1-1 見知らぬはずの天井
平丘キョウキチ、28才童貞。
社会人になってから忙しくて見れてなかったシンエヴァを金曜ロードショーで見た。
昔からなんとなくアスカのほうが好きだった気がした。
その理由が大人になって今やっとわかった。
俺は彼女のパパになりたかったんだ。
それに気が付いた俺はアニメから劇場版まで1日以上かけてぶっ通しで見て倒れた。
「知らない……いや知ってる天井か」
床の上で眠っていたみたいだ。
だけど、うん。体調は問題なし。セーフ。
社会人は体調管理も業務の一つだ。
「父さん、母さん。おはよう…」
いつものルーチンで仏壇に手を合わせて……?
俺の両親……死んでないぞ?いや、でも死んでるって。
たしか――。
「セカンドインパクトで……っ!?」
ぇええええええええええ!うわぁあああああああああ!
大人なので声は抑えた。
「おっ……お、おっ…思い出せ……何があった?」
セカンドインパクト当時13才。
町の建物の多くが倒壊し学校にいた俺は生存。
世界人口の半分が死ぬ。ついでに海が赤くなる。
祖父母の家に行くことになる。
「このとき……保険会社大変だっただろうな……」
自分ごとだが他人ごとなので、そんなバカみたいな感想が出る。
そして……何とか下りた保険で大学に進学、人手不足なのが幸いして入社。
オーケーオーケー大体わかった。
この世界雑に人が死ぬな。
で、俺は生き残った。50%を制して。
じゃあもう出来ることを……やりたいことをやらないと損だよなぁ!?
俺はアスカのパパになる。
彼女が幸せをつかむための土台として一生を捧げてやる!
そのためにまずやることは……。
休日の午前中ということもあってデパートはごった返していた。
まずは本屋に向かう。
情報を制さなければ。
「えーと……料理の本と、軍事関係と……筋トレの本も買っとくか……あとこれも……」
すべて初心者本。
「あとノートも買っとくか」
裏死海文書コピー(仮)だ。
とりあえず覚えてる設定とシナリオを書き出しとかないと……人は忘れるからな。
あとは……勇気を出してあれも買っとかないとな。
「すみません……」
「…いらっしゃいませ、プレゼントでしょうか?」
女性の店員さんは笑顔を崩さない。珍しくもないんだろう。
「ええ。娘にねだられまして……。初心者向けのはどれですか?」
「それでしたらこちらが――」
いや~買った買った。
散財。いや投資か。
さて、昼飯は早速本でも見ながら――。
『日本政府から特別非常事態宣言が発令されました。市民の皆様には……』
使徒だな。
周囲を見渡す。
パニックにこそなっていないが、困惑と不安……謎の自信も見られる。
記憶をたどる。
今まで特別非常事態宣言が発令されたことはない。
街をあげての避難訓練はあったがそれだけだ。
つまりこいつは……最初に襲来した使徒。
サキエル……だっけ?暴走した初号機にボコられて自爆したやつ。
『当デパートの地下にシェルターがございます。ご来店の皆様には誘導員の指示に従って避難をお願いします』
非常事態宣言が解除されたのはすっかり暗くなってからのことだった。
家に戻るや否や速攻でノートを埋めていく。
伏字とイニシャルを使って自分だけに分かるように。
何せ忘れてもまずいが知られてもまずい。知ってることを知られてもまずい。
あとはジムの会員登録なんかもしようかな……。
でもここ……第2新東京(長野)なんだよな。拠点がここのままでいいのか?
「と言ってもなぁ……」
第三新東京って普通に行けるんだっけ?
ネルフの町、第三新東京市。
いや行けるだろ普通。表向きは遷都計画で建設中の街だ。未来の俺らの首都。
それにウチの精鋭たちも営業に行ってるし……。精鋭たちが……。
いっそ会社辞めて向こうで就職しようかな。
……考えてたら、腹減ってきたな。
料理本で学ぶのって……動画って偉大だったんだな…。
でも俺が欲しいのは見なくても作れるだ。これはそのための基礎だ……。
頑張れ……俺……。
翌日は普通に出勤。
月曜だしサラリーマンだからね。
転生してもそこは変わんないね。
「おはようございます。皆さんに会社から重大発表があります」
朝礼。
片手で隠しながら手を握って握力トレーニング。
「社外秘にしてほしいのですが、実は……」
左右交代。
「第三新東京支店に勤めてた社員から転勤届が大量に出ました。非常に重要な支店ですので異動希望者を募集しています。誰かいませんか?」
手を挙げた。
え?あの平丘が――?
どうして――?
急に出世願望でも出たのか――?
転勤届が出てる意味わかってんのか――?
そんな目が突き刺さるが、俺は決めたんだ。
「平丘キョウキチ。第三新東京支店転勤希望です!」
雑にビルが倒れるわ。ビームが飛んでくるわ。シェルターのすぐ横まで敵が侵入するわの超危険地帯だが……。
俺は行く。