アクア『領域展開』   作:初心者

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【注】捏造、独自解釈、独自設定


懐玉⑥

 

二〇〇六年五月末

天元若返り施術四回目。トータル六回目の施術が行われる

 

施術者星野アクア、雨宮吾郎

 

被施術者天元

 

「はじめるぞ」

 

アクアの号令により二人で馴染んだ薬王薬上菩薩印を組む

 

『『領域展開』』

 

『『陰陽施寮』』

 

 

その光景を見守る七名の観客がいた。

呪術高専二年生──五条悟、夏油傑、家入硝子。

一年生──七海建人、灰原雄。

教師──夜蛾正道。

そして、特級術師──九十九由基。

なお伏黒甚爾はとある理由により有給休暇中である

 

本来であれば決して立ち入ることの許されない領域に、九十九を除く呪術高専関係者はあらかじめ他言無用という『縛り』を結んだ上で、この場にいた。

 

「これが『領域展開』か……」

 

「凄い……。本当に病院の中にいるみたいだ……」

 

術師として経験の浅い七海と灰原は初めて体験する領域展開に唖然とした表情を浮かべていた。

 

「……」

 

二人がかりの『領域展開』という稀有な事例を自身の糧として吸収しようとかつてないほど真摯な眼差しでサングラスを外し、『六眼』で観測する五条だったが

 

───とんでもねえな、あのガキ。

 

その内心は、驚愕と、それを上回る好奇心で埋め尽くされていた。

 

───いくら領域内包型の術式とはいえ、規模が半端じゃねえ。病院一棟纏めて再現。しかもほぼ全ての施設が機能しているとか……。

 

五条は、二人の呪力の混ざり具合に注目した。

 

───いや、ゴロ先の方か?混ざり合ってて俺の『眼』でもどっちがどっちなんだか良く分からんな……。二人がかりの領域展開なんつー前例無いだろうし、はっきりいって参考にならねえんだよな。実家にもそんな記録なんぞあるわけが無えし、後で『アクア』にもゴロ先にも質問しまくらねえと。クッソ、面白すぎるだろ

 

 

観測した結果、それが自分たちの歩んできた「呪術」という常識を完全に破壊する非常識なものであると理解し、五条は「参考にならん」と嘆息した。だが、その口角は隠しようもなく吊り上がっていた。

 

彼は、未知を楽しんでいた。

 

 

そんな五条を横目に夏油もまた、『六眼』が無くともこの稀有な体験を己の糧と出来るよう食い入る様にアクアと吾郎を見つめていた。

 

───同じ『呪霊操術』を持っているとはいえ、彼の本領はこちらだろう。天元様を施術出来るレベルか。実際に見ると凄まじいな。悟が『特級』と評したのも頷ける。二人に万が一が無い様に。特に、幼いアクア君の護衛用の呪霊を増やさなければならないな。

 

夏油の思考は、自然と「守るべきもの」へと向いていく。

これほどまでに価値のある「術式」と「存在」。それを狙う者は、呪術界の内部にも、外部にも数多存在するだろう。

 

───幸い、呪霊操術同士呪霊のトレードは出来るみたいだし、『あのアドバイス』を活かすためにも研鑽を積まなくてはな

 

 

一方で、家入硝子は、あらためて後悔の念に駆られていた。

 

「……失敗したな」

 

ボソリと、誰にも聞こえない声で呟く。

 

事の始まりは、星漿体騒動の少し前に、好奇心で吾郎に参考にしたいから術式で行なった施術記録を教えて欲しいと持ちかけた時のことだった。

 

「守秘義務があるから、教えられることは限られている」と渋る彼に対し、彼女は軽いノリで提案してしまったのだ。

 

「なんなら、他言無用の『縛り』を結びますよ」

 

と、その結果、開示された情報は、彼女の想像を絶する「厄ネタ」のオンパレードであり、人知れず頭を抱えていた

 

───星漿体絡みで五条と夏油が、こっち側の事情に巻き込まれてくれたのが、せめてもの救いか……

 

もし自分一人でこの秘密を抱えなければならなかったとしたら、今頃ストレスで胃に穴が開いていただろう。(実際には煙草の量が増える程度で済んでいたが)

 

───ウ~ン……。反転術式だけじゃ、心許ないな。いくら吾郎先生やアクア君が天元様専属で、いずれ高専付属の診療所に移るといっても、私には医療知識がなければ、術式がある訳でも無い。歌姫先輩と違ってサポートすら覚束ないし

 

家入は自身の反転術式のアウトプットという強み以外にも出来ることは無いだろうかと考えていた

 

───私としては吾郎先生の後任の保健医というのは理想だけど……。それ以上の『何か』ができないとな。後で、夜蛾先生か吾郎先生に相談してみるか……。いっそ、九十九さんかアクア君か天元様にも聞いてみようかな?せっかくだしね。

 

失敗を成功に変えられるよう家入はこの状況を利用してやろうと考えていた

 

 

「施術終了だ」

 

天元の肉体と魂の年齢を一〇年分巻き戻し、アクアが施術終了を告げる。ここまでで四〇分ほど、最初に若返りの施術をした時は一時間は掛かっていたが、今では三分の二程度の時短を可能にしていた

 

「結構時間が余ったな」

 

「だな」

 

「せっかくだし皆にも施術をしてみようか」

 

「前に言ってた反転術式の強制発動か」

 

余った時間でアクアと吾郎は家入と九十九以外の観客に反転術式を体験してもらうことにした。

 

一応希望者のみとしたが、全員希望したため、一人あたり五分間という制限時間を設けた反転術式の体験会

 

結果

 

体験希望者

 

五条、夏油、夜蛾、七海、灰原

 

反転術式習得

五条、灰原

 

反転術式習得出来ず

夏油、夜蛾、七海

 

反転術式アウトプットは灰原のみ習得

 

「ウッソだろ……。灰原に負けた……」

 

習得出来たはずの五条が凹んでいた。

 

「いや……反転アウトプット習得したといっても、アクア君や家入先輩や雨宮先生のような出力出ないです。それになによりめちゃくちゃ疲れます。呪力ほぼ全部使い切って他人の擦り傷治すのがやっとですよ。実用にはほど遠いと思います……」

 

「……もう少し、後何回かやれば習得出来そうなんですが……」

 

「私もだ。出来そうで出来ないもどかしさがあるな。後は試行回数か……。黒閃でも体験すればいけるかもしれない……」

 

灰原と七海、そして夏油も呪力が枯渇し息絶え絶えだった。七海と夏油は今回では習得出来なかったが、体験したことで習得への取っ掛かりを得たと実感していた

 

───さっぱり習得出来る気がせんな

 

夜蛾は自身のセンスの無さを自覚し人知れず凹んでいた

 

「にしてもこの領域内では、反転術式の習得まで出来るのか」

 

「対象に触れて施術しないといけないので……それに、アクアに手伝ってもらわないと時間がキツイので『縛り』を結んだ上で天元様にも許可を貰わないとなかなか……」

 

「かえってその方が良いかもしれないな。あまり広げて良い技術でも知識でもない」

 

 

「そろそろキツくなってきましたので領域解きますよ」

 

アクアが声をかけ、領域を解く

 

 

「ところで、アクア」

 

「何でしょうか五条さん?」

 

天元から

《反転術式のアウトプットは呪力特性や術式にも影響されるからな。出来ないから劣っているとは考えない方がいい》

と慰められ持ち直した五条が疲労困憊のアクアに質問する

 

「領域内に呪霊みたいな二人が居たんだが心当たりはあるか?」

 

「……え? ああ、あの人たちは……」

 

アクアは少し気まずそうに視線を逸らした。

 

「天元様から剥離させた、初代と二代目の星漿体の魂です。俺のもう一つの術式『呪霊操術』のせいか、領域内に魂が呪霊……のような形で取り込まれてしまったらしくて。今は領域内病院のスタッフをしてもらっています」

 

「「は?」」

 

五条と夏油が同時に声を上げる。

 

「だから、夏油さんにアドバイスできたんです。あんな不味いものをいちいち口にしてたら、ストレスで身体も精神も病みますから」

 

星漿体を保護した時、呪霊操術持ちということに気付かされたアクアは夏油から呪霊操術を教わっていた。

その際に呪霊は吐瀉物を処理した雑巾のような不快な味をしていることを聞き、夏油が呪霊を取り込むたびかなりの無理をしていることを五条は知った。

 

「呪霊操術の呪霊を取り込む部分を必中化する領域展開。習得出来れば、仮に特級呪霊相手でも必殺になり得る。か」

 

「それに呪霊を直接生得領域に取り込むから呪霊を味あわずに済むっつー利点もある。対呪霊最強になれる一石二鳥の領域展開か。俺も負けてらんねえな。反転術式は覚えた。術式の脳の負担の軽減も期待出来るし、術式反転も出来るようになったはずだ。傑。お前には負けねえからな」

 

好戦的な笑みを夏油に向ける五条に

 

「私もだ。悟」

 

同じく好戦的な笑みを返す夏油

 

 

『最強の二人』は未だ発展途上

だが、成長の取っ掛かりを得た二人はやがて

対呪霊最強と対術師最強の領域展開を習得することになる

 

 




『無量空処』は対術師最強の領域展開だと思ってます

四月二五日追記
夏油の領域効果のイメージは即時捕獲の広域マスターボールですかね
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