俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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2-14 彼の選択を

ついにこの村での最後に日が来た。

 

「あれがヴンダーか!でっかいなぁ…」

見晴らしのいい高台からケンスケがビデオカメラを空へと向ける。

 

その先で浮くヴンダーの直下ではクレーディトの船が物資の交換を行っていた。

 

「離艦希望者が下船している」

 

「あんな大量にこの村に野郎どもが下りてきて大丈夫か?」

 

「働き手はいくらあっても足りないからね。それに船に乗ってた人たちだろ?」

船に乗っても略奪のできない世界だ。戦闘にうま味がないどころか飯もほぼペースト……。

 

「正義漢とアホと命知らずと物好きが役に立つといいな」

 

「船で働けたんだきっと大丈夫さ。それにこの村に留まる人は多くないんじゃないかな」

ヴィレとして戦地に行かなくても、クレーディトでの仕事がある。

 

「そうだな」

 

「……決戦なんだな」

 

「そうだな」

 

 

「あっ…もう勝手に撮らないでよ!」

声に反応して振り向くとカメラを向けられたアスカが後ろを向いて前髪を直していた。

 

ちょっとエッチだなって思った。

嘘だ。多分昔の自分なら思っただろうなって思っただけだ。

 

「頼むよ今日だけは記録を残しておきたい」

いっつも撮ってたもんな。

特に今日は歴史の転換点だ。ケンスケが撮れる最後の俺たちかもしれないしな。

 

「最初からそう断ればいいのよ!……さぁこのアスカ様の雄姿をとくと刻み付けなさい」

キリっとした顔でカメラの前で仁王立ちを決める。

髪が風でなびいてカッコいいぜ。

 

俺も端っこに映っとくか。

「ピースピース」

 

最後のバカをやってるとき犬が吠えて、アスカ振り返った先には――。

シンジィ!待っとったで。

 

「で、何しに来たの?」

急にトーンが落ちて、呆れ6割、確認2割、感心2割って感じの声だ。

 

シンジはちょっと目頭が赤いから綾波が目の前でLCLになったんだろう。

だがいい目をしている。

このままいけばアスカを任せてもよさそう。

 

「碇ここに残ってもいいんだぞ?」

ケンスケはいい事言う。

それで揺らぐ覚悟なら船に乗られたら困るしアスカもやれない。

 

「ありがとうケンスケ。トウジたちにもありがとうって伝えておいて」

そこまで言うと、彼女に目を向ける。

 

「アスカ、僕も行くよ」

 

安っ心した~~~!

諦めたらどうしようかと思った。さすが主人公だぜ。

 

「そう…」

アスカは平坦な声で忍ばせてあった麻酔銃を抜き取り――。

 

「じゃあこれ規則だから」

シンジに向けて放った。

 

「おっと」

ぶっ倒れるシンジをすかさず抱える。

 

「パパそいつに甘すぎよ!」

 

「アスカはやらないしケンスケはカメラ持ってるだろ?……よっと」

そのまま後部座席にぶち込む。

 

 

 

車に揺られて船の下へと降りていくと見慣れた顔と会った。

 

「キョウキチ!お前乗るんか!?」

 

「ああ。じゃあな」

 

この先は死地だ。

昨日までの同僚が船を降りてもでも不思議じゃない。彼らが普通だ。

残るのは強い思いに駆られたバカだけだ。

 

 

「ケンスケありがとな!……ちゃんと選んで幸せにしてやれよ?」

 

「なっ!……そういうお前こそだぞ」

 

最後はけん制しあうように固い握手を交わした。

アスカは任せられなくなったが、彼には自分の人生を歩んでほしい。

 

「ケンスケありがとう」

 

「ああ。よろしく頼むよ惣流」

 

……それは彼女の誇りだが、願わくば彼女がそんなものを頼まれなくていい世界を――。

 

 

 

「じゃ、あたしはこのバカ引き渡してくるわ」

 

「かしこまりました!惣流戦時特務少佐!」

船の中なので上下アピールもたまにはしてみる。

 

「よろしい!では部屋で待機してなさい平丘戦時特務大尉」

 

アスカのコネでエヴァに乗って使徒の宿主になって、アスカのコネで特別昇級してます。

……はい。ぶっちゃけほぼヒモです。

やってる仕事は一等兵かおこぼれで上等兵。なんて情けないパパなんだ!

 

プシュ――。

そして娘の部屋に帰宅。

 

「パパさんお帰りー」

 

「ただいまマリ波さん……」

 

「あれ、姫は一緒じゃないの?」

 

「上官殿は監視対象者BM-03の引き渡し業務に就かれております!」

 

「ワンコ君、覚悟決めたんだね」

 

「ああ、中々いい目だった。後でアスカと見てくるといい」

 

「ところでぇパパさんさぁ…そろそろ覚悟決めてあげたら?」

 

「覚悟?」

 

「まーたそうやってとぼけて、姫だよひーめ」

 

「確かに…この戦いが終わったら本格的に親離れも進めていかないとな」

 

「それ、本気で言ってるの?姫が待ってるの気がついてるよね?」

 

「この異常事態だからこそ続いてる関係だろう?平和になればもっといい相手に出会えるさ」

 

「ずっとそのままの関係で枯れていくだけと見た」

 

鋭い。前世はそうだった。

だが使徒ありきだったからなぁ。全部俺とバルディが悪い。

 

「……前だけ向いて進み続けてきたアスカだ。もっとふさわしい相手がいる」

 

「ぼろぼろに傷ついた姫にまだ頑張れと?相手を探して回れと?」

 

「だからといって安牌に妥協するのは彼女の為になるのか?」

 

「姫に必要なのは穏やかな安らぎじゃないかニャ?」

 

「だとしても……っ!」

 

「だーかーらっ!どうして君はそうなのかなぁ?」

近い。顔が近いんだよ!

 

「姫が大事なんでしょ?じゃあ前に踏み出して『俺が世界で一番ふさわしい男だ』って言えるようになりなよ。そこでどうして他人に任せようとしちゃうかな~」

 

「俺は弱ってるところに居ただけの人間で……歪な関係だ」

 

「幸せにする自信ありません。責任取りたくありませんって聞こえるけどぉ?」

 

「今の好意だってきっと陽性転移*1と吊り橋効果*2だ。ちゃんと回復すれば……」

 

「姫の気持ちにイチャモンつけるの?」

 

「視野が狭くなってほかの選択肢が見えてないだけかもしれない」

 

「他の選択肢?この赤い大地で?エヴァのパイロットが?」

 

「……。その…通りだ」

ネオンジェネシスの後この世界はどうなるだろう。

もしその後も続き続けるなら、もし彼女がほかの選択肢も選べない状態ならば……。

 

「姫には君しかいないんだぞ?」

 

その時は俺が……。

いやそうなったら覚悟を決めないとダメか。歪だろうと彼女を幸せにしよう。

俺が……出来なかったことだ。

 

「それは性急すぎるけど……ありがとう姉さん」

 

「ねね姉さんっ!?」

 

「アドバイス貰ったし……年上、だよね?」

俺の肉体的には14才+14年才だ。

精神年齢?前世70年+今世14年でそろそろ米寿です。まだまだ頑張ります。

 

「ちょーっとだけね」

指でちょっとを作る。もし本当に年上だったらどうしよう。

 

「マキさん……。いやマリさん!」

たまには真面目に名前を呼んでみる。

隔離室が開く音が聞こえたからではない。

 

「なんだい?…キョウキチ君」

彼女もその音を聞いたからではなく、純粋な気持ちで俺と見合った。

 

「いつもありがとう」

ついでに肩に手も置いてみる。

 

「こっちこそありがとう」

 

「ただいまーって何やってるのよアンタたちィ!?」

 

親離れの荒治療。

 

「おかえりー姫。道中ご苦労様」

 

「っ……」

どっきり大成功でご満悦のマリさんに突き飛ばされる。

そのまま犯人はアスカに抱き着いて頬ずりをし始めた。

 

俺はいつもの椅子の上に腹で乗り放心することにした。

 

 

 

*1
患者が医者、カウンセラーなどに好意を抱くこと

*2
不安や恐怖でのドキドキを恋のドキドキと勘違いすること




マリ→キョウキチ
・良くて悪友
・イレギュラーだから計画上ちょっと消えてほしい
・でもアスカのメンタルに必要そう

キョウキチ→マリ
・悪友
・接触こそないが、距離近くておっぱい大きいから性欲があったら反応してたたかも
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