俺はアスカのパパになりたい!   作:アレデルトロン

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1-7 ヤマアラシのジレンマ

「どうぞ、お蕎麦です。よろしくお願いします」

 

「ありがとうございます。……どうぞ上がっていってください」

 

「お邪魔します」

シンジ君に招かれたのでお宅にイン。

 

「パパっ!いらっしゃい」

 

「平丘さんも食べてくでしょー?」

 

バタバタしてて現在夕方。

シンジ君とアスカはこちらから攻めないと仲良くなれないので――。

 

「……ご馳走になります」

 

 

ネルフ職員になり、ミサトさんと同じマンションに越してくることになった。

この部屋数が多くてバカお高いマンションに……だ。階が低くて部屋も少ないがそれでも痛い。

 

 

「で、あたしの荷物はいつ運び出すの?」

 

「ずっ?」

そばを咥えたまま固まったのは俺だ。

 

「さすがにそれは許可できないわよ!……大人としてっ!」

ビールを机に叩きつけながらミサトさんの目くばせ!

だがブーメランでしかないぞ!

 

「このバカシンジと暮らしてるほうがパパといるよりも安全って言いたいワケ?」

 

「えっ?……いや、僕はっ…その…っ……」

 

「作戦成功率を高めるための共同生活でしょ?任務の一環だよ」

実績があるしシンジ君といたほうが安全だと思う。

 

「……パパ、エヴァに乗る以外の趣味を持てって言ったわよね」

 

「…趣味は仕事に影響の出ない範囲でやるのがプロじゃないかな」

 

「……仕方ない。今日は泊まりに行くから」

 

「……構わないでしょうか?」

これ以上の拒絶は俺からは無理だ。

 

「ん~いいわよ~。特殊保護観察官*1代理がそう判断したなら」

『仕事上必要だと判断したなら許可を出すし、当然仕事だから手なんか出すなよ』とのお言葉だ。

 

「許可が出たから部屋、掃除しとくね」

 

「食べ終わったら一緒に行くわよ?」

 

「アスカ……今日茶碗洗い当番の日だよ?」

 

「そのくらいしてくわよ!」

 

 

 

その夜。

『ベッドじゃないと寝れない!』と駄々をこねるアスカへの譲歩として手をつないで寝ることになった。

……。

ドッキドキなのを誤魔化して必死に寝たフリしたよ。

 

 

 

 

 

ピンポーン――。

 

「はいっ…」

 

「やっほーシンジ君。買い物行かない?」

ちょこちょこ好感度を上げてきたので、作戦を実行することにした。

 

「え?ぼ、僕とですか?……アスカとじゃなくて?」

 

「アスカもだけど」

放置は不味すぎる。

『なんであんたがそこにいんのよ』案件だ。……いや別のアスカだけど。

 

「バカシンジも?せっかくの休日なのに?」

 

「僕は別に…行かなくても」

 

「アスカには俺以外とのイベントがあったほうがいいと判断しました!手伝ってくれるかい?」

 

「……そんなの必要ないのに」

 

 

 

 

 

今日も俺はネルフ本部に来ている。

もう3日もターゲットを探してふらふらとひたすらに歩き続けていた。

平日は暇なのだ。多少のレポートとアスカの電話応答以外にやることがない。

 

「おはようございます」

ターゲットとようやく出会えた!

 

「……」

向かい側から来た碇ゲンドウはこちらをチラ見してからそのまま歩を進める。

 

「おはよう」

冬月副指令はフォロー的に挨拶を返してくれた。

 

「シンジ君パパですよね?あのあとちゃんとシンジ君を褒めてあげてますか?」

 

「!?………誰だ?」

パパ呼びされたの初めてってくらい久しぶりなんじゃないのぉ?

 

「確か……葛城一佐が採用した第2の少女の特殊保護観察官代理だったはずだ」

 

「…そうか」

 

「で、褒めてあげてますか?」

進路を変えて後ろから声をかける。

せっかくのはぐれメ〇タル逃がすわけねぇよ。

 

「……不要だ」

 

「それはシンジ君パパにとってはでしょ?シンジ君は褒めてほしくてここまで来たんですよ?」

 

「……」

 

「……。もしかしてそっちの方がいいと思ってます?」

 

「……」

 

「例えばそう……それが自分の断罪だと思ってるとか」

 

「……冬月」

反応したな?そりゃそうか。

 

「すまないが碇は忙しいんだ」

副指令による通せんぼ。

 

「通してくれたらこれ差し上げます」

俺は切り札を取り出す。

 

「こ、これはっ!?どこで手に入れた!」

冬月先生も護身用で銃持ってたんですね?

突きつけんの早すぎだよ。

 

「シンジ君パパー。見といたほうがいいですよ?」

 

「……冬月?……っ!?」

振り返ったシンジ君パパの視線は俺の手の中に注がれる。

 

文字通り切り札。

女装シンジ君がはにかんでる写真だ。

 

「……ユイ?」

 

「おっ……やっぱり似てますか?」

記憶を頼りに頑張った。

このためにメイクの練習をこっちに来てから始めたんだ。

 

「はいお近づきの印」

文字通り近づいてきたシンジ君パパに差し出す。

通してくれなかったので冬月先生には無しです。

 

「……これはレイ?いや……ユイ……?」

 

「シンジ君ですよ」

 

「「なっ!?」」

 

「お父さんが喜ぶって言ったら協力してくれましたよ」

 

「……シンジが?」

 

「ええ。どうです?息子さんの中にちゃんと奥さんは生きているでしょう?」

 

「……だがユイではない」

 

「じゃあ奥さんの話にしましょう。遺言って覚えてます?」

 

「……」

 

「じゃ当てましょうか?……シンジをよろしく?……シンジをお願い?……あなたシンジを?」

確かそんな感じだったはず。

完全一致である必要はない。脳内補完で勝手にやってくれる。

 

「……っ」

 

「良い線行ってそうですね。……そして頼まれたからこそシンジ君を遠ざけた」

 

「……そうだ」

 

「遠ざけた理由で考えられるのは………3つ。①自分に自信がなかった。②本気で愛してまた失うのが怖くなった。③自分から愛しに行く勇気がなかった。…④自分にそんな資格ないと思った。どれか当てはまってます?」

4つになっちゃたけど勢いで押し通す。

 

「……。ああ」

 

「その結果シンジ君は貴方から褒められたくてエヴァに乗るし、褒められ慣れてないから自信が足りない。自分も他人も愛せなくなっている」

 

「そうか」

 

「過去を変える必要はありませんが今と未来は変えられますよ。奥さんの為に一歩進んでみませんか?」

 

「……だが…」

 

「では、きっかけをあげます」

 

そういって懐から取り出したのは……。

 

「それは……」

 

最初に撮った、真っ赤な顔を隠す女装シンジ君。

ポーズは治ったがまだ顔の赤い女装シンジ君。

照れながらも何とか笑う女装シンジ君。

別衣装で笑う女装シンジ君。

計4枚の写真。

 

「これをシンジ君に返しておきます。お話しするたびに1枚ずつ差し上げます」

 

「……それはユイではない」

 

「お好みではない?じゃあもう少し過激な衣装で撮り直しますね」

 

「……待て」

当然の反応だ。

奥さんそっくりの息子の過激コスプレ写真が出回るのは避けたいだろう。

 

「……。大丈夫です。シンジ君は自信なさげですがその分優しい。硬い胸で泣くくらいなら許してくれると思いますよ?」

 

「必要ない」

即答。

お前はユイを愛していたのか?それともユイのおっぱいを愛していたのか?

 

「じゃあこちらだけお渡ししておきますね。会話に困ったら使ってください」

 

渡したのは一見トランプ。

だが表には質問内容が書いてあって会話のネタになる。

あとはシンジ君が気をまわして上手いことやるだろう。

 

「……」

 

「他に質問はありますか?」

 

「待ちたまえ。どうしてそこまで碇の事を知っている」

 

「……似てるから?でしょうか。あとはシンジ君と周りと事実を観ての推測です」

 

「ユイ君の遺言もか?」

 

「母親の願いはそう変わらないでしょう?」

ちゃんとしてる……。いや、立派な母親なら。

 

「……そういうものか」

 

「ええ。では困ったことがあったら電話してください」

新調した名刺を手渡した。

 

 

 

*1
保護観察官:非行少年や犯罪者を社会復帰させるための国家公務員

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