俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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2-5 二人目の少女×二周目の男

「アスカ、おいで」

両手を広げてアスカを招く。

 

「……」

そんな経験がないからだろう。

少し体を斜めに構えて腕を組む。足は一歩も前に出ない。

 

昨日の約束通り昼食をふるまった後、俺は急に名前を呼んだ。

そしてまだ慣れないのか顔を赤くするアスカを抱きしめた。

 

「よしよし……大丈夫だよ」

そのままぽんぽんと頭を撫でる。

 

「……。何…して……」

明らかに態度が弱弱しい。

隙だらけだがまだもう少しこのまま動かずに反応を確認する。

 

 

数分経ったあたりでアスカが組んでいた腕が下におりた。

 

「よしよし……。アスカ、パパって呼んでごらん?」

このままだと本気で運命の恋人と勘違いされそうなので軌道修正を図る。

 

「……ぱっ!?……なんでそんなこと……」

 

「良いから。ほらアスカ」

耳元で優しく名前を呼ぶ。

彼女の身体がびくりと震えた。

 

「…………ぱ、パパ?」

少しの沈黙の後、かすれた声で探るように――。

 

「そう。もう寂しくない。パパが一緒だ」

力強い断言と抱擁。

 

予想通りアスカは泣き出してしまった。

俺の服をちぎらんとばかりに握りしめてわんわんと。

 

 

 

「………。ありがとパ…キョウキチ」

たっぷりと腕の中で満足したのかアスカは一歩だけ離れた。

 

窓から差し込む日で部屋はすっかりオレンジ色になっていた。

彼女の明るい髪色がよりいっそ輝いて見える。

 

「二人っきりの時はパパでいいよ?」

 

「……そんなの言えるわけないじゃないの」

目線は下を向いたままでぽつりと吐き出すように。

 

「アスカ」

そんな彼女に対して、しゃがみ込んで無理やり視線を合わせながら言う。

 

「あーもう!パパずるい!」

 

笑ってごまかす。

俺はずるいから。

 

 

 

 

 

アスカとの仲がぐっと近づいたが、俺は一般人だった。

 

「もしもしアスカ?」

 

『もしもし……ぱ、パパ?』

 

「俺いったん離れてるけどさ……頼んだよ町の事」

 

『このあたしにまっかせなさい!』

 

「Viel Glück!」

幸運を――。

そこまで伝えると電話が切れた。

 

「もしもしシンジ?」

 

『あ、キョウキチ』

 

「頑張れよ」

 

『うん』

 

「じゃまた」

 

『うんまた…』

 

 

俺は疎開していた。

 

天空から飛来する使徒との戦い。

第三東京の住民には避難指示が出ている。

 

俺は彼女のそばにいてやれないし、もう時間もほぼない。

 

この次の使徒が3号機に取り付いている。

シンエヴァ展開を目指すならこのままアスカが使徒化しなければならない。

 

使徒化したらエヴァの呪縛から逃げられない。

……いや、劇場版で一緒にいたマリも年を取ってなさそうだったし……そもそもこのままだと逃げられないのか?

だとしても…だ。

使徒によってアスカはすべてを奪われた。

 

……最後こそ笑顔だったが、それは少なくなった選択肢の中で悪くないほうを選んだだけだ。

使徒に寄生されたせいで彼女は自由を失った。

他人を信頼できなくなった。俺の元から飛び立てなくなってしまった。

 

だから……絶対にだめだ。

アスカを3号機には乗せられない。

 

だからって…俺に何が……。いや……くくくっ……。

俺もチルドレンか。アニメ版だと3号機に乗ったのはトウジだったよな。じゃあ俺でもいいよなぁ。

いや…新劇場版だと設定違ってたりするのか?まぁいっかダメもとで途中まで電源が入って使徒が反応すればいいわけだし。

 

「俺が四人目の少年*1になる」

 

あぁ……。

せっかく身に着けたサバイバルスキルもシナリオもおじゃんだ。

組み立てなおすか。

どってことない。アスカのためだ。

 

この知識、この技術、この身体、この魂。

上手く使え。

アスカを幸せにするためだったら、あの親子に神くらい殺させてみせるさ。

 

 

 

気持ちを新たに帰宅する際中、興奮気味の彼女から電話があった。

モノレールの中だったこともあり、詳しい話は家でゆっくり聞くことにする。

 

 

「パ~パ!」

使徒の体液による津波で一部地域は封鎖。

俺が住むマンションは奇跡的に無事で、先に到着していたアスカに出迎えられる。

 

「ふふーん。大勝利よ大勝利!」

 

至近距離にシャンプーが香る。

LCLを落とすためにシャワーを浴びたか。

 

「そうか!やったなアスカ!」

喜びを前面に出すことで沈静化を図る。

落ち着くんだ男子中学生ボディ!変にドキドキしてることを悟られるな。

 

 

「でねっコアにプログナイフぶっ刺してやったのよ!」

葛城さんの立てた作戦の愚痴に始まり、食後ようやく話がピークを迎える。

身振り足ぶりがどんどんヒートアップしついには立ち上がり実演していた。

 

「おおっ!それで倒したのかい?」

 

「ちっちっち。使徒はそんなに甘くないわ」

得意げに指を振る。

上機嫌だな。戦いの興奮冷めやらぬままにって感じだ。

 

「続けてもう片方の手に持ってたナイフを刺しても、まぁだ倒れない!」

 

「え!?両手が塞がって、もう手が……」

 

「そんなことであきらめる私じゃないわ!……こうっ!よ」

高度がある跳び膝蹴り。

シンプルな身体能力が高さがうかがえる。

いや頭より高く膝上がってないか?

 

「おぉ……」

ぱちぱちと手を打って立ち上がる。

 

「そこでようやくコアが割れて、使徒が上にこうっ……かぶさってきて、次の瞬間ぼんっ……ってはじけ飛んだのよ」

 

「はじけ……って大丈夫だったかい?」

 

「あーそんな爆発って感じじゃなくて、液体になるって感じぃ?2号機の中にいたしね」

 

「そっか。アスカがケガしてないならいいんだ」

 

「でも使徒が大きすぎるせいで……そのあと血の雨っていうかもう洪水?に飲み込まれて流されちゃって……倒れたビルに当たって止まったのよ」

 

「それは……大変だったね」

 

あんだけもりもり食べてたし体調不良はないだろう。

だが、例え頑丈な箱の中でも、もみくちゃに流されたら気分が悪くなってもおかしくない。

 

「……そうなのよ。も~大変でぇ……」

猫なで声ですり寄ってくるアスカ。

 

とりあえず背中をさすっとく。

 

「今日はもう疲れちゃったから、泊ってってもいい?」

 

「……いいよ。アスカなら大歓迎さ。……葛城さんがいいって言ったらね」

 

「……っ!言わせるわ。ちょっと待っててちょうだい」

彼女は電話を取り出して席を離れた。

 

今のうちに布団を敷いちゃうか。

 

 

「OKよ。当っ然よね~本日の功労者だもの!」

 

「……悪いんだけどうち布団しかなくてさ」

 

「……。いいわよっ床で寝るくらいどおってことないわ」

アスカベッド派だからなぁ……。

 

「ではこちらでお眠りください」

俺の部屋には布団が一つ。枕も一つ。

 

「こ、これって……!」

そもそも家に寝具は1つ。

というか1部屋しかない1DK。

 

「疲れただろう?ゆっくりお休み……」

俺はフェードアウト。

ブランケットは予備があるからくるまって寝るさ。

 

「えーちょっと待ってよどこ行くのよ!?」

 

「風呂」

 

「えっ……い、行ってらっしゃい……」

 

見なくても分かる顔真っ赤にしてる。

ついでに上がるころには緊張で寝ててくれると嬉しいんだけど……。

 

 

「~♪」

彼女らしいというか……。

モノにしてやるぜって歌を歌いながらダイニングで待っておりました。

予想はしてたけど……。さて――。

 

「まだ起きてたのかい?今日は疲れただろう」

 

「あっ……パパ…」

俺を見るなり近づいてきてハグ。

 

「ん?……うん」

とりあえず抱き返す。

 

やばい。

この子想像以上に積極的だぞ。

心を強く保て……。保つんだ……。

 

「ねぇパパ……」

 

「どうした?」

 

「キスして」

 

あー。

あーっ。

あぁああああっ!!……はぁ。

 

もったいぶるとよくないな。

密着しすぎてるので肩をつかんで半歩身を引いてから顔を近づける。

 

アスカが瞳を閉じて――。

 

思わず唇に吸い寄せられそうになるが必死にこらえる。

前髪を軽くよけて額に唇を当てた。

 

「ん……っ。なにそれ。おやすみ前のキスゥ?」

 

不満気だが、もったいぶってたら『信じらんないっ!』って言われてただろう。

ギリギリのタイミングだったと思う。

 

「おやすみ前のキスだよ」

 

「キョウキチ。あんたにだったらあたし……いいわよ?」

 

「キスかい?」

 

「ええっ!モチロンその先もっ……」

 

「アスカ。パパは君を愛してるよ」

俺は目をそらさない。

彼女だけを見ている。

 

「っ!!……じゃ、じゃあっ!」

アスカも目を見開いて俺を見た。

 

いや……。愛してくれる父親の幻想を俺に見た……だな。

 

「だからこそアスカの事を大事にしたい」

 

「……それどういう意味?」

 

「なんていうか……。今アスカは身体を使って俺を繋ぎとめようとしてるように見える」

共依存だ。

溺れてしまえば俺にとってはきっと最高の。

 

「……違うわあたしはホントにっ…!」

 

「大丈夫だよ。そんなことしなくてもパパはアスカの事が大好きだから」

だが彼女に必要なのは自立だ。

何もしなくても手に入る俺で満足してほしくない。

 

再度額にキス&ハグ。

 

「寂しいなら手、つないで寝ようか?」

別々に寝るつもりからの譲歩案。

しかもこれだけサービスした後だ。どうだ!?

 

「このまま……抱きしめてて。今日はそれで許してあげる…」

うーんセーフ?

 

「分かった。寝る前にトイレには行っとかなくていいかい?」

 

 

「よしよし……」

同衾。

めちゃめちゃ興奮する――っ!

 

が、びっくりするほどに安らぎも感じている。

前周の習慣がここで発揮され……会話とかないと……。

 

普通に……。

 

 

寝れる………ぞ。

 

 

……。

 

 

 

*1
アニメだとエヴァ3号機に乗ったトウジがフォースチルドレンだった。

映画だと仮説エヴァ5号機に乗ったマリとエヴァ4号機に乗って爆発した誰か(ダミーでなければ)がいるので6番目。

もし6号機パイロットもこの時点で確定していたら7番目。

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