立たんぞ男のすることやない」

トウジのポリシーがシンジをこっそり襲う。

 

「だ~からモテないのよっ」

いやこいつ委員長*1とくっつくぞ。

 

「なんやと?ポリシーは大事なもんなんやで!」

 

「あ~やだやだ。モテない男の情けない言い訳は聞きたくないわ」

 

「なんやと~?」

 

「いいから食べてよ食べてよ…」

口にもの詰めとけばとりあえず黙る。こいつ分かってやがるっ!

14才の気配りじゃないから、俺はとりあえず流れを邪魔しないでオッケー。

 

「ごめん綾波…口に合わなかったかな?」

 

「いいえ。肉、食べないだけ」

人造肉はってことなんだろうか?

 

「どーして悪くもないのにすぐ謝んのよバカシンジは!」

 

「それにあんたねぇ生き物は生き物食べて生きてんのよ。せっかくの命は全部もれなく食べつくしなさいよ」

アスカが立ち上がって綾波の事を見下す。

 

てか、人造肉ってどうやって作ってるんだろう?

LCLで出来てたら無限肉だよな……。

 

「優等生のクセにこのあたしにケンカ売る気ィ!?」

反応のない綾波をアスカが一方的に怒鳴りつける。

 

綾波……マジで図太いな。一言も話さないが目もそらさない。

食べないって言ってるんだから何言っても無駄だぞって意思すら感じるもん。

 

「ちょいちょいちょいと……」

トウジが真ん中に置かれたお重をかわしながら、対面側に座っていた綾波のもとへ行く。

 

「そならワシが遠慮のう……」

弁当をゲット。

欲しい奴が持っていく……平和的解決やな。

 

「なんややらへんぞ」

弁当を頭の上に持ち上げてペンペンから遠ざける。

 

「なんや卑しいやっちゃな…くんな!アホー」

靴下のまま館内を走るのはどうかと思うぞトウジ。

 

その様子を見て一言――。

 

「……バッカみたい」

さすがアスカシンクロしてる。

 

「じゃあみそ汁はどう?……温まるよ?」

入っている具は豆腐とわかめ。昆布だし*2

海藻と大豆なので肉ではない……。海藻ってどこで取ってるん?

 

「おいしぃ」

綾波は驚いて目を見開く。普段温かいものちゃんと食べれてるんだろうか?

 

っとやばい。

綾波に見とれてたと勘違いされると良くない。

唐揚げでも献上するか――。

 

「加持さ~ん。あれ取って~」

……惣流は平常運転だった。

てか、デレデレだとあんな感じなのか……。

いや、あんな感じか。覚えがあるわ。

 

「ほらキョウキチ君とってあげるといい」

さわやか笑顔でキューピッドになろうとしてるな。

 

 

 

加持さんはシンジを連れてどこかに行ったのでまた二人で行動することになる。

 

熱帯魚コーナーがあればもっと赤い魚がいるんだがあいにくここは日本だ。

常夏だからジンベイザメが泳いでる水槽があるけど……。

 

「ねぇ……キョウキチ……」

アスカの歩みが少しだけ遅い。

 

「どうした惣流?」

 

「……。特別にアスカって呼んでいいわよ」

振り返ると少しむくれた惣流がいた。

加持さんが構ってくれないから不貞腐れたか?

……もしくは被らないように気を付けてたのが逆に不満だったか。

 

この時の俺は完全に気が抜けきっていた。

 

「アスカ」

 

「ぇ?」

それは、あまりにも自然で重かった。

40年以上呼び続けてきた名だ。思い出も感情も全てが籠ってしまっている。

あまりにも言い慣れすぎていて、逆に向こうが聞きなれていると勘違いしてしまうほどに…。

 

「ぇ……何?何で……?」

視線は泳ぎ、顔はどんどん赤く染まってゆく。

親の愛情に飢えた14才の少女が、自分の人生の3倍もの間呼ばれ続けてきた娘の名前で呼ばれたらどうなるか。

 

「大丈夫かい?」

少し近づいて目線を合わせようとする。

 

「待った!……こんなの……」

そっぽを向きながら彼女は独り言を続ける。

 

「俺もシンジじゃないけど自炊しててさ……明日ウチでお昼でもどう?」

誤算だったがこれはチャンスだ。

だがピンチでもある。

早めの修正をかけなければ非常によろしくない。

 

「……ええ、行く。行くわ……」

 

困惑は強そうだが、明らかに態度が軟化している。

……。やっぱり運命だと誤認させてしまったかもしれない。

 

 

 

*1
シンジが取らない限り

*2
アニメで『かつおだしに変えた』との表現在り。そもそもかつおと煮干しは取れるのか?

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