シャーレ
その日シャーレ内では二人の人物が会話していた。
片方はシャーレの先生。
もう片方はヴァルキューレの尾刃カンナである。
「……以上が、現在までに確認されている被害です。」
“……分かった。”
“教えてくれてありがとう。”
「いえ…では私はこれで。」
カンナは部屋から退室する。
“………また被害者が…。”
先生はカンナから受け取った資料を見ながら言う。
ここ一ヶ月、一部の生徒が意識不明で発見されるという事件が多発している。
ヴァルキューレによる捜査の結果、被害者達には共通点があった。
“
あくまで、それは趣味に過ぎないことではある。
だが、重要な共通点とした理由が一つ。
『キヴォトスのどこかである男に賭博で負けると、
魂を取られてしまう。』
キヴォトスでは、およそ一ヶ月前ほどからそのような噂が流れていたからだ。
“無関係…じゃなさそうだよね。”
“せめてもう少し手がかりがあれば……。”
その時、シャーレに電話がかかってきた。
電話番号を確認すると、ミレニアムのセミナーからのようだ。
“はい、こちらシャーレの先生です。”
『先生!良かった、繋がって……!』
“ノア?そんなに焦ってどうしたの?”
『そ、それが…コユキちゃんが!!』
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ミレニアム付属病院
「………。」
“ユウカ!”
「先生……。」
先生はミレニアム付属病院に到着し、ノアと教えてもらった病室に向かった。
そこにはユウカと、ベッドに寝かされたコユキがいる。
「……コユキちゃん、まだ起きないんですね。」
「ええ……お医者さんの話じゃ、外傷はなし。
いつ起き上がってもおかしくない、その筈なんだけど……。
まるで、魂を抜かれたようだって…。」
それを聞いて、先生はあることが考えついた。
“『魂』を奪う賭博師……?”
「賭博……?」
「そう言えば、聞いたことがあります。
『キヴォトスのどこかに、魂を取る賭博師がいる』って……
先生はその賭博師が犯人だと?」
「そんな!いくら何でもギャンブルで負けた程度で…!」
“うん。でも実は……。”
先生はカンナから得た情報を話した。
今までと同類のケース。賭博という共通点。
「なるほど……それは一理あります。」
「ってことはその賭博師をどうにかできれば…!」
“コユキは意識を取り戻す…かもしれない。”
コユキの意識を取り戻す。それに一筋の希望が見えた。
しかし。
「でも、一体どうやって場所を見つけ出しましょうか…コユキちゃんに聞くわけにもいきませんし……。」
“そうだね……何か手がかりとかない?”
“持っていた物とか、行っていた場所とか。”
「!そう言えば!」
ユウカはカバンからスマートフォンを取り出す。
“それは?”
「コユキのスマートフォンです。今はどこかで壊れたみたいで使い物になりませんが……。」
「壊れて……そうだ!ユウカちゃん!」
「どうしたの?」
「GPSですよ!いくらスマートフォンが壊れたからといって、全部の機能が壊れたわけじゃない!」
ユウカはその言葉を聞き、ノアの考えていることが分かった。
「!なるほど。このスマホを解析して、どこに行ったか、どこで壊れたか分かれば!」
「そうです!
ユウカは椅子から立ち上がる。
「よし!そうと決まったら早速解析に戻るわよ!」
「はい!」
(待っててねコユキ……必ず私達が、あなたを助けるから。)
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「……と言うことなの。解析をお願いできる?」
ユウカ達は、コユキのスマートフォンを解析するためヴェリタスを訪れた。
「うーん…出来ないこともないけど…この壊れ方じゃ確実じゃないかも。」
「お願い。コユキの命が掛かってるかもしれないの。」
「…分かった。やれるだけやってみる。」
チヒロは解析を開始する。
「……。」
“ユウカ大丈夫?顔色が悪いけど……。”
「……え、ええ。大丈夫よ。」
ノアが先生に耳打ちする。
「ユウカちゃん、大分参ってるみたいですね……。」
“この事件、なんとか早く解決しないとね。”
「……出来た。解析終わったよ。」
“何か分かった?”
モニターにスマートフォンの3Dモデルと、地図のような物が表示される。
「このスマートフォンの破損した理由は、おそらく、磁石。」
「強力な磁力で、スマートフォンを壊したってこと?
一体何が……。」
「それは分からない。でも確かなのは、ただ壊れたって訳じゃなく…事件性があるってこと。」
チヒロは次に、地図を拡大する。
「辛うじて残っていたデータから、どこで壊れたのか割り出せたよ。おそらくここかな。」
“ここは……?”
拡大された地図には、カジノバー『OSIRIS』と書かれている。
「カジノバー……。」
“やっぱり賭博…?”
「このカジノバーは、一ヶ月前くらいに新店舗としてオープンしたみたい。データ上は普通のカジノバーだけど……。」
「一ヶ月前!事件のデータとも一致しますね。」
“じゃあここが…!”
「コユキがやられた場所!
……すぐにでも行くわ!」
ユウカは椅子から立ち上がる。
「待って。まさか今から行くつもり?」
チヒロが呼び止める。
「…調べてくれてありがとう。でも早く行かないと…!」
「もう少し調べてからでもいいんじゃない?
相手はどうやってるかは知らないけど、人の意識を奪うことができるんでしょ?それでユウカ達もやられたら…」
「……それでも、行くわ。
早く行って、コユキを助けないと…!」
「ユウカちゃん…。」
「……分かった。
何かあったらすぐ私に連絡して。一応こっちでもモニターしておくから。」
「……ありがとう。」
ユウカは頭を下げ、部屋を後にした。
「大丈夫ですかね?ユウカちゃん…。」
“少し心配だね。”
「コユキは横領や脱走を繰り返してたけど、ギャンブル経験は私たち以上にある…。
それを下したとなると相当の手練れ……
先生も気をつけて。三人とも、無事で。」
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先生達は、カジノバーの前に辿り着いた。
「ここが『OSIRIS』……。」
“なんだか…変な雰囲気だね。”
先生達は、その店からプレッシャーを感じた。
それは勝負の熱によるものなのか、負けた者たちの叫びによるものなのかは分からない。
「…入りましょう。ここにコユキちゃんを襲った何者かがいる……!」
ユウカはドアを開け、店内に入った。
遅れて2人も店内に入る。
「……いらっしゃい。」
「あなたが店主?」
ユウカが尋ねる。
「…は、はい。」
「単刀直入に聞くわ。この子を知らない?」
コユキの写真を見せる。
「し、知らないよぉそんな子。見たことも聞いたこともない。」
「……なら何で携帯にここの履歴が残っているのかしら?」
「え?そ、それは……。」
「もう一度聞くわ。本当に、知らないのね?」
店主と名乗った住民の目が泳ぐ。
「知っていますよ。その人。」
「!?」
後ろから声が聞こえる。
振り返ると、初老の男性が座っている。
「だ、ダービーさん……。」
「その人、黒崎コユキさんですね?
知っていますよ。以前ここに来ましたから。」
ユウカはダービーに近づき、向かい合う席に座る。
「それは、本当なのよね?」
「ええ。なんなら防犯カメラを確認してはいかがですか?」
「……いいわ。信じる。
それで、コユキはここで何をしていたの?」
ダービーは、少し深く息をして言った。
「彼女はここで、私と賭けをして、そして負けました。」
「!!」
その言葉を聞き、ユウカは銃を向ける。
「おっと。何ですいきなり。」
「とぼけないで。……あなたね?噂になってる『魂を奪う賭博師』っていうのは。」
その言葉を聞いたダービーは、少し驚いたような表情を見せた。
「ほう?どうやら知られているようで…。
ならば隠す必要もあるまい。そうだ。
私の名はダービー。D'.A.R.B.Y。Dの上にダッシュがつく。
彼女…黒崎コユキは、私との賭けに負け、魂を奪われた。」
ダービーは、カバンのアルバムから1枚のコインを取り出した。
「これが彼女の魂だ。スタンド…と言っても君たちは分からないだろうが、とにかく私にはそう言う『力』があるのだよ。」
「……そんな嘘、信じられるわけないでしょう?」
ユウカは言った。
「フフフ…そう思うなら自由にするといい。どちらにせよ、君たちに知る術はないのだから。」
「ちょっと待ってください。まさかそのアルバム…!」
ノアが指し示したアルバムをダービーが開く。
そこには、大量のコインが納められていた。
“まさかこれ全部!?”
「そう。賭けに負けた者の『魂』だ。私はコイン集めが趣味でね。あることがきっかけで一度コレクションは0になったが…
今はまた集め直しという訳だ。
ほら、例えばこのコイン。丁度1週間前に戦った生徒のコインだ…ホラホラヘルメット団リーダーの春奈レフと言ったかな?可哀想に、一方的な戦いだったな。その隣はカイザーポストの幹部だ…彼は中々に手練れだった…フフフ。」
“なんてことを…!”
先生は驚愕した。ヴァルキューレの調査で判明した被害者数、実際はそれ以上の被害が出ていたのだ。それも、生徒住民を含め多数の。
ただ、紐付けされていなかった。この事件の被害者としてカウントされていなかったのだ。
「……悪趣味ですね…。」
「っ!」
ユウカは引き金に指をかける。
「言っておくが、私をぶちのめした所で彼女らの魂は帰ってこない。魂を取り戻したいなら、方法はただ一つ。」
“それは?”
「私と、『魂』を賭けて勝負していただきたい。
あなた達が勝てば黒崎コユキの魂をお返ししよう。」
“勝負?”
ノアは考える。
(まずいですね…おそらく相手は熟練の賭博師。
この勝負に乗るということは、相手の土俵で戦うということ。
このまま戦えば…おそらく負けてしまう。
なら私が取るべき行動は…。)
「…いいわ。なら私が…!」
ユウカは戦いに乗ろうとする。
「待ってください。」
「……ノア?」
だがそれは、ノアの言葉に遮られた。
「
“………!?”
「……ほう?」
「なっ…!分かってるの?この勝負に負けたら…!」
「ええ。それは分かってます。
でもユウカちゃんはこういうの苦手でしょう?」
「それは…!」
(コユキちゃんのスマートフォンの壊れ方からして、おそらくこの男は何か不正をしている…
きっとコユキちゃんもきっと何か磁石を使ったイカサマで負けたと考えて問題はないはず…!
この勝負で、私はこの男の
それが、この男に勝つ最善の方法…!)
ノアが席につく。
「任せてください。勝つ自信はありますから。」
「……分かったわ。気をつけて、あの男…何か妙よ。」
「ええ…分かってます。」
“ノア…大丈夫なの?”
「……先生、少し耳を貸してください。」
先生にノアは耳打ちする。
「……おそらくあの男はイカサマを仕掛けてきます。」
“イカサマ?”
「ええ…先生はイカサマを見張ってください。私も気を付けます。」
“……分かった。”
「お話は終わったかね?」
ノアはダービーに向き直る。
「…待ってくれて、ありがとうございます。」
「それは結構。では、勝負の前に宣言しておこう。
私はこの戦いに黒崎コユキの魂を賭ける。」
「では、私も
それを聞き、ダービーの口角が上がる。
「グッド!ではゲームを開始しよう!」
多分次の話はもっと更新遅くなります。
リアルで引っ越しするので忙しいのと、
トリックやオチは出来てはいるけどそこに行くまでのルートがまだ定まっていないからです