距離があるほど強くなる弓使い、拾った壁役人形が強くて全部持ってかれそう   作:誰でも愉快なハメハメハ

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第十一話

「こうして一緒に依頼に行くの、冒険者登録した時以来じゃねぇか?」

 

「俺を置いてめきめきランク上げやがった薄情者がなんか言ってら」

 

「拗ねんじゃねぇよ。《自称狙撃》で弱いままのお前が悪い」

 

「自称じゃねぇ!! 見てろよ、今日こそ俺がスキル持ちであることを証明してやる……!」

 

 俺とメア、そして頼みを聞いてついてきてくれたロモンの三人で《黒の森》を歩く。

 

 ロモンの言う通り、こうして一緒に《黒の森》に潜るのは俺たちが冒険者になった三年前以来だ。

 たまたまではあったが、俺とロモン、そしてカエラの三人がギルドを訪れ、そして冒険者となりそのまま一緒に依頼へ向かったのを覚えている。

 

 たしかあの時受けたのはアギトラの街でのお手伝いだったか。

 冒険者というのは薬草採取や魔物退治だけが仕事ではなく、街中の依頼もお仕事の対象だ。

 

 メアとは違って三人とも最初は七等級スタートであったため、掃除やら物探しやら荷運びやらの危険の少ない肉体労働をやっていた。

 そこから仕事に慣れ、薬草採取で《黒の森》へと入るようになり、そして次の段階として討伐依頼を受けた時のことは、今でも鮮明に覚えている。

 

 なにせ、そこで俺は二人に置いて行かれたのだから。

 

「可哀想に……マスター一人、森へと置き去りだなんて……」

 

「人の真面目なモノローグに横槍するのやめてくれます?」

 

 あと、別に物理的に置き去りにされたわけじゃないから。冒険者としてのランクの話だから。

 

 チラと隣を歩くロモンに視線を向ける。

 体の重要な部分を守るように配置された鎧に、魔物の丈夫な革で構成された軽鎧。そして何よりも目立つのは、彼の持つ二メートルほどの真っ赤な槍だろう。

 

 たしか、アギトラから別の街へ遠征した際に手に入れた槍、だったか。火山地帯にすむロックリザードという魔物の鱗を使用して作った槍で、刃は常に熱を帯びているのだとか。

 

「ケッ、上等な装備に上等なスキル。そりゃ強くもなるわな」

 

「ん? 急にどうした、フィン」

 

「そうですよ。マスターには既に、この美少女&スパダリメイドの私がいるじゃありませんか。それだけで勝ち組です」

 

「少なくともお前はスパダリじゃねぇよ。意味調べてから出直してきやがれ」

 

 戦闘力と見た目以外、今のところ非の打ちどころしかないだろうが。

 

 世迷言を口にするメアに悪態を吐き、俺は改めて「ロモン」と彼の名を呼んだ。

 それに対してロモンはいつものように「どした?」と首を傾げて視線を向けてくる。

 

「俺は今日、お前に追いつく。そんで、すぐ追い越してやるよ」

 

 武器もある。スキルもある。

 そして何より、もっとも必要としていた壁役もいる。

 

 これは証明だ。

 三人で初めて受けた討伐依頼。あの時役にも立てず、守られるだけだった俺が、お前に並び立てるのだと。

 

 あの日の約束は果たせない。

 それでも、もう置いて行かれはしない。

 

「……へぇ。《自称狙撃》の《当たらない弓使い》が言うじゃねぇか」

 

 俺の宣言を聞いたロモンはニヤリと不敵な笑みを浮かべると、「お手並み拝見だな」と先を行く。

 そんな彼の後ろ姿を睨みながら俺も歩き出そうとするのだが、さらに俺の背後にいたメアが「ボーイズラブですか?」とボソリと呟いた。

 

 思わずズッコケる。

 

「大丈夫ですか? マスター」

 

「お前の頭が大丈夫なのかよ……どこからどう見たら、あれがそうなるんだ」

 

「まあ最近は、NTRもBLだという風潮がありますし……」

 

「何それ俺知らない」

 

 というか、すっごくまじめなやり取りをそんなので上書きしてくるんじゃねぇよ。

 これから俺が宣言通りに証明して、ロモンを認めさせるところだろうが。後から思い返した時に、そんなことまで思い出したくないぞ。

 

 起き上がって土を払いながら立ち上がると、俺たちがついてきていないことに気付いたロモンが「何やってんだー」と道の先で手を振っていた。

 

「たく……メア、お前がしょうもないこと言うから――」

 

「何してるんですかマスター。置いて行きますよ?」

 

「既にそちら側にいる……だと!?」

 

 メアに文句を言おうと振り返ったはずが、いつの間にかロモンのところに移動し、まるで俺が悪いみたいな顔で待っていた。

 お前マジでふざけんなよ。

 

 ジト目をメアに向けながら二人の後に続く形で《黒の森》を進んでいく。

 

 そこで、ふとメアが「そういえば」と尋ねてきた。

 

「これは今どこへ向かっているのでしょうか」

 

「何で知らないんだよ……一緒に受付にいたじゃねぇか」

 

「雑事はマスターのお仕事ですので」

 

「お前ほんと従者名乗るのやめたら?」

 

「そういや、俺も装備取りに戻ってたから把握してなかったな。何の依頼なんだ?」

 

 俺が呆れてため息を吐くと、メアに同意するようにロモンも尋ねてきた。

 メアはともかく、ロモンに聞かれるのなら答えなくてはならないだろう。というか、そう言うのは出発前に聞いとけよ。すっかり忘れてたわ。

 

 自身のことを棚に上げながら、俺は懐から受注した依頼書を取り出す。

 

「受けたのはもちろん、討伐依頼だ。討伐対象はこの先の沼地に生息してるブラックロックリザード。群れの規模的に、ボス個体がいる可能性もあるから注意されたしってな」

 

「ロックリザード……それも《黒の森》の特別種だな。俺も狩ったことあるぜ」

 

 そう言って自身の赤槍を見せつけてくるロモンだったが、すぐに「ん?」と首を傾げる。

 

「なあ、フィン。ブラックロックリザードって、たしか三等級相当の魔物だったよな? 六等級のお前だと受けられないんじゃねぇのか?」

 

「本来ならな。だが、今俺は二等級のメアとパーティを組んでるからな。一つ下の三等級までなら問題はない」

 

「あー……たしか冒険者規定にあったな、それ」

 

 それならお前も受注できるか、とロモンも頷く。

 ランクの異なる冒険者がパーティを組む際、そのパーティは一番ランクの高い冒険者を基準として、その一つ下に当たるランクの依頼までなら受注できるという制度である。

 

 本来なら、下のランクの者が無理をして危険にならないようにするための制度であるが、今回はそれを利用させてもらった。

 そもそも、二等級と六等級が組むこと自体が異例である。

 

 ゼーナさんには本気で心配されたが、無理を承知で押し切らせてもらった。

 

「言っとくが、俺は言われた通り見てるだけだぞ。助けを求められても、手出しはしない」

 

「むしろ手を出したらぶん殴ってやる。万が一の安全策でお前を呼んだんじゃねぇよ」

 

 言っただろ、証明するって。

 

「お前は見てろ。すげぇの見せてやる」

 

「……おう、期待してるぜ」

 

 ニッと笑ったロモンが俺の背中を勢い良く叩く。

 強すぎるそれに一瞬咳き込んでしまい、お返しにと蹴りを叩き込むのだが、ロモンは《身体強化》で躱したうえでさらにもう一発俺の背中を叩いてきた。

 

 今はこれくらいにしといてやるが、依頼終わったら全部まとめて返してやる。

 

「……やはりBLでは?」

 

「せめてブロマンスといいなさいよ」

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