アクア『領域展開』   作:初心者

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【注】捏造、独自解釈、独自設定
試しに5000文字以上で書いてみました




懐玉⑤

 

秘密結社『Q』を撃退し、星漿体『天内理子』とそのお付きである世話係、『黒井美里』を救出した五条と夏油は

 

「嫌じゃ! 嫌じゃ!妾は学校に行くと言っておる!二度とクラスメイトには会えぬかもしれぬのだぞ! 何故二日も予定を早める!」

 

と言って聞かない天内のワガママにどう対処するか指示を仰ぐため、面倒そうに夜蛾正道へと携帯電話を繋いだ。

 

「……だそうだ、夜蛾先。ガキが駄々こねてて話が進まねえ」

 

なお、『仲介人』孔時雨から連絡を受けた甚爾から天元を経由し

「星漿体に懸賞金が付いている。おそらく盤星教の仕業である」という情報を耳にした夜蛾は二人に

 

『悟、傑、よく聞け。天元様から緊急の報が入った。闇サイトで星漿体に懸賞金が懸けられている。額は三〇〇〇万。盤星教の仕業と見て間違いない。今すぐ星漿体を連れて高専に戻れ。天元様が薨星宮で匿うと仰っている。残念ながら学校に行かせている余裕はない』

 

「……だとさ。天内。悪いが学校は休め。高専に向かうぞ」

 

五条の軽口に、天内は顔を真っ赤にして地団駄を踏んだが、その背後で夏油が静かに彼女の肩に手を置いた。

 

「理子ちゃん。君に懸賞金が懸かっている以上、学校に行けば君だけでなく、クラスメイトや先生を呪詛師の襲撃に巻き込む可能性が高い。……君は、それを望むのかい?」

 

夏油の慈愛に満ちた(胡散臭い)笑顔での逃げ場を許さない正論に、天内は唇を噛んで黙り込んだ。

 

こうして四人は、黒井の運転するワゴン車に乗り込み、山奥にある呪術高専へと向かうこととなった。

 

「……おかしいな」

 

助手席に座っていた夏油が、バックミラーを注視しながら呟いた。

 

「何がだ? 傑」

 

最後尾の席にいる五条が足を組み、気だるげに問い返す。

 

「呪詛師の襲撃らしきものが、一切無い。夜蛾先生の話では、理子ちゃんには三〇〇〇万の懸賞金が掛けられている。目の色を変えた連中が山ほどいるはずだ。目の前を通る車両が呪詛師であってもおかしくないはずなのに」

 

「まあ……。無いなら無いでいいじゃん。護衛対象(足手まとい)がいる状態で雑魚相手にして時間食ってもしゃーないんだし」

 

五条は窓の外を見つめたまま、そっけなく答えた。夏油の懸念に対する答えを五条は持っていたが、伝えるようなことはしなかった。天内と黒井を不安にさせても仕方ないというらしくない気遣いをしていたのもある。また、警戒のため術式を継続使用していたのもあるが、それ以上に

 

───一応それらしい気配の奴は居たんだけど、誰かに狩られたっぽいんだよな。誰がやってるか判らねえが……。残穢すらない鮮やかさだ。音も立てず、痕跡も残さず、呪力が消えていく。味方か第三勢力か……。どちらにしろタダもんじゃねえ。ただこの伽藍堂な気配は何処かで……?

 

天元の要請を受けた伏黒甚爾が裏で星漿体を狙う呪詛師を狩っていたのだが、その余りに洗練された『狩り』に辛うじて気付けたのは五条だけであった。

 

「ふう、少しは勘が戻ったかな」

 

───多少骨があったのは式神使いの爺と紙袋被った分身呪詛師くらいか。それ以外は有象無象だったな。

 

「さて、孔の奴には悪いが、仕留めた呪詛師は高専に引き渡すか……。色つけて買ってもらわねえとな」

 

仕留めた呪詛師たちを格納呪霊にしまい、証拠を念入りに消したあと、携帯電話で九十九に連絡しながら、星漿体達四人を追う甚爾。

 

「星漿体の懸賞金狙いの呪詛師はあらかた叩き潰した。今星漿体は高専に向かって移動中だ。もう一時間もしないうちに到着するはずだ」

 

「了解。……呪詛師の手応えは?」

 

「一級クラスが一人か二人。あとは有象無象だ。羂索とかいう化け物はまだ見てねえ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「それっぽい気配はあった。微かに死臭を纏ったらしい奴がな。つっても臭いだけだったがな」

 

「……ふむ」

 

「それで気になることがある。死臭を感じる前にしていたガキ二人の会話なんだが」

 

甚爾は九十九に五条と夏油が星漿体が同化を拒否した場合。天元と敵対してでも星漿体を助けるつもりでいる。という会話をしていたと伝える

 

「フフフ。あの二人がそんなことを言っていたのか…!嬉しくなってしまうな」

 

「ああ、はいはい、良かった良かった。だが問題はその会話のあたりで、死臭を感じたってことだ」

 

棒読みで九十九に形だけの共感を示した後甚爾は話を戻し、懸念点を伝える。九十九はその報告を聞き、眉間に皺を寄せる

 

「その会話の一部始終を聞かれていたとしたら……。」

 

「星漿体に生きていて欲しいのは天元や九十九(オマエ)、五条達ガキ共そして───」

 

「羂索も、か……」

 

「ああ、最悪俺らが居なくても問題無い程度の妨害しかねえ。いいとこ星漿体に狙わられているって危機感を覚えさせる程度がせいぜいだ。おそらく五条達護衛を信頼させて、星漿体が同化を拒否させるように仕向けたいんだろうな」

 

「だがそれはこちらにも好都合では?」

 

「まあな、星漿体に死んで欲しいのは盤星教くらい。『Q』は戦闘員が無力化されて死に体だ。最大の懸念点だった羂索も特に問題無し。まあ希望的観測かもしれねえから油断は出来ねえがな」

 

「だな。出来ればここで潰しておきたかったが」

 

「こっちから仕掛けるのは今は出来ねえな。少なくとも高専に星漿体が到着するまでは。ま、推測が正しければ向こうの狙いもこっちの狙いも同じだ。今は無理するところじゃねえ」

 

 

 

呪術高専まで後少し、十数年後、五条が火山の呪霊『漏瑚』とぶつかるであろう道路に差し掛かる。

そこで黒井の運転する車の天井に飛び乗った者がいた

 

「「「!」」」

 

警戒する黒井、天内、そして夏油

 

「ああ、安心しろ。敵じゃねえよ」

 

五条は、警戒する三人を宥め、車のドアを開き、車の屋根に向かって話しかける

 

「おい、車の屋根に張り付いてないで入れよ」

 

「お、すまねえな。五条のボウズ」

 

「うるせえ、やっぱ屋根に張り付いとくか?」

 

「勘弁しろ。お前らの代わりに呪詛師の駆除してやったんだから」

 

「「「!?」」」 

 

その言葉に天内と夏油、バックミラー越しに黒井が入って来た男を見る

 

「にしてもよく分かったな。俺が敵じゃねえと」

 

「あんた前に高専に居ただろ。それにガキの頃にも会ったことがある。だろ?禪院甚爾」

 

「今は『伏黒』だ。禪院とは縁を切ったんでな」

 

「悟。その男は一体?」

 

血の匂いを漂わせた、ただならぬ気配を持つ男に当然の警戒心を抱く夏油に五条は

 

「こいつが俺らの代わりに呪詛師の始末してくれやがった奴だ。さっき夜蛾先から連絡が来てた。天元様が雇った助っ人だとさ……」

 

「呪力を全く感じないのだが……」

 

「『天与呪縛』のフィジカルギフテッド。肉体の強化の代わりに呪力が完全に0になる。空間にぽっかり伽藍堂が出来るその特徴的な気配で思い出したよ」

 

「正解だ」

 

欠伸をしながら答える甚爾

 

「呪力が完全に0ってそんなバグみたいな人間がいるのか!?」

 

夏油にとって甚爾は完全に常識の外の存在であった。

 

「ここにいんだろ。通称『術師殺し』。呪術師の天敵って話だ」

 

五条がその常識外の存在を肯定する

 

「らしいな。ま、今は天元に護衛として雇われてる。お前らと目的は一緒だ。ヨロシク」

 

 

 

呪術高専結界まで後僅かな星漿体一行を監視する者が一人

 

〈先んじて禪院甚爾は天元。あるいは呪術高専が雇っていたか。いや『術師殺し』を高専が雇うのは不自然だし天元の独断か?なんにせよ厄介だな。遠巻きに監視して動きがあったら盤星教に報告。懸賞金を取り下げさせるか……。!なるほどな、そちらも天元についたか……。いや星漿体を保護するためか。となると禪院甚爾は君が雇った護衛役か───九十九由基〉

 

 

 

呪術高専

駐車場で車から降りて呪術高専に向かう一同

 

車中で呪詛師の襲撃があったことを聞かされ学校に向かわなくて良かったと思う反面もう学校に行けず、別れも告げられずにいて元気の無い天内。そんな天内を気遣う黒井。その二人の後ろに五条、甚爾、夏油の三人が背後から護衛する。

 

「結局他に襲撃は起こらなかったか」

 

「ああ、念の為合流したが必要無かったな」

 

「呪詛師の襲撃はあなたが防いでいたんでしょう?何人倒したんです?」

 

剣呑な雰囲気を漂わせる夏油が言葉こそ丁寧だが甚爾に食ってかかるような口調で質問するが、甚爾はまるで教師が聞き分けの悪い生徒を相手にするように受け流す

 

「さあな、骨があったやつは一人か二人、あとは懸賞金に釣られた有象無象だ。いちいち数えてねえな……ん?」

 

───ったくお前は天元の護衛役だろうに出てくんなよな

 

「!?」

 

夏油は甚爾の視線の先を見ると呪術高専の結界入口前に人影があることを把握し警戒態勢を取るも、それは見知った顔であった

 

「やあ、諸君お疲れ様」

 

金髪を靡かせて呪術高専結界入口前に仁王立ちする『特級術師』九十九由基

 

「九十九さん!?」

 

「九十九?黒井は知ってる?」

 

「『特級術師』です。理子様」

 

「なんであんたがここにいるのさ」

 

五条が九十九に食ってかかる

 

「私は元星漿体でね。天元の同化を阻止して星漿体を保護するためだ。と言ったら?」 

 

「「「「!?」」」」

 

甚爾以外の四人が驚愕する。九十九はそれを見てふっと笑い

 

「詳しい話は中でしよう。ついておいで」

 

 

 

呪術高専忌庫

 

「おい、どこまで行く気だ」

 

無言で案内する九十九に痺れを切らした五条が苛立ちまぎれに声を掛ける

 

「薨星宮だが?」

 

「なんでだ?あんた天元と天内の同化を阻止するために動いてんじゃないのか?」

 

「そうだ。先程も言っただろう?」

 

「では何故薨星宮に向かっているんですか?」

 

「自分が星漿体として天元と同化するとか言い出さねえよな?」

 

「おやおや、心配してくれるのかい?」

 

九十九がおちょくるような調子で五条に話しかけるが五条はそれには取り合わず

 

「けっ、誰があんたの心配したんだよ。そもそも九十九、あんたが星漿体を辞めたから天内が選ばれたんだろ?だったら星漿体を保護しようとしているならわかる。ならなんでわざわざ天元様に会いに行こうとしている?同化を見届けて、自分が星漿体でなくなるのを実感したいとか考えてるんじゃねえだろうな」

 

「安心しろ、それは無い」

 

九十九は声を真面目なトーンに変えて断言したあと口調を元に戻し

 

「信じられないのも無理は無いけどね。むしろそんな真面目に考えてくれてて嬉しいね。ただ、天元の状態に関しては見せた方が早い。それに見せてから話をした方が理解しやすい。そう思ったから天元のところまで連れて行こうとしているんだよ」

 

「天元様の状態?」

 

「そ、それ以外にも色々あるけどね。色々あり過ぎてさ。天元達も交えて説明させないと訳が判らないことになるんだよね。だから、天元の元に向かっているって訳だ。あとは夜蛾先生から聞いただろう?星漿体は薨星宮で匿うと。少なくとも懸賞金が取り下げられるまではね」

 

「……」

 

「ああ、安心してくれていい星漿体の同化は無しだ。これだけは確実だよ。元星漿体()が保証する」

 

「「!?」」

 

天内と黒井が驚愕し、「え?え?なんで?」「理子様……!良かった」混乱しつつも喜びをわかち合う

 

「……それを早く言えよ」

 

「本当に……」

 

五条と夏油は高専到着後ずっと続けていた九十九に対する警戒態勢をようやく解いた

 

全ての事情を知っているが、あまり興味が無い最後尾の甚爾は欠伸をしながらも警戒態勢を解かなかった。

 

───念の為薨星宮に着くまでは警戒してかねえと。羂索が何か仕掛けてくるかもしれんからな。事情を知っている奴が少ないから仕方ないとはいえ、なんで俺が子守みたいな心配しなきゃならねえんだ……。

 

 

 

薨星宮

 

「天元。星漿体天内理子を保護して来た」

 

《苦労を掛けたね。伏黒甚爾、『六眼』五条悟、『呪霊操術』夏油傑。そして、現星漿体天内理子と世話係黒井美里》

 

九十九の言葉を受け、雨宮吾郎と夜蛾正道、家入硝子そして見慣れぬ金髪の子供が押す車椅子に乗った天元が姿を現す。

 

「!?」

 

「なんで雨宮先生や硝子達がここにいる!?」

 

五条が目を剥き、夏油が驚き、声を上げる

 

「なんでって元々僕らは天元様の主治医として雇われてるからね」

 

「主治医!?」

 

「硝子は?」

 

「私はあんたらの受けた任務について話があるって雨宮先生に連れてこられた。」

 

家入が事情を話す。そして

 

「はじめまして。雨宮吾郎と同じく天元様の主治医として雇われている。星野アクアです。よろしくお願いします」

 

 

「「「!!?」」」

 

 

天元の車椅子を押す金髪の子供が、『主治医』を名乗る異常に夏油、天内、黒井が驚愕する。先に聞いていた家入は『その気持ち良く分かるわ』とウンウン頷き、五条は『六眼』で察知していたのか。アクアをマジマジと見つめるだけに留まっていた。

 

《うむ、まずはそこからだな》

 

そして天元が語る信じがたい説明を受け、詳しい経緯を知らされていなかった夜蛾を含めた六人はまるで宇宙を背負ったような顔になっていた

 

《公的には天元()が進化を選んだと発表する。実際にはアクア君と吾郎君の術式で若返り、更に結界術で不老を維持する。それにより星漿体が必要無くなったということにする》

 

天元は締めに《何か質問はあるかな?》と皆に問いかける。手を挙げたのは五条悟

 

《五条悟か、何が聞きたい?》

 

「天元様じゃねえ、ゴロ先には悪いが失礼なのを承知でそこのアクアってガキに質問がある」

 

「俺?」

 

「お前だ」

 

「……いいけど。答えられるか判らないけど?」

 

「安心しろ。お前の術式の話だ」

 

「術式?」

 

「ああ、お前術式二つ持ちの自覚はあるか?」

 

「……え?」

 

「「「「「「「《!?》」」」」」」」

 

五条とアクアを除く全員が驚きを示す。

 

「……『六眼』か、ちなみにどんな術式だ?」

 

驚愕から素早く復帰した甚爾が五条に質問を投げる。五条はチラリと夏油と雨宮を見たあと答える

 

 

 

「……傑と同じ。『呪霊操術』だ」

 

 

 

 

 

 

 




没ネタ
黒沐死襲撃
羂索が契約した黒沐死を襲撃に使うことも考えたけど、登録済みの『特級呪霊』が出て来るのは不自然極まりない上にここで祓われるのもなと考え没

感想欄でツッコまれたけど答えられなかった原因
アクアのもう一つの術式『呪霊操術』

心霊施術を雨宮吾郎の術式と表記していた理由であり
魂側の施術がアクアの担当だった理由であり
アイの術式で吾郎の呪霊がアクアに宿ったあと分離出来た理由である
アクアの肉体に元々呪霊操術が刻まれていた。そこに吾郎の呪霊が入り込んで、アイの術式により術式と記憶がコピーされた。が、吾郎の魂はそのまま残っていた

最初五条がアクアを遠くから見た時は吾郎の術式が強く出ていたため、遠目からだと解らなかった
吾郎がアクアから分離したことで本来の術式が表に出て来た

なおアクアの『呪霊操術』は遺伝である
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