俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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気分が悪くなるかも。
主人公の心理描写なのでストーリーを追うだけなら読まなくても問題ないです。





2-7 You must (not) love her

バシャリと、落ちた――。

 

頭が締め付けられているように痛い。

 

「がぁあああああっ」

水面の上で必死にもがいた。

 

「……ぐっ!?」

首がちぎれる……。やめろっ止めてくれっ!

頭が取れないように抱えて歯を食いしばる。が、途端に腕の感覚がなくなり激痛が襲ってくる。

 

「腕っ…うでがぁあああ!」

足に力が入りすぎて腰が浮く。服が破られて……腹が破られて……はらわたが破られて……。

 

「パパ」

 

呼ばれている気がするが……それどころではない。

 

「はぁはぁはぁっ……ぐぅぅっ!」

嫌な音がする。ダメな音だ。死が直ぐそこに……。

 

「パパ」

 

どすんと腹の上に重くて柔らかいものがのしかかってきた。

 

「ぐは…ァ、スカ?」

固く閉じた瞼を開く。視界のほとんどは真っ黒。中心には輪郭がぼやけたオレンジ。そして白。

 

「パパ…どうしてあたしを抱いてくれなかったの?」

裸のアスカが馬乗りになっていた。

 

「き、君を愛していたから……」

 

「嘘。あたしがこんな身体だからでしょ」

そういって眼帯の奥に青く光る瞳で見つめてくる。

 

「傷つけたくなかった」

 

「傷つくか試しもしなかったくせに」

 

貼り付けたような無表情で見下してくる。

冷静にキレてるな。

 

「性欲を…生殖機能を失った14才の身体に……試すまでもない。ただ痛いだけだ」

 

「苦痛にあたしが怯えると思ってるの?」

 

「じゃあもし痛いどころか不可能だったら?」

 

「だから試しもせずにっ!」

 

「俺が性欲を向けて君が応えられなかったとき……それが一番怖かった。だからなるべく隠した」

 

求めて答えられなければ当然彼女は傷つく。

だから俺はあの関係を良しとした。その先に進んでしまうのが怖かった。

 

「隠した?…アレで?お風呂場でのこと忘れてるの?」

 

「それはアスカが…背中だけじゃなくて前にまで手を伸ばしたからだろう!?」

 

「……勇気、出したのに」

下を向いてつぶやかれたせいで表情は、見えない。

 

「……え?」

 

「もしちゃんとできなくてもパパを満足させるんだって……なのにパパは何もなかったみたいに……」

 

それは依存先がエヴァから俺に代わるだけ。

 

「すまなかった。……でもパパはパパだと言ったろう?」

そもそも俺みたいな妥協案で満足するのはアスカの為にならない。

アスカは幸せにならないといけない。彼女の選択肢を奪ってはいけない。

俺は……パパ……は……っ。

 

「違うっ!!あたしにとってはパパは……パパだけじゃなかったのよ!」

 

「っ……」

アスカの声で言われると苦しいな。

 

「それなのに他の男に押し付けようとしてっ!セックスできない永遠の14才を欲しがるのは身勝手なロリコンかイカレたコレクターだけよ!!」

 

「……それに関しては心の底から反省してる」

 

「じゃあ責任取ってよ」

 

そうだ。俺の責任だ。

 

「……。アスカはあの時そうは言わなかった」

 

「他の男を見れなくした責任をっ!こんな身体にした責任を取ってよパパァ!」

 

俺の責任だ。俺の責任だ。俺の責任だ。俺の責任だ。俺の責任だ。俺の責任だ。俺の責任だ。

 

「それは……っアスカの為にならない。それに答えたら…君は罪悪感に苦しむ」

頭が真っ白になりながらも言葉を絞り出した。

 

「答える?どうしてそう受け身なのよパパは…」

 

「親が子供に何かを求めてどうするんだい……」

親の愛は無条件で絶対でなければいけない。

何かを求めれば……条件を突きつければ彼女はそれに答えずにはいられなくなる。

 

「パパはあたしと一緒よ!あたしは他人に、パパはあたしに期待してない!だからあたしに求めない!我慢する!あたしが褒められるのを諦めて独りで生きようとしたのと一緒よ!」

 

「期待してないんじゃない…満足しちゃってるんだ」

 

「嘘。エッチなことも考えてたし勃起もしてた」

 

「……ごめん」

嘘じゃないんだけど、それもまた事実だ。

 

「意気地なし!こんなっ…こんな呪われた身体になる前にっ……!」

 

「言ったろう?…その時のアスカは俺を繋ぎとめるために身体を使おうとしていただけだったから。それは消費でしかない」

 

「あたし言われてない…」

絶望が顔に張り付いていた。

 

「え?」

 

「そのセリフはあたしに言ってくれたのよ」

ニタニタと一瞬で表情が変わる。

 

「アスカ…?」

いつの間にか眼帯が消えて、髪の色もほのかに濃くなっている。

 

「でもあたしも気になるのよね。どうしてこの作戦前に抱いてくれなかったのか。あたしはパパを愛してたし、パパは今同い年でしょ?何の問題もない……違う?」

 

「その通りだ…」

父親として。

求めてて愛してたんだろうな。この関係は歪だ。

いや歪なのは俺の存在か。

 

「しかもパパは救出後には性欲が無くなる。パパは分かってたんでしょ?」

 

「その通りだ…」

 

「じゃあどうしてっ!?」

 

「君がそこに幸せを見出してしまうんじゃないかと…思って…」

 

「それはあたしのため?それとも自分のため?」

 

『セックスを覚えたアスカが性欲を満たすために適当な男と関係を持つ』

彼女を言い訳にして自分が嫌なわけじゃないのか?

……100%は言い切れない。

 

「それは………」

 

「思い出くらい作ってくれても良かったんじゃないの?」

 

「その思い出に囚われるといけない」

 

「あたしが他の男のところに行ってもいいの…?」

 

「それは……パパとして祝福できる相手なら…しないといけない」

 

そう。適当な男でなければいいのだ。……いいのだ!

 

「ふぅん」

 

ぬるりと男がのぞき込んでくる。

薄暗くて顔までは見えない。

 

どうもアスカを俺にください(娘さんごちそうさまです)

 

「お二人のなりそめは?」

 

お恥ずかしながらナンパです(押し倒して甘い言葉でイチコロでした)

 

「……アスカに3つ言いたい」

「一つ、破滅願望なら早めに捨てたほうがいい」

「二つ、無理にパパと逆の男を選ぶ必要はない」

「三つ、感心を引こうとしているなら意味ない」

「お前の熟考の末に出した答えならパパは応援しよう」

 

「ハズレ」

 

「パパと同じであたしを使って幸せになろうとしてて、口先だけの男よ!そっくりでしょ!」

 

「くっくく……こりゃあ一本取られたなァ!」

アイツも俺か。だったら――。

 

「俺はアスカを喜ばせたい」

 

「俺はアスカを悦ばせたい」

当然のように向こうも乗ってくる。

 

「俺はアスカに幸福になってほしい」

 

「俺はアスカと幸福に至りたい」

 

「俺はアスカが幸せならそれでいい」

 

「俺はアスカと幸せならそれでいい」

 

「アスカの為なら俺は必要ない」

 

「アスカを幸せにするには俺が必要だ」

 

「俺はアスカのためだけに一生を使える」

 

「俺はアスカの為に人生を使える」

詐欺師が――。

 

「一時でなく持てるすべてでこの子を幸せにしろ!お前が必要なんだろう?」

 

「ただの恋人に人生全てを懸けさせるな!バカ親!」

 

「アスカを幸せにするにはお前が必要なんだろう?必須条件が逃げるな。それとも嘘か?」

「快楽を優先した俺如きが彼女に釣り合うとでも?弱ってるところに付け込んで傍に居させてもらっている自覚を持て!」

一気にまくしたてるように吠える。アイツも俺だ。

 

「……そんな風に思ってたんだ」

 

「あぁ。落ち着いたら勘違いもしなくなるだろう」

 

「じゃあ…勘違いしてる今の内に手籠めにしちゃえばいいのに!そう…したいんでしょ?」

 

「俺はパパだからな」

 

「そうやっていっつも逃げてっ!あたしのせいにして我慢してっ!ちゃんと本心で向かい合ってよっ!!」

 

「愛してる」

 

「またっ!それを言えば何でも許されると思ってるんじゃないでしょうね!」

 

「パパが娘を依存させて依存してっ!無駄に選択肢を狭めちゃいけないんだ!」

 

「だからっ!」

 

「娘の前でやせ我慢してカッコつけて何が悪い!俺はアスカを幸せにするって決めたんだ!俺は俺の願望の為に払える犠牲を払う。性欲なんて最たるものだ」

 

「そうやって自分に酔ってるんでしょ?自己犠牲で自分の居場所を作る……バカシンジと変わらないじゃない」

 

「くくっ……そうかもな。でもそうやって少しづつ自己を犠牲にしながら居場所を作って社会は回ってるんじゃないかな。仕事だってそうだろう?自分の時間を削って対価として金銭や席を確保する。俺は持てる対価を注ぎ込んでアスカからパパという席を買ってるにすぎないよ」

 

「あたしのっ!……パパはそんな買えるような…ものじゃ……っ!」

 

「金銭はもちろん知識経験愛情努力そして膨大な時間。……いま命も賭けてる」

 

「わっかんないっ!どうして!どうしてそんなにあたしに執着するの!?」

 

「アスカが好きだから」

 

「分かんないっ!気持ち悪い!どうしてパパは…っ!」

うずくまるように胸の上で泣き始めたアスカをそっと抱きしめる。

 

 

ばしゃばしゃと水音を立てて何かが近寄ってくる。

 

「パパっ!」

 

「アスカ?」

見慣れた……。非常に見慣れたアスカだった。

 

「ねぇパパ誰それ?」

顔を起こした惣流の瞳孔が開く。

 

「そっちこそ誰よ!あたしのパパに気安く触っていいと思ってるの?」

 

「あんたバカァ?ほら見えないの?あたしたちは愛し合ってるの!」

 

「そっちこそバカね。あたしはパパと40年以上一緒にいたのよ?」

 

「40年……。パパ…もしかしてあたし代わりだったの?」

最悪の勘違い。

 

「あたしの代わりの人形……。おかしいと思ったっ!どうして急にパパになりたいなんてっ!」

 

「アスカ…」

とりあえず声をかけて落ち着かせようとする。

 

「…信じられないっ!もう何も信じられない!パパもママと一緒なんだっ!」

やbっべぇえ!!最っ悪だ!

頭回せっ!

 

「そんなことないぞアスカ」

 

「うるさいっ!嘘つきっ!」

 

「紹介するよ。アスカのお姉ちゃん式波・アスカ・ラングレーだ」

 

「お姉っ!?あたしがっ!?」

 

「先にパパの娘になったんだお姉ちゃんだろう?」

 

「違う。パパはあたしだけのパパ」

 

「渡さない。パパはあたしだけのパパだから」

 

「姉妹には仲良くしてほしいんだけど」

 

「ほらパパが困ってる。消えてちょうだい」

 

「いやよ。そっちこそ退いたら?」

立っていた式波アスカが俺の腹部を掠めるように蹴りを放つ。

 

それを避けるために惣流アスカは素早くバックステップで距離を取る。

 

「「パパ待っててね」」

 

両者ともにファイティングポーズ。

瞳がギラリと光る。

 

「させるか…ぁっ……」

当然のように間に入って両方からガッツリ蹴られる。

 

「ちょっと寝てて」

 

「よくもパパをっ!!」

 

「待て、止めてくれっ!」

俺の制止も聞かず二人は拳を重ね始める。

 

 

組み始めた二人の間に入ることはなかなかできず、ずっと苦しい気持ちで二人を見ることしか俺にはできなかった。

 

「いい加減あきらめなさいよ」

そういって惣流アスカは槍を取り出した。

 

「そっちがその気なら」

対する式波アスカも槍を取り出す。

 

「「やぁあああああっ!」」

 

「待てっ!!」

二人の間に身体をねじ込む。

 

「ぐっ……」

片方は肩の骨で止め、もう片方はろっ骨を砕いて止まった。

俺が間に合わなかったらこんなもんじゃすまなかったぞ?

 

「「パパっ!」」

吹き出た血に二人の声がリンクする。

頼むから冷静になってくれ。……争わないでくれ。

 

「ちっ…マネしないでよ!」

 

「そっちこそ!」

 

「もう、やめよう…な?」

やっとわかってくれたのかアスカたちは左右に離れていく。

 

「「……パパ。これならあたしを選んでくれるよね?」」

そして自らに首に槍を向ける。

 

「やめろっ!」

 

「「じゃあ、あたしを選んで?」」

 

『でも、どっちを犠牲にしていいか選ばせるなんて残酷だよ……』

ははっ全くその通りだなシンジ。けど俺は大人だ。

 

『このアスカ様とそこの病弱零号機パイロットどっちが生き残りそうかって話でしょ?』

そういうことだよアスカ。

 

この精神世界において最も大事なのはきっとイメージだ。

見せてやるよ使徒。人間は欲深いんだ。

 

「「パパっ!」」

俺は惣流に向かって走った。この周は彼女に捧げると決めたんだ。

 

それと同時にイメージを固める。

俺は3号機に乗っているイメージだ。

ロンギヌスの槍は防げなくてもATフィールドをぶつけられれば軌道は逸れる。

俺は選ぶ。だが同時に出せる手は差し伸べる!

 

「パパっ!」

光が見えた。

 

 

 

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