アクア『領域展開』   作:初心者

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ニノ脱退

 

 二〇〇六年二月末

天元の若返り施術を開始したアクアと吾郎

「結論から言います。若返らせるのは可能です。幸いな事に魂の欠損部分も後からの施術で修復することも可能でした」

 

「……の割には、ほとんど変わってないように感じるのだが……」

 

今回も立ち会った九十九が施術後の天元を見た感想をもらす

 

「……10年分肉体と魂を巻き戻すことは出来ました。肉体年齢が大体490歳。大体4年程。魂の方は1300歳以上なのでそちらの方も。となると大体11年程掛かると思います」

 

《それほど掛かるか……》

 

「一気にやると肉体と魂のバランスを取るのが難しくなります。特に魂の側の欠損があるのでそちらの修復も徐々にしていく必要があることと、魂の無い下半身の肉体側の維持もありますので、経過観察も兼ねて1ヶ月に1度10年分巻き戻していくのがベストだと思います。一応、魂の修復はこのペースなら2年以内に完了します。更に肉体側が完了すればリソースを魂側に集中出来るので、ペースアップ出来ると考えております。天元様にはご不便を掛けるかと思いますが……」

 

《いや、充分だ。むしろそこまでアクア君を拘束してしまうのは申し訳無いのだが……》

 

「いえ……こちらも……力不足で……申し訳無いです……」

 

施術で呪力を搾り出したアクアは息も絶え絶えに返答する

 

「とりあえず毎月月末に施術を継続させていただく形でスケジュールを組む。でよろしいでしょうか?」

 

《うむ、すまないがよろしく頼む》

 

「「承ります」」

 

 

 

 二〇〇六年三月末

B小町よりニノこと新野冬子のB小町脱退ライブが行われた

 

前日に天元の若返りの施術をしたアクアと吾郎。そして二人のボディガードも兼ねて伏黒甚爾とその家族も駆けつけたライブだった

 

「……?」

 

伏黒甚爾はそのライブで不穏な気配を漂わせた男を目撃する。

 

───アクアの母親が刺された件もある。一応警戒しておくか

 

結局何事も無くライブは進行し無事終了した。

 

───警戒し過ぎか?まあ何事も無くて何よりだが……

 

「甚爾?どうしたんだ?」

 

「吾郎か。ちょっと気になることがあってな」

 

「気になること?お前がか?……詳しく聞きたいな」

 

「そこまで深刻な話じゃねえよ。少し不穏な雰囲気の奴を見かけたってだけだ……一応警戒してたが、特に何も無かった」

 

「……どんなやつだ?」

 

「20歳前後の金髪のガキだ。」

 

 

──────

 

 

ニノこと新野冬子は自分の脱退ライブという大一番にも関わらず、どこか他人事のように感じていた。

 

勝手に事務所を通さずに脱退を発表したので叱責されたことも、脱退ライブを開催するというある意味事務所の温情とも言える待遇もどうでも良いという心理状態であった

 

脱退宣言以降妙にアイが自分を気にする素振りを見せていたことも分かっていたが、何を今更と無視していた

 

そんな取り付く島もないニノの様子がおかしくなったのはライブ終了後、帰宅直前にとある男を目撃した時だった

 

その男を目撃したニノは動揺し、叫び声を上げ錯乱し、最終的に病院に送られることになる

 

一部のマスコミはニノの脱退理由を精神的なものだという記事を飛ばすものの理由が理由であることと、既に脱退したメンバーであるという事で一部界隈で盛り上がるものの炎上とまではいかず鎮火することになる

 

 

その騒動の切っ掛けになった人物は───雨宮吾郎

 

 

新野冬子は菅野良介とともに祠の裏に雨宮吾郎の死体を隠した共犯者であった

 

死んだ筈の男。あまつさえ自分が死体を移動するのを手伝ったはずの男が生きている事を目撃し、錯乱したニノは精神的な理由から支離滅裂な妄言を吐いたと思われた

 

吾郎が一度死んでいたことを知っている者達、アクア、アイ、ルビーの星野一家、壱護、ミヤコの斎藤夫妻、伏黒甚爾

、そして被害者である雨宮吾郎はそれを妄言ではなく自白と捉えた

 

「あの人死んでるはず。あの人死んでるはずでしょ?ならあのリョースケは?リョースケは死んだのに、死んだはずのリョースケも生きている?ならアレは幽霊?ならアイツも幽霊?」

 

「ニノが言ってたのはこんな内容だったね」

 

迫真の演技で錯乱したニノのセリフを近くで聞いてたからと再現したアイに

 

ドン引きするルビーとミヤコ

 

「……ママ怖い」

 

「やりすぎよ……?再現度高すぎるわ」

 

「リョースケ君か、センセを殺して私を刺した人だね」

 

「お前な……」

 

演技を終えたあと聞き覚えのある名前に他人事のような感想を浮かべるアイとそんなアイに呆れる壱護

 

「……幽霊ね」

 

リョースケが呪霊化したと天元から聞いたことのあるアクア

 

「あの場に居たのか……気付かなかったな……(天元様も言ってなかったし)にしてもニノとリョースケはどういった関係で宮崎まで来てたんだ?別口じゃなく一緒に来ていたってことだよな?」

 

被害者である吾郎の疑問に

 

「……それについては心当たりがある」

 

壱護が答える

 

「ニノとリョースケ、アイツ等は付き合っていたはずだ」

 

「「「はあ?」」」「「「ええ?」」」

 

壱護以外のメンバーが思わず声を上げる

 

「知ってて放置してたの?」

 

ミヤコが非難するが壱護は首を横に振る

 

「……別れたはずだったんだよ。アクアとルビーが生まれて、アイの復帰後辺りから疎遠になってたように思う……B小町というかアイがブレイクした映画辺りからはもう完全に切れてたはずだったんだよ」

 

「……?リョースケは元々ニノ推しだったのか?」

 

「ああ、そのはずだ。」

 

「……アレ?でもリョースケはアイにお土産プレゼントしてたよな?推し変したのか?」

 

アクアはアイが刺された時にリョースケからもらったお土産の話をしていたのを思い出した

 

「ってことはニノとリョースケは元々付き合っていたが、アイの妊娠を確かめに来てオレをうっかり殺してしまい、死体を隠したあと、二人は疎遠になった。で、リョースケはアイに推し変した。でも子供がいることを知っていたから、それに段々我慢が出来なくなり犯行に及んだってところか?」

 

吾郎が総括する

 

「だと思う……」

 

壱護が吾郎の総括した内容に同意する

 

「一度アイドルと付き合えていたせいで余計に恨みが蓄積したのかしらね」

 

ミヤコがリョースケの心理を推測する

 

「しかし僕がいた宮崎の病院に来れたのは壱護さんを尾行したとか会社の記録を見たなら説明がつく、が……なんでリョースケはアイを刺した時、居場所知ってたんだ?ニノが教えたのか?」

 

「「「「「あ!」」」」」

 

吾郎の言葉に甚爾以外のメンバーが声を上げる

 

「確かに、アイのマンションの部屋。リョースケが何で知ってたんだ?アイ、ニノにマンションの場所教えた覚えは?」

 

「……無い、と思うけど……」

 

アイは自信無さそうに答える

 

「尾行したか、会社の名簿でも見たのか?」

 

「そもそもニノがリョースケにアイの家を教える理由は?」

 

吾郎とアクアがそれぞれ疑問を口にする

 

「……雨宮先生の件で脅されでもしたか?ニノを問いただしたいところだが……現状だと無理だな。警察にも……言えないな」

 

壱護は嘆息する

 

「事件は無かったことにしちゃいましたからね。一応呪術高専に報告だけ上げておきます。ニノが幽霊って口走ったのも気になりますから」

 

「すまないが雨宮先生よろしく頼む……巻き込まれて被害にあった先生に頼むのは悪いと思うが……」

 

「アクアに生き返らせてもらいましたし、気にしないでください」

 

「……センセーいくらなんでもお人好し過ぎない?」

 

想い人を一度死なせたことを赦すことは出来ないルビーが瞳の星を黒く染めながら指摘する。

 

「ルビーちゃんが代わりに怒ってくれてるし、僕は別にいいかな」

 

と吾郎はルビーを宥めるため頭を撫でながら呟く。あっさりと怒りを引っ込め、星の瞳は白くなると気が緩んだのかルビーは欠伸をもらす

 

「ルビーちゃんもう遅いから早く寝た方が良いよ?」

 

「センセーが連れてって?」

 

と、ルビーが甘えるが

 

「ハハハ……そういうのはアイか、ミヤコさんに言ってね?」

 

乾いた声で笑い、頬を引き攣らせながら答える吾郎。周囲からの視線にダメージを負いながら。

 

「ほらルビー、もう寝るよ?アクアもね」

 

アイが吾郎からルビーを預かり、アクアにももう寝るように促す。

 

「分かったよ。雨宮先生と伏黒さんを見送ったら直ぐに行くから」

 

───アクアの方が白い目で見られるべきでは?

 

吾郎は納得いかない表情を浮かべながら甚爾と帰路に就いた

 

 

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