アクア『領域展開』   作:初心者

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なんとか間に合った
難産でした
推敲足りてないかも



不純物

 

怒れる特級術師の剣幕に気圧された吾郎は

 

「夜蛾さん、どうしますか?」

 

と後退りしながら、隣の夜蛾に判断を求める。

夜蛾は眉間に深い皺を刻みながら

 

「やむを得んだろう。万が一ここで暴れられたら高専の結界が保たん……雨宮先生、案内をお願いしても?今ならあなたの方が適任の筈だ」

 

「ああ、はい確かに僕が適任ですよね」

 

損な役回りだ。と諦めた声で引き受けた

 

「では、案内しますのでついてきてください」

 

「……分かった」

 

面識のない吾郎が案内を引き受けたことに怪訝な表情を浮かべながらも張り詰めた雰囲気を隠そうともせず

 

吾郎は背後にいつ爆発するか分からない爆弾を背負う気分を味わいながら薨星宮に向かった

 

薨星宮に着き次第

 

「天元!!」

 

九十九は怒声を上げ天元を呼ぶ

 

「うるせぇな。誰だよ騒いでんのは」

 

「……なぜ君がここにいる?『術師殺し』伏黒甚爾……」

 

「……九十九由基か。随分荒れてんな」

 

「面識あるのか甚爾?」

 

九十九を案内してきた吾郎が質問するが、甚爾が何か答える前に

 

「何事ですか?」

 

騒ぎを聞きつけた天元と天元と一緒にいたアクアが顔を出す

 

その姿を認めた瞬間、九十九の怒気が、一転して呆れに似た困惑へと変わった。

 

「……天元お前ショタコン趣味か?」

 

アクアの顔を見た九十九は思わずそう聞いた

 

《……何故そうなる?》

 

「天元様の年齢から考えれば全人類ロリかショタの範疇になると思いますよ?」

 

吾郎が口を挟む

 

「そりゃそうだ。で、何でてめぇがここに来たんだよ?九十九由基」

 

九十九と面識のある甚爾が軌道修正した

 

「!そうだ天元。貴様一体何をした?答えろ!」

 

《何の話だ?》

 

「とぼけるなよ」

 

「具体的に言えよ。わざわざ特級術師のお前がここまで来るような要件についてこっちに心当たりが無いんだが?」

甚爾が呆れた声で指摘する

 

「……星漿体の魂の一人の気配が途絶えた」

九十九が苦々しい表情で吐き捨てるように言い放つ

 

「私は元星漿体だ……天元と同化した星漿体の気配を感じることがある。……だが去年の年末から星漿体の一人の気配を感じることがなくなった。……答えろ天元貴様一体何をした!?」

 

アクアは天元と目配せをし、話していいかどうか確認を取る

 

《彼女には話して良い》

 

天元はアクアに許可を出す

 

「それについては俺が答えを知っている」

 

「……君がか?」

 

「ああ、俺とそこの雨宮が天元様の主治医だ」

 

「は?主治医?ふざけているのか?」

九十九の剣幕にもアクアは動じずに

 

「俺の術式は『心霊施術』。天元様の魂から星漿体の一人の魂を切り離した。10日ほど前にな」

 

 

─────

 

 

12月末アクア、吾郎が反転術式を習得した後

 

「今更だが領域での施術って複数回可能なんだよな。伏黒は2回やったけど特に異常は出ていない」

 

「確かにな。まあなんとなく言いたいことは解るが、それで?」

吾郎はアクアに続きを促す

 

「年が明ける前に一度天元様の施術に着手してみないか?」

 

 

 

《ふむ良いだろう。確かに一度試しておきたい》

 

天元に今年中に一度施術をしておきたいと提案をするとあっさりと了承される

 

「……随分あっさりとOK出すんですね?」

 

《反転術式も習得した。呪力の操作や術式の練度も申し分なく二人がかりなら出力や持続力も問題は無い。これで駄目ならそれまでと納得もいく。……むしろこれ以上を望むのは贅沢が過ぎると云うものだ》

 

「では明日万全の状態に整えて施術を開始しましょう」

 

 

──────

 

翌日

 

薬王薬上菩薩印

 

『『領域展開』』『『陰陽施寮』』

 

領域の手術室で天元の肉体と魂を分離させると

 

「な……なんだこれは!?」

 

「天元様の魂に二人……か?魂が絡みついている?」

 

前回領域内で行なった事前検査はあくまで肉体側であり、魂側について検査をすることは無かったため、気づけなかった異常

 

これまで天元の進化を食い止めてきた星漿体。

その魂が天元の魂に人面疽のように癒着していた

 

天元の肉体を若返らせ、進化を食い止めるためには、過去に同化した星漿体たちの魂が『不純物』として邪魔になっていたのだ

 

皮肉な話だが盤星教の教義がある意味正しいという証明でもあった

 

アクア達はまず天元と二人の星漿体の魂を切り離すところからはじめなくてはならなかった

 

今回の施術では、まず初代星漿体の魂を切り離すことに注力することになった。

 

理由は二つ

 

一つ目は初代は約千年近く天元の魂に食い込んでいたこともあり、根の深さでいえばこちらの方が深刻であった

 

二つ目は現時点での天元の形を保っているのは二代目星漿体の肉体であり

現在の肉体の持ち主だった二代目星漿体の魂を分離するのは

肉体への負担が大きかったから

 

───このままだと肉体と魂の乖離で肉体に負荷が掛かり進化を促してしまうかもしれない。それに二代目は魂と肉体がまだ繋がっている。肉体と魂を切り離し、更に天元様の魂と肉体調整するには時間が掛かり過ぎる

 

と判断し、結局初回の施術は初代星漿体の魂の切り離しをしそれに併せて肉体を調整したところで中断した。

 

施術後、アクア、吾郎、天元の三人で協議した結果

次回の施術で天元と二代目星漿体の魂を剥離させ、さらに現在の肉体を天元の魂と適合させるように調整をする。

 

その施術を完遂しなければ肉体を若返らせることに着手することは出来ない

 

という結論に達した

 

現在は領域無しで術式の部分行使が出来るアクアが

施術後の経過観察と天元の魂側の検査が出来ないかと試行錯誤中である

 

 

「『心霊施術』!?肉体と魂を分離し、切り離した……だと? そんなことが可能なのか!?天元と同化した魂を?もう個としての形を失い、天元の魂の一部になっているはずだったものをか!?」

 

九十九の声は、怒りよりも驚愕に染まっていた。

 

「……信じられないだろうが事実だ。俺の術式は、魂と肉体それぞれに干渉することが出来る」

 

アクアは淡々と、しかし自信を持って断言する

 

九十九の発する凄まじいプレッシャーは鳴りを潜め、代わりに「好奇心」へと変化していく

 

「……で、その分離した『初代』の魂はどうなった? 依代となる肉体もなしに魂だけで存在できるわけがない。まさか、消滅させたのか?」

 

九十九の問いに、アクアは視線をわずかに落とした。

 

「……それは分からない。切り離された魂は、天元様から解き放たれた。現世に留まっているのか、あるいはあるべき場所へ還ったのか」

 

実際、アクアと吾郎は天元と初代の魂を剥離させることに精一杯で、切り離された初代星漿体の魂がその後どうなったかまで観測する余裕は無かった

 

九十九は沈黙した。初代星漿体の魂がどうなったのか気にはなる。だがそれ以上に「星漿体の悲劇」を断ち切る可能性。

そして、自身の研究の最終目標である呪霊の根絶へ手掛かりになるかもしれない術式を持つ二人

 

《九十九由基。元星漿体の君には迷惑をかけたと思っている。だが彼らの術式によって私は星漿体という『生け贄』が必要無くなるかもしれない。私はその可能性に掛けたいのだ。……君には虫の良い話に聞こえるかもしれないが……》

 

天元の声が響き、九十九は大きく息を吐き出すと、纏っていた威圧感を霧散させた。

 

「……次の施術から私も立ち合いたい。私の研究にも有意義だろうからな」

 

《私は構わない。君にはその資格があると思っている……だが主治医達は……》

 

天元はアクアと吾郎の方を見る

 

「僕は構いませんよ。施術を邪魔しないならね。アクアは?」

 

「俺も構わない」

 

 

その後九十九はアクアと雨宮の関係や甚爾のことを詳しく聞いた後、自身の研究についても説明し終えると

 

「……他言無用と『縛り』を結んだ方がいいか?」

と九十九は天元に聞く

 

《……いや、下手に『縛り』を結ぶのは止めておいた方がいいだろう》

 

「そうか、まあ『縛り』が無くても他言はしない。ああ、そうそうアクア君と雨宮先生

───どんな女がタイプかな?」

 

普段の調子を取り戻すように九十九はアクアと吾郎に問い掛ける

 

「「顔のいい女」」

 

アクアと吾郎は即答した

 





前の話と同じ現在→回想→現在の同じ流れになってしまったのは反省点

アクアは部分行使が出来るようになり、多少自信がついてます

原作だと九十九は星漿体の気配がわかるのは天元と直接会ってるときのみだと思いますが、
今作ではある程度離れていても気配くらいは感知出来るとしております
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