落ちた先は液体がたまっていた。
LCLか?
「エヴァ第13号機……間に合った…?」
十字型の赤い台座の上にエヴァ第13号機は横たわっていた。
「神の機体をうたったところでしょせんは人の造り出した第13番目の汎用人型決戦兵器ね」
足首までの液体に浸かりながら前へと進む。
「この強制停止信号プラグをコアに打ち込めば……破壊はできずとも動くことはなくなる」
台座に上がり第13号機を見下す。
「これでェ…おしまいよォ!」
振りかぶり、まっすぐなエントリープラグから十字型に変形した停止プラグを叩き込む――。
足が跳ね上がるほどの一撃は防がれた。
「ATフィールド?」
アスカが動揺する。
「第13号機はATフィールドを持たないんじゃないのォ!?」
いくら力を籠めても目の前の壁は壊せない。
目標はすぐ手の届くところにある。だが届かない。
「これって……もしかして新2のATフィールド?」
俺にはわからんがアスカにはATフィールドの違いが分かるらしい。
「しっかりしなさいよ新2!13号機に怯えててどうすんのよ!」
いくら押しても2号機はいうことを聞かない。
そんな時マリの悲鳴とヴンダーのピンチが通信で入ってきた。
「……仕上げのインパクトにはどのみちこいつが必要になる」
「だから確実に今始末しておかなきゃいけないのに」
「獲物が目の前にいてままならないなんて」
アスカが歯をかみしめる。
もう、いいだろう。
「アスカ……俺を使おう」
「パパ…」
その声にはっとしたアスカが振り返る。
「そのために来たんだ。すまんが一緒に背負ってくれ」
そう。そのためにここまで来たんだ。
「うん……新2もごめん!」
アスカは今まで歩んできた相棒に短く頭を下げる。
「また無理をさせるわ」
頭を上げたときにはもう覚悟を完了したようだった。
「全リミッターを解除」
「裏コード999」
その言葉に反応して景色が一度暗転してから操縦席が前に進む。
「ふぅ……」
俺は眼帯を外し目を見開く。
既にクッソ痛い。
「ぐぐぐぐ……」
左目を割って封印柱が排出されていく。
尋常じゃない。目から棒が出るだけで痛いのにそっから使徒が暴れまわって浸食しようとしてくる。
今出してやるって言ってんだろ!座ってろバルディっ!!
「うぉぉおおらっ!!」
棒を引き抜いて、そのまま乱暴に投げ捨てる。
ギュイギュイ音を立てながら操縦席がドンドン前に進み続ける。
周囲の赤に青い光が混ざり始めて不愉快だ。
「ぎぎっ……アスカっ!」
「エンジェルブラッド…全量注入」
あぁ……エヴァとのシンクロってこんな感じなのか。
2号機が見たものが見える。視界が脳みそに流れ込んでくる。
「すまない……きつくないか?」
操縦席から身体を倒してアスカの背中に抱き着く。
「あたしは……耐えれるっ」
「ごめん」
邪魔なものが多すぎる。
「2号機!?何やって……いやぁあああ!!」
俺は動かせる身体をよじり左腕を引き抜いた。ぶちぶちと無駄なものがちぎれ……その先は付いてない。作るか。
俺は両手で身体を押さえつけてるおもちゃを外そうともがくがそもそも下半身ごとない。
まあいい。邪魔だ。エネルギーを放出して弾き飛ばす。
アスカの悲鳴が響いた。
俺にとっては拘束具だがアスカにとってはまだ身体の一部だったか。
「すまない……が、足りない!」
どんどんと身体が膨れ上がるのを感じる。
新2のATフィールドを破るにはまだだ。
「うぉおおおおおおおおっ!」
「…いやぁああああああっ!」
浸食し支配する。一つになる。
新2号機を通じてそれはアスカにも起こり、一つになる。
「ATフィールド全開っ!」
俺の腕が第13号機のATフィールドにとりつく。
「新2のATフィールドを俺のATフィールドで中和する!」
硬い膜に爪を立て、引き寄せて握りこむそして一気に――。
よし破れたっ!
「アスカァアアア!」
「うっっらぁあああっ!」
アスカが膨大なエネルギーで巨大化した停止プラグを振りかぶって――。
第13号機の目から光線が放たれて、二人の腕が四本全部はじけ飛んだ。
悶絶どころはない。腕が焼ける。無くなる。
死ぬほど痛い。力が抜ける。俺が……萎んでいく。
腕が痛い。力が抜けて痛い。再生に回すエネルギーが足りず痛みが増す。
無限ループだ。
思考に囚われるか思考をやめるか……大きすぎる苦痛に対する選択はそれしか知らない。
ぐっ…!首がしめ…られてる?
「シングルエントリーじゃ…なかったの」
さすがアスカだ。
俺が痛みでイカレてる間も状況判断できてる。
「うぐっ!?」
胸に何かが突き刺さる。
まっすぐで探るような不快な感覚だが、同時に熱をすべて持っていかれるようだ。
おかげで頭は……回りそうだ。
瓦礫が砕けるような音がして周囲が青く染まる。
だがここまではシナリオ通りだ。
少女の笑い声があちこちから聞こえ始める。
そしてこっからが俺の勝負。
一気にクールダウンしてきたのでアスカを見る。
キョロキョロと不自然なほどに動揺している。
前だ。
前を見ると裸の少女が操縦席に乗っていた。
「シキナミ*1タイプ。あたしのオリジナルか」
少女はアスカだった。
今回のもう一人のターゲットだ。
アスカは操縦席に座るアスカの真ん前に来ると諭すように語りかける。
「最後のエヴァは神と同じ姿。あなたも愛とともに私を受け入れるだけ」
「ふんっ…愛?あんたそんな面でよく愛なんて語れるわね」
「きなさい…って誰?」
アスカが顔を上げたとき後ろに座る俺と目が合った。
「あたしのパパ」
「は…?」
「いいかアスカ?」
「……しょうがないわ。こんなの見せられちゃ」
「おいでアスカ……話をしよう」
操縦席に立ち上がり両手を広げる。
「誰があなたみたいの……」
「いーや。俺はアスカを受け入れるしアスカの仕事は俺たちを連れてくことだ」
すかさずプラグスーツの首元を破壊して見せる。
バリンッと砕けた下にDSSチョーカーと使徒化して青くなった身体がさらされた。
「恐れることはない」
一歩進む。
「恥ずかしがることはない」
また一歩。
「君を認め支え愛し」
無茶させてしまった惣流アスカの頭を軽く撫でる。
「…そして送り出すのがパパの役割だ」
「私にパパはいない」
「ほら。いらないじゃないんだろう?」
「だとしてもあなたみたいなのはいらない」
「試してみないとわからないだろ?」
広げた手を前に差し出す。
「俺たちと行こう!それとも1/2で賭けるかい?」
ついでに少し顎を上げて首を見せる。
3号機から俺に寄生先を変えた使徒だ。俺から2号機を通してアスカに寄生もできる。
俺とアスカどっちがコアを持ってるか分からないだろう。
少し考えたアスカも手を前に出し――。
「望みどおりにしてあげるわ!おバカさん」
威嚇するような笑みで俺の手首をつかんで引っ張った。
「アスカっ!」
咄嗟に娘の手をつかむ。
オリジナルのアスカは少し驚いた後、勝ち誇った笑みを浮かべる。
そして真っ赤になり背中から光の羽を生やして俺たちを深い深いところへと引きずり込んだ。
……俺はやるだけやった。
世界は任せたぞシンジ――。
ちょっとした想像
ヴンダーの号令ってミサトさんマイクなしでやってますよね。
相互のやり取りは艦内電話っぽいけど指令はマイクに向かってやってない。
……戦闘中は操艦室の音声は艦内に放送されているのだろうか?いちいちマイク使うような余裕は見えないし。
あと、エヴァ内の通信もどうなってるんだろう。
マリの怪しげなつぶやきは多分拾ってないだろうけど……結構やり取りは見られれる。
使徒化したあとも2号機のコックピットってそのままだよね。通信……生きてたのかな?
もしそうならキョウキチが『命捨てて娘と人類のために心中したはずが、次の瞬間他の女口説いてる』のが艦内に聞こえわたってることになるね!