アクア『領域展開』   作:初心者

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【注】捏造、独自解釈、独自設定


二年後の命日

 

二〇〇七年九月

 

家入硝子は雨宮吾郎にとある女性を紹介した

 

彼女の名は庵歌姫

 

五条、夏油、家入が一年生の時に四年生だった先輩の二級術師

 

紹介した理由は

 

「庵さんの反転術式の習得を手伝って欲しい……か」

 

───名前は聞いたことあるし、確か所属期間が三ヶ月は被ってたはずだけど面識は無いよな。……多分。

 

家入の隣で頭を下げている巫女服の女性をチラリと見る吾郎

 

『縛り』に抵触しないようアクアとその術式に関しては触れずボカシつつ、灰原が反転術式のアウトプットを武器に戦っていることを庵に伝えた家入

 

それを聞いた庵から家入に反転術式を教えてと頼みこまれ、何度か教えるも、自身の指導力では無理と判断。吾郎に相談を持ちかけることになった

 

「はい、お願い出来ますか?雨宮先生」

 

「ウ~ン……習得出来ないかもしれないよ?あくまでもアレはキッカケにしかならないから」

 

「でも、夜蛾学長以外は習得出来てますけど?」

 

家入の割と容赦ない指摘に

 

「それ夜蛾さんに言ってやらないであげてね。結構気にしてるみたいだから」

 

吾郎はやんわりと注意する

 

今年度から学長に就任にした夜蛾正道。残念ながら反転術式は今だ習得出来ていなかったため、地味に凹んでいた。

 

「とりあえず今は無理かな。予定を作りはするけど……。『縛り』が必要だからね?」

 

「ハイ!よろしくお願いします!」

 

庵があらためて頭を下げる

 

『縛り』を結び吾郎とアクアに師事した結果、庵歌姫は反転術式及びアウトプットを習得

 

そして、庵から話を聞いた冥冥(一級推薦を出しにされて『縛り』に抵触しない範囲で口を割った)と夜蛾から話を聞いた日下部も加わることになる。結果は日下部習得。冥冥は今の所習得出来ず。

 

 

なお、このあと

 

「あまり言いふらされても困るから、何か対策した方がいいかな」

 

と考えた吾郎が天元、アクアとの相談により、反転術式習得の施術については、五条、夏油、家入、七海、灰原、夜蛾、九十九、甚爾の誰かから推薦された者のみとなる。

 

また、現在高専教師である日下部はともかく、現時点では外部の人間である、庵と冥冥(未習得ではあるが)に関しては反転術式は家入から個人的に習ったということにし、秘密保持の内容がアクア、天元にプラスして吾郎についても許可なく話さない。ということが追加され、『縛り』がきつくなった

 

 

 

─────

 

 

 

二〇〇七年十二月

 

 

 

 

元B小町ニノこと新野冬子が行方不明になった。

 

奇しくもそれは、二年前B小町が行なった初のドームライブの日。

 

星野アイが刺され、星野アクアが呪術に目覚めた日。

 

そして、犯人菅野良介が階段から落下し、死亡した日だった。

 

新野冬子の部屋には『残穢』が沈着するほどベッタリとついていたため警察所属の『窓』により、呪術高専に通報される。

現地に派遣されたのは黒閃を経験し、反転術式を習得。とメキメキ腕を上げて一級推薦を受け、現在は準一級術師に昇級した七海建人と五条に才能が無いと指摘されたため、術師としての見切りをつけ、現在補助監督に転向を検討している新入生の四級術師伊地知潔高

 

先に来ていた補助監督から現状の説明を受ける

 

「行方不明者は新野冬子。元B小町のアイドル。卒業ライブが終わったあと、精神に異常をきたし一年半入院。今から3ヶ月前に退院後、以前から暮らしていたこのマンションに。

戻った当初は明るかったそうですが、一ヶ月も経たず表情が暗く引き籠もりがちになり、最近はまるで何かに憑かれているような有り様だったそうです。

今朝、何かが暴れているような騒音と悲鳴が聞こえてきたと通報があり、駆けつけた警察が中を確認したところ血の跡を発見。

事件性ありと判断し、鑑識が呼ばれました。その鑑識にいた『窓』が異様な気配を感じ、高専に通報した。とのことです。

それと悲鳴を聞いた方なんですが、気が動転していまして、落ち着いたあと、あらためて聞き取りをする予定です」

 

「分かりました。伊地知くん。念の為『帳』を。呪霊のみを逃さない設定でお願いします」

 

「は、はい。七海先輩。

『闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え』」

 

新野冬子の住んでいたマンション全体に帳を張る伊地知

比較的結界術に適性のある伊地知は吾郎経由で天元仕込の結界術を習っており、既に『帳』の設定をある程度可能としていた。

 

「ありがとうございます。では、行きましょうか。あまり気持ちの良い場所ではありませんが」

 

七海が部屋に足を踏み入れると、その場の空気が物理的な重さを持って肌にまとわりついた。思わず立ち止まり、臨戦態勢に入る

 

これまでの経験から七海は───

 

───部屋が半分領域?いや、結界化している?最低二級呪霊クラス。下手すれば一級クラスはある。術式持ちの可能性も考慮するべきだ

 

「伊地知くんは部屋に入らず、扉の外で待機を」

 

「え?」

 

「今の君では危険です。それと、十分経っても私が出て来なければ応援を呼んでください……出来れば、五条さんか夏油さんを」

 

「!!わ、分かりました」

 

危険度を察した伊地知は引き下がり、七海に言われた通りにする。

 

警戒しながら七海は部屋に入る。

まず、最初に目に入ったのは血の滴った跡。点々と続いているそれは、不自然にも血を踏んだ足跡は無かった。

 

───呪霊に運ばれたか?この部屋に沈着するほどの残穢からいって地縛霊型の呪霊。いや───

 

七海は部屋の状況から、ただの地縛霊型呪霊の仕業ではないことは感じとっていた。

 

───地縛霊型だった(・・・)と言うべきでしょうか。彼女を殺したか拐ったか喰ったあと、逃げた……。いや、移動した。最悪通り魔的に被害者がでかねない

 

もうここにはいないと確認した七海は踵を返し、伊地知と補助監督に───

 

「ここにはもういませんね。伊地知くん。『帳』を解除していただいて構いません」

 

「わ、分かりました」

 

「補助監督さんは他に襲われる人がいるかもしれませんので……念の為、他の術師へ、特に広域警戒が可能な夏油先輩に最優先で連絡を。それと他にも被害を受けた方が出るかもしれませんので警察からの情報収集をお願いします」

 

「分かりました。七海術師はどうされますか?」

 

「一旦高専へ報告に、気になることがありますので」

 

 

─────

 

 

呪術高専保健室

 

「雨宮先生」

 

「七海君か」

 

「報告は?」

 

「聞いているよ」

 

「アクア君は?」

 

「天元様のところ」

 

「報告しに行きたいのですが」

 

「じゃあ、一緒に行こうか」

 

『縛り』を警戒し、言葉少なに遣り取りして、七海と吾郎は薨星宮へ向かう

 

 

薨星宮

 

 

「アクア……」

 

「『ニノが行方不明になった』か?」

 

「「!?」」

 

七海と吾郎が表情を変える

 

「知ってた……。いや、天元様から聞いたのか……」

 

「ああ、犯人はリョースケの呪霊だ」

 

「!」

 

「確かあなたの……」

 

と言ったあと、しまった。と口を手に当て黙る七海

 

「ああ。【『縛り』は気にしなくていい。薨星宮の中では好きに喋ることを、俺が許可する】。俺達の許可なく喋るなという『縛り』だから、これで大丈夫だ」

 

「……ありがとうございます。では、リョースケとはあなたの母親を刺したあと、階段から落ちて亡くなり、呪霊化したという菅野良介ですね?」

 

《そのとおり》

 

七海の疑問に答えたのは、アクアではなく、甚爾に車椅子を押してもらっている天元だった。

 

余談だが、肉体的には最初の施術から二〇〇歳以上若返っているはずだがあまり変化はない

 

《新野冬子と菅野良介は恋人関係だったが、雨宮吾郎を崖から落とし、殺したあと別れていた。死して呪霊化したあとは新野冬子の部屋に取り憑いていた。ただ、危害を加えられる可能性はあと何年か猶予があると思っていたのだが……》

 

「読み誤った。ということですか」

 

吾郎が、一見冷静な態度で続ける

アクアは何かを耐えるような表情を浮かべながら聞いていた

 

《うむ……。去年の災害の頻発で、呪力を溜め込んだのだろう。更に、今日は彼の命日だ。一時的に呪力が高まり、新野冬子を殺した。そして、彼女が死んだことで地縛霊から解放された。ただ、解放された時に、溜め込んだ大半の呪力を部屋に置いていったようだ》

 

「つまり、あの部屋にあった大量の呪力や残穢は地縛霊から解放されたあとの置土産ということですか?半分結界化していましたが、あれはむしろ結界が崩れた残滓のようなものだったということですか」

 

唯一部屋を直に見たことのある七海が現場を思い浮かべながら情報を補足する

 

《ふむ、結界化していたか。道理で感知しにくいはずだ。おそらくだが、新野冬子の死体は喰われたか結界に飲まれたのだろう》

 

「部屋自体が生得領域みたいになってたのか」

 

《然様、その代わり地縛霊から解放。言うなれば宿主から切り離された寄生虫のように、本体はかなり弱っている。三級程度にな。……そのせいか、また見失ってしまった。最後に感知したのは、アクア君たちが以前住んでいた場所だ》

 

「なら、私が……!」

 

七海は直ぐに向かおうとするが、天元が待ったをかける

 

《既に灰原君を向かわせてある。君達と一緒にいた補助監督と共にな》

 

 

──────

 

 

 

「そうか……。分かった……。いや、気にしなくていいよ。ご苦労様」

 

灰原から報告を受けた吾郎は労いの言葉をかけて通話を切る

 

七海は灰原にこの件を引き継ぎ、違う任務に従事していた。

 

冬場で年末。ただでさえ呪霊が大量に湧く季節。更に去年の災害の影響もあり、呪霊被害が多く新米準一級術師は任務の掛け持ちはザラであった。

 

《駄目だったか……》

 

「ええ、呪霊の残穢だけだったそうです。既に移動したあとなのかも、と。それとニノの悲鳴を聞いた人から確認が取れました。悲鳴に『リョースケ』という人の名前が混ざっていたとのことで、犯人は確定でしょう……。ただ───」

 

「《ただ?》」

 

言い淀んだ吾郎にアクアと天元が続きを促す

 

「マンションでわずかな残穢が他にも見つかったそうです。それも二種類」

 

 




前話追記
二〇〇七年四月
夜蛾正道学長就任

歌姫さん反転術式習得。顔に傷は付かなくなる。後に京都校に反転術式要員兼教員として採用。家入さんの代わりに眼の隈が濃くなる。五条が気遣うレベルで

七海と伊地知
結界術苦手で『帳』を張るので精一杯な七海と比較的結界術が得意で多少の設定変更が可能な伊地知のコンビ

リョースケ、一時的に準一級呪霊レベルに、冥冥、歌姫が囚われた浜松市の呪霊に近い性質
ニノを殺したことで地縛霊としては解放され、一気に呪力がバラけ拡散し弱体化
前の年は部屋にニノが居なかったので暴れなかった
リョースケが死んだ日にニノがリョースケを思い浮かべ死を悼んだ結果覚醒して大暴れしました
思い出さなければ思い出してくれないと大暴れしました
どちらにしろ詰みです
なおリョースケは生前は脳が術師のものではない術式持ち設定でした。死滅回游まで生きていれば、覚醒型術師になっていた。

ニノの部屋
事故物件
十何年後かにどこぞの物好きな呪詛師が特級呪霊と利用するかも


普段と違う時間になってしまって申し訳ありません

言い訳させてもらうと
ニノの死体を発見したか、行方不明かで二パターン書いてて遅れました。今回は行方不明のパターンを採用

原作生存キャラ死亡タグ追加
津美紀母の時点で追加しようとして忘れてました

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