俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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2-8 「使徒」レ「将来」

2-8 「使徒」「将来」

 

「あ…アスカ?」

 

「パパ……っ?」

アスカの目にあったのは恐怖と怯えとほんの少しの希望だった。

 

「こんなにやつれて、アスカ…すまなかった」

 

思わず抱きしめると、強く抱き返してきた後に堰を切ったように泣き始める。

その泣き方はまるで幼子のようだった。

 

「パ、パっ!……パパ!……もう……嫌……パパっ!」

 

もう?

……良くないワードだ。

アニメの惣流アスカといえばエヴァの実験による母親の自殺がトラウマだった。

しかし新劇場版の式波アスカにママはいなかったはず。だからこの世界の惣流アスカは大丈夫だと思ってたが、もしかして見誤ったか?

だとするとエヴァに奪われた実母と、エヴァに奪われた俺で……。

完全に誤算だ。シキナミシリーズとかいうクローンだと思ってたけど完全にやらかしたかもしれん。

 

「大丈夫。パパはここにいる…大丈夫だ」

 

今はただ目をつぶり抱きしめる。

現状確認は後でもできる。俺にとって大事なのはアスカだ。

 

 

 

「パ…パ……」

 

「うん」

抱きしめて撫で続けていると呼吸が一定になっていくのを感じた。

 

眠ったか?

…少なくても落ち着いたらしいので周りに目を向ける。

 

まず左目が視界不良。多分眼帯。

そして銃を構えた屈強な男たち(多分。フルフェイスヘルメットのせいで性別不明)が俺の周りと入口のそばにいて、それに挟まれる形で赤木博士と葛城一佐。

俺は棺桶みたいな箱から上半身を起こす形で腕の中にはアスカ。

 

「えっと……俺なんかやっちゃいました?」

銃を向けられているしとりあえずお約束だ。

 

「いえ。貴方自身は何もやってないわ。ただ貴方の存在が問題なの」

赤木博士、辛辣過ぎない?

 

「もしかして相性が悪くてエヴァを壊してしまったのでしょうか?」

 

「単刀直入に言います。貴方は使徒……人類の敵になりました」

 

「……!」

知っていることを知られてはいけない。

ゼーレ関係者やシンジ君パパと繋がってる疑いをかけられると非常に厄介だ。

 

「そう…ですか……」

 

「あら、意外と冷静なのね?」

 

「……。まだ殺されていませんから。必要なんでしょ?」

 

あくまで現状は…だ。

劇場アスカはエヴァパイロットとして利用価値があったが俺にはない。

しかも精神汚染の可能性まである。いつ切り捨てられてもおかしくはない。

 

「話が早くて助かるわ。貴方は貴重なサンプルです。抵抗しない限り無駄に命を奪う気はありません」

 

「……。拷問じみた人体実験はお控え願いたいのですが……」

さすがに抵抗する。

 

「その心配はないわ!そんなことをしたらアスカにストライキされちゃうもの」

 

「だから目覚めさせたんですね」

今のアスカだとエヴァに乗るのはきついだろう。

もしくは俺を起こせと駄々をこねたか。

 

「えぇそれもあるわね。あと私たちは主観的なデータが欲しいのよ」

 

「主観的……」

手を動かしたり、ほっぺをつねったり匂いをかいだりしてみる。

 

「あんまり……違いは感じられません」

 

「そう。……現状を確認できたので第一コンタクトはこれで終了とします」

 

「じゃまた来るわね。アスカをよろしく!」

 

そう言って出ていく二人に、銃を持った男が二人付き従い部屋から出ていく。

 

護衛というよりは監視みたいだな。

 

「お兄さんたちは……俺の監視?それともアスカの?」

 

男たちに反応はない。

気さくに話しかけてきた相手に一切の隙を見せずに銃を構え続けている。

 

「……俺は何したら撃たれるんですか?都度警告してくれる感じ?」

 

「……」

それにも答えてくれないか。

 

「……。おいでアスカその体勢だと痛めるよ?」

軽くなった体を箱の中へと引きずり込んで隣に寝かせる。

 

あぁ……。

エヴァの呪縛というか使徒になったせいで、マジで性欲がない。

痩せてて心配ってのもあるけどそれ以上に皆無。

当たってるとこは柔らかいんだけど……なんというか…。

『ほらこのプリン柔らかいでしょ?興奮…しますよね!』みたいな…。

『このクッション触り心地最高でしょ?Hだね』みたいな…。

 

まぁ、パパにはいらんか。

むしろ変な気を起こさなくなるから安心じゃないか?

 

あと眠くない。

腹も減らない。

 

……。

この温もりが不快だと感じてしまう身体にならなくて良かった。

 

 

 

このあと10時間くらい熟睡するアスカを抱き続けた。

 

 

 

「パパ…」

 

「ん?……おはよう」

 

「ここ…?……あたしもしかして寝てた?」

 

「ああ。……今何時ですか?」

もちろん返事はないしこの部屋に時計もない。

 

暇な時間で分かったことは、地面が揺れていることと、壁には文字がびっしり刻まれていることと、監視員が3時間くらいで交代することだ。

約10800秒くらい数えちゃったもん暇すぎて。

あと、アスカは寝てるとき大体4秒サイクルくらいで息してる。数えちゃったもん暇すぎて。

 

「もう少しこうしてようか」

 

「うんっ…」

 

「寂しい思いさせてごめんな……もう大丈夫だからな…」

 

「…うん」

 

アスカはまた少し泣いているようだった。

無理して3号機に入ったのは失敗だったろうか?

じゃあ……このアスカを精神攻撃にさらしたほうがよかったか?

てか、前周のアスカ……俺ほどひどくなかったよな。我慢してた?

……分からん。

 

ノック。

そして運び込まれる二人分の食事。

 

「アスカ…食べていい。だいぶ食べれてないんだろう?」

 

「……パパは?」

 

「……パパお腹空かないから水だけでいいよ」

 

「…う、うん。いただきます」

 

返答が怪しいな。

帰ってきた影響か居なかった影響か……。

前者で甘えているだけならいいが、後者で不安定になっていたら……。

ま、やることは変わらないか。

 

 

 

食事が終わってから少しして、研究員風の人たちがわらわらと訪ねてきた。

 

「平丘キョウキチ君…お話いいかしら?」

 

「その前に、服もらえませんか?」

 

今俺が来ているのはアスカ用の薄いピチピチテストスーツだ。

ないところは緩くて、あるところはきつい。

 

「準備してあるわ。それとこれもつけて頂戴」

 

結局プラグスーツ。

しかも頭につけるやつがやけに大きいな。

がっつり猫耳って感じの大きさにならないか?まあいいが。

 

「アスカちょっと後ろ向いてて……」

 

監視の人たちも白衣の人たちもガン見じゃないですか。

棺桶で大事なところは隠しながらプシュってやる。

 

「どう?」

 

「感度良好です。脳波の乱れも見られません」

 

「では、平丘キョウキチ君。3号機に入った後のことを聞かせてもらえるかしら?」

 

「えっと。周りの景色が変わっていって……少しすると外の状況が見えるようになりました」

 

カメラにレコーダーにメモ。

使徒と生身で接触した人間の肉声だ。資料的価値があるのだろう。

 

「金属がひしゃげるような音とともに足先のほうから空間が赤く染まっていきました」

 

「そして操縦席も見えなくなり、俺は赤い空間に浮かんでいました」

 

「そして少女の笑い声が四方から聞こえて……俺は背中を押されて前に。前方からは青っぽい十字の光がやってきて……」

 

「薄暗い空間に落ちました」

 

「落ちた?それはどんなところだったの?」

 

「……水が溜まってるところで……もしかしたら夢だったのかもしれません」

 

「夢?どうしてそう思ったのかしら?」

 

「脈絡のないおかしなことが何度も起こったからです」

 

「それはどんなことかしら?」

 

「……恥ずかしいので…何が起こったのか概要だけまず言っていいですか?」

 

「ええ。どうぞ?」

 

「恐ろしくリアリティのある嫌な妄想、思い出を突きつけられ続ける」

アスカの身体が少しこわばった気がする。

 

「……」

研究員たちの中には嫌な顔をするものが何人かいた。

赤木博士はケロッとしてて、ミサトさんはほんの少し表情をゆがめてた。

 

「先輩……」

 

「俺はシンプルにアスカになじられ詰められ怒られ続けてましたね」

 

「……どう?」

 

「……。正常範囲内です」

モニターを見た伊吹さんが少し苦しそうな表情で告げる。

 

「使徒には知恵がない。……この考えは改めた方がいいかもしれないわね」

 

「……ただ、こちらの妄想の域を出ませんでした」

 

「というと?」

 

「こうなったら困る嫌だなの連続ではありましたが想定外ではありませんでした」

 

「……」

 

「眠れなくなったようなので、ただ単に自分の妄想だった可能性もあります」

 

「随分と冷静に語るのね」

 

「もとより彼女に釣り合わないのは理解していますし、父親はやがて娘に嫌われるものなのも理解していますから」

 

「……とても14才とは思えない発言ね」

 

「全く持って同感よ。釣り合わないってのは周りが勝手に言うことであって……ましてや若いうちはそんなの気にしなくていいのよ!」

ミサトさんは擁護してくれる。

 

「この身体。今のところ食欲性欲睡眠欲を感じません」

 

「…えっ!?」

アスカの瞳が揺れる。

 

「データ上も不要。……単独で完結してる純完全生物ね」

 

「時間だ」

銃を持った監視員の一人が告げる。

 

「分かりました。ではまた後日……」

 

 

 

 

 

何日か経った。

研究者たちが色々調べに来ては消えていった。

 

そして――。

 

……今日は船が騒がしいな。

 

「パパ」

 

「ああ大丈夫」

ずっとべったりなアスカを抱え込むように背中を入り口に向ける。

 

ドアが乱暴に開けられて銃声。

 

「目標発見!保護します」

 

「大丈夫かい?平丘キョウキチ君?」

青いバンダナをした兵隊が話しかけてくる。

 

「えっとあなたは?」

 

「俺たちはヴィレ……ネルフによるサードインパクトを阻止するために結成された」

 

「……俺も一応ネルフ関係者」

味方なのはわかってるが……一応。

 

「元ネルフ職員と戦略自衛隊も参加している。ちなみに俺は国連軍ね」

 

部屋の外に連れ出されて上階に登っていくと……ここ湖の上か。

水が青い。海ではない。

周りに出てきているのは同じく青いバンダナの人たち。

そして見える景色は……山に、黒い棒に、基地っぽい建物。

 

と、――轟音に反応して空を見上げると猛スピードで飛来する戦闘機。

 

「伏せろっ!」

 

遠くにあった基地っぽい建物が大爆発を起こす。

 

……始まったな。

 

 

 

船の混乱が収束し始めたころ……北東の空が同心円状に赤く染まる。

 

「あの光……」

 

「まさかサードインパクトっ!」

周りの人が騒ぎ始めるが……。

 

アスカここ居て大丈夫なんだろうか?

……ミサトさんたちが居ないから、不要と判断してネルフ本部に突撃したんだろうか?

 

まぁ……考えてもしょうがないか。頑張って生き残るぞ。

 

 

 

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