「もしもしアスカ?」
あの日から毎晩定時に電話をかけている。
「……もしもし」
数コール目で彼女は出る。
一声はいつも少しげんなりだ。
「今日のイマイチだったこと、良かったこと聞かせておくれ」
「だから馴れ合いは……」
そう言うが会話を中断されたことはまだない。
「じゃあまずイマイチだったことから教えてよ」
「……。シンクロ率が伸びがイマイチ」
「うーん……安定してるってこと?」
「七光りが伸びてきててムカつく」
「確かにそれはちょっと焦るかもしれないね」
「あとこの壁の薄い部屋に……ミサトのだらしなさに……うざいクラスメイトに……」
「ふふっ……」
「何笑ってんのよ」
「いや悪い。普通の留学生みたいな悩みもあってパパ安心した」
「あたしはそういう煩わしいのから解放されてエヴァにだけ乗ってたいのに……」
「そういう煩わしいのを守るためにエヴァに乗ってるんじゃないのかい?」
「……薄い壁は立て直したほうがいいし、ミサトはしっかりしたほうがいいし、クラスメイトはちょっかいかけて来ないほうがいい」
「それは……全否定できないなぁ」
「でしょ!」
「でもアスカにはその煩わしさを堪能する権利があります!……という訳で明日ショッピングでもどう?」
「……パパを名乗る不審者に買い物に誘われた」
「うーん……イマイチというか完全に事案だな。……じゃあ次は良かったことを聞いていいかい?」
「さっきたまたまミサトに美味しい寿司屋の話を聞いた」
「ぬぬぬ……。可愛い娘のためだ!パパ頑張っちゃうぞ!」
平丘キョウキチ28才。14才年下の少女に貢いでおります。
俺、それでいいんか?
アスカが美味しそうに食べるならいいに決まってる。
「美味しいっ」
買い物からの寿司屋で財布がピンチです。
この時の為にストイックに溜めてたぶんが消えてゆく……。
「もう一皿いくかい?」
ああ…寿司が美味い。
質のいい人造肉なのか?……養殖魚はさすがに流通してないよな?
「ええ」
「……2人分マグロをお願いします」
「はいよっ!」
板前さんの目は痛くない。
前世ならパパ活を疑われるだろうが、この世界はセカンドインパクトで人が死に過ぎた。
片親は珍しくないし、親戚が、近所の親しかった人が、はたまた世話になった上司の子供を預かった部下が居る。
「………あ、そうだ。今週末、ちょっと社会科見学があって……どう?」
「ん?……お誘い?もちろん行くよ!どこなんだい?」
お茶を置く。
気持ちも少し置いて返事をしたつもりだが、興奮が出てしまっている。
彼女側からのお誘いは初めてだ。
「海洋資源保存研究施設」
海洋……ってあれか?
劇場版でシンジ君のお弁当がふるまわれる水族館!
「海洋しげん?……どんな施設か分かる?」
「さぁ……なんでも海を戻す研究をしてるとか、魚を飼ってるとか」
「ハイお待ち!」
「魚かぁ……」
パクリと一口。
美味い。けど、いつか本物も食べさせてあげたい。
「食べれるならまだしもっ……。はぁ、暇を持て余しそう……」
「色とりどり大小の魚たちが青い水槽を泳ぐ……セカンドの前は水族館って施設があったんだ」
「ふーん」
「恋人・親子・家族にとって定番のテーマパークだったんだよ。あまり縁はなかったけどね」
「ふーん……?…おかわり」
「いえ、俺は結構です。……きっと行ったら楽しいよ」
板前さんの視線に返事をしつつ、アスカに明るく声をかける。
「……。ごちそうさま」
満足したらしい彼女が手を合わせる。
「ご馳走様でした」
預かってもらっていた両手いっぱいの荷物を受け取り店を後にした。
「社会科見学?加持がぁ?」
「ええ。みんなのことも誘うといいって」
「うぁいつに関わると、ロクなことないわよ」
「じゃああたしパース」
「駄目よ。和を以て貴しとなーす。……彼もつれてきなさい」
「……それも命令…?」