俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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2-13 嘘と沈黙

俺たちの夜は長い。

そしてその冗長さに慣れてしまっている。

 

結局朝までずっと抱き合ったままだった。

 

「さて朝だ。もう行かなくちゃ」

 

「んん……。しょうがないわね」

 

 

「「乾杯」」

朝食終了。水一杯。

 

「じゃ、行ってくる。シンジの様子見頼んだ」

 

「はいはーい」

 

 

「おおっ!キョウキチか!」

 

「はい。お久しぶりです」

 

「おー相変わらずの童顔じゃねえか」

 

「キョウキっちゃん若いな~」

 

ここ第三村の主産業は農業。

アスカはパイロットだから免除だとしても俺は違う。

あと単に暇。

話題を作るためにもとりあえずは外へだ。

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえり」

 

「どうだった?」

 

「どうって……。一日中ずーとあの場所でゴロゴロゴロゴロっ!掃除の邪魔だしホントにあいつは……っ!」

 

「気が立ってるか?」

 

「当然じゃない!あんなの見せられたら気分も悪くなるわ」

 

「そんな時は……コレだな」

 

「あっ!いいわね!」

 

 

ぱちり――。

 

パチリ――。

 

静かな空間に木がぶつかる音がこだまする。

 

「心を静かに落ち着かせる……。戦いに勝つために必要なことだ」

将棋は遊ぶだけなら簡単な工作でできる。

文明が身近ならペンと紙。今なら木を削って駒を作ればいい。

 

「パパ…それいっつも言ってるけど。13手先でパパの積みよ」

 

「なっ……待った!」

 

「いいわよ~♪……あと1回だからね」

次は香車も落としてもらわないとダメかもしれん。

 

 

 

 

 

 

「ただいま。どうだった?」

 

「はぁ……あのガキ?家出中よ家出中!」

 

「どこに?」

 

「北の湖にある廃墟。お似合いよね」

 

「廃墟ねぇ……」

アスカもテレビだと廃墟の風呂に浸かってたからな?

 

「飯は?」

 

「このあたし手ずからレーション食べさせてやったわ」

 

「おぉ…!あーん♡って?」

 

「しないわよっ!文字通り手ずからよ。口にこう…無理やり突っ込んで……っ」

 

「はははっ……。まぁそのくらい強引でないと食べないか」

 

「手間が焼けるわ」

 

「ケンスケは何て?」

 

「しばらく放っておこうって……ま、出来ることもないし当然よね」

 

「まだしばらくアスカはケンスケん家待機継続だな」

 

「なんでっ!?」

 

「どうせ暇だろう?シンジが帰ってきても困るし……」

 

「うぐっ……はぁ居ればいいんでしょ居れば」

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おかえりー。あ、今日はイニシャル来てたわよ」

 

「へぇ…なんて?」

 

「あのガキに会いにって……レーション持って行かせたから」

 

「ふぅん。そろそろ様子をチラ見しに行こうかな」

 

「パパがァ?どうして?」

 

「友達だから」

 

「……ふぅん」

ジト目で不機嫌感こそ出すが怒ったりはしない。

アスカ、大人になったな。

 

 

 

 

 

「シンジーおっ……居た居た」

シンジは湖に向かって体育座りをしていた。

 

「ほーん。いい場所だな」

綾波と被らない。少し遅めの時間帯。

星が輝き始めるころ。

 

 

「また来る」

30分ほど彼の斜め後ろで同じ姿勢でいた。

 

 

まだ出来ることはないし。

でも家で待つのはなんかしっくりこないからな。

けどそれは俺のわがままで一人の時間も必要だろうし……。

どうしたもんかねぇ……。

 

 

 

 

 

何日かそんな日々が続く。

 

綾波は仕事をうまくやってるみたいだ。

そりゃそうだよな。あんだけ素直で真面目なら。

アスカはたまーにそんな綾波……というより、ヒカリに会いに行ったり一緒に風呂入ったり。

 

俺はいつもどーり適当だ。

たまにトウジやケンスケんとこに顔見せたりしながら、シンジんとこにも顔を出す。

 

 

 

「なぁシンジ……ちっと独り言に付き合ってくれや」

体育座りも面倒になり、空を見上げる。

 

「……」

彼は動かない。

聞いていないかもしれない。

 

「俺さ…シンジと似たことがあってさ」

 

「……」

 

「実はさ……知ってるかもしれんけど3号機に乗ってたの俺なんだよね」

 

「……!」

身体が動く。

少し頭が上がったか?

 

「安心しろ。非難しに来たわけじゃない。むしろ謝りに来たんだ」

 

「はぁ…はぁ……」

 

「俺はさ……零号機が修理中なの聞いてたんだよ」

聞こえているんだろうか。

 

「で、アスカは現場にいたわけだから何かあったら…シンジ。お前に迷惑をかけることは理解していた」

 

「……」

 

「けどそれは覚悟のうえで俺は乗ったんだよ」

お前にとっちゃいい迷惑だったかもしれんがな…と付け足す。

 

「……」

 

「だからさ、あんまりそのことで自分を責めないでやってほしい。むしろ俺を怒ってもいいぞ」

 

「……そんなっ……」

お、さすがショック療法。効いたか?

 

「……僕はっ……キョウキチを殺しかけたんだ!」

 

「ぉ怒られるのはっ!……僕のほうだっ!」

 

「いやこちらこそすまなかった。嫌な役を押し付けた」

やっと喋ってくれたのは嬉しいけど、謝ってほしいわけじゃないからなぁ。

むしろ利用したのはこっちだから心苦しくなるわ。

 

「……っ!」

 

「……で、こっからが本題なんだが、俺はアスカが危険な目に合うのが嫌で乗ったわけ」

ウソじゃないよ。

 

「……」

 

「それなのにさ……もうめっちゃめちゃ心配かけちゃって……。俺の意識が戻った時はもうホント壊れかけって感じでさ」

あの時は本当にヤバかった。ほぼ一日中抱っこだったもんな。

何だったらサードがなかったらずっとああだったかもしれん。

 

「出来ること全部やってさ、ずっと一緒にいてようやく作り直せたって感じなのよ」

 

「もし時間を巻き戻せたとしてまたやるかって言われると俺の場合は少し考えるが……お前はどうだ?」

 

「……」

 

「聞いたぞ?……綾波の為にニアサー起こしたって」

やったことが裏目に出たという点では一緒だ。

この間のニアフォースが議題だったら絶対にやらないっていうだろうがな。

 

「……僕は……」

 

「どうせ無理だからと綾波を諦めれるか?」

 

「僕には……っ」

 

「ちなみに俺は今の生活を楽しんでるから本音でいいぜ?アスカとドキドキハラハラ世界を救うレジスタンスごっこだ」

 

「……」

 

「……」

シンジの返事を待つ。

 

「…………」

 

「…………」

 

「僕には……分からないよ……」

 

「ま、そりゃそうか……実際その場になってみるまで分からんかもしれんな。だが、好きになった人の為に我が身を顧みないのってカッコいいと思うぜ」

カヲル君もそうだったし。

 

「………ぅん」

 

「ま、自画自賛にもなるんだけどな」

 

「……」

 

「いやー勝手に謝ってすっきりした。今度はシンジのプリン食べたこと謝りに来るから」

家に行ったときアスカにお出しされてね……。

 

 

翌日シンジが復活した。

ほんと綾波の一途さには感服するよな。

 

 

 




「ケンスケさーん♡おっじゃましまーす」

「……いらっしゃい。ケンスケは留守よ」

「ぃぴゃあぁあぁぁぁあ!?女ァ!?家違い?いやそんなはずは……」

「ミズホ…相変わらずねェ?ちっとは落ち着いたら?」

「アスカかぁ……もう脅かさないでよ!」

「あんたが勝手に驚いたんでしょーが」

「ごめんごめん。で、なんでいるの?」
唐突な殺意。

それに対してアスカは顎をしゃくる。
その先にはシンジ。

「初めまして!ケンスケさんのお友達ですか?」

「無駄よ。ソイツ今自分の殻に閉じこもってるもの」

「ケンスケさんは本当に……っ!」
自分もケンスケのやさしさに救われたことを思い出してほおを緩ませる。

「はいはい、ごちそうさま。で、何しに来たわけェ?」

「今日は早上がりだったから…その、未来の妻として……♡」

「未来のねぇ……。じゃあもうゲットしたってこと?」

「それは……その……ガードが固くって……」

「あんたバカァ!?もうずっとそれじゃないのっ!……てことはもしかして?」

「うん。まだ膠着状態なの……」
三すくみ*1でケンスケの取り合いが続いている。

「あんたらねェ……その現状維持に一体どれだけの価値があるのよ?」

「分かってるけど……」

「攻めてだめならもっと攻めるか、あえて引く!……ライバルのいる状態で守りに入ってどうするのよ!?」


*1
同年代のアサマ、年下のミズホ、中学生のカモメ

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