距離があるほど強くなる弓使い、拾った壁役人形が強くて全部持ってかれそう   作:誰でも愉快なハメハメハ

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第八話

「なあおい、フィン! お前拘束具をつけたメイドさんにお姫様抱っこされてたって本当か!? ククッ……! 何がどうしてそんなことになってんだよお前は!」

 

「チクショウあのメイドマジで許さねぇ……!」

 

 数日後、ようやっと体調が戻った俺はギルドへとやってきていた。

 ……のだが、入って早々に他の冒険者たちからは奇異の目を向けられ、そんな中俺に話しかけてきたロモンによって近くの酒場まで拉致。

 

 そのまま先日の件について、笑いながら尋ねられていたのだった。

 

 こいつの奢りじゃなければ、とっくに無視して帰っているところである。

 

「はぁー……おもしろ。やっぱお前飽きねぇわ。外から見てる分にゃ、なかなかに面白い見世物だぜ」

 

「金取るぞこの野郎」

 

「バーカ。だから奢ってやってんだろうが」

 

 ロモンは心の底から楽しそうに、俺はそんなロモンの反応に顔を顰めながら、グビと二人揃って杯を呷る。

 

 人の金だしこうなりゃやけだ、と俺は近くを通りかかった店員さんに声をかけ、注文を通した。

 肉料理がメインの店らしいので、お高そうなもの中心に頼んでいく。

 

「相変わらず遠慮がねぇなこの野郎」

 

「ここ数日まともなもんが食えなかったんだよ。せっかくの機会だ、食い溜めさせてもらう」

 

 届いた皿に乗った肉を端から順に口へと運ぶ。久しぶりのまともな食事で全身を喜びで震わせていると、俺の話を聞いたロモンが「ん?」と片眉をあげて疑問を口にした。

 

「拾ったメイドを雇ったんだろ? 森で助けたってバレンに聞いたぜ。いやマジで、何があったらそんなことになるのか不思議だし、宿暮らしがメイドを雇うってのも訳が分からねぇんだが……寝込んでる間、そのメイドに世話はしてもらえなかったのか?」

 

「……よく聞いてくれた、俺の同期よ」

 

 テーブルの更に残っていた最後の肉をロモンから奪うように口に投げ入れる。

「あ、テメッ……!」とロモンが立ち上がろうと腰を浮かせたが、そんな彼を手で制して続きを話す。

 

 ふははは、お前から聞いたのだ。怒ろうにも話を聞く必要があるから怒れまい。

 

「たしかに、俺は数日前に森でメイドを拾った。正直、見た目はすっげぇ好み。ドストレートだ」

 

「すげぇ美人ってのはバレンからも聞いてるぜ。見かけた奴らも口を揃えて同じようなこと言ってたな」

 

 どうやら、俺が寝込んでいる間にかなり噂になっていたらしい。

 まあそりゃそうだろう。なにせ中身がどうであれ、メアの見た目は貴族の令嬢と言われても納得できるほどのものだ。

 

 そんなのが、中身は優秀そのものだが、見た目は底辺冒険者の俺をお姫様抱っこで運んでいればどうあっても目立つし、噂やネタになってしまうのも当然のことだろう。

 

 ロモン曰く、同じ冒険者の奴らも何人かが見かけていたらしい。中には一目ぼれしたと宣う愚か者までいるのだとか。

 

 まぁたしかに、見た目だけはいいからな。

 

「だがやつはゴリラだ。それも、少女の見た目をしている分お前よりも質が悪い」

 

「ゴリ……お前よく俺にそれ言うけど、どういう意味なんだ……?」

 

「フッ、気にするな」

 

「無理があるだろ」

 

 笑って誤魔化したが無理だった。

 

「まぁあれだ、力が強い、的な意味だよ」

 

「ほう……てことは、そのメイドも力持ちってか。……でもなんでそれが、喰えないことに繋がるんだ? 宿の食堂に行けないなら仕方ねぇけど、そのメイドに持ってきてもらえばいいじゃねぇかよ」

 

 不思議そうにロモンが首を傾げる。

 彼の言う通り、俺が住まいとしている宿には食堂があり、時間内に食堂へ行かないと飯が出てこない。

 当然体調不良だった俺が食堂に行けるはずもなく、本来であれば飯にありつくことすら叶わなかった。

 

 だがしかし、メアがいるのなら別だ。

 泣く泣く追加料金を支払うことでメア用に隣の空き部屋を借りたため、メアが運んでくれるのなら俺も宿の飯にありつけていたはずなのだ。

 

 だというのに、あいつは……!

 

「……マスターの世話は、メイドの私の仕事ですっつってな。宿屋の主人に代わって俺の分を作ってくれたんだ」

 

「メイドの作る飯か……まるでお貴族様だな」

 

「鉄鉱石が出てきた」

 

「マジで何があったんだ!?」

 

 飯を作ったんだよな!? と驚くロモンに、俺は昨日までのことを思い出しながら、涙をホロリと流して頷いた。

 あの鉄の如き歯ごたえ。鉄鉱石じゃなければなんだというのか……ただ固いだけの飯、というのなら納得もしよう。

 

 なにをどうすれば食材が金属に変わるんだよ。何なのあいつ、厨房で錬金術でもやってるんじゃないか?

 

「え、は……え? つ、作ってくれた飯なんだよな……?」

 

「笑えるだろ? 肉、野菜、魚……素材が何であれ鉄鉱石だ。食えるわけがねぇよ……」

 

 メア曰く、愛情込めて握ったらこうなったとのこと。もうその愛情を捨てるかメイドをやめるかしろ。

 

 俺の話に理解が追い付いていないのか、ロモンは「ええ……」と額に手を置いて頭を悩ませていた。

 そりゃそうだろう、とロモンにバレないよう店員にこっそり注文を追加しておく。

 

「そういうわけで、だ。ここ数日ろくに食えてなかったんだよ、俺は。理解してくれたか?」

 

「正直、まだまだよくわからんところが山ほどあるんだが……本当にメイドを雇ったんだよな?」

 

「勝手に雇われた、が正しいけどな。今度ギルドに連れてきて紹介してやるよ。キングコングって名前なんだ」

 

「キングコング……なるほど、さすが食材を鉄鉱石にするだけのことはあるな。もう名前からして勇ましい……」

 

 納得するように頷いているロモンを見て、俺は内心でガッツポーズを決める。

 これで今度メアをギルドに連れて行ってロモンに合わせれば、開口一番にロモンはその名を口にすることになるだろう。

 

 あのメアのことだ。きっと俺と同じように、ロモンを空にぶん投げるに違いない。

 

 いくら三等級冒険者のロモンでも、そんな経験はしたことがないはず。いきなりアレをやられたら、驚いて悲鳴の一つや二つ簡単に上げることだろう。

 その様を、俺は隣で見て楽しむことにする。

 

「ご注文の串焼き、お待たせいたしました」

 

「お、来たか。いやぁ、それにしてもここの店の肉はいいのを使ってるよなぁ! さすが三等級冒険者が通うだけのことはあるぜ! 鉄分を多く含んでいるだろうことがわかるこの匂い! 一口齧り付けば、まるで歯が削られるんじゃないかと思わされるほどの歯ごたえ! まさにもうこれは鉄そのものを食べてる――」

 

 ピタリ、と。

 俺は鉄鉱石にかじりつくのをやめ、ゆっくりと後ろを振り返った。

 

「楽しそうですね、マスター」

 

「……あの」

 

「キングコング、でしたか?」

 

「……えっと……大迫力、って意味で……ハハッ、かっこいい……よね? たぶん」

 

 店の外に連れ出された後、俺はアギトラの空を舞うことになった。

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