ダービー・ザ・ギャンブラー・イン・キヴォトス   作:セルビア

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久しぶりの投稿ですみません


ダービー・ザ・ギャンブラー その③

ノアが、負けた。

その事実は、先生とユウカを戦慄させるに足る事実だった。

 

「さて、次はどちらが勝負する?よく相談して決め給え。もっとも、私はどちらでもいいがね」

 

ダービーは不敵な笑みを浮かべ言い放った。

 

「くっ……!」

 

"ユウカ、ちょっといい?"

 

先生はユウカを近くに寄せ、小さな声で話し始めた。

 

"……あいつはまたイカサマをしてる"

 

「……ええ。それは確実でしょうね。」

 

ユウカは先生の言葉に同調する。ノアは確かに初心者だが、その記憶力で何度もイカサマを見破ってきた。それが、あんなに簡単に負けるだろうか?

 

「でも一体どうやって……そうだ!先生!ノアは最後に先生を指差してましたよね?」

 

最後の瞬間。ノアはコインに魂を封じられる直前に、先生の胸ポケットを指差していた。

 

"この中に、何かしらヒントがある筈…!"

 

先生はポケットの中の物を出す。

 

「ボールペンに、薄手のハンカチ、それに……レシート…先生、またロボットのおもちゃを買いましたね?」

 

"まぁ、ちょっとくらいね…?"

 

「はぁ…まあ良いですけど。それで先生、なにか気づいたことはありますか?」

 

先生は考える。

あのノアのことだ。何も無いのにポケットを指し示す訳がない。

先生はそう確信していた。

 

「おっと!そうだ忘れていたよ」

 

その様子を見たダービーがタイミングを見計らってか、再び口を開く。

 

「……何よ」

 

「いやぁ、私は黒崎コユキと牛塩ノア、二人分の魂を持っているわけだろう?だから…君たちは、二人分の魂を賭けなければならない。」

 

「……まさか、これを狙っていたの?賭け事に不向きであろう私達二人が残るように、わざとコユキを狙ったり、私を挑発してノアを場に引きずり出したり…」

 

「…さあ?何のことかな?」

 

「っ!」

 

その言葉を聞き、ユウカは自らの銃に手を伸ばした。

 

「おっといいのかな?私を殺せば彼女らの命はもう無いも同然だが…」

 

"ユウカ、落ち着いて。"

 

ユウカは先生の言葉に悔しそうに銃を下ろした。

 

「……そうね、熱くなれば余計にこいつの思う壺よ。」

 

「フフフフ……」

 

ダービーは不敵な笑みを浮かべている。

 

「……それで、先生どうするの?……先生?」

 

"……!"

 

先生はハッとしたような顔をして、ユウカの方を見た。

 

「ど、どうしたの?」

 

"……分かった。"

 

「ほう…?」

 

"ありがとう、ユウカ。今の言葉でトリックが分かった"

 

「…分かったって…ちょっと先生!」

 

先生はそう言うと立ち上がり、勝負の席についた。

 

"ダービー。私と、『ポーカー』で勝負してもらう"

 

「…ふむ、牛塩ノアが負けた勝負で再び勝負を挑むとは…私のトリックを見抜いた。そう言いたいのかね?

…言っておくが、私にチャチなハッタリなどは通用しないぞ」

 

"問題ないよ。それで、魂を賭けなきゃいけないんだよね?"

 

「ああそうだ。別にここにいない人間でも、相手が君の為なら魂を賭けても良いと思っているなら…」

 

「……先生。」

 

ユウカが口を開く。

 

「私の魂を使って頂戴。」

 

"ユウカ…"

 

「…私はノアとコユキを助けたい。でも、あいつに勝てるとは思えない。だったら、先生に全てを賭けるわ」

 

"……分かった。ダービー!"

 

先生は立ち上がり、ダービーに向かって言い放つ。

 

"『私とユウカの魂を賭ける』!!"

 

「グッド!ではゲームを始めよう」

 

 

 

 

カードが配られる。

 

私のカードは10、9の2ペア。

そして相手側……シャーレの先生の手札はそれぞれ♡、♢の2,4の2ペアだ。

私がそうなるように配らせたからな。

 

"手札交換できる?”

 

「いいだろう。ディーラー!」

 

先生はカードを一枚交換する。恐らく余った♣の3だろう。

そして次のカード……♣の10。

それ以上の手が出てくることはない。

 

「さて、では賭けを始めようか……私からでいいね?」

 

先生は頷く。

私はコユキのチップ二枚を賭ける。

 

「では君の番だ。どうするかね?コールするか、それともレイズするか」

 

"私は……”

 

さてどうする?

トリックが分かったところで、対応は不可能だ。

私は近くのアイスコーヒーに手を伸ばし、一口飲んだ。

 

"私は、この場にあるすべての魂を賭けるよ”

 

「ほう……?」

 

先生の言葉に私が口を開く前に、ユウカが口を開く。

 

「なっ……!いきなり何を考えてるんです!?」

 

"大丈夫だよユウカ。私を信じて”

 

「言っておくが、はったりなどで勝てると思ったら大間違いだぞ」

 

私は釘を刺すが、先生の顔には一縷の迷いもない。

こいつ……本当に見抜いているのか?

 

「いいだろう。では勝負だ」

 

"待って!”

 

先生が口を開く。

まさか、あの言葉を言うつもりか?

 

 

"レイズさせてほしい。賭けるのは、シャーレの全権”

 

「なっ……!?」

 

ユウカが驚く。

シャーレ。こちらの世界にきて間もない私にも分かる。

この世界における重要組織で、この先生の力の全てだ。

それをハッタリに使うというのか?もしや私のイカサマを見抜いているのでは……いや、気づいていても関係ない。あの動きをしなければ……っ!?

 

"代わりに、今まで奪った魂の返却と、『二(・)度(・)と(・)魂(・)を(・)奪(・)わ(・)な(・)い(・)』と誓ってもらうよ”

 

こいつ……私と同じ動きをしているっ!!

先ほど行った動き……カードを手に持ったままテーブルに表面を向けている。

まさか本当に?少し冷汗が出てきた。

だが……まだだ。

まだ本当に見抜いたと決まったわけではない。

こいつはスタンド能力も持っていない一般人なのだ!

 

「いいだろう。では──」

 

その瞬間、先生が不敵な笑みを浮かべた。

 

(ぐっ……!?なぜ笑える!?トリックが分かったとしてどうしようもないはずだ!

貴様に勝てる見込みはないのに!)

 

額から脂汗が噴き出してくる。

先生は以前笑みを浮かべ、体勢を崩さない。

 

(こいつ……似ているっ!あの承太郎に!

それも見た目や声なんてチャチな話じゃあない!

『凄(・)味(・)』だ!こいつは、承太郎と似た凄味を持っている!!)

 

息が上がる。汗がさらに噴き出す。

分かっているはずもないという確信は、いつの間にか否定され、

『分かっていて、何らかの方法で利用している』という確信に変わっている。

 

(だが……だが!!)

 

ダービーの闘志が再点火される。

 

(こいつは承太郎でも、あのDIOでもない!!

こいつはただの人間で、俺は最強の博打打ちだ!!)

 

ダービーが席から立ち上がる。

 

「いいだろう!!『コール』だ!!」

 

ダービーはその言葉と共に、持っている手札をテーブルに叩きつけた。

 

「どうだ!10と9の2ペア!」

 

その言葉に先生は。

 

"約束は守ってもらうよ”

 

先生が出した手札は。

 

「……………………なっ……」

 

ダービー、絶句。

ユウカがテーブルの手札を覗き込んだ。

 

「Qと10のフルハウス……これって!」

 

"うん……私の勝ちだね”

 

 

 

瞬間、ダービーのアルバムと魂のコインが光りだし、空中に舞い上がる。

空に舞い上がったその光の球は、空中で弾け、空中に広がった。

 

「……ううん……」

 

倒れこんでいたノアは、ゆっくりと目を覚ました。

 

「!ノアッ!!」

 

ユウカは目覚めたノアと熱い抱擁を交わす。

 

「この感じ……やったんですね、先生」

 

先生は静かに頷く。

 

「何故だっ!?」

 

ダービーが叫んだ。

彼にとって、三度目の。それも前回の失敗に起因するものとなれば、プライドは大きく傷つけられる。

 

「どうやって見抜いた!いや、どうやって利用した!?」

 

「私も聞きたいわね……結局どういうトリックだったの?」

 

「それは私が教えますよ。まず、ユウカちゃん。そのテーブルを撃ってみてください。」

 

ユウカは少し戸惑った後、後で弁償する覚悟でテーブルを撃った。

 

「これは……鉄板と機械?」

 

「ええ。I(・)H(・)コ(・)ン(・)ロ(・)です」

 

IHコンロは、電磁誘導の原理を利用して鍋自体を直接発熱させる。

 

「ユウカちゃんは、『感熱紙』って知ってますか?」

 

「あのレシートやなんかの熱で色が変わるあれでしょ?……まさか!?」

 

「ええ。ダービーさんはトランプに感熱紙を仕込んで、テーブルのIHコンロで絵柄を変えたんです。

あの持ち方をしていたのは、トランプを丁度良く温めるため。

アイスコーヒーは、腕を冷やして保護するため、といったところでしょうか」

 

"そこで、IHコンロを付けてもらったんだ”

 

先生はスマートフォンを前に向けた。

そこには、チヒロの姿。

 

「チヒロ!?」

 

『連絡がきたときは驚いたけどね……監視カメラでテーブルの形式は分かってたから、あとは調べて、リモコンで起動するタイプだと判明したから、先生のスマートフォンで起動したの』

 

"ダービーはスマートフォンみたいな電子機器を何も持っていないようだったから、詳しくないんじゃないかと思ったんだ。”

 

事実、ダービーがキヴォトスに来る前にいた1989年には、スマートフォンなどは無かった。

だが、それよりダービーには一つ分からないことがあった。

 

「そうだ……だが、腕はどうした?」

 

「腕?」

 

「私は腕をアイスコーヒーで冷やすことで防御した。だが……貴様には何もない。

いったいどんなイカサマを使ったというのだ!?」

 

ダービーが詰め寄る。

先生は少し深く息をした後、ポケットに入れていた手を抜いた。

 

「……先生その傷!」

 

そこには、痛々しいや(・)け(・)ど(・)の(・)傷(・)が(・)あ(・)っ(・)た(・)。

まるで、手の甲を鉄板で焼かれたような。

 

"あんまりユウカたちには見せたくなかったんだけどね”

 

「まさか気合で耐えたというのか!?」

 

"生徒たちを守れるなら安いものだよ”

 

その瞬間ダービーは確信した。

この男が承太郎と似ていると思った理由。

それは、武力でも知力でもない。

この胆力だったのだ。

 

「……最後に一つ聞かせてくれ。もし、柄が変わっても勝てなかったらどうするつもりだったのだ?」

 

"その時は、私を犠牲にしてでも、あなたを止めるつもりだったよ”

 

先生は懐の大人のカードに手を添えて言った。

 

「ふっ……これは私の負けだな。」

 

ダービーは少し微笑みながら言葉を重ねる。

 

「だが、これで終わりだと思うなよ。

いつかまた戦い、今度こそ『魂』を奪う権利と貴様の魂をコレクションに加えてやろう」

 

"その時は、お手柔らかに頼むよ”

 

 

 

 

「そうだ」

 

店から立ち去る先生に、ダービーが声を掛ける。

 

「一応これでもこの店のオーナーなのでな。この言葉をかけさせてもらおう。

またのご来店をお持ちしているよ、先生」

 

こうして、連続意識不明事件……後の『オシリス事件』は幕を下ろした。

意識を失った人も、全員が意識を戻した。

あんなことは言ったが、できれば二度と戦いたくない。そんな人だった。

もし少しでも違ったら負けていただろうし。

だから、この事件で感じた私の感情を一言でまとめるなら。

 

"やれやれだね"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに目覚めたコユキはユウカたちにこってり絞られたらしい。

当分賭博を禁止されたのだとか。

 

囧「うあぁああああーなんでー!!」

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