「キョウキチ空みてねぇで手動かせ!」
「そろそろ……ほらっ俺たちの希望の流れ星ですよ!」
俺の言葉に反応して他の作業員たちも手を止めて空を見上げる。
「上がってくもんを流れ星とは言わねぇだろうよ」
「掛けれる願は掛けといたほうが良くないですか?」
「……はぁ、許す」
「俺のかぐや姫が無事地球に変えれますように!」
「作戦の成功を祈れや!」
「いや確かに……あの少佐は求婚突っぱねそうっすよ」
「そうそう。『あたしより弱い男は嫌よ!』とか言いそう!」
「そもそもお爺さんにゾッコンだもんな……狙い目ねえよ」
「顔は可愛いんだけどな……パイロットにアプローチはなぁ……」
「さぁさぁ星は行った。手を動かすぞヘタレども!」
全くこいつらは……。
「全くお前は……」
あれから14年がたった。
俺はヴンダーのクルー。
アスカはエヴァのパイロットで今、シンジを宇宙に迎えに行ってる。
そしてそれに付き添ってるのが――。
「紹介するわ…こちらユーロネルフからやってきたエヴァパイロットの真希波・マリ・イラストリアスよ」
サードインパクトを生き残った俺たちを回収したミサトさんに会わされたのは要注意人物だった。
「ふぅぅん?」
マリは観察、アスカは警戒ぽい反応だったのでまずは俺から一歩進んで手を出す。
「平丘キョウキチ、エヴァ3号機パイロットで第9使徒の宿主でアスカのパパだ。よろしく」
食らえ情報ラッシュ。
その手をつかんだ彼女はグイっとこちらに近づいて首筋のニオイをかぐ。
分かっていてもびっくりする動作だ。
「……懐かしい。潮のニオイがする」
な!?……マジか。魂の匂いでも嗅いでるのか?
前世で最後が海辺だったのに関係あるんだろうか?それとも元の世界が普通の海だったから?
それとも塩?汗臭いってことか?……俺汗かくっけ?
「そういうマリさんはいい匂いがするな。……少しアスカに似ているかもしれない」
お返しにマリさんクローン説のカマをちょっとかけてみる。
「ふむ…LCLか……女の子のニオイじゃないかい?」
シンプル顔面弄りですね。お前は他の女の匂いを嗅いだことないだろと……。
「じゃあ……綾波もきっと似た匂いだったのかな?」
「なんでそこで優等生の名前が出んのよ!」
「エヴァ乗ってる女の子はアスカと綾波しか知らないから」
「と・こ・ろ・で……娘のニオイを良いニオイって大丈夫なのかニャ?」
「まず種族が違うし、今の俺に不純さはないからな」
アスカは意味を理解して赤面している。
人間は血が濃くなるのを避けるために匂いで自然にパートナーを判別していると言われている。
その一例が『パパ臭い』だ。臭いと感じる相手は遺伝子上の相性が良くないとかなんとか。
「アスカもほら……」
「惣流・アスカ・ラングレー大尉よ。足を引っ張らないで頂戴ね新入り」
サードインパクトのごたごたで彼女のメンタルは表面上の回復を見せていた。
それに付け込んで一緒にエヴァに乗って、北上ちゃんの救出と使徒によるエヴァの強化の仮説を立てるイベントもこなした。
『全艦補給作業を中断。乗員移乗を最優先』
中断指示。つまりは敵襲だ。
奪還した初号機を回収。ヴンダーの主機として接続している最中のことだった。
ちなみに俺は食料補給作業の手伝い。
「戦闘配置だ。冷静かつ迅速に乗り込め」
敵襲に戸惑っていた作業員たちに声をかけていく。
「せっかくの資材っすよ?」
「俺らがもたついて船が沈んだら責任取れねぇだろ?」
気持ちはわかるが一人の阿呆で簡単に死ねるからな。
「……よし全員揃ったな?点呼!」
「補給臨時第3小隊全員配置につきました」
艦内回線で報告し後は待機だ。
座って待機すること数分。
船が大きく揺れた。
「攻撃された!?キョウキチさん……」
「慌てんな。今艦長が点火って言ったろ?」
『ヴンダー発進!』
グラグラと揺れるが進んでる感覚はない――。
ドカンと大きく船が動いた。
『主翼貫通損害不明!』
「……今度は攻撃されたな」
『構うな!殲滅戦用意。艦を倒立。ゴースターン、ヨーソロー!』
「今、倒立って言ったか?」
「船だぞ船!?」
「……重力制御で上手くやってくれるから安心しろ」
サードの時に子供だった子たちが最近船に乗ってきた。
いや関係ないか。技術者やネルフ元職員以外からすりゃ信じられないよな。
『目標を殲滅!』
「……ぇ」
「勝った?……俺ら勝ったのか?」
「シー!指示が聞こえなくなる」
今まで逃げ続けだったから気持ちはわかるが、今は抑えてくれ。
『全艦第二種警戒態勢。改二号機の回収用意。主翼の応急処置を急いで』
「おし。補給臨時第3小隊解散。各自持ち場に戻れ」
「うす」
「了解です」
「アスカ。おかえり」
俺はそのままサボって彼女を迎えに行っていた。
「ただいま。パパ」
「機転のおかげで助かった……。みんなもありがとう!」
近くにいた整備のおっちゃんから親指で返事が返ってくる。
「もうミサトとも長いからね。無茶するのはお見通しよ」
エヴァを使用した点火。指示が出たときには出撃準備が完了していた。
「ところで……シンジ目覚めたって聞いた?」
「……監視対象者BM-03のことなら艦内放送で聞こえてたわ」
「行っちゃう?」
「……そうね。そうするわ」
ちなみに、彼女は帽子を被ってない。眼帯を隠す必要がないからね。
シンジがいる隔離室に移動する。
「鈴原サクラ少尉です。よろしくです」
ちょっと立ち聞き。
「あぁ…はい。鈴原ってトウジの?」
シンジくんは座ってサクラちゃんの話を聞いている。
「はいお兄ちゃんがお世話になりました。妹のサクラです」
ちなみに二人とこちらとの間はガラスで仕切られている。
ちなみに彼女にはあんまり接してない。
サードで思春期無茶苦茶になってるときに変に近づくとこっちに依存しかねないからだ。
映画通りシンジにクソデカ感情向けてくれないと困る。
「妹?お姉さんじゃなくて?」
「はい、妹です……へへ」
「妹……なんで……」
「あれから14年たってるってことよ。バカシンジ」
すっといいタイミングで中に入っていったな。
「あっアスカ」
シンジは嬉しそうにパイプ椅子から立ち上がる。
対するアスカはポケットから拳を出して真っすぐと彼の下へ向かう。
「良かった…やっぱり無事だったんだねアスカっ」
シンジはアスカの生存を喜んでいる。
やっぱり3号機の替え玉を知らされるタイミングがなかったか。好都合だな。
ツカツカと彼女の歩みは少しづつ早くなっていき――。
「ぅあ!?」
シンジの顔面を狙って拳を叩きつける。
ピシリッと小さな音を立ててガラスに大きなヒビが入った。
「駄目ね。やっぱり抑えきれないわ。ずぅっと我慢してたし」
威圧するように、見下すように……。
ガラス面の土台兼テーブルの上に立つ。
「なんなんだよ…」
唐突に向けられた敵意にシンジは尻込みし座り込む。
「怒りと憎しみの累積!」
「なんのことだよ」
「あんたのせいでねぇパ「よぅシンジ!」」
ネタバラシはまだ早いのでさえぎるように声をかける。
「キョウキチ!」
「パパ!あたしこのバカにっ!」
「まぁまぁ……少し落ち着こうな」
「やっぱり……。アスカさっき14年て……でも全然代わってない」
ちなみに俺は口ひげを生やして眼帯をしてる。
髪も伸ばそうかと思ったが加持さん感が出るのでやめた。
アスカにも艦長にも良くない。
「そうよ!エヴァの呪縛っ!」
「呪縛?」
「はぁぁ……本っ当にバカね!なんも知らないでアホ面さらして!……あんたのせいで世界が…パパがどうなったか……っ!」
肩を震わせてそこまで言うと、言いたいことは終わったとこちらに向きを変えて歩き始める。
「ちょっと待ってよ何のことだかわかんないよ!」
アスカはガン無視。
「あ……アスカなら知ってんだろ?ねぇ綾波はどこなんだよ」
「あたしが?知るわけないじゃない!」
「知るわけないって…助けたんだよあの時!」
「はんっ…綾波は助けた?よくもそんなことあたしの前で言えたわね」
「ま……目的優先人命軽視。大佐のモットーには適した人材かもね。そうでしょ葛城大佐?」
「悪いなシンジ俺も仕事があるからまたあとでな」
「ちょ…キョウキチ!」
背中に叫び声が当たるが無視して部屋から出る。
俺はマジで仕事を抜けてきてるので許してくれや。
船ガタガタと揺れる――。
『全艦第一種戦闘配置。初号機保護を最優先』
「アスカ任せた!」
「もちろんよパパ!」
二人とも別方向に分かれてダッシュ。
持ち場に戻らないとどやされる……。
『右舷中央部に損傷』
碇シンジ奪還作戦。
綾波レイにソックリな彼女に連れていかれればシナリオ通りだ。
『追撃不要各員は損傷個所の応急処置及びぎ装作業を再開』
……無事、少年少女は青い空へと旅立ったらしい。